だからきっと、あなたは探偵を   作:刹那木ヤクモ

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case1.5 非日常も日常のうちである

「……なんだって? アガーテさんが、魔獣? そんな馬鹿な話があるわけ……」

 

 探偵が珍しく驚いたような表情を見せている。もっとも、それはあなたも同じであるが。人型の魔獣なんて聞いたことがないし見たこともない。そしてそれをそう易々とカミングアウトしたのも想定外。それほど信頼されていたのだろうか。

 

「……本当です。私は『魔獣の本体』。真名は、分からないんですけどね」

 

 頬を掻きながらそう言うアガーテ氏。真名と言うのは魔獣の個体ごとに名付けられた種族名のようなものである。ソロモン王曰く、彼の記したゴエティアの魔神と同じ数居て同じ名を冠しているとか。

 

「私がこの世に生まれたのは西暦2092年、ちょうど私たちの王であるソロモン様の指輪の封印が解き放たれた時に目覚めました。皆さん人類は魔獣と言うのは一部の生物が変質した姿、だと考えておられるそうなんですが、実はそれは違っていて、指輪の中に私たちも封印されていたのが解放された、と言うことなんです」

 

 今が西暦2147年だから55年も生きてるのか。あなたはそう呟く。

 

「正確には封印前もあるのでもっと長く生きてるんですけどね。まあそれはさておき、私が魔獣だと言う証明もできないんですが……」

 

 そう言ってアガーテ氏は首のチョーカーを外す。そこには何かが埋まっていたであろう窪みだけがあった。ひし形の窪み。その窪みに収まりそうなものをあなたは知っている。無論、探偵も。

 

「……そこには、原核が埋まっていたのかい? 」

 

「……はい、マルコシアスの羽に追われている時に、砕け散ってしまって……。」

 

 そう言うアガーテ氏。原核がないとどうなるのか、あなたは知らないが、何か重要なパーツではあるのだろう。探偵もなにやら考え込んでいる。彼女が魔獣だと言う証明は出来ない。しかし、証拠は少しだがある。うーむ、この議論にこれ以上の進展はないだろう。

 そこであなたは話を変えるためにも、アガーテ氏に、自分たちに何をして欲しいのか聞いた。

 

「何をして欲しいか、ですか……? いえいえ! これ以上皆さんに迷惑をかけるわけにはいけませんので、心遣いは嬉しいんですが、大丈夫ですよ! 」

 

「……いや、協力させてくれ。アガーテさん」

 

 探偵が口を開く。

 

「アガーテさんが今置かれている状況は非常に危険だ。マルコシアスの羽と言う組織は本当に不味い。……助手にも言ったことはないんだけど、僕は一度マルコシアスの羽と交戦している。記録機関からの依頼でね。テログループ討伐のための大規模作戦に参加したんだ。その時、記録機関からは1000人、僕みたいな雇われが200人が動員されてたんだけど、それでも殲滅しきれなかった。それどころか、作戦に参加した人間の5割が死亡した。軍隊で言えば全滅だね。……それだけ、強力な組織なんだ」

 

 あなたも初めて知ったその事実は、探偵が協力を申し出るに足る理由だった。なるほど確かに、それは危険すぎるかもしれない。しかし、それほど危険な組織に狙われているのであれば記録機関にも協力を要請するべきじゃないだろうか。あなたはそう問う。

 

「……私は、魔獣ですから。それが知られてしまったら、きっと記録機関にも命を狙われてしまう。だから、私一人で何とかするしかないんです」

 

「……君は一人じゃない。僕らがついてる。安心したまえ、マルコシアスの羽はさっき言った大規模作戦で殲滅こそ出来なかったけれど、大分弱体化はしている。この三人で居れば、早々に死ぬことはないさ」

 

「……でも、私は……」

 

 言い淀むアガーテ氏。否定する材料を探しているのだろう。あなたは一歩踏み出して言う。頼って良いのだと。自分たちは探偵と助手だ。依頼人の利益は守らなければならない。さあ依頼してくれ。守ってくれと。

 

「……助手、さん。」

 

 目を潤わせ、震えながらそう発するアガーテ氏。

 

「……助手さん。探偵さん。……助けて、ください。お願い、します」

 

 泣きながらそう言うアガーテ氏。あなたは探偵とアイコンタクトをする。

 

「承った」

 

 一言。そう発する探偵。そして手を差し出した。その手をアガーテ氏は弱々しくながら、しっかりと握り返した。

 

「……助手。これで、良かったのかい? 」

 

 ああ、これで、良かった。と、あなたはそう返す。仕事はまだ、終わる兆しを見せない。

 

 ◆◆◆◆

 

「さて、アガーテさんも泣き止んだところで。今後の方針について話そうか」

 

「……お見苦しいところをお見せしました……」

 

 気にすることではない、あなたはそう励ます。それはそうと、今後の方針か。マルコシアスの羽と言う組織に対してどう動いていくか、と言うことであろう。あなたは一人考える。弱体化したとは言え、強大な組織。それにたった三人で立ち向かっていかなければならない。なかなか無理難題な気もするが、依頼である以上全力でやらなければ。あなたの使命感がそう言っている。

 しかし、そうは言ってもあなた一人ではなかなか案も浮かんでこなかった。そこで、探偵に何か良い案はないかと聞いた。

 

「案? うーん、そうだね。いっそこちらから攻め行って撃滅するのが手っ取り早いんだけどねぇ……記録機関も動かしてさ。テロ組織なんて放っておいてもろくなことが起きないからね。この際やっちゃっても良いと思うんだけど──」

 

「……少なくとも今は、記録機関とは依頼だけの関係でいたいなーって言うか……すいません。私の勝手な都合なんですけど……」

 

「いや、分かってたから大丈夫さ。記録機関の手は今回は借りない。僕たち三人で出来ることを探そう」

 

 三人で出来ること。この三人の強みとは何か。まず戦闘力であろう。固有魔術を交えた圧倒的な戦闘能力を誇るマクス・ヴァレト。魔獣としての性質を併せ持つアガーテ・シアス。そして記録機関立魔術学校生並みの戦闘能力は最低限持っているあなた。役割もあなたが前衛、探偵が遊撃兼中衛、アガーテ氏が後衛とバランスが良い。

 第二に探偵の経験と情報収集能力がある。マルコシアスの羽との交戦経験もそうだが、それ以外にも多くの修羅場をくぐってきたであろう探偵は、数多くの経験をしている。その経験から来る予測と、情報収集が織り成す推理の精度もピカイチだ。それがあれば、不意を突かれて即死、なんてことも減るだろう。

 特筆すべき強みと言うのはそれくらいだろうか。探偵の占める比率が大きいが、それほどマクス・ヴァレトと言う人間は強いのだ。

 しかし、テロ組織と真っ向からぶつかって勝てるほどのものではない。どうにかして策を練らなければ。そんな風に考え事をしていた時である。

 

「……レーダーには、このあたりと示されているが? 」

 

「そうですね。このあたりを捜索してみましょうか」

 

 そんな声がした。マルコシアスの羽、だろうか。即座にあなたと探偵はアガーテ氏をビルの中へと連れ込み、臨戦態勢をとる。

 あなたは《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》と唱え、右手に光子の剣を。探偵は人差し指と中指をたてて《指銃》の構えをとる。それを見てアガーテ氏も慌てて右手首に左手を添えて、右の手のひらを正面に構える。

 

 ジャリ、と地面を踏みしめる音がする。ドアは開け放ったままである。中まで探しに来る可能性もあるが、どうなるか。

 

「……このドア、怪しいな。例の魔獣は人型なんだろ? 」

 

「はい、そうです。どうしますかブラウンさん。中まで入ってみますか? 」

 

「そうするとしよう」

 

 どうやら入ってくるようだ。あなたは暗闇の中で目立つ《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》の展開を止め、《フォトン・ブラスト》の早撃ちの用意をする。

 

 入り口のすぐ横で待機するあなたと探偵とアガーテ氏。地面を踏みしめる音がだんだんと近づいてくる。あなたはアガーテ氏に自分たちで対応するから呼ぶまで出てこないように、と伝える。

 そして、侵入者がビルの中に一歩を踏み出した、その瞬間。あなたと探偵はアイコンタクトをした。今まで通りにやれ、と言うことだろう。あなたは《トリップ》を唱える。そして、探偵も。

 

「《トリップ》」

 

 探偵が先に入ってきた方の侵入者の、そしてあなたが2人目の背後に回る。《指銃》を突きつける探偵と、右の手のひらを頭部に押し当てるあなた。

 動くな。両膝をついて手を上げろ。あなたはそう言う。

 

「君たちは一体何者なんだ。目的と身元を明かせ」

 

 そう探偵が言う。

 

「……チッ。嗅ぎ回ってた探偵とやらか? まあ良い。契約はここに! 《サモン・シュード・フラウロス》!! 」

 

「《指銃速射》! 」

 

 パァン、と言う音が響き一人目の頭を貫通する。そのままパタリと倒れる侵入者。どうやら死んだようだ。

 

 しかし、唱えた魔術は止まっていない。地面には魔法陣が刻まれている。召喚魔術が進行中、と言うことを示している。《サモン・シュード》、と言うことは疑似召喚の簡易魔術詠唱を行ったようだ。

 

「俺だって……《サモン・シュード──》」

 

 おっと、これ以上召喚をされるわけにはいかない。あなたは《フォトン・ショット(単射)》で肩を撃ち抜く。

 

「ガッ…! 」

 

 詠唱が完了する前に痛みで詠唱を途切れさせる。対魔術師戦においての基本である。たまに《ペイン・アブソーバ》などで痛みを鈍化させてあるヤツも居るが、今回は違ったようで良かった。まあひとまずその話は置いておいて、詠唱をキャンセルさせた二人目の侵入者にあなたは腰のベルトを外して口の奥へと突っ込み、噛ませる。これで魔術詠唱は出来ず、舌を噛みきられる心配もない。布だと窒息の恐れがあるのでタオルなどを突っ込むのはNGだ。そして《フォトン・ブレード》と簡易詠唱を唱え、光子の剣を展開し両の手足を切断しておく。止血はまあ、後でも良いだろう。そして仕上げに《コール・パラライズ》で暫くの間体を麻痺させておく。これでベルトが外れたとしても詠唱が出来ない。一先ずこれで無力化は完了。さて、探偵の方はどうなっているだろうか。後ろを振り返る。

 

「《指銃改・一式》ッ! 」

 

『Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

「疑似召喚でこれか……フラウロス。火炎を司る魔獣。なんて面倒な置き土産を……お、助手。そっちは終わったかい? なら加勢してくれ」

 

 了解。と、あなたは《コール・フォトン・ブレード・スタートアップ》と《コール・フォトン・シールド・スタートアップ》を唱え、右手に光子の剣を、左手に光子の盾を展開し探偵の前へ走る。流石は探偵。傷一つ負っていない。魔獣は、肋骨の飛び出た竜のような姿をしている。二足で立つその魔獣の翼には探偵が空けたであろう風穴がいくつもあり、飛ぶことは出来ていない。鋭い爪を持ち、開かれた口と尻尾の先端からは瘴気と共に炎が出ている。地面には焦げたあとが所々に存在していることからも相当な火力を持っていることが分かる。

 

「相手は簡易魔術で疑似召喚された魔獣、個体名フラウロス。簡易魔術で召喚されてるからそこまで長い時間は持たないだろうから持久戦に持ち込んでも良いし、多分中位個体くらいだから僕の《弾罪》とか普通の攻撃とかで仕留めても良い。気を付けるべきはあの口から放たれるブレス。爪の切り裂き攻撃はさほど脅威じゃない。こんなところかな。OK? 」

 

 OK。あなたはそう返す。竜狩りといくとしよう。

 

 まず先に動いたのはフラウロス。口からブレスを吐く。それを見たあなたは盾でブレスを受け、《コール・フォトン・スリップストリーム》で前屈みになりながら素早く突進。それを探偵は《指銃速射》で援護する。パァン、と身体のどこかへ炸裂した音を聞きながらそして、一太刀。剣を頭上へと掲げるようにし、露出した肋骨の奥側を切りつけながら背後へと抜ける。

 そして少しよろけているフラウロスの背中を駆け上がり、右目を穿とうと剣を引く──が、流石にそうはさせまいと体を大きく振られ、身体の上から弾かれる。

 

 両手から武器の展開を止め、受身に専念する。ゴロゴロと地面の上を転がりながら考える。流石にそう上手くはいかないか。しかし最初の一太刀だけでも手応えはあった。爪もそこまで速くは動かせないようで、股を抜けるように動けば簡単にはやられることはなさそうだ。

 

 そこまで考えたところで起き上がる。探偵の《弾罪》は魔力消費が控えめとは言え、詠唱中は他の魔術の詠唱が出来ない。単独で使うのはリスキーだがあなたがちゃんと前衛を張れていればなんの懸念もなく使うことが出来る。が、このフラウロス相手にあなた一人で前衛を持たせるのは中々キツイ。よって、あなたと探偵で普通に削りきるのが良いだろう。その旨を少し離れた探偵へと《メール》で伝える。

 

 即座に探偵からも《メール》が返ってくる。OKとのこと。そうと決まればあとは削りきるだけ。

 

 再度両手に剣と盾を展開したあなたは先ほどと同じように突進する。探偵は変わらず《指銃速射》で援護。炸裂音を聞きながら切り抜け、ついでに尻尾を切りつけながら《カタパルト(射出)》でその場から飛び出すように真横へと離脱する。とんでもない速度を出しながら射出されるが、それも初速だけ。急速に速度が減衰していく。そして、着地の方法は心得ている。足を突き出して、ズザザ、と地面を擦りながら勢いを殺す。これだけで簡単に着地できる。慣れが必要だが、魔術師であれば習得しておくと便利な技だ。

 

 これで、あなただけでも三撃は加えた。探偵もあなたが来る前にかなりのダメージを与えているだろう。そろそろ倒れても良いのではないか、とあなたは思う。しかし、そう簡単にはいかないようで、まだフラウロスは健在である。

 

 まあそうなればこちらも先ほどと同じように攻撃を続けるまでである。と、突進する素振りを見せるとブレスが飛んでくる。それを盾で受け、ブレスの後の硬直を探偵が撃ち抜く。

 

 ブレスは通用しないと分かったのか突進してきて爪を振り下ろすフラウロス。正直こうなると面倒だ。が、あなたの仕事は変わらず盾で受け、剣で反撃する。それだけのこと。

 振り下ろされる爪を盾で弾き、出来た隙にまた切り抜け、背後へと回り、《カタパルト》で今度は垂直に飛ぶ。20mほどあるフラウロス全体を見渡せる高さまで飛び、空中で姿勢を制御し頭部めがけて剣を振り下ろしながら着地する。ズガン、と鈍い音が響き魔獣が体勢を崩す。首の骨が折れたのか、倒れこんでピクリとも動かなくなってしまった。

 

 こうなってしまえばあとは楽だ。あなたは《コール・フォトン・ブレード・ヘビーアタック・カルテット・インジェクション》を唱え、剣に光子を集中させる。1キロほどの重さしかなかった光子の剣は、今や引き摺って歩かねばならないほど重くなっている。あなたは剣を引き摺りながら一歩、一歩と踏み出していき、数秒かけて2メートルの距離を詰めていく。そして、倒れこんだ竜の頭の前で重くなった剣を無理やり掲げる。そして、その重さを活かして振り下ろす。グシャリ、と言う音が響き首が完全にへし折れる。これにて討伐完了だ。

 

 こちらに近づいてきた探偵とハイタッチを交わす。パン、と小気味好い音が鳴りそれをファンファーレとして廃ビルへと凱旋する。錆びた鉄のドアの向こう側にいるであろうアガーテ氏を呼ぶと、すぐに出てきた。

 

「探偵さん、助手さん。無事だったんですね。良かった……」

 

「ああ。一人は殺して、もう一人は拘束してある。これから事情聴取と行く所なんだけど、着いてきてくれるかい? 」

 

「はい、お供します」

 

 あなたと探偵とアガーテ氏は、拘束した二人目の侵入者のもとへと歩く。鉄の匂いがする。侵入者を見ると血の海のような惨状だが、魔術師は案外しぶとい。これでもまだ息があるのだ。その証拠に、胸はまだ上下している。

 

 あなたは《ハイ(上位)ヒール(治癒)》を唱えて《パラライズ》を解く。麻痺が抜けるまではあと二分ほどあるだろう。その間に口の奥へと突っ込んだままのベルトを回収する。ベタベタだ。これはもう処分するとしよう。あなたは《イレイズ(消去)》を唱えてベルトを分解する。《イレイズ》は持てるものであればなんでも粒子に分解することができる便利な魔術である。

 

 そうしている間に、探偵が侵入者を近くの壁へともたれかけさせていた。摺って移動させたため血痕が直線上に伸びている。そして万が一この状態からでも魔術を詠唱しようとした時のために探偵が《指銃》を構えて頭に向ける。

 

 侵入者が目を開く。虚ろだが、意識はあるようで、上下左右に目を動かし状況を把握しようとしている。

 

「おはよう、侵入者。君の同僚は始末した。君の命もあと僅か。こちらの質問に答えてくれれば安らかに逝かせてやろう。答えないと言うのなら……そうだね、痛みを増幅させて体のどこかを撃ち抜くことにするよ。どうだい? 」

 

「……ああ、分かった。答えよう」

 

「ありがとう。手早く済みそうで助かるよ。……助手、あれを」

 

 あれ、と言われて思い付くのは一つだけだ。あなたは《ジャッジメント・トゥルーオアフォース》を唱える。正誤判断の魔術だ。真実を言っていれば青く、嘘を言っていれば赤く光る球体を出現させる。

 

「イエスかノーで答えてもらおうか。君たちはマルコシアスの羽かい? 」

 

「イエス」

 

 球体の色は青。嘘は言っていないようだ。

 

「目的は彼女──人型の魔獣? 」

「……イエス」

 

 これもまた球体の色は青。嘘は言っていない。

 その後も簡単な質問が何度か続く。例えば、マルコシアスの羽はあのテロ組織で間違いないかなどである。そして、次第に意識もはっきりしてきたところで本題に移る。

 

「……ま、こんなところかな。よし。じゃあ質問を変えよう。今度はイエスかノーじゃない。君の紡いだ言葉で言ってもらう。君たちの目的はなんだい? 」

 

「……人型の魔獣を捕らえて、実験に使うこと。実験の内容は、薬品の投与、魔術の行使。それらで得られたノウハウを活かした洗脳が目的らしいが、詳しいことは分からない」

 

「ひっ……」

 

 怖がるアガーテ氏。そんなことはさせない。させないが、聞くだけでもおぞましい。魔獣は確かに人類の敵だ。しかし、だからと言ってむやみやたらと汚して良いわけでもない。

 

「……もういいか? 正直、もう意識が限界なんだ。眠らせてくれ……」

 

「……もっと聞きたいことがあったんだけどね。仕方がない。ゆっくりと眠るが良いさ。ビルに戻ろう。助手、アガーテさん」

 

「はい。ビルのエントランスに仕掛けたトラップは、先ほど皆さんが戦っている間にあらかた片付けておいたので、気にせず入って良いですよ」

 

 流石に魔力消費が大きい。あなたは今日はこれで限界だと呟く。奥の手を使えばその限りではないが、そう易々と使っていては早死にする。リュックの中には寝袋も入れてきている。今日は廃ビルに泊まるとしよう。

 

 伸びを一つ。仕事はようやく、一区切りつきそうだ。

 

 

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