「お前たちが腑抜けにした連中の中に海兵共がいただろう」
「あの裏切者共か」
「そうだ、奴らはリスト屋とこの船までの運搬役なのさ」
数十名にもなる繋がれた海兵たちをしり目に、ギャングと海賊の話が続いていた。
「リスト屋は海軍の人事関係に深くかかわっている奴でな。天竜人からの要望を元に、それに見合う連中を見つけ出してリストアップする」
「レストランならぬヒューマンショップのメニュー作成というわけか」
「そういうことだ」
海賊の方は、自分の仲間を念のために船に戻していた。
ギャングも海賊もアウトローで、かつその人間性はピンキリだというのは共通している。
海賊――クロという存在になった男は、これから先のカポネという『可能性』は知っていても、船長として今のカポネを無条件で信用するわけにはいかなかった。
「そしてそのメニューから選ばれた
一言ずつ強調するギャングの言葉に、海賊は不快そうに眉を顰める。
「そして事故に遭った海兵は出荷される、か」
「お前が潰したレッドラインの山賊連中も一枚噛んでたんだぜ? まぁ、ほぼ名前を借りて事故の原因と推測させていただけだが」
「………あの弱さで懸賞金が高かったのはそういう理由か……」
「まあ、レッドラインの山賊なんざ基本マリージョアから捨てられて、なんとか裏側で生き残ってる連中だからな」
「それ潰してなんで自分の名が上がるんだ……」
「レッドラインを横断したんだぞ? あの崖よじ登っただけでも偉業っちゃ偉業だ」
「よじ登るとか疲れるだろう……」
「ならどうしたんだ? 他に抜け道が?」
「走って登った」
「意味わかんねぇよ!!!」
ギャングのツッコミを他所に海賊は一度、まさに出荷されつつある海兵達を一瞥する。
「にしても、若い女海兵が多いからまさかとは思っていたが……やはりか」
「他にこうして海兵が運ばれる理由があるか?」
「ファミリーとつるんでいたが土壇場で裏切った連中がケジメのために身柄を――という可能性も考えていた」
「……なるほど、確かに有りうる。お前やっぱり頭が切れるな」
「だが、こう言うのもなんだがよく今まで漏れなかったな。アイツらは……飽きっぽいだろう」
海賊は読み物としての知識からそう言うとギャングは笑って、
「キチンと決まりがあるのさ」
「絶対に捨てない……とかじゃあないんだろうな」
「あぁ、飼うのは自分の敷地内のみ。そして飽きて処分するときは
ギャングは底意地の悪い笑みに顔をゆがめて続ける。
「ただ殺すんじゃねぇ。海兵の証拠である衣類はもちろん、身体も骨すら残らないように処分される。顧客によっては死に様すらショーにしやがる」
「……そしてそれは、
「そうだ、処分される時のショーを見せつけられたりする。おかげで大抵は従順だ。どんな屈辱的なことを命じられてもな」
吊るされたまま話を聞かされている海兵たちは、それぞれが顔を青ざめさせて話を聞いている。
口枷をつけられたまま必死に声を上げようとしたり、鎖を外そうともがいたりしている。
「そちらの目的は?」
「俺はギャングだぜ? 決まっている、金だ」
その海兵達の様子を、ギャングは冷めた目で見ている。
人を見る目ではなく、金を数える目で。
「俺はこの販路を乗っ取る。上で腑抜けてるカスは新米や内勤の海兵しかかっ攫えないようなクズだったが俺は違う。カスが捕まえられないとリストに載せなかった奴でも上手く
「強い海兵の奴隷……そんなものにまで需要があるのか」
「金さえ払えば、他の連中が持っていない――いや、簡単には持てない物を手に入れられるんだ。より有力な天竜人は必ず乗ってくる。それがリスクになると知っていたとしても、強欲であればあるほどだ」
海賊は、心から納得出来るためか不機嫌そうに眉間を揉み解す。
「まずはコイツらを売り飛ばして、そのやりとりでルートや関わりのある連中をある程度を把握したい」
特に若い海兵が必死に暴れている。
なんとか抜け出せないかと、必死に。
「どうだ『抜き足』? まずは今回の商売だけでも一枚噛んでみないか。儲けはきっかし折半でいい」
目に涙を浮かべてせめて一声だけでも、ほんの一言だけ声を――助けを求めようとして、
「カポネ・ベッジ」
「ああ」
海賊が動く。
「自分を誘ってくれた事、感謝する」
ベッジの眉がピクリと上がる。
「だがすまない。この話、断る――」
「言葉は正しく使え、海賊」
そしてスーツとコートを軽く伸ばして、
「てめぇ、潰すつもりだな? この取引そのものを」
「そうだ」
次回も少し遅れるかもしれません