『バースト・カース』   作:ゅゅ

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普通に暗殺してくるじゃん

「そういうわけだから、蒼姫、お前が虐められてたら俺が助ける。だから蒼姫、俺が負けそうになったらお前が助けてくれ」

「え……? えぇええっ!?!? 無理無理無理むりだよぉ!! 私、全部ダメなんだよ!?」

「全部ダメかは、まだ分かんねえだろ」

 

 実際、この世界を攻略するために保護対象の蒼姫をただの保護対象としておくのは勿体ない。

 コイツは将棋で言うところの玉だが、それを言ったら俺だって玉だ。

 俺は生きて単位を取得し紗雪とマリアのもとに帰らないといけないし、そのためにも蒼姫に死なれると困る。

 

 要は、俺が死んでも蒼姫が死んでもダメ。

 だから、俺たちは互いに命懸けで相手の命を守るべきなんだ。

 

『馬鹿にしては考えたな』

『蒼姫ちゃんは少し頼りないですが、信頼する心は大切です』

 

 そういうわけで、俺は蒼姫を連れて早速宮廷へと向かう。

 

 今は池を挟んで向こうに宮廷があるから、橋を渡って……

 

「ッ!? っらああああ!!!!!」

 

 俺は全力で尻尾を振りかぶった。

 

「え!? 急になに!?」

 

 俺は黙って尻尾が掴んだ物を蒼姫に見せる。

 

「え、槍!?」

「普通に暗殺してくるじゃねえか! 謀略で殺すんじゃねえのかよ!!」

 

『それはお前が必死に抗った結果だ。お前が不出来なら、謀殺に辿り着く前に、蒼姫は死ぬ』

 

 文学の声が耳元で囁く。

 つまり、最初の説明は嘘っぱちで、蒼姫は最初からずっと危険なわけだ。それで、謀殺までは対処出来るが、謀殺については俺の力じゃどうにもならねえ。それまでの死は回避可能な死だが、最後の謀殺だけは確定された「確実な死の運命」という話だろう。

 

「テメエ……あ、ひとつ追加で確認だ」

『何だ……』

「マリアたちは10文字だけ本の内容を編集出来ると言ったな? 11文字編集したらどうなる?」

 

 文学は答える。

 

『マリアは死ぬ』

「だそうだ。絶対に10文字以内に収めろよ?」

『はい、頑張ります』

「自分を犠牲にして仲間に未来を託すやつ禁止な」

『分かりました』

「カッコいいし感動するけど、絶対になしだからな!」

『とても心配しているようですね……。分かりました。もし10文字使い切ってしまったら、それ以上は一文字も使用しないと神に誓いましょう』

 

 マリアは信心深い。神に誓ったなら安心出来る。

 紗雪はいいや。アイツは俺のために命を投げ出すなんて殊勝なことは絶対にしない。

 

『他に聞きたいことはあるか?』

「他……? そうだな、この槍は誰が投げた」

『我はお前の利益になることはしない』

「あー、はいはい。自分でがんばってくださいってな」

 

 俺は槍を真っ二つに折ると池の中に投げ捨てた。

 

「出てこいよゴミカス野郎。幼女相手に遠距離攻撃なんて卑怯者のすることだぜ?」

 

 俺は叫ぶが相手は姿を現さない。

 当然か、多少挑発されたくらいで姿を見せるようなら暗殺者失格だ。

 

「貴様……今私のことを何と言った……?」

 

 嘘だろ?

 

 俺は橋の向こうに、いつの間にか立っていた全身黒ずくめの男を前に口を開く。

 

「お、お前……馬鹿なのか?」

「ゴミカス野郎、卑怯者、馬鹿……貴様は私に対して三つの侮辱の言葉を差し向けた」

「馬鹿だろ! だってお前……!」

 

 コイツの格好は、正真正銘、どこからどう見ても忍者のそれだった。

 

「忍べよ! 忍者だろ!? 忍ぶ者って書いて忍者だろ!?」

「忍ぶまでもないということだ!」

「ッ!!!!!」

 

 俺は手元に悪魔の槍を取り出し敵の忍者刀と鍔迫り合う。

 

「くッ……紅姫の体じゃ体格的に不利か……!」

 

 俺は両手に加えて尻尾を使って槍を振り回す。

 忍者は背後に跳び、刀をくるりくるりと回しながらこちらを威嚇する。

 

「紅姫! ……ど、どうしよう!? 私、紅姫を助けなきゃ!!」

「無理だろ! どこかに……いや、そういう作戦かもしれねえなぁ……!」

 

 コイツが俺の気を引いている間に逃げ出した蒼姫を別の忍者が殺す作戦かもしれない。

 

「俺から離れるな! 絶対に守る!!」

 

 投擲されたクナイを槍で弾き、手裏剣も同様にしてやり過ごす。

 

「紅姫! その尻尾なに!?」

「便利だろ! 俺の能力だ!」

 

 瞬間、俺と忍者の間合いはゼロになった。

 

「ッ!??」

 

 驚いているのは俺じゃない。敵の忍者のほうだ。

 

「翼もあるんだぜェえええッ!!!!!」

 

 脚による跳躍、尻尾をバネにした跳躍、そして翼による羽ばたき。

 三つの加速力を重ね合わせて、俺は一瞬にして忍者との距離を詰めた。

 

「殺すと誰が犯人だか分からねえからなぁあああッ!!!」

「ぐっぉおおおお!!!!」

 

 俺の槍は三叉だ。

 叉の間の長さを伸ばし、敵の首をそこに嵌める。

 そのまま……。

 

「どぁあああ!!!」

 

 俺は槍を地面に突き刺した。

 忍者はギロチンに嵌められたように首を固定され、動くことが出来ない。

 

「おら! 一丁上がりぃいい!! 勝負ありってところだな!! はっ!!!」

 

『達也さん凄いです! まさか初戦でこんなに戦えるなんて!!』

『素直に驚いた。なぜだ……?』

 

「ここに来る前はアニメとか映画とか見てたからな!」

 

 マリアたちは驚いているが、一番驚いているのは俺だ。

 まあ、いくらか機転は利かせたが……。

 

「この私が!! こんなクソガキに!! なんという不覚!!」

「馬鹿だろてめえ。顔見せろや!」

 

 俺は男の覆面を剥がす。

 

「……誰だ?」

 

 当然だが、この世界で出会う人間は全員初対面だ。知っている奴などいない。

 だが、蒼姫は違う。

 

「なあ、コイツ誰?」

 

 俺は振り返り、青ざめた顔の蒼姫を見た。

 

「う、嘘……」

 

 彼女は泣き出しそうな、目の前の事実を受け入れ難いといった表情で、震える声で呟く。

 

「柚木の……おじさま……?」

 

 俺は蒼姫から男のほうへと視線を落とした。

 コイツは「柚木のおじさま」だそうだ。

 

「誰?」

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