剣の世界の見習い吟遊詩人   作:雷神デス

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 最近はまってるTRPGシステムの二次創作です。
 サクッと読める小説目指して頑張ります。


見習い美少女吟遊詩人、ぺルラ

 

 

 吟遊詩人は、割と命がけな職業なのです。

 

 詩を歌うだけの奴らが何を言ってるんだ?なんて思うかもしれませんが、本当です。

 

 当たり前な話ですが、吟遊詩人は面白い詩を歌えなければお金を貰えたりなんかしません。完全なる実力主義で、かつ下手すれば冒険者よりセンスが問われ、しかも同じ詩ばかり歌ってしまうとすぐお客さんから飽きられます。

 

 幸いこのラクシアには英雄譚に溢れていて、そうそうお話が尽きることはないですが。

 

 そのお話だって、誰よりも早くそれを知り、詩にしなければ、他の詩人がそれを歌っちゃいます。一度聞いた詩を聞こうとするお客さんなんて殆どいませんから、自然と物語は獲り合いにとなり、詩人は誰よりも早く面白い冒険譚を知らなければならないのです。

 

 では、詩人がどうやって詩にできるような物語を手に入れるか。

 メジャーなのだと冒険者ギルドに直接話を聞いたり、情報屋にお金を払ったり。

 

 いろんな方法がありますが、私がやっているのは──

 

 

 

 

「うわああああああ!!師匠!?師匠早く!!可愛い弟子が死んじゃいますよ!?」

 

 

 楽器を手に持ち、背後から迫りくる亜竜から逃げ回っている、夜空のように輝くダークブルーな瞳がチャームポイントな美少女。つまりは私、美少女詩人見習いのぺルラなのですが。

 

 今、私は何度目かも分からぬピンチに遭遇し、その短い運命に『めでたしめでたし(なんもめでたくありませんが)』が付けられようとしています。

 

 

「私は美味しくないですよぉ!?狙うならどうか師匠を!ほら、野菜の味しそうで美味しそう!」

 

「アハハ、ぺルラ。ディノスに交易共通語は通じないよ?」

 

「んなことは知ってるんですよ馬鹿師匠!!早く、終律早くぅ!無敵の師匠の」

 

「ああ、それは分かっているんだけどね?彼に似合う終わりの歌は何なのかと、少し迷い中でさ。ぺルラはどれがいいと思う?春の強風か、冬の寒空か。獣の咆哮に蛇穴の苦鳴、惑いは──」

 

「んなもんどうでもいいからさっさと歌ってください!!」

 

 

 弟子の命の危機に呑気に悩んでる師匠を叱咤し、そのせいで足元が疎かになってしまう。

 

 

「あっ」

 

「おっと」

 

 

 少し大きな石に躓き、「へうっ」と間の抜けた可愛い悲鳴を上げ、すってんころりん。

 勢いよく転び、涙目になってる私を、3mはあるであろう理性無き竜が見下ろす。

 その眼光に思わず下半身が緩くなったとして、誰が私を責められるだろう?

 

 

「わあああああ!!これで死んだらアンデッドになって祟ってやりますからね師匠ぉ!!」

 

「ああ、それは困るな」

 

 

 ようやく、師匠の琴が軽やかな音を紡ぎ出した。

 終律により彩られた音はやがて火の竜の形を取り、冷気を放つ亜竜を飲み込む。

 苦しみ、悶え、焼かれていくディノスを見ながら、私は安堵の息を吐き。

 

 

「君がアンデッドになってしまうと、荷物持ちがいなくなる」

 

「鬼師匠め!地獄に落ちろ!」

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 焼いたディノスの肉にかぶりつきながら、私を前に平然と肉を師匠を睨みつける。

 分かってはいたが、この人はさっきのことを全然反省していないようだった。

 

 

「反省するも何も、ディノスに見つかって追いかけっこする羽目になったのはぺルラの自業自得だろう?その責任を僕に押し付けてもらっても困るなぁ」

 

「うるさいです。師匠は魔法でズルできるからそんなこと言えるんですよ。か弱いプリーストをこんな場所に連れ込んで、師匠は保護者としての自覚が足りません!」

 

「そうかな?」

 

「そうです!」

 

 

 そっかぁ、なんて漏らす師匠は相変わらずのんきで、今言ったこともすぐに忘れそうなくらいぽわわんとした雰囲気をしている。

 

 いかにも間抜けそうなこの人が、なんであんなに素晴らしい歌を奏でられるのだろう。 

 世界とは理不尽だ。おお、ライフォスよ。あなたは今寝ているのですか。

 

 

「この世界を作ったのは始まりの三剣だし、文句を言うならそっちだと思うよ?」

 

「ナチュラルに心の声を聴くのやめてもらっていいですか?テレパシーはティエンスの特権なんですけど」

 

「おおよその事象は魔法で再現できるものだ」

 

「おのれ魔法め」

 

 

 これだから魔法使いは。

 とはいっても、そんなインチクくさい魔法を使えるのは、ごく僅かなのだが。

 そのごく僅かなエリートの中にこの人が入っている、というのはやはり納得いかない。

 

 

「それより、いいのかい?詩を書かなくても。今日の冒険も、なかなかにネタになることで満載だったじゃないか。何かいい文が浮かんでくるかもしれないよ?」

 

「メモ帳には纏めています。それにどうせ、頑張って書いても師匠は全部没にしちゃうじゃないですか。新しい詩を書くのは、もっとどでかいネタがそろってからです」

 

「ふてくされないふてくされない。書かなきゃ成長しないよ?」

 

 

 師匠はいろんな所で噂を聞くくらいのは有名な、凄腕の吟遊詩人だ。

 この人が紡ぎ出す詩は人々を魅了し、離さない。私も例外なく虜になった。

 だからと言って、この人に弟子入りを願い出るのは早計だったかもと考え直す。

 

 

「師匠はいい加減、もう少し弟子を育てる気概を見せてくださいよ。技術も碌に教わっていませんし。そろそろ詩の書き方や歌い方の一つくらいは教えてください!」

 

「詩というのは、自分で紡ぎ出すものさ。僕から教わった音を奏でても、それは君の詩じゃない」

 

「……また逃げようとしていませんか?」

 

「アハハ」

 

「アハハ、じゃないですよ!」

 

 

 この人はいつもお気楽で、面倒くさがりで、ついでに言えば無責任だ。

 一度は彼に弟子入りして舞い上がったけれど、実際やらせてもらっているのは荷物持ちと、時々師匠に回復魔法を撃つくらいしか仕事を貰っちゃいない。

 せっかく素晴らしい詩人になろうと故郷を去ってまで彼についてきたというのに、これじゃ何も持ち帰ることなく私の青春時代が終わってしまう!

 

 

「ああ、ぺルラ。残った肉はディノスの冷却器官で冷やすんだ。そうすれば日持ちするから、保存食になる。しっかり覚えておきなさい。冒険者として生きていくためのコツだ」

 

「……私が知りたいのは、冒険者のコツじゃなくて吟遊詩人のコツなんですが」

 

「千里の道も一歩からさ。まずはいろんなことを知識として学びなさい。詩を書くのはそれからさ」

 

「むー……」

 

 

 はぐらかされている気もするが、渋々納得して今日もまたメモにアイデアを書きなぐる。

 私が吟遊詩人として大成するのは、果たしていつになるだろうか?

 

 

 

 




【登場人物】

◇ぺルラ
役割:一応語り手
種族:ティエンス
性別:女性
冒険者レベル:2
技能:プリースト(2) バード(1) セージ(1)
備考:家族は全員死んでるらしい


◇師匠
役割:師匠
種族:メリア
性別:不明(ぺルラ視点では男性)
冒険者レベル:不明
技能:不明
備考:なんも分からんが強いことは分かる

◇ディノス
役割:お肉
種族:動物
魔物レベル:4
特徴:冷気のブレスを吐ける亜竜。肉が美味しい
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