『バースト・カース』 作:ゅゅ
今は昔、大陸を制するとある大国、「花国」に二人の見目麗しい姫君がいた。
一方は煌びやかな服飾品を身に纏った、燃えるような真紅の髪の美しい少女「紅姫」。もう一方は質素ながらどことなく儚げで、見る人の目を惹き付ける独特な魅力を醸した蒼髪の少女「蒼姫」。
紅姫は花国の皇帝とその后との間に生まれた正統な花国の血筋であり、蒼姫は皇帝が侍女との間に設けた「忌み子」であったが、二人は親友同士で、永久の友情を誓い合っていた。
皇帝は周辺諸国を烈火の勢いで支配し花国の支配域を広げたが、死者の怨念が彼にとある呪いを掛けた。
『皇帝よ……貴様は未来の花国を託すべき跡取り息子に恵まれない。養子を取っても無駄だ。貴様の家に男が踏みいることを我々は許さない。貴様の血脈は今ここで途絶えるのだ』
予言者の語った死者の呪いの通り、皇帝の作った子供のうち、男子はみなみっつを数える前に亡くなってしまった。養子に迎えた健康な男子もみな謎の奇病を患い数年の内に死んでしまった。
皇帝は気を病み、自らの娘、紅姫と蒼姫に花国の未来を託すことを決める。
しかし一国の王は一人で足る。
花国は周辺諸国の恨みを買っている。そのため、皇帝は国内にスパイや裏切り者がいないか常に気を張り詰めている必要があった。
后は皇帝の疑心暗鬼を利用し、自らの娘紅姫を国王とするため、蒼姫を策謀に掛けて皇帝自らの手で処刑を命じさせてしまう。
蒼姫の死に打ちひしがれた紅姫は、ある日、水面に映る蒼姫の幻覚に呼び寄せられ川に身を投げ出した。
紅姫の死に自らの過ちを悟った皇帝はその日の夜、寝室にて自刃し、花国はその後衰退の一途を辿ることとなる。
二人の少女の悲劇を引き金にして、花国は滅びた。
であれば、この二人が悲劇を乗り越え、希望の日の出を掴み取ることが出来たのなら……。
文学は語る。
『文学とは、歴史であると共に、また、歴史に非ず。我は歴史の虚実などには目を向けない。ただ、我が求めるものは、それを見たものが、読んだものが、その物語に憧れ、心を浸らせ、夢見心地になることだけだ。正しさについては「歴史」に譲ろう。我はただ人心のみを欲する怪異。そして、人心というものは常に「もしも」を欲するものだ』
文学は語る。
『もしも、悲劇のうちに散った二人の少女が、手を取り合って花国を救う未来があれば……』
文学は、語る。
『それは人心の興味を惹くに足る「未来」であると、我は考える』
文学。それは過去を未来へと紡ぐ、文字による情報の羅列。
その怪異が求める「もしも」の試練……。
『単位が欲しくば答えを読ませよ。自らの筆の描くがままに、貴様の魂をインクに変えて、文字を、文章を、物語を紡ぎゆけ。その答えが我を揺るがせるに足る「文学」足れば、自ずと「未来」は開けるであろう』
視界が開け、一つの城が目前に聳え立つ。
花のように優美であり、炎のように荘厳であり、水のように雅びである。
花国首都、主城、「紅蒼城」。
『行け、学生よ。魂を賭け代に、結末を掴め』