『バースト・カース』   作:ゅゅ

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サイコロステーキ

 俺と蒼姫は道場へと入った。

 畳の向こう、禿げ頭の爺がただ黙して座禅している。

 その傍らには真剣が三振り。

 

 感じるのは確かな殺気と威圧感。

 

「蒼姫、気を付けろ。奴も柚木と同じだ……」

「無礼よの。柚木のような卑怯者の忍者と同列に語られるとは、武士の誇りの沽券に関わる」

「幼女ぶっ殺そうと考えてる時点で外道なことには変わりねえんじゃねえの?」

 

 俺の挑発に爺は嗤う。

 

「小娘、我が剣の前でそのような世迷い言を宣うか。ならばよかろう。我が剣直々に貴様を人の身から斬り離してやろう」

「あ? つまり肉体を殺して霊体にしてやろう、みたいなニュアンスか?」

「然り」

 

 刹那、銀色の閃光が爆ぜた。

 

「紅姫!!」

「離れてろ!!」

 

「斬ッ!!!!」

 

 爺が刀を鞘に収めると同時、俺の左腕がサイコロステーキのように崩れていく。

 

「痛っっっってぇなあああ!!!!!」

 

 全く剣筋が見えねえじゃねえか……。

 アニメとかでこういうのありがちだよな。目にも止まらぬ居合い斬りってやつ?

 

 俺の背後で蒼姫が悲鳴を上げるが、大丈夫だ。これでいい。

 奴が斬る直前、右手で蒼姫を背後に押し飛ばした。だから、反動で前に出た左腕を切断されただけだ。

 

「俺の左腕どうしてくれんだ!? なあ!! 弁償しろよ!!」

 

 俺は尻尾と槍を出現させ、爺の前に対峙する。

 

「紗雪の軍刀に斬られて以来久々の痛みだぜ? そうだよな! そうなんだよな! 身体を斬られるとかなり痛えんだよなあ!!」

 

 瞬間、俺は投げ出された刀を弾き、続く二刀目を槍で受ける。

 槍と剣とが互いに互いを削りあい、激しい火花が畳を焦がす。

 

 俺は爺を押し飛ばし槍を投げつける。

 

「笑止! 武器を捨てたか小娘ッ!!」

 

 爺はその槍を弾くが……。

 

「その槍はてめえを貫くために投げたもんじゃねえ」

 

 後端の「結び目」が解け、刀を持った右手に俺の尻尾が纏わり付いた。

 

「掛かったなマヌケジジイがぁ!! オラ! 死ねや!!」

 

 俺はそのままジジイを壁に叩き付け、さらに全力で尻尾をスイングする。

 

「二撃目!! おかわりもあるぜ!!?」

 

 反対側の壁にジジイを叩き付け、さらに尻尾をしならせ天井と地面に叩き付ける。

 これだけやれば並み大抵の人間なら死ぬだろう。

 

 俺は尻尾を消滅させ切れる息を整える。

 

「ぐっ……ふ……ぅ……。あやかしめ……っ」

「人間風情がこの俺に勝てると思ったか? ん?」

 

 爺は手に持った刀を自らの腹に飲ませた。

 

「ぐぅうううう!!!!!」

「切腹かよ! 初めて見たぜ!!」

 

 そして、突き刺さった刀が禍々しい闇を解き放つ。

 闇がジジイを飲み込み、漆黒の甲冑を纏った武士の姿が現れる。

 

「潔いなと思ったらそういうやつかよ! 切腹ってそういうやつじゃねえだろ!! 往生際が悪ぃな!!」

 

 刹那、俺と武士はぶつかり合う。

 そして二撃、三撃と刃を走らせ、互いにその実力を確認する。

 

「お前……よくもやってくれやがったな……!」

 

 俺の右腕が切り落とされ、俺は両腕とも失った。

 流石は武士と言ったところか、刃物同士での斬り合いでは俺のほうが分が悪いようだ。

 

「紅姫!!」

「近付くな!! コイツはマジでやべえぞ!! っ──!?」

 

 俺は敵の雪崩のような剣撃をすんでのところで回避し、尻尾に絡めた槍を敵のほうへと向け牽制する。

 

「畜生。幼女の腕とは言え、あるのとないのとでは戦いやすさが全然違えな……」

 

 俺は切り落とされた右腕を見つめる。

 武士の向こう側……簡単には拾えない。

 

『何やってる! お前は不死身だろ!! はやく腕を生やせ!!』

「出来たらとっくにやってるだろうがよ!!」

『まさか……そういうことですか……!』

 

 マリアの呟きに俺は注釈を加える。

 

「俺は今、現在進行形で左腕を生やしてる。だが、戦闘に間に合う速度では再生しねえ……。元に戻るまでに時間がかかる!!」

『紗雪さんが達也さんの首を切り落とした時、達也さんは首を拾ってくっつけていました。自己再生が本当に簡単だったら、あれは不自然な行動です。つまり、達也さんの自己再生能力はそれほど高くない……』

『ゼロから生やすより、斬られたものをくっつけたほうが早いということか……』

 

 武士が駆け、俺は何とかその突進に耐える。

 紅姫の軽い身体じゃ、怪物の力があってもかなり堪える。

 

「骨に! ヒビが! 入るだろうが! よ!!!!」

 

 俺は頭部に生やしたツノで甲冑に頭突きし、そのままツノを伸ばし天井に串刺しにし、勢いよくお辞儀をして甲冑を投げ飛ばした。

 甲冑がぶつかった衝撃で壁は崩れ、甲冑はそのまま城門のほうへと吹き飛び、池の中に落下した。

 

「紅姫!! これ!!」

「蒼姫! 助かる!!!」

 

 蒼姫が投げた右腕を断面に押し当て、全ての指が問題なく動くことを確認する。

 

 俺は城を出て池のほうへと歩みを進める。

 左腕のサイコロステーキを全部くっつけている余裕はない。

 腕の治癒はコイツを片付けてからだ。

 

「懐かしいぜ。柚木とやり合った池じゃねえか……」

 

 甲冑は池から這い上がり、俺の前で再度刀を構える。

 

「お前は前座なんだよ。確定した死の運命とやらのな」

 

 槍を構え、叫ぶ。

 

「運命ごと刺し貫いてやるよッ!!!」

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