ONE PIECE ウタのいる世界   作:後門の熊

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なんか思ってた以上に前話が好評みたいでめっちゃ嬉しかったです。


第二十一話 紙一重の二人

 

「できたぞ!!海賊旗!!!」

 

ゴーイングメリー号の甲板で自信ありげに満面の笑みを浮かべるルフィと対照的にその旗を見せられた四人は戸惑いを隠せない。

 

「はっはっはっ!ちゃんと考えてあったんだ!俺たちのマーク!」

 

「お・・・おれたちの・・・」

 

「ああ・・・・なんか、その、ごめん・・・・・」

 

唯一、ルフィの絵心のなさを知っていたウタはそれを伝えていなかったことを謝る。最も、その時もらった絵はいまだ大切に取ってあるのだが。

 

「コイツには・・・つまり絵心ってもんがねェんだな」

 

「ううん・・・もしかしてこれって芸術なんじゃないかしら」

 

「海賊旗は“死の象徴”のハズだろ・・・・・・まァある意味恐怖だけどよ」

 

「ルフィは・・・その、昔からこんななの」

 

「どうだ!?」

 

にっと笑って自慢気なルフィにウソップが、

 

「お前は下手クソだルフィ!おれが描く!!」

 

そういって今度はウソップが筆を握る。が、完成したどくろのマークは・・・

 

「「マーク変わってんじゃねェか」」

 

交差した骨のうち片方はパチンコに、横を向き、バンダナをした髑髏の鼻は長く、まるで誰かを連想するかのような・・・・・というか完全にウソップの海賊旗だった。

そしてルフィの絵をもとにちゃんと描きなおした旗は、

 

「うん!上手いっ!」

 

「お~。ちゃんと海賊旗だ」

 

ナミやウタが感嘆の声を出すほどの出来栄えだった。

 

「同じマークとは思えねェな」

 

「いいな!!あと帆にも描こう!!」

 

「ウソップって絵、上手だったんだね」

 

「昔から人ん家の壁によく落書き(アート)してたからな。結構俺は芸術に長けてるんだぜ」

 

鼻高々にそういうウソップに同じ柄を帆にも描いてもらえば、

 

「よし!完成っ!!これで“海賊船(・・・)ゴーイング・メリー号”の出来上がりだ!!」

 

帆に描く作業はさすがに全員掛かりの大仕事だったため、一味は疲労困憊だ。

 

「はーーーっ疲れた!」

 

バタンと甲板上で思い思いに休むウタ達。その時、

 

ドウン!!!

 

「ん!?」

 

「敵襲!?」

 

突然の大砲音。急いで音のした方に向かえばそこには大砲を撃ったルフィがいた。

 

「お前一体何やってんだ突然っ!!」

 

「大砲の練習だよ。折角ついてるし」

 

ゾロの言葉に答えるルフィだったが、不満げな顔から察するにうまく当たらなかったらしい。

 

「でも上手く飛ばねェもんだな」

 

「ばかめ。俺に貸してみろ」

 

そこへウソップがやって来る。ルフィに目標を聞くとその大砲の向きを調節する。

 

「今の飛距離から見て・・・これくらいか・・・・・」

 

そういって放った砲弾は見事、目標の突き出た岩に直撃!!

 

「すげーーー!当たった!一発で!!」

 

「うげっ!!当たった!一発で!!」

 

「なんでウソップが驚いてるの・・・・・?」

 

その驚きを押し殺してウソップは再び鼻高々に、

 

「んナ!?言っただろう?俺は“狙い”に関しちゃすげェのさ。恐れ入ったら俺をキャプテンと呼んでいいぜ」

 

その後、食堂に戻ってきたルフィ達。そこでルフィはウソップに役割を告げる。

 

「お前はさ、“狙撃手”に決まりだな」

 

「まァひとまずそこに甘んじといてやるが、お前があんまりフガイねェことしてたら即船長交代だからな」

 

「ああいいよ」

 

「よくないわよ。私はルフィが船長じゃなかったら船降りるからね」

 

そしてルフィは改まって真面目な顔をすると、

 

「考えたんだけどな!“偉大なる航路(グランドライン)”に入る前にもう一人必要なポジションがあるんだ」

 

「そうよね。立派なキッチンがあるもん。有料なら私、やるけど」

 

「長旅には必要不可欠な要員だな」

 

「そう思うだろ?やっぱり海賊船にはさ」

 

旅慣れている二人も同意見のようだった。上機嫌になったルフィが笑いながら続ける。

 

「音楽家だ」

 

「アホかてめェっ!」

 

「珍しくいい事言うと思ったらそう来たか!!」

 

「あんた航海をなんだと思ってんの!?第一、もうウタがいるじゃない!!」

 

「確かにウタはいるけどよ!!楽器弾けるやつが欲しいだろ!?そっちの方がウタももっと歌えるし!!」

 

「え?ウタって楽器無理なの?」

 

「あはは・・・・歌うのは得意なんだけどね・・・・・村にいた時に練習しては見たんだけど中々上手くいかなくて・・・・・」

 

ワイワイと騒ぐルフィ達。その時、突然外から怒号が響き渡る。

 

「出て来い海賊共ォーーっ!!!てめェら全員ブッ殺してやる!!!!」

 

そうして甲板の物を壊しまくる侵入者。慌ててルフィが甲板に出て叫ぶ。

 

「おい!!誰だお前!!!」

 

「誰だもクソもあるかァ!!!」

 

話も聞かずに手に持った刀でいきなり切りかかって来る侵入者。ルフィは軽い身のこなしで回避するも貰ったばかりの船が少し壊れてしまう。

食堂に残っていたゾロが窓から見つめるナミとウソップに状況を聞く。

 

「相手何人だ」

 

「一人・・・かな」

 

「じゃ、アイツに任せとけ」

 

左の頬に“海”の字を刻んだサングラスのその男は恨めし気に奥歯を噛みしめながら、

 

「こちとら名のある海賊の首をいくつも落としてきてる。名もねェ海賊風情が・・・・・!!おれの相棒を殺す気かァ!!!」

 

「相棒って何のことだよ・・・」

 

全く心当たりのないルフィだったが、既にこちらも被害を受けている。黙ってやられるわけにもいかない。

振り下ろされた刀を交わすと飛び上がって頭を掴み、

 

「何だか知らねェけど・・・」

 

そのまま相手の上を通って後ろに引っ張る。

 

「船を!」

 

そして勢いそのままに思いっきり投げ飛ばす!!

 

「壊すなっ!!!」

 

抵抗する間もなくブッ飛ばされる侵入者。

 

「か・・・・・!!紙一重か・・・」

 

そのままドスンと背中から倒れ伏す。投げ飛ばした拍子に脱げてしまった帽子を受けとめながらルフィは、

 

「何なんだ。意味わかんねェよ・・・・・!」

 

全く事情が分からなかったルフィだったが、そこに事情の分かるものが現れる。食堂から出てきたゾロは侵入者の顔を見ると、

 

「ん?お前・・・!ジョニーじゃねェか・・・!!」

 

「え・・・ゾ・・・ゾロのアニキ!!!?」

 

「どうした!ヨサクは一緒じゃねェのか」

 

「それが・・・・・!!」

 

何やら知り合いらしい二人にナミ達は疑問を浮かべる。

 

「なんだ、アイツの知り合いか・・・!?」

 

「・・・どうなってんの?」

 

ジョニーと言うらしいその侵入者はゾロの言葉に、

 

「それが・・・!!!ヨサクの奴・・・!!」

 

彼らの事情はこういうわけだった。ヨサクとジョニーは二人で活動する賞金稼ぎだった。だが数日前、片割れのヨサクが突然青ざめて気絶を繰り返し始めたのだ。原因も分からず歯も抜け落ち、古傷も開き始めたヨサクをひとまず岩山で安静を保って休んでいたが、突如、その岩山に砲弾が飛んできたらしい。心当たりが彼らの心を突き抜ける。まず間違いなくウソップが射撃の腕を見せた時に撃った砲弾だろう。

長年二人で賞金稼ぎをしてきた相方が原因も分からず死にゆく様にとうとう涙を流し始めるジョニー。ゾロも知った顔の死にかけの姿に息をのむ。だが、その現象にウタとナミは心当たりがあった。

 

「ねェナミ。これって・・・・・」

 

「ええ。ほぼ間違いなくアレ(・・)ね」

 

そしてルフィとウソップにキッチンにおいてあるライムを絞って持ってこさせ、無理やりヨサクの口に流しこむ。

 

「壊血病よ。手遅れでなきゃほんの数日で治るわ」

 

「本当ですか姐さんっ!!」

 

「その呼び方やめてよ」

 

先ほどとは打って変わって従順な態度になるジョニーにナミが説明する。

 

「一昔前までは航海につきものの絶望的な病気だったの。でも原因はただの植物性の栄養の欠乏。昔の船は保存のきかない新鮮な野菜や果物を載せてなかったから・・・・・」

 

「お前すげーな。医者みてェだよ」

 

「俺はよ。お前はやる女だと思ってたよ」

 

「船旅するならこれくらい知ってろ!!ウタもちゃんとそういう事は教えておかないとダメでしょ!!」

 

「いやあ・・・・・ルフィに言ってもどうせ理解しないだろうし、いいかなって・・・」

 

やがてライムの果汁を飲み切ったヨサクが飛び起きる。

 

「栄養全開復活だーっ!!!」

 

「おお!やったぜ相棒――っ!!!」

 

「そんなに早く治るかっ!!!」

 

何はともあれ元気になった二人は改めてルフィ達に名乗りを上げる。

 

「申し遅れました。俺の名はジョニー!!」

 

「あっしはヨサク!!ゾロのアニキとはかつての賞金稼ぎの同志!!」

 

「「どうぞお見知りおきを!!」」

 

そして二人は改めて頭を下げる。

 

「あんた方にはなんとお礼を言ったらいいのやら。流石にあっしァもうダメかと思ってやした」

 

「しかし改めて驚いた。“海賊狩りのゾロ”がまさか海賊になってようとは」

 

その時、突然ヨサクが再び口から血を吹き出す。

 

「ブヘェッ・・・・・!!!」

 

「ぬあっ!!!?相棒ォーーー!!!」

 

「いいから黙って休んでろ!!」

 

やがて血を吐いてピクピクしているヨサクを休ませてから一味は再び甲板に戻っていた。

 

「これは教訓ね・・・・・」

 

「長い船旅にはこんな落とし穴もあるってことか」

 

「あいつだってこの船に遭わなきゃ死んでたわけだしな」

 

「そうだね。私達だって他人事じゃない。ある程度の料理なら私やナミでもできるけど、それじゃあ栄養バランスとか悪いもんね」

 

ナミの言葉に同意するゾロ達。食事問題はある意味、敵の海賊や海軍よりも恐ろしい問題かもしれなかった。

 

「船上の限られた食材で長旅の栄養配分を考えられる“海のコック”」

 

「よくよく考えれば必要な「能力」ってわけだ」

 

仲間たちの言葉に、船長のルフィが今後の方針を決める。

 

「よし決まりだ!!“海のコック”を探そう!!なにより船で美味いもん食えるしな!!!」

 

するとその場にいたジョニーが挙手をする。

 

「アニキアニキ!」

 

「何だよジョニー」

 

ゾロが促すと話し始めたジョニーは今のルフィ達に最も必要な情報を持っていた。

 

「海のコックを探すんならうってつけの場所がある。まーそこのコックがついてきてくれるかは別の話だけど」

 

そういってジョニーが語り始めたのはにわかには信じがたいあるレストランの話。

 

「「「「「海上レストラン!?」」」」」

 

「そう。ここから2、3日船を進めれば着くはずだ。でも気を付けねェと。あそこはもう“偉大なる航路(グランドライン)”のそばだ。やべェ奴らの出入りもあるし」

 

それからゾロの方を向くと、

 

「アニキがずっと探してた“鷹の目の男(・・・・・)”も現れたことがあるって話だ」

 

「!」

 

「え?」

 

その言葉にゾロとウタが反応する。ゾロは驚きの表情だがウタは少し違った。

 

(鷹の目って・・・・・いや聞き違いかな。あの人は“偉大なる航路(グランドライン)”にいるはずだし)

 

「ウタ?どうした?」

 

「え?ああいや、なんでもない」

 

「そうか」

 

少し考え事をしていたウタだったが聞き間違いと切り捨てる。その後、案内を買って出てくれたジョニーの案内で船は少々航路を北に曲げる。彼らの船を括りつけて、目指すは海上レストラン。そこでは更なる事件が彼らを待ち受けているが・・・・・まだだれも、そのことに気付いてはいなかった。

 




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