ディミレス過激派が転生したらエーデルガルトだった 作:まあじょ
長いこと馬車に揺られ、帝都アンヴァルに戻る。
3年ぶりの自室は以前と変わらぬ姿で出迎えてくれた。
ああ、ようやくひとりになれる。私は天蓋付きのベッドに身を沈めた。
ベッドのサイズは記憶よりも幾分小さくなっていて、成長を感じる。
安心できるプライベートな空間に入り、伯父様の前ということでずっと押さえつけていた感情が溢れ出て……
「っかあ~~!! ショタでぃみみ天使すぎだろッ!」
「エーデルガルト様、どうかなさいましたか」
「なんでもないわ~!」
……こほん、部屋の外にメイドがいることを忘れていたわ。
でも、だって、ちびディミトリがあまりにも可愛いから。
さっきまでは初恋の男の子だったけど、記憶を思い出した今、もう小さな年下の男の子にしか見えない。
二度と拝めないとかどういうことよ。
もっと早く思い出していればディミトリと過ごす一秒一秒を大切にしたのに……!
そうだ、忘れないうちに絵に描き記しておきましょう。
でも、まずやるべきなのは現状整理と方針の決定だから、絵はその後ね。
私はどこにでもいる普通の女オタクのはずだった。
でも齢22歳で事故死して、今はアドラステア帝国の皇女エーデルガルト。
ここはファイアーエムブレム風花雪月の世界、いわゆる転生ってやつね。
まさか本当にこんなことがあるなんて。
それで、問題はエーデルガルトが作中でほぼ死ぬキャラクターであること。
私は四ルート中、三ルートで死ぬ女皇帝。
原作なら主人公が黒鷲の学級を選んだうえで、帝国に味方することを選んでくれない限り、エーデルガルトは生きられない。
まあ、ディミトリも主人公が手を取らないと死ぬという条件は同じなのだけれど。
ていうか、クロードは何なの?
たとえ金鹿が選ばれなくても、青獅子ルートではパルミラに逃げるし、教会ルートは生死不明で済むし、直接対決する帝国ルートでも命乞いができる。
当事者になってみると、同じ級長なのにずるいわ。
でも、こっちだって「生存」だけが目標ならいくらでも方法はある。
まず、原作の主人公であるベレト/ベレスが”私”を選んでさえくれれば戦争に勝てる。
仮に選ばれなかったとしても、皇帝の地位を辞退する、即位しても開戦しない、開戦してもすぐに投降する、最悪途中で全てを捨てて逃亡する、といった具合に命だけならどうにかなるだろう。
逆に、原作の知識を活かしてベレトス抜きで戦争に勝ってしまうことだって夢ではない。
しかし、私にはどうしても譲れない条件がある。
その条件一つが全てを困難にしているのだ。
「……ディミレスは絶対結婚しろ」
そう、私はディミレス過激派。
ベレスには何が何でも青獅子の学級の担任になって、ディミトリの味方をしてもらわないと許せない。
つまり、自分の信念を通すと原作のシナリオ通りなら青獅子ルートということでエーデルガルトの死亡は確定。
それに、エーデルガルトに転生したからには”あのシーン”を生で見たいのだ。
青獅子ルートの最後、エーデルガルトに勝利して宮城(みやぎではない)を去るディミトリとベレスの背中が夫婦にしか見えないあの最高シーン!
そのためには、最後まで覇道を貫いてアドラステア皇帝として散らなければならない。
逃亡など、許されない。
仮にベレトだったとしても、私が紅花でしか生存できないように、ディミトリも蒼月以外では生存できない。
推しを自らの手で殺す運命なんて耐えられるものか。
なら、私の進むべき道はたった一つ。
絶対にベレトスに青獅子の学級を選ばせて、ベレスだったらディミトリとフラグを立てさせて、二人のいちゃいちゃを見届けて皇帝として戦死する!
そうと決まれば、レア様には悪いけど、私は原作通りセイロス教に宣戦布告するわ。
こうして、わたしの限界推しカプ覇道は始まったのだった。
~翌日~
「エーデルガルト、そのタコの絵はなんだ」
「ディ、ディミトリです、伯父様……」
……士官学校に入学したら、ベルナデッタかリンハルトに絵でも習った方がいいかしら?