とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

158 / 199
155:生誕

「急に集まってもらって悪い。だが、今の各艦隊提督と最高幹部で共有すべき情報だと判断した」

 

 ダズとペローナ、ロビンという古参に親衛隊隊長のアミス、ハンコック、タキ、ヒナ。

 それに客将ではあるがロビンの守り役であるミホークに、開拓団のハック、イッショウ、それにクロコダイルまで来ていた。

 

「まだ提督ってわけじゃないんだが、いいのか?」

「お前は一番教えなきゃ駄目。というか教えておかないと、こっちが気を揉む」

「クハハハハ」

 

 というか、俺が呼んだ。

 クロコダイルはある程度手の内公開しておかないと予想外の選択しそうで怖いんだよ!

 

 別に裏切ったりしても全然いいんだが、世界政府――いや、天竜人という箔を完全に破壊するまではウチにいてくれ!!

 

 ミホークは最も間近でロビンを守る役だから当然。

 そもそもコイツが俺達の下を離れる可能性はまだあっても、裏切る光景が想像できん。

 

 能力者であるロビンの鉄火場での補助、救助役としてハックも同じく。

 

 イッショウも、ミホーク不在時の代役候補として取り込む事が決定。

 というかドール共々、イッショウはロビンと上手くやっている。

 なんだったら親衛隊とは違う、ロビンの親衛隊として組み込みたいくらいだ。

 

「それで主殿、共有すべき情報とはなんじゃ? 親衛隊すらアミスのみに絞るとは尋常ではないが」

「……正直、前々から話すかどうか迷っていたんだがな」

 

 そしてチラリと、この場にいるもう一人に目をやる。

 レイリー。

 海賊王の右腕、笑い話(ラフテル)へたどり着いた男。

 

「まぁ、案内人(・・・)についての説明なら問題ないと、ご隠居から許可も頂いたしな」

「ワハハハハハハ! 別にそこまで気を使わんでもいいのだがな!!」

 

 案内人という言葉に一同が首をかしげるが、クロコダイルだけが鋭い目を向ける。

 そういうところ。

 そういうところやぞ。

 

「……ま、それぞれ仕事があるんだ、さっさと始めよう。今回の騒動で我々はビッグマム海賊団と繋がりを得た。彼女と敵対した白ひげとの繋がりもあるとはいえ、軍事的には悪い事ではない。……ない、が……それとは別の問題を抱える事になった。その説明だ」

 

 幸い、向こうが戦力として組み込めと言ってきた以上、割と長期間の間彼女達を扱う事になる。

 単体での軍団(・・)として圧倒的な戦力を持つクラッカー。

 俺達の中ではヒナに近いタイプの、堅実な戦いを得意とするカスタード。

 

 西の海での戦いはもちろん、楽園での戦いでもかなり活躍してもらう事になる。

 俺達の軍事面の問題は兵数じゃなくて、兵を率いる将校、部隊長クラスの不足だからな。

 

「結論から言う。ビッグマム、クイーン・シャーロット・リンリンは間違いなく、ロビンの身柄を欲している」

 

 全員の目が、ロビンの方を向く。

 ロビンは俺の方をみてキョトンとしているが……。

 

「クロ、それはつまり歴史の本文(ポーネグリフ)がらみか?」

「そうだ、クロコダイル」

 

 今回は念に念を入れて黒猫館内の会議室で行われている。

 親衛隊にさりげなく周囲を固めさせて、周りに情報が漏れないようにしている。

 

(王妃様や取り戻した王族周りの侍女に、こちらの動きを探るような素振りが見えるからなぁ。かといってシャムロックのサロンじゃあベッジの兵隊の目を引きすぎる)

 

 ここらの引き締めも、この三年間での課題と言えるだろう。

 

「すでに知っている者も多いが、偉大なる航路(グランドライン)は島の磁気を辿る事で先へ先へと進む海だ。では、それを辿り続ければラフテルに辿り着けるか――となると、そういうわけではない」

 

 クロコダイルが深く頷いている。

 だよな。

 ログを辿るだけで行けるならば、ビッグマムみたいな大勢力がすでに辿り着いてもおかしくないんだ。

 そうでもなくても、新世界出身の人間ならば辿り着いてしまう可能性は一応あるんだ。

 

「ログを追っていくうちに辿り着く島はある。だがそれはラフテルではない。ロードスター島と呼ばれる島だ」

「……ロードスター……水先星……?」

 

 ロビンのつぶやきに頷いて答える。

 

「そこにあるのはひとつなぎの財宝(ワンピース)ではない。代わりにあるのは、歴史の本文(ポーネグリフ)。普通はここに来て初めて、最後の島へたどり着くには古代文字の解読と、ある四つの歴史の本文(ポーネグリフ)が必要になる事が分かる」

 

 この話をしていいのかどうか、正直迷った。

 主にレイリー的に。

 本来ならば、せめて偉大なる航路(グランドライン)の半分まで行ってからの方がいいだろうかと尋ねてみた。

 

 結果、『すでに新世界を航海してみせた君が何をいうのかね』と笑い飛ばされてこうなったわけだが。 

 

「四つ?」

「そうだ。ロビン、オハラの考古学者が調べていた歴史の本文(ポーネグリフ)の色はどうだった?」

「えっと……白かったよ? もちろん、風化でかなりくすんでいたけど」

「そう、それこそ普通の歴史の本文(ポーネグリフ)であり、それもいずれ回収、保管し後世に残さねばならない物だが、それとは別に特別なものがある」

 

 

笑い話(ラフテル)への道筋を示す、四つの赤い歴史の本文(ポーネグリフ)が、だ」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

(この男は、いつからどこまで知っていたのか……)

 

死の教師と呼ばれる男は、自分が剣を預けるに足る男の途方もない話を聞いて感心――というよりは呆れていた。

 

「ロード・ポーネグリフと呼ばれる四つが示すそれぞれの地点。それを線で結び重なる位置にこそラフテル――すなわち」

 

(ようやく一五になるという若さで、どれだけの物を背負うつもりだ)

 

「ロビンは今現在、唯一ひとつなぎの財宝(ワンピース)へとたどり着ける鍵となってしまっているんだ」

 

 ロビンが、自分で自分のジャケットの裾を掴む。

 どれだけの者に狙われかねないか理解したのだろう。

 

「その研究をしていたオハラへのバスターコール。……総督、つまり政府はひとつなぎの財宝(ワンピース)の正体を知っているということでしょうか?」

「……タキの疑問はもっともなんだが……」

 

 逆に、彼女を囲む幹部の面々は気合が入っている。

 古参勢にアミス、ハンコックは特にそうだろう。

 ひとつなぎの財宝(ワンピース)や古代兵器などどうでもいいだろうが、ロビンが狙われるのであれば守らねばならないと覚悟を決めている。

 

「正直、現時点では何とも言えない。……ただ、少なくともその存在を確信した上でそれが自分達の存在をおびやかす物だという確信はあるのだろう。だからラフテルが存在する新世界を封じたかった」

「……っ、じゃから魚人島の制圧か! 愚か者共めが!!」

「ホロホロホロ、全部が全部狙ったわけじゃねぇし、しかも結果として自分達の首を絞めたようだがな」

 

 逆に、何を考えているのか分からないのがクロコダイルだ。

 クロの話を聞いてロビンを見るでもなく、ただじっとクロの顔を見て何かを考え込んでいる。

 

「……新世界を巡る政府・海軍の分析はまたの機会に。ともかく、ビッグマムはロビンの知識を確実に欲している」

「だが、今回キャプテンはビッグマムの子供を救ったのでは?」

「……それを材料に、形だけでもロビンへの不干渉を引き出したかった。だが――」

「先に戦力の提供という形で貸し借りをリセットさせられたか」

「そうだ。恩が消えるわけではない……とはいえ、強気に出ることは難しいだろう。肯定した以上使わないわけにもいかないしな」

 

 良し悪しで言えば、クロ本人が言ったように良しなのであろう。

 少なくともこの結果、万が一の事態に対応できるクラッカーという現黒猫の精鋭に匹敵する戦力が一時的に加入した。

 

 単体で強いのはもちろん、一人で軍隊を生み出すことができる戦力の一時加入は黒猫の行動に大きな厚みを付与した。

 

(クロからすれば堅実な指揮官であるカスタードの方が有難いのだろうが……いずれにせよ、現時点での黒猫に軍事面での不安はかなり軽減された)

 

「言うまでもないことだが、俺達が今西の海の安定化を急ぐのは偉大なる航路(グランドライン)に出るための――ひいては魚人島奪還戦に備えるための物である」

 

 気ままに海を渡り、冒険をし、強敵を下して宝を手に入れる。

 年頃の少年が夢見る海賊の航海とはそういうものであろうが、クロが渡る海は違う。

 

 計画的に軍事力を伸ばし、堅実に勢力を伸ばして育てあげながら合理的に次の戦に備える。

 クロはもはや海賊という枠を超えて、大戦を主導する立場になってしまった。

 

 相手が相手ならばそのような事をせず、せいぜい国を富ませるために力を尽くしただろうが……。

 

 クロがこうしなくてはならないその全ての理由は、天竜人だ。

 クロに刃を下ろさせるほど治世を安定させる事が出来るとは思わぬし、そもそも刃の下ろし方すら分からないのではないか。

 

 それほどまでに、この一月二月で世界にその愚劣さを見せた存在。

 クロが是とするのであれば、斬って捨てるのになんのためらいもない愚物。

 

「ゆえにそこまではビッグマムとの間に齟齬はないが、問題は奪還し、新世界に進出した後だ。現在白ひげと協力体制にあるが、その上で新世界でどこまで直轄地を得て、かつ戦略的航路を確保できるか」

「……お前が書いた戦略概要にあったシーレーンという物か」

「ああ、その確保の有無、範囲、そして戦略的強度が俺達には求められる。偉大なる航路(グランドライン)では特にな。その中でビッグマムとはいずれ関わる。その時に――」

 

 問題なのは、天竜人――世界政府だけを見ていればいいかというと、そういうわけでもないと言う事だ。

 

「あるいは突然の奇襲を受ける可能性もある。ロビンを攫おうとしてな」

「……主殿」

「はい、ハンコック君」

「そのことはあの二人も察しておるのであろうか?」

「……多分、な」

「となれば、我らの戦力分析役も兼ねているのであろう。作戦に組み込んで大丈夫なのか?」

「そこは余り気にするな。どうせ数年後の話だし、そもそも俺達の手札は一枚きりではない。幅広く経験を吸い上げ、それを統合して常に新しく戦術を更新していくのが黒猫流だ」

 

 クロが、まだ朝方だというのに何度目かのため息を吐く。

 

「この話をしたのはビッグマムの身内を抱え込むという事態になったのもあるが、更に警戒すべきだという判断だ。恐らくほぼ同様の話を知っているシキという厄介な奴もいるしな」

「……思えば、キャプテンさんが直接戦う前から因縁のある敵だよね」

「私に至っては船ごと沈められたわ。……思い出したら腹が立ってきたわね、ヒナ憤慨よ」

 

 ロビンはまさにシキの計画によってグチャグチャになった世界の立て直しに四苦八苦している真っ最中ではあるし、クロの後をいつも雛鳥のように付いて回っている海兵の少女は何かを思い出したのか髪をかきむしっている。

 

「少なくとも現状、ひとつなぎの財宝(ワンピース)に関して俺達がなにかすることはない。……ちょっとそれどころじゃなくて偉大なる航路(グランドライン)に中々入れないというのもあるんだが――」

「キャプテンと行動し始めてずっとそれだ。もう慣れた」

「ダズ君、お口にチャック」

 

 ニコ・ロビンという存在が爆弾であるのは、彼女には悪いが間違いなかった。

 それを抱えたまま安全を確保するには偉大なる航路(グランドライン)のような追跡の難しい場所に行くのが一番だったハズ。

 それが出来なかったのはクロ本人に背負うモノが多すぎたせいであり、かつそれでも何とか出来てしまう手腕と器があったためだ。

 

 クロにとっては笑い事ではないのだろうが、関わった者達からすればさぞ痛快な道筋だっただろう。

 

 思わず零れたクロの軽口に、やや重苦しかった空気が吹き飛ぶ。

 

「まぁ、基本は変わらん。ひとつなぎの財宝(ワンピース)周りがどう動くかは分からんが、まず俺達の組織の土台を徹底的に固める。ただし――」

「ロビンの身の回りには注意を払え、か」

「イッショウやペローナは知っているだろうが、政府側に俺にも知覚が難しい方法で忍び込める奴がいた。その辺も合わせて警戒網を構築し、研磨していく必要がある」

「……同時に、下手な手出しを防ぐためにも勢力の拡大が急務か」

「そう。それだ」

 

 ふと零れた課題に、クロがニヤリと笑う。

 単純な作戦や計画ではない。

 少し奇抜な、奇策を実行に移そうとする時の笑い方だ。

 

「復興と拡大はもちろんだが、その中で我々ならでの強みを持つ地域が必要になる。戦略的にも、ある程度手の内が知られているからこそ、そこに変化をもたらすだけのナニカが必要になると思い、その用意をしてきた」

「……ひょっとして、白ひげさんの所から変わった資材を頂いて持ち帰ったのはそのためですかい?」

 

 イッショウ。

 今は時間がないため手合わせが後回しになっているが、恐らく自分に限りなく近いだろう盲目の剣士が、興味深そうな声を出す。

 

「そうだ。……イッショウ、それにハック達魚人達には、ちょっとやってもらいたい事があるんだ」

「あっしと魚人さんらにですかい」

「ああ。荒事ではない、安心してくれ。だがイッショウの能力と魚人の協力がなければ手間がかかる。ここで話していることから分かると思うが、可能な限り機密にしたい事でな」

 

 

「俺達黒猫の、新しい拠点を築いてほしいんだ」

 

 そうしてクロは、広い会議室の奥に所狭しと並べられた、見覚えのない木材の山にポンッと手を載せる。

 サンダーソニアやマリーゴールド、ハンコックの妹らが『悪い顔』と言っている笑みを深めて、

 

「場合によっては、今後の戦局を左右しうる拠点をな」

 

 と、そう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 会議が終わり、皆即座に仕事に移る。

 クロコダイルはすぐさま艦隊訓練に移るために旧46番基地――近々名称を変える予定だ――へと出発した。

 相当に俺とハンコックで仕上げた艦隊機動に関しての本を読みこみ訓練を積んだのか、新兵がそこそこ交じっているにも関わらず出発は早かった。

 この様子だと年内どころか本当に半年と少しで次の作戦行動に移れるだろう。

 

 ハンコックとタキはそれぞれの艦隊を率いて哨戒に。

 海賊への警戒というよりもどこぞの島を逃亡した難民を命が尽きる前に救助し、できるならば労働力に組み込むつもりなのだという。

 

 今の俺達の生産に関する問題は土地よりも労働力の不足の方が大きい。

 

 一応次の作戦はそれを補うための物でもあるのだが、それはそれとして労働力は欲しい。

 魚人種族の皆には悪いが、現地住民との摩擦の可能性を考えると労働力として投下できる地域が限られるのだ。

 今は出来る限り人間の民を増やしたい。

 

 ミホークは……とりあえず新入りのドールやマキシンをシバき回していた。

 手加減していたとは思うのだけれど二人揃って限界が来て地面をベッドにしていた南無。

 崩れ落ちた二人をアミス達が慌てて介抱しているのを見て笑っている辺りアイツ生粋のサド野郎だわ恐れ入った。

 

 そのあとアミス達の物言いが入ってミアキス達が斬りかかって三時間くらい斬り合っていた。

 ドールとマキシンが藁敷いた簡易ベッドの上で化け物見る眼でそれを見ていたのが滅茶苦茶印象に残っている。

 その後幾度も吹っ飛ばされて地面に叩きつけられてもチャレンジしたヒナも含めて。

 

 ……初期訓練はやっぱりハックだな。

 白ひげからのおみやげを持ってイッショウと一緒に出発したが、ある程度基礎が終わったらまた教練に戻ってもらおう。

 

 その後ダズとアミスを引き連れて殿下にお会いして会食しながら状況を改めて説明、モグワ民の耕作計画に春の祭事の大まかなスケジュールの確認、ルーチュ島への護送と視察諸々の打ち合わせが終わった所でミホークとレイリーの虐殺パーティーへの強制参加が飛び込んで――

 

「や、やっと終わった……っ」

「キャプテンさん、お疲れ様…………うん、本当に」

 

 風呂に入ったのがようやくだ。

 手足を動かすことすら面倒で、とはいえデカイ風呂でゆっくり湯に浸かる事で少しは回復できた。

 明日がほぼ休みとはいえ、キツい。

 いや長く領地を離れていたから仕方ないんだが、ダズ達が持たせた領内や組織の微調整でアチコチ走り回る必要がある。

 その上でクロコダイルが艦隊を仕上げるまでにはこちらの庇護を欲している国々を回って表敬訪問しなきゃならんしそれぞれの姫様の扱いも決めなきゃならん。

 

 なんだこれは。新手の地獄か???

 

 …………。

 

 いやゴメン、聖地でのアレコレほど地獄じゃねぇな。任せられる部下も多くいるし。

 だけどアレだ。

 今すぐ聖地なり海軍本部なりに強襲かけてジェネッタ達を掻っ攫いたいくらいには地獄だ。

 

 政務官の育成、あるいは勧誘も同時に急務か。

 全方面が急務で笑うしかねぇ……助けて、助けてクレメンス。

 

 とりあえず真新しい自分のベッドに身体を放り投げると、ロビンが寄ってきて一緒に巻き込むように毛布を掛けてくれる。

 

「ロビンも、先に寝てて良かったんだぞ?」

「でも、こうして一緒に寝るの久しぶりだし」

「……まぁ、そうだな」

 

 というか、ロビンとだけ一緒に寝るのは初めてかもしれん。

 ロビンと寝る時は大抵俺とハンコックか妹達の誰かとでロビンを挟んで寝てたからな。

 

「それに私達の船に積み込む荷物が多くて、私も出発は明日の昼過ぎになるだろうから」

「あぁ、ミホークが斬り合いながら相談してきたなぁ。輸送船をもう少し回せないかとか木材の在庫量とか」

「……キャプテンさんがまだいた頃に比べて、ミホークはすごく頑張っているよ」

「あぁ、分かっている。剣を振るだけでは出来ないタコが出来ていたからな」

 

 驚くほどにミホークは真面目にウチの一員として頑張っている。

 もしアレだったら週末に開くタキの提督就任式の後に、そのまま最高幹部入りのお披露目をやってもいいくらいにだ。

 

 本人は「もう少し考えたい」とか言ってたが、アイツがまとめ上げた農業史料にお前の名前入れた上でわざわざ黒猫の焼き印入れるとかもう幹部でいいだろうお前。

 というか本を出した事に驚きだわ。

 それもこの短期間に二冊。

 

「というか、俺の部屋が出来ていた事に驚いたよ」

「王女殿下がダズさん達に頼んだんだよ。聖地から帰って疲れ切っているだろうキャプテンさんのために、個室を用意したいって」

「殿下が、か」

 

 タキの就任式の後にまた会食だったな。

 そのあと、内密の話をしたいと言ってたっけ。

 

「心配かけたそうだが……」

「うん。……テゾーロさんが凄く気を配ってたけど、かなり不安だったみたいだよ。キャプテンさんがいないって事もあったけど、黒猫の動きが分からないって」

「? ダズがいただろう?」

「最近は他の皆の事も信じるようになったけど、王女様が信じたのは黒猫じゃなくてキャプテンさんだもん」

 

 ……そう……なの?

 だとしたら、次の会談時にそれとなくウチへの感触を再確認しておくか。

 

「あっ」

 

 そう考えていると、ロビンが小さく声を上げた。

 何かと思うと毛布にくるまったまま、時計に目をやっている。

 

「どうかしたか?」

「うん。あの……キャプテンさんが帰ってきた時は、王女様が一番だったから」

 

 久々に能力で抱き寄せられ、ロビンが顔を寄せて来る。

 

「キャプテンさん」

「おう」

 

 

 

「――お誕生日、おめでとう!」

 

 

 

 …………。

 

 今日は、いや、えぇと……0時回ってっから4月の22日。

 

 ………………。

 

 あ。

 

 そうだった。

 

 そういえば今日、俺の誕生日だったのか。

 

 完全に忘れてた。

 

 俺、15になったんだ。

 

「渡す物は明日、船出の前に皆と一緒にだけど、おめでとうは一番に言いたかったの」

「……そっか」

 

 ロビンの頭を軽く撫でて、手櫛を入れると能力を解除して、二本の腕でしがみ付いてくる。

 

「ロビン」

「ん?」

「……ありがとうな」

「――うんっ!」

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