『バースト・カース』 作:ゅゅ
刹那、俺の身体は謎の空中浮遊を見せた。
「あれぇええ!?!? 俺くん羽ばたいてないんですけど!?!?」
「達也さん! 素敵です! みなさんのために自らその身を投げ出す覚悟! とても美しい自己犠牲の精神です!!」
眼下でマリアが何かを言っているが、残念ながら俺は自分の意思で飛んでいるわけじゃない。
俺はやがて十字架に磔にされ、くるみ割り人形の口の中へと入って行く。
「怖い!! 助けてマリア!! 紗雪!! 俺食べられて死んじゃう!!」
「お前は死んでも蘇るだろ! 早く単位を取ってこい!!」
「カッコいいです達也さん!! 私、今とても胸がときめいていますっ!!」
紗雪は俺の蘇生能力を過信し過ぎだ。冷静になって考えてみたらあれは初回だけの可能性だって充分あるだろ!!
それにマリア……あれはたぶん宗教上の神聖な儀式か何かに今の状況を重ねて恍惚に浸っているだけで、別に俺が好きとか惚れているわけじゃないと思う。でも、もし宗教絡みとかじゃなく純粋に俺に惚れてくれているのなら……。
「へへ……へへへ……! へへへへへへへ……っ!!」
まあ、まんざらでもない。
紗雪もマリアも中身はちょっとイカれてるが、見た目だけでいったら最高に美少女だ。
俺は見た目さえ良ければ誰だって付きあう。たとえ相手が俺の頭をぶったぎって頻繁にAKを突き付けてくる戦争の化身でも、目がまっ金金に光り輝いている宗教狂いの女だって構わない。
問題なのは、その二人とも俺にあまり好意を向けてくれていなさそうだし、付きあえる気も微塵もしないところだが。
「愚かな人の子よ……」
闇が口を開く。
「あ!? お前も純愛派か!? うるせえ!! 俺は付きあうまでは誰でもいい!! 付きあってから純愛を叫ぶ!!」
「貴様はその身を賭け代に投げ出した。これより先、貴様の得られる未来は二つに一つ。一方は確実な「死」、もう一方は未来を紡ぐ「単位」だ……」
闇の声に俺は嗤った。
「は! 残念でした~!! 俺は能力で死にませ~ん!! なんたって俺さまは「ハロウィン」の能力者だからな!! 文学だか何だか知らねえが、そんなつまんねえもん、無敵のハロウィン様に屈服してな!! おら、トリックオアトリート!! 単位を寄越さねえとテメエ殺すぞ!!!」
「我が体内……つまり、転移先の異世界で死ねば、「魂」が死ぬことになる。貴様の能力は「肉体」の復活だ。魂が死ねば、身体が復活しようが意味はなかろう。つまり、貴様は魂だけが死に、肉体だけが現世に永遠に残ることになる……」
文学の放った言葉に俺は震える声で問うた。
「え……それってマジでヤバくね……?」
俺は足元の紗雪とマリアのほうへと視線を落とす。
紗雪……はたぶん助けてくれない。アイツは俺の命を軽視している。
マリア……。
頼む……。
「マリア! 俺はまだ死にたくない!!」
「達也さん……! あなたは選ばれたんです! この教室の救世主に!! これはとても素敵なことなんです!!」
「あー、話になんねえわ」
俺は闇のほうに視線を向けた。
「つまり、俺が死ぬ前にお前を殺せばいいわけだ」
「話はそう単純ではない。私は文学だ」
「さっさと本題を話せよ」
俺の言葉に闇は自らの怪異としての性質を語り始めた。
1.俺は異世界に転生し、目的を達成すると共にこちらに戻り、単位を獲得する。
2.転生先の世界は乱世の中国のような国、「花国」。ここに二人の姫がいて、俺は片方の姫に転生……というより、憑依して人格を乗っ取る。
3.俺はもう片方の姫を助けなければならない。救助対象の姫が死んだと同時に、俺もまた死ぬことになる。この死は「魂の死」であり、復活は不可能。
4.俺はこちらの世界に助っ人を用意出来る。助っ人は俺が生きる花国の物語を読みながら、「10文字だけ」記述を編算することが出来る。この編集能力を使って、神役は俺をサポートし、単位取得を目指す。
「なるほど……。マリア! 編集頼む!」
「はい! 私、国語の成績はあまりよろしくありませんが!」
なんだか嫌な言葉が聞こえた気がするが、まあいい。
「転生だかなんだか知らねえが! とっとと始めようぜ!!」
対「文学」戦、開幕──。