あなたはアガーテ氏と共に第三廃墟都市へと来ていた。魔法の発展と引き換えに失ったものの1つが土地である。第五次世界大戦以降、汚染された土地は数多く存在しているが、それとは別にソロモンの10の指輪の封印を解いた時に生まれた魔獣の生息地となり、放棄せざるを得なかった土地も存在する。ここ、第三廃墟都市もその一つである。
「…すごい、旧時代の建築物がこんなにたくさん…。」
来るのは初めてなのか、とあなたは問いかける。
「はい、そうなんです。依頼を受けるのも今回が初めてで…でも、助手さんが一緒なら安心です。」
頼りにされていることに少しばかりの優越感とほんの少しの不安感を覚えながら歩を進める。確かこの辺りだった筈だが、魔獣は居る気配がない。
嫌な予感がする。こう言う時のあなたの予感はよく当たるのだ。そう例えば、このように。
『Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』
「ッ!!大型の…これは、低位個体じゃ、ない?」
帽子を被り、二刀を携えた全長5メートルほどの大きな人型の魔獣が現れる。
中位個体だ。気を付けろ。と、あなたは叫ぶ。叫びながら四節高等魔術である《コール・フォトン・シールド・スタートアップ》を左手に、《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》を右手に展開し、前衛の構えをとる。
それを見てかアガーテ氏は数歩後ろに下がり手のひらを魔獣に向け、後衛の構えをとる。
先制攻撃はこちらが貰うことにしよう。あなたは《トリップ》で魔獣の後方上空へと転移し、落下しながら一太刀。だが、あまり有効打が与えられているようには思えない。
魔獣は振り向きながらあなたに向けて右手で一閃。それを盾で受ける。魔獣は基本的には動きが鈍重だ。盾で受けるのは簡単だが、パワーの有り無しは個体によって異なる。盾受けと言うのは成功するかどうかが半ば博打のような物なのだが、この魔獣は腕も細く、二刀が故に片腕でしか攻撃できないのでさほど力も乗っていないだろう、と言う判断のもとあなたは盾で防いだ。そして、それは正解のようで、特段吹き飛ばされることもなく防御に成功した。
「《コール・
アガーテ氏の四節高等魔術が頭部へと命中し、少しよろめく魔獣。なるほど、飛び道具の方が有効かと判断したあなたは、《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》の展開をやめ、空いた右手を魔獣に向け《コール・フォトン・
《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》で光子の剣を再び右手に展開する。両手に盾を展開して本格的に防御に回っても良いのだが、片手が剣の方が臨機応変に戦えるためこのような状態にしたのだ。
「《コール・ブレイズ・キャノン・
アガーテ氏の五節高等重奏魔術が魔獣に見事命中する。大きくのけ反る魔獣。効いているようだ。
凄いな、あなたはそう感嘆する。基本的に距離が離れれば離れるほど魔術の命中率は低下していく。狙撃専門の記録者でもなければ10メートルも離れれば魔術の命中率は10%ほどに落ちてしまうと言われているほどだ。しかし、アガーテ氏は50メートルほど離れた場所から魔術による攻撃を成功させている。卓越した技量とセンスがなければそんな事は出来ない。何がどうして原核なんて欲しがっていたのかが不思議になってくるほどだ。それほどの戦闘能力を持ちながら、一体どうして記録者になっていないのか。疑問は尽きないが今は置いておくことにする。
魔獣にはダメージは通っている。しかしながら、倒れる気配は未だに無い。あなた一人で前衛を受け持ちながらアガーテ氏が攻撃魔術を組み立てるのを待つのも良いが、増援を呼ぶべきかあなたは悩む。アグネス氏であれば来てくれるだろう。《メール》を飛ばせば記録者専用魔術の一つである《
悩んでいる最中にも魔獣の攻撃は続く。それを盾で受け、剣で捌きながらアガーテ氏の攻撃を待つ。
「もー!丈夫すぎない!?じゃあこっちも出し惜しみしてられないか。《コール・ブレイズ・キャノン・
四重奏魔術まで使えるのか、とあなたは驚く。この余裕だ。まだまだ上位の魔術も使えるのかもしれない。それをしないのは魔力の節約のためだろう。
魔力。まだまだ解明されていないことの方が多いが、人の生来持つエネルギーで一説によると魂から漏れ出たエネルギーの一部を利用しているのだとかなんとか。その理屈で行くと魂もエネルギーとして存在していることになるのだがその辺りはあなたは詳しく知らない。だが、探偵の助手として最低限知っておくべきだとされ教えられたのは、使える魔力には限りがあること、眠れば回復すること、この二つだ。
閑話休題。何が言いたかったかと言うと魔力の節約をしながら戦うことが大切なのだ、と言うことである。攻撃魔術の乱用も、装備魔術を長時間展開しておくのも良くないと言う話だ。
有効打が与えられない以上自分用は魔力の節約に努めるべきだ。あなたはそう考え、《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》と《コール・フォトン・シールド・スタートアップ》以外は魔術を使用しないようにしていたが、これ以上長引くならば話は変わってくる。あなたは人並み程度、全力戦闘で二時間程度の魔力量しか持っておらず、ここで使い果たしてしまい、また別の魔獣との戦闘があった場合奥の手を使わざるを得なくなってしまう。それはなるべく避けたいのだ。さて、どうするか──そう悩んでいたとき。
「《【弾罪】》」
聞き馴染んだ声が場に響き、一条の光が魔獣を貫く。
「《【執行】》ッ!」
そして、消滅する魔獣。あなた達ではきっと仕留めきれなかった。それを成したのは──
「助手。無事かい?おや、これはアガーテさん。」
「探偵さん!助けてくれたんですね。ありがとうございます。」
あなたの飼い主。マクス・ヴァレトだった。あなたも礼をする。きっと自分達だけでは倒せなかった。それほど強くはなかったが硬すぎた。と言う。
「いやー良かった良かった。色々探ってる途中だったんだけどこっちの方から戦闘音が聞こえてね。人助けが出来れば上々かと見に来たんだけどまさか助手達だったとは。あ、僕の魔弾で消したから記録機関への後始末の電話は要らな…待てよ。もしかして、討伐依頼の最中だったり、する?」
「はい。そうなんです。討伐証明のために魔獣の体の部位の一部を持って帰らなきゃいけないんですけど…。」
「しくったなぁ…。僕が消しちゃったや。よし、もう一匹見つけて狩るまで付き合うよ。こき使ってくれ。」
「良いんですか!?ありがとうございます!助手さんは魔力量とかは大丈夫ですか?今回の戦闘は20分位でしたけど…。」
問題ない、とあなたはそう告げる。探偵も居るのだ。よっぽど何かなければ何事もなく帰れるだろう。さてもう一狩り、頑張るとしますか、と伸びを1つした。