「はーー、今日もいい天気だねーっ。こんないい日なのになァ。この船旅はひとまず遭難ってことになるな!!」
「ちょっとルフィ!そんなこと言ってる場合!?どーすんのこれ!?」
「どーしようなァ、アッハッハ!!」
「アッハッハじゃない!!」
つい先日、それぞれの夢を追い掛けて海へでたルフィとウタ。二人が足を伸ばせるほどには大きい舟を村から貰ったが流石に目の前の大渦を乗り越えることが出来るほどでは無い。
「俺カナヅチだからなー。困るんだよなー」
「それは私もだしこんな大渦じゃどの道死ぬわよ!!!」
「あそっか!!それもそうだな!しししし」
「笑い事じゃなーーーーい!!!」
冒険を始めたばかりの二人の運命は!?
とある島───
停泊している船にはハートマークが刻まれたドクロの旗が掲げられている。そんな船の上で一人の女がツー・・・と指を滑らせている。
「何だい?このホコリは・・・」
「も・・・も!!申し訳ありません!!アルビダ様!!隅から隅まで掃除したつもりでしたが・・・!!」
「も・・・もう一度やり直しますので・・・ど・・・どうか・・・!!」
「どうか・・・何だい?」
船長のアルビダが掃除をした船員達に詰寄る。
「どうか金棒だけは・・・!!」
「いやだ!死にたくないーーーーっ!!!」
しかしそんな命乞いも虚しく、ガンッという鈍い音が響く。
「コビー!この海で一番美しいものは何だい?」
「え・・・えへへ。もちろんそれは、レディー・アルビダ様です!えへへへへ」
「そうさ!!だからアタシは汚いものが大嫌いなのさ!!美しいアタシが乗る船も美しくなきゃねェ!!そうだろう?」
「そ・・・その通りです!!」
「お前にはどういう訳か人一倍
「は・・・はい、ありがとうございます」
「それ以外は能がないんだからとっととクツを磨きな!!」
「は・・・はいすぐに!」
「ホコリひとつ残すんじゃないよ!!お前達!!」
「「「「「へ・・・へいっ!!!」」」」」
その女・・・海賊船の船長アルビダは本人の言葉とは裏腹にでっぷりと太った体だった。が、その体は金棒を自在に振るには丁度いい体だとも言える。
「もういいよ!!グズだね!お前は!!」
「う!!」
靴磨きが気に入らなかったのか、アルビダがその少年、メガネをかけた小さな少年コビーを蹴りつける。だが、それでもコビーは機嫌を取るためにヘラヘラと笑い続ける。
「え・・・えへへへ。すみません・・・」
「謝ってるヒマあったら便所でも掃除してきな!!」
「えへへ、はい!すぐに!アルビダ様!!」
ニコニコと笑顔を見せているがアルビダが別の所を向いた時、本音の表情が覗く。
「すぐに・・・・・・」
その顔は暗く沈んでいた。
アルビダの休息地・酒蔵
アルビダの休息地の酒蔵。そこでは流れ着いたヒモで繋がれた二つの酒樽を中心に、四人が話していた。
「おいこの酒、俺達で飲んじまおうぜ!」
「いやでもお頭にバレたら・・・」
「なァにバレやしねェよ!!この事を知ってんのは俺らとコビーの四人だけだ」
「それもそうだな」
「分かってんな?コビー・・・」
「は・・・はいもちろん!僕は何も見てません!えへへ・・・。だから殴らないで・・・」
「あーーーーっ!!!よく寝たーーーっ!!!」
「ぬあ!!なんだ!!!」
「ちょっとルフィ!!うるさい!!!」
「もう一人ーーー!?」
「あ、スマン。起こしちまったか」
「スマンじゃないわよ!せっかくいい夢見てたのに!!」
「しかしまー、何とか助かったみたいだなァ。目ェ回って死ぬかと思ったよ」
「そうねー。ま、無事に陸にたどりつけてよかったじゃない。早く船を探しましょ」
「おう!!」
と、そこで自分たちを囲む四人の男達に気付く。
「だれだおめェら」
「「「テメェが誰だ!!!」」」
「あ!もしかしてあなた達が引き上げてくれたの?ありがとう!!」
「「「え?あァいえそんな」」」
突然の可愛いお礼にデレデレしながらも三人が後ろを向いてコソコソと話し合う。
「おいどうする?結構な上玉だぞ」
「だな。こっちは四人だ。男の方は捨て置いて女は・・・」
「ぐひひひ」
そんな三人が振り返り、下卑た笑みを浮かべ得物を取り出そうとしたその時
「さぼってんじゃないよ!!!」
突然金棒が飛んでくる!!遠くから投げられたであろうにその金棒は酒蔵を木っ端微塵にする程の威力を持っていた。
幸い直撃を免れたルフィとウタ、そしてコビーは森の中へと飛ばされていった。
アルビダの休息地・森の中
「あの、大丈夫ですか?お二人とも。ケガは?随分と吹き飛ばされちゃいましたけど」
「はははは!あァ大丈夫!なんかビックリしたけどな。俺はルフィ。ここどこだ?」
「ビックリなんてもんじゃないわよ!何あれ!?あ、私ウタ」
「あはは・・・。この海岸は海賊“金棒のアルビダ”様の休息地です。僕はその海賊船の雑用係コビーといいます」
「ふーんそうか。まァどうでもいいんだけどなそんなこと」
「いやどうでも良くは無いでしょ。海賊の休息地よ?ねェその本人は居るの?」
「居るどころかさっき飛んできた金棒がアルビダ様のものですよ・・・。多分今頃怒ってるんだろうなァ」
「あーあ、ルフィ怒らせちゃった」
「別にいい!!俺のが強い!!あ、そうだコビー、小舟とかねェかな。俺らのやつ渦巻にのまれちゃって」
「う・・・渦巻!?普通死ぬんですけどね・・・・・・。小船ならないこともないですが・・・・・・」
そう言ってコビーが連れてきた場所にあったのはなんともみすぼらしい小舟だった。流石のルフィも絶句するほどの。
「なんだこりゃ。棺桶か?」
「船です!僕が二年かかってコツコツと・・・」
「二年もかけて!?・・・でも要らないの?」
「はい・・・いりません。元々ここから逃げたくて造ったんですが、結局僕にそんな勇気はなくて・・・・・・どうせ一生雑用の運命なんです。一応・・・やりたい事もあるんですけど」
「じゃ逃げればいいじゃねェかこれで」
「ム・・・ムリですよ!あの日アルビダ様に捕まってから僕はもう逃げられないんです・・・!恐くてとても・・・!!あの日・・・釣りに行こうとして間違えて海賊船に乗り込み、これまで二年間殺さない代わりに雑用係兼航海士として働けと・・・!」
「お前ドジでバカだなーーーーっ」
「うっ!」
「その上根性無さそうだしなー。俺お前キライだなー」
「う!!」
「ちょっとルフィ、そんなホントのこと言っちゃァ・・・」
「う!!!」
そのウタの発言がコビーに致命傷を与えていたことにウタは気付かない。
「でも、そうですよね。僕にもタルで海を漂流出来るほどの度胸があれば・・・。ルフィさん達はそこまでして海に出て何をするんですか?」
「俺はさ、海賊王になるんだ!!!」
「私は新時代をつくる女になる!!!」
「え・・・!!か、海賊王!?それに新時代って・・・。海賊王っていうのはこの世の全てを手に入れた者の称号ですよ!!?それに新時代ってことは今の大海賊時代に変わる新しい時代ってことですよね!!?それを作るにはこの時代を作ったゴールド・ロジャーと同じくらいすごいことをしなくちゃいけないってことですか・・・・・・!!?」
「そうね」
「つ・・・つまりお二人とも、富と名声と力の“
「うん」
「死にますよ!?世界中の海賊がそれを狙ってるんです!!!」
「俺も狙う」
「私もー」
「ムリですよ!!海賊王なんて、この大海賊時代の頂点に立つなんて、出来るわけないですよ!!ムリムリっ!!」
ガツンッ
それを聞いていたルフィが突然、コビーを殴る。割と強めに。
「痛いっ!!ど、どうして殴るんですか!!」
「なんとなくだ!!」
「ちょっとルフィ・・・」
「俺は死んでもいいんだ!」
「え?」
「海賊王になるって俺が決めたんだから、そのために戦って死ぬんなら、別にいい!!」
「!!!」
「ちょっと何死ぬ気でいるのよ。あんたにはシャンクスとの約束があるでしょ?」
「あはは!そーだな!!」
ルフィのその言葉にコビーは衝撃を受けていた。そして自分も、自分の夢の為に死ぬ気でやれば、或いはと考えていた。
「ぼくにも・・・・・・やれるでしょうか・・・・・・!!」
「ん?」
「し・・・死ぬ気なら・・・・・・僕でも・・・海軍に入れるでしょうか・・・!!」
「え?海軍?」
「ルフィさん達とは敵ですけど!!海軍に入って偉くなって、悪いやつを取り締まるのが僕の夢なんです!!小さい頃からの!!」
「そんなの知らねェよ!」
「いえ!!やりますよ!!どうせこのまま雑用で一生を終えるくらいなら!!海軍に入る為、命を懸けて逃げ出すんです!!そして何時かアルビダ様・・・いや、アルビダだって捕まえてやるんです!!」
ルフィの言葉に感動したコビーが覚悟を決める。しかしそれを言うにはタイミングが悪すぎた。
「誰を捕まえるって!!?コビー!!!」
「うわあ!!!」
アルビダだった。金棒を振り下ろし、コビーの舟を粉砕したアルビダ。どうやらある程度会話は聞いていたらしい。
「僕の船・・・」
「このアタシから逃げられると思ってんのかい!?」
背後にはたくさんの部下たちがゾロゾロと着いてきていた。既に囲まれていたのだ。
「そいつかい?お前の雇った賞金稼ぎってのは・・・。ロロノア・ゾロじゃなさそうだねェ。最後に聞いておいてやろうか・・・。この海で一番美しいものはなんだい・・・?コビー!!」
「え・・・えへへ。それは勿論」「誰だこのイカついおばさん」
「「「!!!!」」」
「ちょっとルフィ、さっきからそんなホントのこと言っちゃあ」
「「「!!!?」」」
ルフィとウタが無自覚に相手を挑発する。アルビダの顔を真っ赤になっており、ブチブチと血管が切れる音が聞こえてくるようだった。
「ルフィさんウタさん!訂正してください!!この方はこの海で一番・・・」
その時、先程のルフィの言葉が頭をよぎる。死ぬ気で覚悟を決めていたのにいざ目の前にアルビダが迫ると媚びを売ってしまうなんて、自分の覚悟はそんなものだったのかと。
そしてコビーは決断する。
「一番イカついクソババアですっ!!!」
「ぷッ」
「あっはっはっはっ!!!」
「このガキャーーーーっ!!」
アルビダが先ほど以上の剣幕で怒鳴る。だがコビーの心中に悔いはなかった。自分は夢の為に戦ったのだと、自信を持っていた。
が、アルビダにそんなことは関係ない。三人まとめて叩き潰すつもりで金棒を振り下ろす。
「下がってろ!コビー、ウタ!!」
「え!?でも」
「大丈夫大丈夫。だってあいつ・・・」
アルビダの金棒がルフィに直撃・・・しかしルフィに効いた様子は無い。
「効かないねえ!!ゴムだから」
「な、何!?アタシの金棒が・・・」
「ゴ、ゴム!?」
「そ、ルフィはゴムゴムの実を食べたゴム人間。パンチとかキックとかそういうのは効かないの」
「ゴムゴムの実!?そ、それって海の秘宝とも言われる悪魔の実ですか!?」
「そうそう。因みに、私もウタウタの実を食べた歌人間?って言うのかな。まぁちょっと使い勝手の悪い能力なんだけど」
「ウタさんまで・・・・・・凄いですね・・・・・・!」
「ありがと。それよりホラ、あっち見てた方が面白いよ?」
「え?」
ウタが指さす先。ルフィの方は丁度ルフィが拳を叩き込むところだった。
「ゴムゴムの
ルフィの腕が伸び、アルビダが吹っ飛ぶ。巨体を誇るアルビダをもぶっ飛ばす威力のパンチに、後ろの部下たちもタジタジになる。
「手が・・・手が伸びたぞ!!」
「アルビダ様がやられた!!化け物だ!!」
そんな部下たちにルフィが一言
「おい!コビーに一隻、小舟をやれ。こいつは海軍に入るんだ」
「は、はい」
「しししし!」
「ルフィさん・・・」
しばらく後、休息地から少し離れた海上に一隻の小舟があった。ルフィ達が乗っていた船よりも大きめのその船にはルフィ、ウタ、そしてコビーの三人が乗り込んでいた。
「お二人は、ワンピースを目指すってことはあの・・・
「ああ」
「そうね」
「あそこは海賊の墓場とも呼ばれる場所で・・・」
「うん。だから強い仲間がいるんだ。そう言えばこれからお前が行く海軍基地に捕まってるって奴」
「ああ・・・ロロノア・ゾロですか?」
「良い奴だったら仲間にしようと思って!」
「えーーーーっ!!またムチャな事をォーっ!無理ですよ!あいつは魔獣のようなやつなんです!!」
「そんなの会ってみなきゃ分かんないだろ」
「ムリっ!!」
「あんた無理って言ってばっかじゃない。強いんなら仲間に入れて損は無いでしょ」
「ウタさんまでーー!?」
船はゆく。海軍基地へ。果たしてそこで何がルフィ達を待ち受けているのか?
暫くはウタの戦闘シーンは無いです。そら戦ったらほぼ負けないけど一曲歌ったら寝るなんて燃費悪すぎっていう。