猛獣使いのモージとリッチーを倒した後。逃げていたナミと町長がルフィ達の元に戻ってきていた。
「アンタ達、このライオン倒したの・・・?」
「まァ、私はコッチの男だけでライオンの方はルフィがやったんだけどね」
「そう・・・・・・ごめんなさい」
「え?」
突然謝ったナミにウタがなんのことか分からず首を傾げる。
「私ね・・・昔大事な人を・・・家族を海賊に殺されたの。だから海賊なんて大嫌いだったし、アンタ達もいずれ町を襲って略奪するんだろうって思ってた。でも、シュシュの大事なものを守るためにこんなにボロボロになって・・・だから、ごめんなさい」
「ああそういうこと・・・いいのいいの。私たちが海賊なのは事実だし、実際そういう海賊が多いのも事実。まァ私達はそんなことしないけど、そういう扱いになるのも分かるしね。あ、そういえば名前言ってなかったね。私ウタ。よろしく」
「ええ、私はナミよ。アンタみたいな海賊も居るのね」
するとシュシュの怪我の具合を見ていた町長が急に呻き出す。
「・・・・・・ぬぐぐぐぐ・・・・・・・・・!!儂はもう我慢できーん!!」
「え!?」
「酷さながらじゃー!さながら酷じゃ!!シュシュや小童達がここまで戦っておるというのに!!町長の儂が何故指をくわえて我が町が潰されるのを見ておらねばならんのじゃ!!」
「ちょっと町長さん落ち着いてよ!」
ナミがなんとか宥めようとするも町長は止まらない。
「男には!!退いてはならん戦いがある!!違うか小童っ!!」
「そうだ!!おっさん!!」
「のせるな!!」
そして町長はこの町の思い出を語り出した。
40年前、前の町を海賊にやられた町長と仲間たちはただの荒地だったこの地に少しずつ町を作っていった。初めは小さな村だったが今や立派な港町へと成長している。そして、
「町民達とこの町は儂の宝さながら!!己の町を守れずに何が町長か!!!儂は戦う!!!」
そう町長が宣言したその瞬間!!
「撃て!!!特製バギー玉!!!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴォン!!!!!
酒場の方から一直線にバギーの撃った大砲が町を貫く。先程ウタとシュシュが命を懸けて護ったペットフード店も、ゾロが眠る町長の家も全て粉々に消し飛んでしまう。
その威力は余波でルフィ達も吹き飛ばされる程。
「シュシュの店が・・・・・・!!」
「あ!!ゾロが寝てんのに!!!」
煙が晴れると、そこにはピンピンと元気なゾロ。
「あーーー寝覚めの悪ィ目覚ましだぜ」
「良かった!生きてたか!」
「何で生きてられるのよ・・・!」
だがウタはそちらに目もくれずペットフード店の残骸を見て膝から崩れ落ちる。
「あ・・・ああ・・・!!」
「ワンワン!!ワンワンワン!!」
自分達が必死に守った店を木っ端微塵にされ、ウタの心にフツフツと怒りが湧き上がる。
そしてそれは町長も同じだった。
「・・・・・・!!胸を抉られる様じゃ・・・!!こんな事が許されてたまるか!!
そしてバギーの居る酒場へ向かおうとするが、ナミがそれを必死に止める。
「いざ勝負!!」
「ちょ・・・ちょっと待って町長さん!」
「離せ娘っ!!」
「アイツらの所に行って何が出来るのよ!!無謀過ぎる!!」
だが町長は目に涙を滲ませて、
「無謀は承知!!!」
町長はナミを振り切るとそのままバギーのいる酒場へと走っていく。だがバギーに怒りが湧いているのは町長だけでは無い。
「私も行く・・・アイツには確かめたいこともあるし・・・・・・何より私が守った店をあんなにされて・・・黙ってられない!!!」
「ウタ・・・・・・」
「何だか盛り上がってきてるみたいだな」
「ああ、これからアイツをもう一回ぶっ飛ばしに行く!!」
「アンタまで何言ってんの!?相手はこんな事が出来る海賊なのよ!!?」
「ウタの敵なら俺達にとっても敵だ!それに俺もコイツがずっと店を守ってたのは聞いたしな。それを壊されんのは、なんか嫌だ!!」
「なんか嫌だって・・・・・・」
ルフィの言葉にナミが呆れるも、その気持ちはナミも同じだった。
「・・・・・・私も行くわ!海賊の仲間にはならないけど・・・お互いの目的の為に手を組みましょう!」
ナミがルフィの手を叩く。海賊と泥棒という歪な関係だが、確かに目的は一致していた。
そしてウタがゾロに問い掛ける。
「ゾロはどうする?怪我してるし無理しなくてもいいけど」
「俺も行く。面白そうだしな」
「あんたも行くの?お腹の傷は?」
「治った」
「治るかっ!!」
だがゾロは腕のハチマキを頭に巻き付け、ギュッと締めると、
「腹の傷より・・・やられっぱなしで傷ついた俺の名の方が重傷だ。いこうか!」
「ああ!いこう!」
「あっきれた・・・」
そうしてルフィ達も町長のあとを追い、バギーの元へと向かう。
その頃、町長は遂にバギー達のいる酒場に辿り着いていた。そこでは正に先程の特製バギー玉の二発目を撃ちこもうとしている所だった。
「二発目ーーーーっ!!!」
「準備出来ました!!!」
「よーし撃・・・」「道化のバギー!!!出て来ォーい!!」
「・・・・・・?何だあいつは・・・」
ギロリとバギーが睨むが町長も負けじと睨み返す。
「貴様何者だ。俺を呼んだか?」
「儂はこの町の長、さながらの町長!!ブードルじゃ!!儂と勝負しろ!!!」
それを聞いたバギーの部下たちが一斉に笑い出す。
「ぶわーはっはっはっはっは!!船長と勝負だと!?勝てるとでも思ってんのか!!?」
するとバギーの部下の一人がバギーに申し出る。
「バギー船長」
「なんだカバジ」
「ああいう輩は私にお任せを・・・」
そういうとカバジは口に手を突っ込む。そしてスルスルと引き抜くとその手には剣が握られていた。
「おおおっ!!カバジさんの曲芸ショーか!!」
周りの部下たちがざわめく中、だんっ!とカバジが大きくジャンプ。手すりに着地した時には一輪車に乗り、剣の先でコマを回すというなんとも奇妙な曲技を容易くこなしている。
「最近どうも腕がナマってましてね・・・!!」
「うおーーーっ!!やっちまえ!!カバジさん!!」
部下達からの声援の中、好戦的な笑みを浮かべながらカバジがそう言うもバギーは、
「バカ野郎、ご指名は俺だぜ。さがってろ!!」
そして町長に向き直ると問い掛ける。
「おい貴様、何の為に俺に挑む。名でも上げてェのか」
「バカ言え!!我が町を!!儂の“宝”を守る為じゃ!!」
「は?」
その言葉にバギー一味が一斉に笑い出す。
「バカかてめェは!“宝”ってのはな、金銀財宝のことを言うんだ!!持ち主の威厳を示す輝きを持ってこそ宝なのだ!!」
そして怒りの表情で町長に怒鳴る。
「町が宝だと!!?戯言を抜かすな!!!」
だが町長はそれにも負けない強い意志で怒鳴り返す。
「ほざけ小童っ!!貴様なんぞに儂の町への想いを分かって貰おうなど、ハナから思っておらんわ!!!さっさとここへ降りて来い!!!」
「降りて来い?」
その言葉にバギーは不愉快そうに眉をひそめ、右腕を向ける。
「やなこった!!」
その右手は町長へと飛んでいき、首を締め上げて宙へと浮かす。
「ひゃーーーっはっはっはっは!!やれやれェ船長ォ!!!」
だが町長もタダではやられない。
「バ・・・バケモノめ・・・・・・!!」
拳を握ると自分の喉ごとバギーの拳を殴り付ける!!!
「なにかこれしきっ!!!」
当然町長の顔にも苦悶の表情が浮かぶがバギーにもダメージは行っている。
「痛ェな畜生ォ!!バカか自分の喉ごと殴るとは・・・!!」
そしてバギーが更に腕に力を篭める。
「・・・・・・・・・っが!!」
「降りて来いだと!?てめェは誰に口聞いてんだオヤジ!!!俺が誰だか言ってみろ!!!」
「か・・・・・・かかっ!!」
「俺は後に
そして先程町に撃ちこもうとしていた大砲を身動きの取れない町長に向ける。
「そんなにこの町が大切だと言うんなら一緒に消し飛べてさぞ本望だろう」
「なんじゃと貴様・・・!!儂と戦え!!!」
「おいおい・・・自惚れンな・・・ぶっ放せ!!」
「この町は潰させん!!!儂と戦えェ!!!」
その時、バギーが右手に違和感を感じる。町長の方を見ればそこには・・・
「!・・・麦わらの男っ・・・!!!」
「約束通りお前をブッ飛ばしに来たぞ!!!」
ルフィが引き剥がした右手を元に戻すとバギーが叫ぶ。
「よくもノコノコと自分から・・・!!貴様等!!!現れたな!!!」
「いーい?戦うのはあんたたちの勝手だけどね。私は海図と宝が手に入ればそれでいいの」
「ああ分かってる」
「とりあえずまずはアイツをボコさないと」
すると町長がルフィ達に、
「小童共・・・何しに来たんじゃ。余所者は引っ込んでおれ。これは儂の戦いじゃぞ!!」
落とした槍を拾い、未だ戦意の衰えない目で叫ぶ。
「儂の町は儂が守る!!手出しは無用じゃ!!!」
その瞬間、まさかのルフィが町長の顔面を壁に叩きつける。
「・・・・・な!!!」
「は!?」
「・・・・・・」
「もっと他の方法あるでしょうに・・・」
まさかの行動にナミとバギーは唖然とする。
「あ・・・!!あんた!!何て事するのよ!!何で町長さんを・・・!!!」
それに対しルフィはにいっ!と笑うと一言、
「邪魔!!!」
それにゾロとウタが続く。
「上策だな・・・このおっさん、ほっといたら間違いなく
「別に私に行ってくれれば普通に眠らせてあげたのに・・・」
「無茶するな!!」
ナミがルフィに突っ込むがルフィは目もくれずバギーに向かって叫ぶ。
「デカッ鼻ァ!!!!」
それはバギーにとっての逆鱗。ブチ切れたバギーが部下たちに叫ぶ。
「ハデに撃て!!!バギー玉ァ!!!!」
既に装填してあったバギーのマークの描かれた砲弾がルフィ目掛けて放たれる!!!
「消し飛べェ!!!」
「何言い出すのよバカァ!!!」
「おいルフィ!!逃げるんだ!!吹き飛ぶぞ!!」
ナミとゾロが慌てて逃げようとするがルフィとウタはその場から動かない。
「大丈夫だよ。ルフィがゾロを助けた時のこと忘れたの?」
「は?」
「ゴムゴムのォ・・・」
ルフィがすううぅぅぅ、と息を吸い込むとルフィの体が正にゴム風船の様に膨らむ。
「風船っ!!!」
その大きく膨らんだお腹に大砲の砲弾が突き刺さる・・・が、爆発はしない。ぐぐーーーーっとルフィのお腹の深くまで砲弾が埋まり・・・
「何だあいつは!!?」
「まさかバギー玉を・・・!!!」
やがてゴムの弾力でルフィのお腹が元の様に膨らむ。それに伴いルフィに直撃していたバギー玉がバギー達に向けて弾き返される!!
「弾き返しやがったァ!!!!」
「・・・・・・先に言えよな」
ゾロがため息を零すのと同時にバギー玉が酒場へ直撃する。その威力は先程町を木っ端微塵にした威力そのままだ。
「よっしゃ!!敵がへった!!やるか!!」
「あんた一体何なのよっ!!」
「人騒がせな・・・」
「いやゾロは知ってたはずでしょ?」
「大砲までいけるとは聞いてねェんだよ!」
「そうだっけ? 」
戦いの火蓋ははまさかの自滅によって切って落とされた。