『バースト・カース』 作:ゅゅ
「あなたが私に沢山のことを教えてくれたんだよ? 前までの私は、紅姫を助けるなんて絶対に思いつきもしなかったもん」
俺はそれを聞き、正直に全てを話すことにした。
「俺は別の世界から来た。学生だ。ただ、変なことに巻き込まれてて、俺は悪魔とか、怪物とかになれるようになった」
「うん」
「俺は死なないんだ。たぶんだけど。寝なくても大丈夫だし、首が落ちても復活する。翼が生えるし、尻尾も生えるし、槍も出す。まだ見せてないけどツノもあるんだ。あと、牙も……」
「うん」
「俺、自分がどうなってんだかわかんねえんだ」
「うん」
「俺、自分がなにやってんだかわかんねえんだ」
「うん」
「俺、流されて生きてんだ。全部、行き当たりばったりで、どうしたらいいのか分からなくて、気付いたらここにいたんだ」
「うん」
「でも俺、ひとつだけハッキリしてることがあるんだ」
「うん」
「俺は……蒼姫を守りたいよ」
俺は彼女の瞳を見つめる。
彼女も俺のことを見つめている。
「俺は本当は情けねえ奴なんだ。怖いと逃げるし、女にしがみついて泣きついたこともある。痛いの嫌いだし、苦しいのも嫌だし、本当は家で寝転がっていたいんだ」
「私もそうだよ。私も、あなたと同じ」
蒼姫がそう言うのを聞いて、俺は少しだけ肩の荷が下りた気がした。
ちょっと頬が綻んで、笑みがこぼれた。無理した強がりの、威嚇の意味を込めた笑みではなく、安心した時の笑みだ。
「私も情けないんだ。怖いと逃げるし、紅姫にしがみついて泣きつくなんてしょっちゅう。痛いのは絶対に嫌。苦しいのも同じ。本当は、のどかな場所で誰にも酷いこと言われずにゆったりと暮らしたい」
俺たちは昼間の風を浴びながら、太陽を見上げた。
燦々と照りつける太陽と、それを隠し、過ぎ去っていく雲。
穏やかな昼下がり、俺たちは自分のことを話した。
「俺たち、思ったより似てるのかもな」
「それ、私も思った。……もしかしたら、私もあなたみたいになれるかな?」
「なれるさ。だけどやめとけ。ろくでもねえよ」
「ううん。なる。だって私、あなたに憧れたもん」
蒼姫の言葉に俺は少し苦笑する。
「似てるのに、憧れるのか」
「似てるからこそ、目指せるかなって。今の私はダメダメだけど、私が頑張った姿が、あなたなのかなって……そう、ちょっとだけ夢想したの」
そよ風が香る。
「酷い夢だな。もっといい夢があるだろ」
「ううん。私、あなたのことカッコいいって思ってる」
それを聞いて、俺は暫し黙った。
俺ってカッコいいのかな……。
肉まんを囓り、それを蒼姫に渡した。
「そろそろ食わねえか? それ、毒ねえぜ」
「うん。ありがとう」
今度は、彼女も素直に受け取ってくれた。
「毒見が嫌なわけじゃなかったのか?」
「嘘が嫌だっただけ。嘘吐いて自分のこと犠牲にして私を守るっていうのが耐えられなくて……」
「そうか……」
「そうなの」
芝生の上で、二人で肉まんを頬張る。
もしかしたら、これが俺の理想の光景なのかもしれない。
穏やかな昼下がり、本音を言い合える友達と……しかも、その友達は滅茶苦茶に可愛い美少女で、そんな子と、気楽に肩の力を抜いてお弁当を食べる。喋ることは他愛のないことで、だけど、他愛のないことを言っても嫌な顔もされず、「それな」とか「分かる」みたいなことを言い合えて。そんな一幕が、俺の理想の青春像なのかもしれない。
肉団子を頬張り、俺はその皿をどけた。
強いて言うなら、悪意のない場所であってくれれば、言うことはないのだが……。