『バースト・カース』 作:ゅゅ
昼。
俺と蒼姫は一緒に中庭で食事をしていた。
厨房のコックさんに無理を言って、食器をここまで運んでもらったのだ。
「蒼姫、ひとまず、全部俺が毒見する」
「そこまでするの……?」
「ああ」
俺の顔を見て蒼姫は眉根を寄せた。
「紅姫……無理しすぎだよ。それに、毒見って……もしも毒が入ってたら紅姫死んじゃうじゃん!」
俺はどう説明したものかと頭を掻いた。
俺の正体を明かしてもいいのだろうか?
というか、俺は蒼姫の前でもう尻尾や翼を晒しているし、何度も虚空と会話をしているところを見られている。
なら、もう別に言っても大丈夫な気がしないでもない。
いや、どうだろうか。
大好きな紅姫の中に、男子高校生が入っていると知ったら。一緒に眠ったのが知らない男だと知ったら。
蒼姫は……普通の女の子は嫌じゃないだろうか?
「紗雪、どうだ?」
『キモいな』
「だよな。サンキュー」
うむ、しんどいぞ。これは。
『バラさずに上手く言い逃れする方法……実は生まれた頃から毒耐性があると言えばいいのでは?』
「通じるかな、それ」
『ちょっと厳しいですけど、蒼姫ちゃんは尻尾や翼にもツッコミを入れなかったので、信じてくれるかもしれません』
「うーん……でもそれしかねえか」
俺は蒼姫のほうに向きなおる。
「俺、実は生まれた頃から毒耐性があるんだ。みんなに隠れて実はいろいろなものを食べてて、調理場の洗剤を調味料と間違えて飲んだり、興味本位で野草とか虫を食べたり、そういうことを繰り返してるうちに耐性がついて、毒には強くなってんだ」
かなり苦しいが、必死にディティールを詰めた。
子供ならなくはないだろ、こういう話。そこから毒耐性に繋がったって話ならリアリティもなくはない!
「嘘」
おお……。
蒼姫からの明確な否定は初めてだ。
このやり取りは正体がバレる方向に進みそうだ。
気を抜かずに、ちゃんと考えて会話をしよう。
「紅姫が野草を食べたり、つまみ食いしてるとこ、見たことない」
「隠れて食べてたんだ」
「毒になれるほど、そんな頻繁に食べてたらバレるに決まってる」
「悪いことだって分かってたから、見つからないようにしてたんだよ」
「悪いことなのになんでするの?」
「悪いけどしたいことってあるだろ? つまみ食いとかまさにそうじゃん。欲望に負けたんだよ」
「変なもの食べたらお腹を壊すでしょ? それはどうやって隠したの?」
「……素直にお腹が痛いって言ったよ。お腹を壊したことあったでしょ?」
「そんな頻繁に?」
「……頻繁ではないかな」
「頻繁にじゃないのに、毒耐性が付くほど食べたの?」
「……えっと」
「これって矛盾してるよね?」
マリア、紗雪、助けて。
『蒼姫ちゃん意外と頭がいいですね。達也さんもこれまでの機転の利きようから見てそれなりに頭いいですけど、その達也さんを論理的に追い詰めてロジックを破綻させました。びっくりです』
『もうここから立て直すのは無理だろ。無理になってから頼るな』
マリアは素直に関心しているし、紗雪はド正論だ。
なんの助けにもならん。
「ねえ紅姫……嘘はやめて、本当のことを話して?」
「う、嘘は……」
吐いてる。ただ、吐きたくて嘘を吐いてるわけじゃない。
まして蒼姫を騙したり、陥れたいわけじゃない。
クソ。心苦しいな……。
「紅姫。私分かってるから。紅姫が私の仲間だってことは。ちゃんと分かってる。だって、ずっと助けてくれるもん。でも……」
蒼姫は俺の瞳を除きながら言った。
「あなたは、紅姫じゃないんでしょ?」