『バースト・カース』   作:ゅゅ

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女の子になっちゃった!?

 俺は城を見上げ、嘆声を上げた。

 

「マジで異世界来た!? トラックに轢かれず異世界来たのって俺が世界初じゃね!?」

『そんなわけないだろ……』

「あれ、紗雪……?」

 

 天から聞こえてくる声に俺は眉根を寄せる。

 

「編集者はマリアに頼んだはずなんだけど……」

 

 このクエストは転移者と神役の二人三脚によるものだ。

 これはマズい……。

 紗雪は俺の命なんて端からどうとも思っていない。きっと簡単に使い潰されてしまうに決まっている。マリア助けて……。

 

「紗雪……マリアは?」

『ここにいますよ? 達也さんはそんなに私のことが気になるのですか?』

「え、いや別に……いや気になるっちゃ気になるけど、今はそういう話はしてないわ。話戻すけどさ、これって外から見えてるの? 他の奴らもみんな見てるの?」

『いや、マリアの奇跡で私だけ例外的に神役を同時に担えているらしい』

「奇跡便利過ぎるだろ……他の奴らにも見せてやれよ……」

『出来ることしか出来ませんので……』

「あ、そう……」

 

 たぶん俺たちは同好会のメンバー同士だから奇跡の対象に選ばれたのだろう。他の奴らは部外者だからマリアの奇跡の対象にならない。

 と勝手に納得することにした。この学園じゃ道理も理屈も通用しない。あるのは、理不尽と恐慌だけだ。

 

『それにしても達也さん、かわいいですね! 勝ち気っぽいつり目とムッとしたお口、幼女特有の小さな痩躯、どこをとっても可愛らしいお人形さんのようです!』

 

 マリアの声に俺は「そう言えば」と気が付く。

 

 近くの池を覗くと、底にはそれはもう絶世の美幼女の姿が映っていた。

 

「うわっ! 俺、可愛すぎ……?」

 

 身長は130センチほど、腰まで伸びる紅の長髪に、燃えるような朱色の瞳。肌の色は血色がよく、全体的に炎のような印象を受ける利発そうな女の子……それが俺だ!!!!!

 

「マジか~! マジか~! 俺、こっちの世界でずっと生きていくことにするわ~!!」

『オイ!! 文学の単位はどうなる!! 自分の役目を忘れるな!!』

「だって俺可愛い女の子好きだし」

『自分がなってどうする! そっちの世界にいたら十中八九、別の男の下に嫁ぐことになるんだぞ!!』

「うえ……それはやだな……」

 

 紗雪の言うとおり、この世界観なら有り得る話だ。

 

「男と結婚するのは俺無理だわ。そういうの否定はしねえけどさ、でも俺やっぱり女の子と付きあいてえし……」

『でしたら、ちゃんとこちらに戻って来てくださいね?』

「ああ、全部解決して戻ってくるよ」

『ええ、約束ですよ?』

「ん? え? ああ、約束な……」

 

 俺が一人でそんなことを呟いていると、向こうの方から一人の幼女が駆けてくるのが見えた。

 蒼い長髪にぱちりとした瞳。俺と対となるような美しい美幼女が手を振りながらこちらへと走ってくる。

 

「え、俺? あの手、俺に振ってる!? なんかデートの待ち合わせみたいでドキドキすんだけど!!」

「紅姫~!」

「あ、今の俺は俺じゃねえんだったわ」

 

 幼女は俺のもとまで駆け寄ってくると、息を整え、それから俺の手をぎゅっと握ってきた。

 

「うわっ」

「どうしたの? 紅姫?」

「いや、手……やわ……え?」

 

 彼女はあまりにも美しかった。真っ白な肌は柔らかく滑らかで、薄く滲んだ汗も相まって牧場のアイスクリームのようだ。心なしか甘い香りがするような気もする。いや、確実にしている。凄くいい匂いだ。

 

 思わずロリコンになりそうな俺の心を、紗雪の声が現実に引き戻す。

 

『キモいぞ! 死ね!!』

「お、お前……なんで俺の心の声が……」

『手元の本にお前の心情が記述されている! 気色の悪いロリコンめ! 死ね!!』

「俺はロリコンじゃねえ! どっちかってーと俺は巨乳派だし! おっとりした優しい女の子に甘えたい派だ!!」

『どっちにしろキモい!!』

 

 俺の趣味嗜好を全否定してくる紗雪に心が折れかけるが、気を取り直し蒼姫のほうへと視線を向けた。

 

(うわ……っ、家に連れて帰りてえ……)

『口に出さなくても聞こえてるぞ!』

 

 まあ、男の嫁に行くのは嫌だし、ここはあの文学の怪異の体内の世界だ。

 とにかく、早くクエストを終わらせ単位を取って二階に行こう。

 

 俺たちの目的はあくまでこの学園の脱出だ。

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