ONE PIECE ウタのいる世界   作:後門の熊

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第十八話 終結

 

海岸の坂道の下。ウタは一人で百人ほどのクロネコ海賊団の一般戦闘員を相手にしていた。

ウタワールドで音符の戦士達を指揮して引きずり込んだ半分の海賊たちに対処し、同時に現実世界では意識の無い半分の海賊たちを指揮して残りを相手にする。

シャンクスと別れてから、ウタはルフィの隣に立つ為、強くなるために自分の能力を最大限生かす方法を考えてきた。近接戦闘の能力や瞬間瞬間で相手を眠らせる戦い方などの他にも、より自分の歌に磨きをかけたり操った敵を効率的に使う為に大勢を指揮する戦術を学んだりと、ありとあらゆることを学び、備えてきていた。

 

「♪Listen up baby

消えない染みのようなハピネス

君の耳の奥へホーミング

逃げちゃダメよ浴びて♪」

 

そして今、それらをフルで活用してルフィの戦いの邪魔をさせないために戦っていた。

自分が今まさにルフィの役に立っている。今までやってきたことが実を結んでいる実感はウタのボルテージを更に上げていく。

 

「♪他の追随許さないウタの綴るサプライズ

Be my good boys & girls♪」

 

曲に合わせて操られた海賊達がユラユラと襲いかかる。もしその相手をしている彼らに意識があったらその異様さに恐れ慄いていただろうが、彼らにとっては幸いなことに意識がない今の状態ではそんなことは関係ない。

 

「♪誤魔化して強がらないでもう

ほら早くこっちおいで

全てが楽しいこのステージ上

一緒に歌おうよ♪」

 

理性と引替えに限界以上の力を得た海賊達と優秀な指揮官に率いられた操り人形達。現実世界での勝負は拮抗状態になっていた。

 

「♪I wanna make your day, Do my thing

堂々と

ねえ教えて何がいけないの?

この場はユートピア

だって望み通りでしょ?♪」

 

一方でウタワールドでは、音符の戦士達は着々と制圧を進めていた。既に取り込まれた海賊達のうち残っているのはおよそ半分。ほかは既に制圧済みであり、完全制圧も時間の問題だった。

 

「♪突発的な泡沫なんて言わせない

慈悲深いがゆえ灼たか

もう止まれない

ないものねだりじゃないこの願い♪」

 

だが流石にウタの勢力も無傷という訳には行かない。音符の戦士が一体やられ、現在四体。だが最初の五十対五の戦いから見れば既に勝敗は明らか。これ以上の召喚は必要ないと判断し、ウタはこのまま攻め切ることに決める。

 

「♪この時代は悲鳴を奏で救いを求めていたの

誰も気付いてあげられなかったから

わたしがやらなきゃ だから邪魔しないで お願い...

もう戻れないの だから永遠に一緒に歌おうよ♪」

 

いよいよ佳境。ウタワールドの制圧がほぼ完了し、現実世界に集中できるようになったウタがいよいよ本気で残った海賊たちを仕留めにかかる。

 

「♪直に脳を揺らすベース 鼓膜ぶち破るドラム

心の臓撫でるブラス ピアノ マカフェリ

五月雨な譜割りで Shout out! Doo wop wop waaah!」

 

残った海賊のうち更に五、六人をウタワールドに引き込む。突然の景色の変貌に獣並みの理性しかない海賊達も戸惑いを見せるその隙を空中から音符の戦士が襲う。

現実世界では数で勝り始めた操り人形達を使い、複数人で残りを一気に抑え込みにかかる。抑えた隙に頭へ一撃、意識を刈り取って次へ向かわせる。

 

「♪欺きや洗脳 お呼びじゃない

ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで

それだけでいい Hear my true voice♪」

 

最後の一人。恐らく海賊団の中でも上位の実力者だったのであろうその男は、最後の最後まで粘っていた。

だが最後にはウタに剣を弾かれ、蹴りを入れられ、渾身の一振でガクリと倒れ込む。

所詮は催眠による思い込みで得た偽りの力。ウタは彼らの本来のスペックのみで見事にそれを鎮圧して見せた。ギリギリで制限時間に間に合ったウタは緊張の糸が切れ、その場に倒れ込んでしまう。

倒れこんでいたウタを見て、船の中で宝の運び出しをしていたナミが駆け寄ってくる。

 

「ウタ!!大丈夫!!?」

 

「ナミ・・・あなたは・・・怪我は・・・?」

 

「私は大丈夫よ。それよりここにいるとルフィ達の方に巻き込まれるかも・・・急いで引きましょう」

 

その時だった。ルフィと戦っていたクロがいよいよルフィを仕留めるべく、奥の手を繰り出す。

全身から力を抜き、ダランと手を下に垂らすと、

 

「“杓死”!!!」

 

もしもクロを知るものがその場に居たら恐怖に震えていた事だろう。彼の奥の手、“杓死”とは、得意の高速移動術“抜き足”による無差別攻撃。その速すぎる速度に本人でさえ何を斬っているか分からないというとんでもない技だった。

 

ガキンッ!!!!

 

まず最初に斬られたのは坂道の壁。鋭く刻まれた五本の斬り跡はそこをクロが斬り裂いたことを明確に現している。

 

ズバッ!ズバッ!!ズバババッ!!!!

 

続いて斬られたのはウタに意識を刈り取られていた海賊達。仲間であろうとお構い無しにその凶爪は全てを斬り裂く。

 

「出て来い執事・・・・・」

 

仲間を傷付けるその行為は何よりも仲間を大事にするルフィにとってとても容認できるものではなかった。

 

「お前は仲間をなんだと思ってるんだァ!!!!」

 

その時、とうとうクロがルフィの逆鱗に触れる行動を取ってしまう。

 

「アァッ!!」

 

「ッ!ウタ!!!」

 

クロの“杓死”は斬る対象を選ばない。近くに居るもの全てに斬り掛かるその不安定さは坂の下に座り込んでいたウタの体をも斬ってしまう。幸いにしてウタの怪我は浅いが、ルフィが激怒するには十分だった。

 

「出て来い執事いィイイイイ!!!!!」

 

その時、ルフィのちょうど後ろの地面をクロが斬り裂く。そこから土煙が上がり、ルフィに向けてクロが目にも止まらぬ速さの“抜き足”で斬りつける。

だが斬られたということはその瞬間、そこに居るということ。ルフィはクロの服を掴むと思いっきり投げ飛ばす!!!

 

「ああああ!!!」

 

ズダァン!!!!

 

「見つけたぞ」

 

「この野郎が・・・黙って斬られてりゃいいものを・・・!!!」

 

そしてクロが坂の下の部下たちを指し示す。

 

「見ろ。貴様のお陰で中途半端に血を流して可愛い部下共が苦しんでる」

 

クロの言う通り、意識は無いものの斬られた海賊達は皆苦しげな表情だった。幸い地面に倒れ伏していたため、本来よりも被害は少なかったものの多くの者が苦しんでいることは確かだった。

 

「何が言いたげだな」

 

「うん」

 

クロの言葉にルフィはパキパキと指を鳴らしながら、

 

「お前みたいな海賊(おとこ)には絶対に俺はならねェ」

 

「ならないんじゃねェ。なれねェんだ、てめェ如きにはな・・・!!」

 

そして再び“杓死”を発動しようとダランと手を下に垂らす。

 

「最も、ここで死んじまうんだが・・・」

 

「させるかっ!!」

 

だがその隙をルフィは見逃さない。手と足をクロに絡ませて動きを封じてみせる。

 

「お前はウタを傷付けたんだ。その分の痛みは受けてもらうぞ・・・!!」

 

 

 

 

 

 

一方ウソップを担いで行ったゾロは、ウソップの案内もありジャンゴよりも先にカヤ達に追い付いていた。

 

「カヤ!お前ら!!」

 

「「「キャプテン!!」」」

 

「ウソップさん!!」

 

「催眠術師は!!」

 

「まだ来てません。でもさっきから林の木がどんどん倒されて・・・」

 

「でも今は倒れた音はしなくなったよ!」

 

「あの野郎、俺たちにビビって逃げたんじゃないのか!?」

 

「そうだそうだ!キャプテン達にビビったんだ!!」

 

ゾロたちが追いついた途端に元気を取り戻した子供達だったが、彼らに色々言われまくっていた当のジャンゴは意外と近くにいた。だが先程ゾロの実力を目の当たりにしていたジャンゴは、そう簡単に近付こうとしていなかった。

 

(あのガキども言いたい放題言いやがって・・・!!だがあの剣士は厄介だな・・・・・・ここは・・・・・・!!)

 

ジャンゴが取った戦法は至ってシンプル。遠くからの一方的な攻撃だ。林の木に身を隠しながら次々とチャクラムを投擲する。

 

スパパパパパパ!!!!

 

木々を斬り倒しながらジャンゴが投げたチャクラムが迫る。狙いはカヤでは無く子供達やゾロ達だった。

 

「ッ!チィッ!!!」

 

ガキィィィン!!!キィィィン!!!

 

飛んできたチャクラムをゾロが弾くも、今度は別の方向から更に三発!!

 

キィィィン!!!キィィィン!!!キィィィン!!!

 

「クソッ!出て来やがれ!!!」

 

「う!うおおおお!!お、お前ら一箇所に集まれれ!!その方がゾロが守りやすい!!」

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

「助かる!!」

 

だが状況は悪い。相手が何処にいるのか分からず、しかも一方的に攻撃されている。ある程度木を斬り倒してからは木を避けて投げて来ているので、ジャンゴの居場所は依然として分からないままだった。

 

「おい!お嬢様ァ!!お前がさっさと遺書書いて死なねェから!!ガキ共とその長鼻の男が狙われてんだぞォ!!!」

 

「!!!」

 

「ッ気にするな!カヤ!悪いのはお前じゃねェ!!全部あいつらが悪いんだから!!」

 

「そうだよカヤさん!」

 

「気にしないで!!」

 

「キャプテン達を信じようよ!!」

 

だがカヤの顔は依然として曇ったままだった。その表情を見て、ウソップはその口を回らせる。

 

「なァカヤ。俺達を信じてくれ。なんせ俺は!!数多の海を旅してきた勇敢な海の戦士なんだからな!!あんな奴、屁でもねェ!!」

 

「でも!!それは・・・嘘なんでしょう!?」

 

「オイオイ、俺の言葉をお前が信じなかったからこうなったんだぜ?今度は信じてくれよ」

 

「!!」

 

「そ、そうだよ!!」

 

「キャプテンはすごいんだ!!」

 

「やる時はやる男なんだ!!あんな奴、イチコロさ!!」

 

そしてウソップはゴーグルを締め直すと、パチンコを構える。

 

「防御は頼む!!」

 

「・・・・・・へっ、任せろ!」

 

飛んでくるチャクラムには目もくれず、周囲の木々や葉の動きを観察する。

僅かな揺れや葉が摩れる音すら見落とすまいと、全神経を集中させる。

 

キィィィン!!!キィィィン!!!キィィィン!!!

 

完全にゾロを信頼して背中を預けたウソップ。

そして、

 

「必殺“鉛星”!!!」

 

鉛の弾を打ち出す!!しかしそれはジャンゴを僅かにそれ、外れてしまう。

 

「フンッ・・・何かと思えば、当たらなければ意味が・・・」

 

だがそれはウソップの作戦通り。先に撃ち込んだ鉛星に気を取られたジャンゴを、ウソップは正確に捉えている!!!

 

 

 

 

 

 

そしてそれはちょうどルフィがクロを捕らえた時と同じタイミングだった。

 

「ルフィ!!やっちゃえ!!」

 

ウタの声にルフィはガンッ!とクロに頭をぶつけると勢いを付けて後ろに思いっきり伸ばす。

 

「ああ!!ウタの分まで、ぶっ飛ばしてやる!!!」

 

いきなりルフィの首が目の前に来て一瞬驚くも、ウタもニッと笑うと、

 

「お願い!!」

 

更にその首を後ろまで引っ張り・・・・・離す。

 

 

 

 

 

 

「「「行けェ!!キャプテン!!」」」

 

「行っけェ!!ルフィ!!!」

 

 

「必殺・・・・・・」

 

「ゴムゴムの・・・・・・」

 

 

「“火薬星”!!!!」

 

「鐘っ!!!!」

 

ウソップの弾がジャンゴに着弾、爆発するのと同時に、ルフィの勢いを付けた頭がクロの頭を撃ち抜く!!!!

 

 

ボウン!!!

 

ガゴオン!!!!

 

 

 

離れた場所でそれぞれの戦いが今終結した。

 




ウソップの描写を望む声が多かったので書かせて頂きました。変更点としては、

①ニャーバン・兄弟(ブラザーズ)をゾロ一人ではなくウタも一緒に戦っていたのでゾロに余力が残り、“虎狩り”で二人とも完全に撃破。
②催眠ブチの代わりにジャンゴが残った海賊団の全員を催眠強化して戦わせる。ウタはそれを迎撃する。
③催眠ブチの邪魔が入らなかったため、ウソップとゾロが原作より早くカヤの元へ到着。ジャンゴは形勢不利と判断して遠距離からのチキン戦法に切り替えるも、射撃勝負でウソップに敗北する。

と言った流れになりました。折角“狙撃手”なんだからもっといい感じに狙撃させてやろうと思ってこんな感じになりました。
もう一つの案としてウタワールドに海賊団全員とジャンゴも引き込んでウソップとウタがウタワールドで戦うっていう案もあったけどウソップとウタが二人で戦うのがなんか嫌だったので却下しました。

次回は後始末やってその後はちょっと日常回を挟むかもしれないです。読み返しててルウタ要素少ない?って思ったので。
あとバラティエ編はやりません。多分ウタがいたらゾロ、ウソップと一緒に先に向かうんじゃないですかね?なのでミホークの所までやってその後は直ぐにアーロンパークに向かいます。
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