お、おおおおちおちおちっつばばばばばばばっばばっばばば!
まだだっだだあわあわわわてあわわわわ!!!
なんで!? なんでロビンの事バレてんの!!??
「いやぁ、あの樽重かったでしょ。重い物を空っぽのつもりで持ち上げると腰に来るから気を付けなきゃだめよ?」
「そうなんですか。よくわかりませんし、まだ自分には早い話のような気がしますが肝に銘じておきます」
「うんうん、そうした方がいいよ。体は大事にしないとねぇ」
「はっはっはっは」
見てたんかい! そういやちょくちょく確認してたとか原作でも言ってたな!
はっ倒すぞこのボケェ!!
「もう一個いいかな、クロ君」
「……なんでしょうか」
「あらら、警戒しちゃってる?」
「海兵を警戒しない海賊なんていますか?」
「うん、それもそうか」
オハラの一件が起こったばかりだから原作開始まで大体二十年か。
てっめこの腹黒陰険糞野郎、二十年後に覚えておけよ! ぶっ飛ばすからな!?
…………。
ルフィが!!
「まぁ、最初からこっちの事を聞きたかったんだけどさ」
じゃあ最初に聞けよと怒鳴りてぇ。
この熱いお茶ぶっかけたらちょっと溶けないかなコイツ。
「君、どうしてここまで海兵のために無茶してくれたの? 基地の近くとまではいかなくても、適当な島でバイバイしておけばよかったんじゃない?」
「あぁ、それに関してですか。簡単です」
「簡単?」
「はい、自分が弱いからです」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
自分を弱いと言った海賊の目に偽りは一切ない。
だが、その弱い海賊の目に、中将クザンは一瞬気圧されていた。
「自分は弱い。それは誰よりも自分が分かっています。だからこそ、ここで海兵を見捨てることは出来ない」
海賊は気付いていない。海兵が自分を見る目に熱が宿った事に。
「別れる事は考えました。適当な街がある島の端っこに置いていくことも。……最初の密輸船襲撃計画でも、略奪後は素早く遠くへ離れる予定でしたから」
「当然食料もそれだけ積んでたわけだ。だけど食い扶持が増えれば遠くへはいけない」
「だからといって海兵達を船から降ろせば、おそらく彼女達はとっくに関係者に捕捉されていたでしょう。その可能性に思い至った時点で、自分に退路はありませんでした」
「どうして?」
「その先に、逃げ続けるようになる自分の姿を見たからです」
海兵は小さく、ほぅっと息を漏らす。
「気が付けば懸賞金が懸けられていた身です。一人で逃げ切るのは難しい、仲間は必要だった。だけど逃げ癖がつけば、いつか自分のために仲間を切り捨てるようになるでしょう」
「その生き方は……」
海兵は、心の底からこの海賊に同情してしまっていた。
天竜人に目を付けられなければ、この男はごく普通に生きて行けただろう。
スーツに身を包んだこの少年は、きっとどこかの商人にでも弟子入りしていればそのまま大成して、ごく普通に――幸せに暮らせただろう。
「その生き方は……きっついよ」
「承知はしていますが……」
「貫き通せば、私の勝ちです」
海兵は絶句する他なかった。
海賊どころか、海兵の中でもこんな男を見たことがなかった。
なぜこの少年が海賊をしているのか、なぜ普通に生きられなかったのか。
なぜ、この男が海兵でないのか。
そんな思いがグルグルしている中、ノックもなしにドアが開く。
「待たせてすまん『抜き足』、まだ一部だけだが確認が取れた。お前が持ち込んできた筆跡は間違いなくウチの海兵の物だった」
入ってきたセンゴクとサカズキは険しい顔をしていた。
そしてサカズキの方は、その拳がなぜか少し血に濡れていた。
海賊はそれを見て、
「もう動きが?」
と簡潔に尋ねる。
センゴクが一瞬迷う間に、サカズキが口を開いた。
「貴様が持ってきた筆跡の持ち主たちの関係書類を、処分しようとしちょる馬鹿者がおったんじゃ」
「聴取中だが、上官からの指示だったそうだ。今海兵を送ってそちらも取り押さえている」
海軍将校と海賊が対等に話しているという奇妙な光景が出来上がっているのだが、それを指摘する人間はいない。
海賊はその話を聞いて、初めて冷や汗を見せて。
「……まずい」
と小さく呟いた。
サカズキが眉をピクリと不機嫌そうに動かし。
「どういうことじゃあ、『抜き足』」
「相手は地下に潜ろうとしています」
「……だからなんじゃあ。そんなん悪党からすれば当然じゃろう」
「まぁ、バレたと判断したらそうするだろうけど……それでも完全に痕跡を消せるわけじゃない。大丈夫なんじゃない? クロ君」
海兵の問いかけに海賊は首を横に振る。
そして本部大将センゴクは、忌々しそうに頭に手を当てていた。
「自分がもし海軍に追われているなら、積み荷を捨てて身軽になります」
その積み荷と言う言葉が意味する所を察して、二人の顔がわずかに歪む。
奴隷ビジネスでその商品が全部で20人ちょっと、というのはまずない。
自分達が潰したのも、数ある中の一つに過ぎないだろうという海賊の言葉に、再び怒気を纏ったマグマの発する湯気が部屋に立ち込めだす。
ただの物品ではなくそれは人間で、自分達にたどり着く証拠――証人になりうる。
生かしておく理由はない。
「大将センゴク殿」
「む」
「申し訳ありませんが、今しばらくこちらで保護している海兵達をお借りしてもよろしいでしょうか?」
センゴクは、気が付いたら拳を握りしめていた。
「先ほどの話では抜けていましたが、相手は電伝虫を持っていませんでした。盗聴を恐れてアナログな方法でやりとりしている可能性が高い。ならば、まだ間に合う可能性があります」
血が滲むほどにだ。
「自分達なら、諜報に適した人間もいるので今すぐに隠密行動ができます。ただし迅速な行動、操船にどうしても人員が――」
「なぜだ!!!!?」
そして気が付けば、叫んでいた。
「なぜお前が手を貸す! お前は海賊だ! それでも海兵を救い! 守り! まだ見ぬ者のために更に裏の戦いに身を投じようとしている!!」
中将クザンは、二人が来る前の会話を思い返し、
「答えろ! 『抜き足』のクロ!」
中将サカズキは、センゴクと同じように拳を握りしめていた。
「お前を動かす物は一体なんだ!!?」
「――仁義」