ONE PIECE ウタのいる世界   作:後門の熊

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ウタのイベント多すぎて嬉死しそう


第二十四話 世界一の剣豪

 

「なァ“偉大なる航路(グランドライン)”の落ち武者(・・・・)よ・・・」

 

ゼフが放ったその言葉にコックたちが騒然とする。今まさに自分たちをぶちのめしたクリークが落ち武者と呼ばれていることに。今まさにクリーク自身が言った戦力でも“偉大なる航路(グランドライン)”を渡れなかったという事実に。そんな中クリークは目を見張ってその名を零す。

 

「貴様は・・・“赫足のゼフ”。生きていたのか。コックにして船長を務めたという無類の海賊」

 

「生きてたらどうだってんだ。てめェにゃあ関係のねェことだ。見ての通り俺はもうコックとして生きてる」

 

なんら恥じることなくクリークの言葉を肯定するゼフ。だがクリークの方は関係無く済ませるつもりはなかった。

 

「ハハハ・・・そう言うと聞こえはいいな・・・見た所コックとして生きてるというよりコックとしてしか(・・)生きられなくなったように見えるが」

 

「・・・・・」

 

「今の貴様には“赤い靴”は履けねぇってことだ。“赫足のゼフ”といやあ、戦闘において一切手を使わなかったという蹴り技の達人!!!その強靭な脚力は岩盤をも砕き、鋼鉄にすら足形を残すことが出来たと聞く。そして“赫足”とは敵を蹴り倒して染まる返り血を浴びた貴様の靴のこと。噂に聞いた海難事故で死には至らずともその大切な足を失ったと見える。貴様にとって片方の足を失うという事は戦闘不能を意味するハズだ」

 

「戦闘はできなくとも料理が出来る。この両手があればな。てめェ何が言いてェんだ。ハッキリ言ってみろ」

 

長々と話していたクリークだったがゼフの言葉にいよいよ本題に入る。彼がゼフに求めていたものは、

 

「“赫足のゼフ”。お前はかつてあの悪魔の巣窟“偉大なる航路(グランドライン)”へ入り無傷で帰った海賊(おとこ)。その期間、丸一年(・・・)の航海を記録した「航海日誌」を俺によこせ!!!」

 

クリークの言葉にルフィも反応する。自分たちがこれから挑もうという海に挑んだゼフに多少の興味は持ったのだ。

 

「へーっ。おっさんも“偉大なる航路(グランドライン)”に入ったことあんのか」

 

「まァな」

 

クリークの要求はゼフの航海日誌。しかしそれはゼフにとって容易に手放せるものではなかった。

 

「「航海日誌」か。確かに・・・俺の手元にそれはある。だが渡すわけにはいかんな。航海日誌はかつて航海を共にした仲間たち全員と分かつ我々の誇り。貴様にやるには少々重すぎる!!!」

 

だが相手は海賊。やらんといって引き下がる相手ではない。

 

「ならば奪うまでだ!!!確かに俺は“偉大なる航路(グランドライン)”から落ちた!!だが腐っても最強の男“首領(ドン)・クリーク”!!たかだか弱者共が恐れるだけの闇の航路など渡る力は充分にあった!!兵力も!!野心も!!唯一つ惜しむらくは「情報」!!!それのみが俺には足りなかった!!!ただ知らなかった(・・・・・・)だけだ。航海日誌は貰う。そしてこの船も!!」

 

だがそんな身勝手を奪われる側が黙って許すはずもない。コックたちが憤慨し、拒もうとするもクリークの一喝におびえてしまう。つい先ほどコテンパンにやられた記憶が彼らの体を竦めさせる。

 

「ゼフの航海日誌を手に入れ俺は再び海賊艦隊を組み、“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を掴みこの大海賊時代の頂点に立つのだ!!!」

 

東の海(イースト・ブルー)最強の男の宣言。先ほどの戦いからもそれが決してハッタリではなく、本気なのだと誰もが思う。しかしそれに待ったをかける人物がここにはいた。

 

「ちょっと待て!!海賊王になるのは俺だ!!」

 

「!・・・な・・・雑用っ!!」

 

ルフィだった。クリークの前に立ちはだかると指を突き付け、宣言する。彼もまた譲れない野望を持っているのだ。

 

「おい引っ込んでろ!殺されるぞ!!」

 

「引けないね、ここだけは!!」

 

パティの言葉にルフィが笑って返す。これだけは決して譲れぬ覚悟だった。

 

「何か言ったか小僧。聞き流してやってもいいんだが」

 

「いいよ聞き流さなくて。俺は事実を言ったんだ」

 

ルフィの言葉にクリークはいよいよ不機嫌になる。

 

「遊びじゃねェんだぞ」

 

「当たり前だ」

 

一歩も引かぬ両者。緊張が場を支配するがそこに響く場違いな声。

 

「さっきの話聞いてたろ。あのクリークが渡れなかったんだぞ。な!悪いことは言わねェよ。やめとこうぜ!あんなとこ行くの!」

 

「うるせェな。お前は黙ってろ」

 

「すごいところだよあそこ(・・・)は。私も行ったことあるけどもう身が持たないかと思ったもん」

 

声の主はテーブルに座った男女計三人。ウタ、ゾロ、ウソップだ。

 

「戦闘かよルフィ。手を貸そうか」

 

「お前らいたのか。いいよ座ってて」

 

それを見てクリークが大声で笑い始める。

 

「・・・・・ハ・・・ハッハッハッハッハ!!!そいつらはお前の仲間か!随分ささやかなメンバーだな!!」

 

「何言ってんだ、後二人いる!!」

 

「おいお前、それ俺を入れただろ」

 

言い返すルフィに後ろのサンジが突っ込む。そしてクリークの笑いは怒りの裏返しだった。

 

「舐めるな小僧!!!情報こそなかったにせよ兵力五千の艦隊がたった七日で壊滅に帰す魔海だぞ!!!」

 

やがてクリークは去っていった。彼が船員にメシを食わせて再び戻って来るまで。それがバラティエにいるものに残された猶予だった。一人残ったギンがサンジに詫びる。

 

「サンジさんすまねェ!!・・・おれはまさか・・・こんなことになるなんて・・・・・!!俺は・・・・・」

 

だがそれを止めたのは意外な人物。ゼフだった。

 

「おい、てめェが謝ることじゃねェぞ下っ端。この店のコックがそれぞれ自分の思うままに動いた。ただそれだけのことだ」

 

だがコックたちはそれで納得しない。日頃からサンジが疎まれる存在であったことも災いし、彼らは全ての責任をサンジが持つべきだと叫ぶ。だがそれを止めたのはまたしてもゼフだった。

 

「黙れボケナス共!!!てめェらは一度でも死ぬほどの空腹を味わったことがあるのか。広すぎるこの海の上で食料や水を失うことがどれほどの恐怖か、どれほどつらいことかを知ってるのか!!」

 

そしてさっさと裏口から逃げるように指示を出すゼフ。だがコックの中で誰一人として逃げ出すものはいない。荒くれ者のコックである彼らにとってここは唯一の居場所だった。

そして戦準備を整えるコックたちを尻目にルフィもやる気をみなぎらせる。と、その時、つい先日ギンに“偉大なる航路(グランドライン)”について聞いたとき何もわからないと答えていたことを思い出す。クリークの話によれば彼らは行ってきたにもかかわらずだ。それを聞くとギンは頭を抱えて呻くように答える。

 

「分からねェのは事実さ。信じきれねェんだ・・・“偉大なる航路(グランドライン)”に入って七日目のあの海での出来事が現実なのか・・・夢なのか・・・まだ頭の中で整理がつかねェでいるんだ」

 

そしてギンは絞り出すように続ける。

 

「突然現れた・・・たった一人(・・・・・)の男に50隻の艦隊が壊滅させられたなんて・・・!!!!」

 

その言葉にその場にいた全員が驚きを隠せない。なにせ50隻。クリーク率いる海賊艦隊がたった一人の男にやられたという子供でも考え付かないような絵空事。しかしギンの口調は、表情はそれが事実だと何よりも雄弁に語っている。

 

「訳も分からねェままに艦隊の船が次々と沈められて行って・・・あの時嵐が来なかったら俺たちの本船も完全にやられてた。仲間の船が何隻残ってるかも分からねェ。ただ恐ろしくて俺を現実だと受け止めたくねェんだ・・・!!!」

 

そしてその後に飛び出したのは驚きの言葉。それに誰よりも大きく反応したのはゾロとウタだった。

 

「あの男の人をにらみ殺すかと思うほどの鷹のようにするどい目(・・・・・・・・・・)を思い出したくねェんだ!!!!」

 

「何だと!!?」

 

「あ・・・・・もしかして・・・!!」

 

そしてその話を聞いていたゼフには心当たりがあった。

 

「・・・そりゃあ・・・“鷹の目の男”に違いねェな・・・」

 

「た・・・“鷹の目の男” ・・・・・!!!」

 

「お前が確かにその男の目を“鷹”のように感じたかどうかは証拠にはならねェが、そんな事をしでかす事そのものが奴である充分な証拠だ・・・!!」

 

だが鷹の目という言葉にルフィ達は聞き覚えがない。だがゾロにとっては探していた男だった。ジョニーからの情報ではこの店にも来たと言っていたがどうやらそれは勘違いだったようだった。だがその男を知っているのはゾロだけではなかった。

 

「ゾロ、本当に“鷹の目の男”を探してるの?」

 

「ああ、俺はそいつを倒すために海に出たんだ」

 

その言葉を聞いてウタは押し黙る。そしてその後に出た言葉はルフィ達も驚くものだった。

 

「ゾロ・・・悪いことは言わない。あと四、五年はその男にあっても戦わないで」

 

「あ?」

 

まさかの言葉にゾロが若干敵意を出し、ルフィも驚きに目を見張る。

 

「どういうことだウタ。お前はその男のことをなんか知ってんのか!?」

 

「知ってるも何もあったことあるからね。私は別に剣は得意じゃないけどあの男の強さだけは分かる。今のゾロじゃあ絶対に勝てない。なにせ・・・・・シャンクスと互角の男なんだから」

 

「シャンクスと!!?」

 

その言葉に今度はルフィが身を乗り出す。思いもしなかった男の名に驚きを隠せない。だがゾロはいよいよ怒りをあらわにする。

 

「お前に何と言われようと俺はあいつに挑む。この広い海の上でそいつに会える機会が何度もあるとは思えねェしな」

 

それを聞いていたサンジが口をはさむ。

 

「・・・バカじゃねェのか。お前ら真っ先に死ぬタイプ(・・・・・)だな」

 

「当たってるけどな・・・バカは余計だ・・・」

 

死ぬタイプという言葉は否定しない。しかしルフィに譲れないものがあるように、ゾロにも譲れないものはある。

 

「剣士として最強を目指すと決めた時から命なんてとうに捨ててる。この俺をバカと呼んでいいのはそれを決めた俺だけだ」

 

そして雄たけびが聞こえてくる。メシを食って元気になった外のクリークの部下たちがいよいよ襲い掛かって来るのだ。

 

「守り抜くぞ!!この船は俺たちのレストランだ!!」

 

「どけどけコック共ォ~~~~っ!!!」

 

開戦の火ぶたか切って落とされ・・・・・

 

ズババン!!!!!!!

 

直後に起きた出来事に全員の意識がそちらに向く。見れば真っ二つに切断されたクリークの船。元々ボロボロだったとはいえ、こんなにきれいな断面で切れるなどまずない。クリークも何が起きたのか把握できていなかった。

 

「何が起きたァ!!!!」

 

首領(ドン)・クリーク!!!本船は・・・斬られました!!!」

 

「斬られた?斬られただと!!?この巨大ガレオン船をか!!?そんな・・・・・バカな話があるかァ!!!!」

 

想定外の事態にクリークだけでなくルフィ達も対応に追われる。彼らの船も表に止めたままだった。そして中にはナミやヨサク、ジョニーも乗ったまま。急いで船の様子を確認しに行くと・・・・・

 

「アニギ~~~~!!」

 

「ヨサク!!ジョニー!!無事か!!船は!?船がないぞ!!ナミはどうした!!?」

 

「それが・・・ずいばぜんアニキ・・・!!!!もうここにはいないんです!!ナミの姉貴は!!宝全部持って逃げちゃいました(・・・・・・・・)!!!!」

 

「「「な!!!!何だとオオオオオ!!!?」」」

 

「ウソ・・・・・!!?なんで!!?」

 

ひとまず急いでヨサクとジョニーと引き上げ、話を聞くと二人の船からも宝を奪い、海に突き落として一人、逃げていったらしい。何とか泳いで追いかけようとしたところで急にクリークの船が壊れた謎の攻撃に巻き込まれ、今に至るという事だった。

 

「そういうアンバイで逃げられました!!!」

 

「くそっ!!あの女!!最近大人しくしてると思ったら油断も隙もねェっ!!!」

 

「この非常事態に輪をかけやがって!!!」

 

「ナミ・・・・・そんな・・・・・!!」

 

憤るゾロ達や落ち込むウタ。だが一人海を見ていたルフィが呼び掛ける。

 

「待て!まだ船が見えるぞ!!」

 

「何!?」

 

見ればかなり離れてはいるが確かに帆船、ゴーイングメリー号だった。

 

「ヨサク!ジョニー!お前らの船は!?」

 

「それはまだ残ってやすが」

 

「ウタ!ゾロ!ウソップ!!」

 

「ほっとけよあんな泥棒女。追いかけて何になる」

 

「でも船は大事だろ。あの船は・・・・・!!!」

 

「ルフィ、悲しいけど今はこっちのトラブル優先だよ。船と航海士はまた別の・・・・・」

 

だがルフィはウタたちの言葉を遮り、

 

「俺はあいつが航海士じゃなきゃ、いやだ!!!」

 

「「「!」」」

 

どんな発言でも船長の命令は絶対。ウタ達は頭を抱えながら了承する。

 

「わかったよ。・・・・・世話の焼ける船長(キャプテン)だぜ。おいウタ!ウソップ!行くぞ!!」

 

「お・・・おう」

 

「ルフィはこっちに残るんでしょ?」

 

「ああ、俺はまだこのレストランで何のケリも付けてねェから!」

 

そしてウタ達はヨサクとジョニーが準備した船に乗り込む。最後に乗り込んだウタがルフィを振り返り、

 

「そっちも気を付けてね。アイツメチャクチャ強そうだし」

 

「わかってる」

 

しかし船を出そうとしたその時、その男は現れた。

 

「あいつだァ!!!!」

 

クリークの船の残骸が漂う中、悠然と進んでくる一艘の小舟。まるでイカダのようなその船に乗っているのは男がたった一人だけ。

 

首領(ドン)・クリーク!!!あの男です!!!我々の艦隊をつぶした男!!!」

 

その言葉に船を出そうとしていたゾロが身を乗り出して凝視する。

 

「まさか・・・あれが・・・鷹の目の男・・・・・!?」

 

背中に背負った一本の大きな刀。それさえあれば彼にとって他に武器はいらなかった。その男こそすべての剣士の頂点に立つ、世界最強の剣士。“鷹の目のミホーク”その人だった。

その鋭い目に瓦礫に乗っていたクリークの部下たちが座り込んで震えだす。

 

「畜生ォてめェ!!何の恨みがあって俺達を狙うんだ!!!」

 

クリークの部下の一人がミホークに叫ぶ。それに対してミホークは少し考えるそぶりを見せ・・・・・

 

「ヒマつぶし」

 

その言葉に激高したクリークの部下は腰から銃を抜いて発砲する。さして離れているわけでもない距離。そのまま行けばミホークに直撃する。それに対しミホークは背負った刀を抜き、撃った男の方に刀を向けるとフワッとその弾道がそれる。

 

「え・・・・・!!?は・・・ハズれたぞ!!!」

 

だがそこに現れたゾロがそれを否定する。

 

外した(・・・)のさ。何発撃ち込んでも同じだ。切っ先でそっと弾道を変えたんだ。あんな優しい剣は見たことがねェ」

 

「“柔”なき剣に強さなどない」

 

再び刀を背に収めたミホークがそれに答える。

 

「その剣でこの船も割ったのかい」

 

「いかにも」

 

ミホークの答えにゾロがニッと笑い、

 

「なるほど・・・最強だ」

 

そして腕のバンダナをほどきながらミホークに語り掛ける。

 

「俺はお前に会うために海へ出た!!」

 

「・・・・・何を目指す」

 

「最強」

 

ギュッと黒いバンダナを頭に巻くとゾロは刀をミホークに向ける。

 

「ヒマなんだろ?勝負しようぜ」

 

ナミを乗せたゴーイングメリー号はどんどん離れていくが、今はそんなことは関係ない。昔からゾロの夢を知っていたヨサクとジョニー、そしてルフィもじっと見つめる中、ミホークが一言、

 

「哀れなり、弱きものよ」

 

そして崩れた瓦礫の中でも大きめのものに乗る。

 

「いっぱしの剣士であれば剣を交えるまでもなく俺と主の力の差を見抜けよう。この俺に刃を突き立てる勇気は己の心力か・・・はたまた無知なる故か」

 

「俺の野望故、そして親友との約束の為だ」

 

世界最強の剣士と海賊狩りのゾロの戦いが始まる。

 




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