とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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166:『ビリオン・ラック』

 偉大なる航路(グランドライン)

 海賊達がひしめく世界で最も偉大で、そして最も危険な海。

 そこへ向けて出航する日がいよいよ近づいてきた。

 

 具体的には一年を切った。

 

 一応イッショウの能力による補助があるとはいえ、リヴァースマウンテンで下手を打たないために第一、第三艦隊は航行訓練を何度も繰り返して練度を高めている。

 

 特にクロコダイルの第三は陸軍第一師団と連携して演習を数回繰り返した辺りで何かを掴んだのか、明らかに動きが良くなった。

 

 クロコダイルから上げられた艦隊運営計画書にも書かれていたが、後々の再編を前提に強襲揚陸戦術の研究分析と訓練を繰り返し、上陸作戦の要となる将兵を教育して各艦隊に配備するという計画は悪くない。

 

 いや、むしろ俺が挙げるべき課題だったわ。海戦と陸上防衛戦に集中しすぎていた。

 

 結果として訓練や作戦で連携していた陸軍の練度も著しく向上した。

 これまでビグルを頂点にした第一師団こそが陸軍だったが、ビグルを陸軍元帥として、その下に陸軍二個師団を編成できた。

 

 第一師団はそのままタキの第二艦隊と共に西の海の防衛に残し、第二師団を『楽園』での陸軍戦力の中核として連れていく事になるだろう。

 陸軍用の兵員輸送艦もすでに完成して、現在演習中だ。

 

 うん、軍事面は問題ない。

 

「総督! オベル王国へ要請していた公衆衛生基準に関する報告書類が今届きました!」

「本気で期限ギリギリまで待たされたなコンチクショウ! こっちに寄越してくれ!」

「はい、こちらです!!」

 

 軍事面はなぁ!!!

 

「あぁ、やっぱり上下水道に問題ありか」

「足りないのはなんでしょう?」

「アレコレあるが一番は汚水の一時保管とその処理だ。過去の事例と地形から見てどうしても水回りがネックになるとは思っていたが……!」

 

 内政面は常に課題だらけじゃい!!

 毎日が月曜日だクソがよ!!

 

「トーヤ! この後の会議はブッチしていいから今すぐ陸軍測量科を引き連れて出航!」

「分かりました! オベルにですね!?」

「解決しようとしなくていい。必要なのは何がどう問題なのかをしっかり引き継ぐための詳細な実検資料! 撮影班にそこの所しっかり言っとけ!」

「了解! すぐに向かいます!」

「書記官! 報告書の写しを急いでくれ!」

「直ちに!」

 

 おのれぇ! まだ出航予定日までかなり月日はあるとはいえやる事が溜まりに溜まってやがる!

 まだ一年あると言えばいいのかもう一年しかないと言えばいいのか!!

 

「橋の国のほうは!? まだ収穫期遠かったっけ!?」

「見立てでは来月だ。収穫量はまだ不明だが、現時点までの課題点はこっちにまとめている」

「デカしたミホーク!」

 

 生産の方はこの二年で大きく回復した。

 一時は橋の国で解放した人員の消費量が収量を超えるんじゃないかとその対策で死ぬほど忙しかったが、少なくとも二年連続で無事に乗り越えている。

 

 これで橋の国が生産地としてカウントできるまでに整備が整えばかなり落ち着くハズだ。

 

「ホロホロホロ、お前らは本当に大変だなぁ!」

 

 手伝えやペローナ!!!

 

 …………。

 

 と言いたいが……コイツはコイツで修羅場を乗り越えたばっかりだったからな。

 ミホークと協力して消毒液や石鹸の十分な量産体制を整えた功績がデカすぎる。

 それに加えて医薬品も徐々に自作できるようになってきた。

 

 これで衛生面だけじゃなくてある程度は農作や畜産も安定度が上がるだろう。

 

 その関係で昨日までモプチとキャネットを行き来していたから、さすがにしばらくは休ませたい。

 

「総督、今よろしいですか?」

「どうした、テゾーロ」

 

 というか、子育て期間のハズなのに仕事させてマジすまねぇテゾーロ君。

 ステラさん所にはキチンとした家政婦を付けているけど、それでも大変だよね。

 

「実は総督の判断を得たい畜産許可の要請が上がっております」

「? 豚なら場所と設備の確認さえ済めば問題ないだろう?」

「ハッ。少々違う生き物を飼育したいと」

「要請者は?」

「製紙ギルドです」

「紙作り連中になんで家畜がいるんじゃ――羊かぁ!!!!」

「ホロホロホロ、羊皮紙のためか。確かに家畜だなぁ」

 

 ぐぬぬぬぬ。

 回復してきたとはいえ飼料にも限りがある。

 

 出来れば勢力圏の食料生産率を高めるために出来るだけ豚に使いたいんだが……っ!

 

「別にいいじゃねぇか、クロ。そもそも最初の計画――『緑の狐』の頃は、換金率の高い羊をたくさん買い付ける予定だっただろう?」

「あの時はまだ食料的にどうにかなりそうだったからだよ。今は売買で安定して使える共通通貨がないし、なによりウチは今安定した肉――たんぱく源の供給が必要なんだ」

「それも羊じゃダメなのか?」

 

 もうちょい余裕があれば、あるいは流通が死んでなければ金になる紡績業を伸ばすためにそれも出来ただろうが……。

 

「というか、皮も毛も金になるなら豚よりも羊の方が優秀じゃねぇか」

「いや――」

「収穫もそうだが、増える速度に問題があるのだ。ペローナ」

 

 俺が答える前にミホークが答える。

 

「羊は子を産む時は基本的に一頭ずつだ。対して豚は一度に多数の子を産む。加えて何でも食べるという事もあって飼いやすいし潰しやすい」

 

 正解。

 

「なんでも食って飼いやすい? それにしちゃ家畜小屋の衛生基準とかアレコレ細かく決めてなかったか?」

「なんでも食うからだよ。なぁ、ミホーク?」

「うむ、糞便すら口にするからな。お前が言うようにやや細かいが、衛生面を考えるとそうせざるを得まい」

 

 それな。

 羊も羊でペローナの言う通り旨みはあるが、まだその段階ではない。

 多人数を無理なく養えるだけの器を作るための三年間。

 食料問題はその中でも根幹になる。

 

 同じくらい安全保障やそれに関する生産力や経済の強化、個人的に推してる公衆衛生の向上なんかアレコレ課題は詰まっているが。

 

「頭数制限を掛けて許可だな。それと出来た製品の一定数はウチで買い取ろう。出来によっては王族への親書や献上品なんかに使わせてもらう」

「わざわざ買うのか?」

「むやみに市場競争に首を突っ込みはしないが、この手の技術は保存できるだけの道筋を残しておきたい」

 

 わら半紙が出回ってる今、羊皮紙をわざわざ買う所は限られるだろうしな。

 ついでに黒猫が高価な品を王族に献上する事そのものに意味がある。

 

 ……というわけで。はい、条件付きの決済と。

 

 今はまだこういう可不可を決定する仕事がほとんどだけど、どうせその内内輪もめの裁判の仕事も出てくるんだ。

 今のうちに法律の細部も決めねぇと。

 

「ホロ……。最近は色々と面倒だな、本当に」

「なんもかんも世界政府のクソッタレ共が悪い」

 

 割と本気の敵意を漏らしてそう言うと、ペローナもミホークも爆笑しはじめる。

 一方でテゾーロは、まったくだといわんばかりに顔をしかめている。

 

 密告の情報が正しければ、アイツら三年経って未だに加盟国の手綱掴めてないからそうもなるか。

 

「お前の言う通りだな。『緑の狐』について話を詰めていた頃はもっと未来を感じていたんだが……」

 

 ミホークも一通り笑うと、ため息を吐いて緑茶を口にする。

 以前までは紅茶やワインを好んでいたのだが、最近はイッショウやロビンと共にお茶を湯呑で啜る姿を良く見る。

 

「懐かしいな。もう結構昔の話だろ」

「だなぁ。アレも形を変えたから名前を変更したし……」

 

 緑の狐計画。

 正しくは――

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

『現在、反世界政府を掲げる多数の国家連合体が出現しておりますが、その中で飛びぬけて勢力を拡大しているのがあの(・・)黒猫によってまとまりつつある国家連合体であります』

 

 海軍本部。マリンフォード。

 日に日に喧噪が小さくなり、徐々に寂れつつある軍事拠点の最も大きな会議室にて、もはや海軍において末端兵までその詳細を知る海賊団の面々の写真が映し出されている。

 

『三年前の海軍基地同時侵攻以降、黒猫海賊団はその軍事力を防衛に割いて傘下の国の国力回復・発展に努めております』

 

 その言葉に、将校の面々は何度目かになるか分からないため息を吐く。

 他の連合体――そして海賊も含めた反政府組織はこぞって政府や海軍の輸送船に狙いを絞って攻撃を繰り返している。

 

 国を守る軍事力を強化するための物資を略奪によってかき集め、そうして軍事力を拡大してまた政府の輸送船を狙う。

 

 時には元海兵すら徒党を組んで襲い掛かり、海軍の力は著しく低下していた。

 家族を養いたければ軍に入れと喧伝して兵士をかき集めようと政府は広告戦略を実行しているが効果は出ない。

 

 むしろ自分の手で畑を耕し、それを誰にも渡さないために武装する民衆が増える一方であった。

 当然その民衆同士の争いも勃発し、国家として成り立っていたハズの島が次々に互いを牽制する村社会へと移行しつつある。

 

『去年政府が主導した私掠艦隊二十五隻による一大攻勢も、クロ殿率いる各黒猫艦隊戦力によって壊滅。一部上陸に成功した戦力も、かの海賊団が編成した陸軍組織によって全滅しており、民間への被害をほぼゼロに抑えたと』

 

 いい気味だと小さく嘲笑を浮かべる者がいる。

 黒猫の手を煩わせてしまったと後悔をする者がいる。

 海賊と――まごう事なき海賊と肩を並べねばならぬ事に怒りを抱く者がいる。

 

『こちらの諜報部によって黒猫の動きの観測は続けておりますが、最近新しい計画が持ち上がっているようで、本日はそれに関しての共有が主題となります』

 

 マイクを握り司会として進行を務めている海軍本部准将ブランニューの声に続き、映像電伝虫が西の海の全図へと変わる。

 本人らは知らないだろうが、それは黒猫が用意している地図と全く同じ色で塗り分けられていた。

 

『現在、黒猫海賊団は『ビリオン・ラック』と名付けた作戦に向けての用意をしております』

「そりゃあ、加盟国や儂らへの攻勢か?」

『不明です。ただし、これまで拿捕された海軍や私掠艦隊の船の改修を急がせている事は間違いありません』

 

 サカズキ――実際に黒猫と交戦し、敗れた男の質問にブランニューは素早く返答する。

 

『現時点で分かっているのは、本作戦が元々用意していた『緑の狐』という作戦を更新したものらしいという事です。なんらかのコードネームだとは思いますが……クロ殿と肩を並べていた政府職員も知らないという事でして……』

 

 ここでブランニューは気まずそうに。

 あるいは腫れ物に触るように画面の端に目をやる。

 

『……大将青雉は、なにかご存じではないでしょうか?』

 

 角の小さな窓に映っているのは、明らかにアルコールを入れている海軍最高戦力の一人。

 今も海の底にいる大将青雉の姿だった。

 

「……青雉、どうなのだ?」

 

 本来ならば、それこそここで元帥であるセンゴクは怒鳴らなければならなかった。

 だが、出来なかった。

 今の青雉は一応海軍の枠には入っているが、同時に天竜人殺害教唆の容疑者でもあるのだ。

 

 実際は、最も『黒猫』に近かったクザンを隔離し、黒猫戦力に流れる事を恐れた政府の策だが、色んな意味で誰にも触れられない存在となっている。

 

『あらら……《緑の狐》か。懐かしいな……』

「! ご存じなのですか!!」

 

 ブランニューの叫びに、クザンは何も言わずに中身の残っている酒瓶を口にして傾ける。

 

『ああ、奴から概要は聞いていた。当時はまだアイツも土地を持ってなくてこれから増やすって所だったから、机上の空論ってレベルだったがな……』

 

 西の海にいた時、一人の海賊と口にしてみて笑い飛ばした安酒を。

 

『名前にすら迷ってたなぁ、アイツ。赤にするかだの狸にするかだの、馬鹿真面目に考えて……』

「貴様の思い出話はええんじゃぁ! 作戦の概要を話さんかい!!」 

 

 その姿に怒りを覚えていた赤犬の叫びに、だがクザンは堪えていないように『分かったよ』と言う。

 

『安心しな。そのナンタラっていう新しい計画が《緑の狐》を受け継いだ物ならば、そもそも軍事作戦じゃねぇ』

 

 そうして飲み干した酒瓶を置いて、クザンは赤くなった顔を隠しもせずに話し出す。

 

『もし海賊連合事件の後に政府・海軍となんらかの協定が結ばれていれば、奴は計画についてセンゴクさんやおつるさんに話を通して、出来ればそれについて会談を行うつもりだったんだ』

 

『緑の狐。もし決行されていれば、こう呼ばれるはずだった』

 

 

 

西海統合整備計画(・・・・・・・・)……ってな』

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「というわけで、『ビリオン・ラック』計画の細部を詰めていこうと思う」

 

 どうにか溜まっていた仕事に一区切りが着き、遅めの昼食をロビン達と取ってから午後の会議に戻ってきた。

 

「確か、《緑の狐》という計画が元になってんだな?」

「そうだ、クロコダイル。これに関しては知らない者も多いから改めて説明しておこう」

 

 知っているのは計画の草案を一緒に組み立てたクザンとミホークを除けばダズ、ペローナ、ロビンの最古参三人組しかいないんじゃなかろうか。

 あぁ、テゾーロにも大まかな概要は話していたか。

 

「といっても難しい計画じゃない。緑の狐という作戦を一言でいうなら、五大ファミリーに独占されていた物流網と市場を取り返そう。――っという話だった」

「……そういえば、西の海はマフィアの海と言われていたな」

 

 クラッカーが意外そうに声を上げる。

 うん、そりゃそうか。

 君やカスタードが来た時には、もうマフィアの影響力はかなり落ちてたもんな。

 偉大なる航路(グランドライン)生まれの偉大なる航路(グランドライン)育ちじゃそんな感覚だろうが……。

 

「海賊連合事件が起きるまで、五大ファミリーの影響力はかなりのものだった。それこそあの海兵奴隷事件なんて大事を実行に移せるほどに」

 

 調べれば調べる程、絶対に外からの協力があったのは確信できるんだが絶妙に尻尾を掴めないままだった。

 だからこそ益々あのフラミンゴか、それに匹敵するネームドの関与を疑っているんだが……。

 

「そして各国の王も、それだけの力を持つファミリーを無視できず、根幹たる物流の多くを握られていた。貧富の格差、地域対立の深刻化が顕著だったのはコレが原因の一つだった」

「なるほど、市場の独占か」

「それと自分達の都合のみで物資を動かしていたってのもあるな」

 

 抗争が起こりそうな地域には優先して物資を送り込んで、逆に完全に自領で、自分達の存在なくしては生きていけないような立場の弱い地域からはギリギリまで搾り取る。

 

「結果として追い詰められた人間が海賊となって近海を荒らすようになり、治安が更に悪くなり、マフィアの庇護を求める。これが西の海の悪循環だった」

「……それを断つには、マフィアの市場介入を防ぐ必要がある」

「そう。で、クザンと考えたのは海賊連合事件の混乱に乗じて俺達と海軍、そして政府の三すくみを利用して安定した生産地と航路を確保し、市場を健全化しようって話だったのさ」

 

 地図の中の、この三年間ですっかり大農場となったキャネットの上に駒を置く。

 同様に、それには劣るが穀物の生産が安定してきたここ、モプチにも。

 

「生産は当然俺達。あの当時ではキャネットとモプチだけだったから広範囲に影響は及ぼせないが、だからこそ当面の間は五大ファミリーとかち合わずに共存できる可能性はあると思っていた」

 

 キャネットとモプチを繋ぐ、例の偽装港がある無人島を含めた勢力圏を丸で囲み、近隣の海軍基地――すでに俺達が制圧しているその基地へとシャッと線を描く。

 

「生産とその防衛に黒猫。その監査と輸送に海軍を。そして市場誘導と売買の利益査定と俺達のキャッシュバックを政府、あるいはこれも海軍に頼む」

 

 その基地から加盟国へと線を引き、そこから折り返して当時の黒猫勢力圏へと結ぶ。

 そうして出来た三角形を何重にもなぞって強調する。

 

「こちらが流した物資がどう流れるかを海軍や政府に監査させることで、一部だけとはいえ物流を統制できる余地を作り出し、市場の健全化を図る」

 

 あの当時これが出来ていればと思う反面、これがもし通っていたらヤバかったなと思う。

 ジャンプ漫画の敵役は、大義名分がある組織でも信じちゃいけないという教訓になった。

 

 …………。

 

 いや、よくよく考えると大義名分がある悪役ほど性質悪いモンねぇな。

 

「これが当時考えていた計画、緑の狐。実行されていれば『西海統合整備計画』と呼ぶことになった計画だ」

「……政府を噛ませるのは危なかったんじゃねぇか?」

「お前の言う事は正しい、クロコダイル。正直俺の見通しが甘かった。当時は世界政府がここまでやらかす組織だとは思ってなかったんだ」

 

 いやホントに。

 天竜人の存在こそあったけどちょいちょい政府側でも有能そうな人間はいたし、あのガープさんが一応体制側にいるんだから最低限の信頼は出来ると思っていたんだが……。

 

「この計画のために各地の開発や各種調査や統計を取っていたんだが、当然もはや政府と絡む理由はない」

 

 本当に理由がない。

 アイツらと絡んでも損にしかならんのだ。

 信用も信頼もない組織は悲しいねぇ。

 

「そこで計画を協力のための物から、我々の目的のための計画へと切り替える」

 

 地図を西の海の物から、今分かっている範囲の全図に切り替える。

 

「クラッカー、カスタード、すまんが軍機ゆえ詳細は話せないが……」

 

 この三年間で幹部と変わらない働きをしてみせる二人に確認をとると、二人とも当然とばかりに頷いている。

 

 ……なんとかビッグマムから引き抜けないかな、この二人。

 後の大幹部のクラッカーはともかく、本編で見た覚えのないカスタードなら……。

 戦力としては親衛隊の中の上。

 だけどなにより、指揮官として優秀なんだよなぁ。

 

「我々はある方法を用いて、凪の帯(カームベルト)を越えて四つの海と偉大なる航路(グランドライン)を繋ぎ、閉鎖された海を解放することを目的の一つとしている」

 

 すでに詳細を話しているクロコダイルも納得したし、ハンコック達は今更だ。

 古参幹部も当然。

 これまでずっと、このために戦ってきたんだ。

 

 …………。

 

 でもシャーロット兄妹はもうちょっと驚いてくれてもいいんだよ?

 納得するの早くない??

 

「今後西の海の勢力圏は、防衛のための軍事力同様、その生産力を三倍に高める事を主目的として各国の王に周知させる」

「魚人島を取り返して、私達が新世界と西の海を結ぶ時に最大の要地になるからだよね?」

 

 ロビン、花丸。

 

 成長して俺と同じように髪を伸ばして後ろで束ねている姿は、ワンシーンだけ出て来た原作での逃亡中のロビンとそっくりだ。

 おそらくまだその頃の歳ではないだろうが、三食キチンと食べているためか背も大分伸びたから尚更。

 

 違うのは服装が俺達のマークが入ったスーツを着ていて、キチンと身綺麗にしていることくらいか。

 

「そうだ。そしてそれは西の海だけではない。これから俺達が征く偉大なる航路(グランドライン)の島々も同様だ」

「キャプテン、東の海(イーストブルー)北の海(ノースブルー)は?」

「無論、同じくだ。今後の情勢に介入するには、各海に橋頭堡を築くのが絶対条件だからな」

 

 だから現在進行形で海楼石をかき集めているわけだし、なんなら今のウチの勢力下での一種の換金アイテムと化している。

 

「今回こうして幹部全員に集まってもらったのは、偉大なる航路(グランドライン)での勢力拡大とその運営についてを徹底的にシミュレートするためだ」

 

 新世界での航行経験は一応あるが、逆に言えばそれだけでしかない。

 ここで実際にあの海を知っているクロコダイルやミホーク、それにシャーロット兄妹を交えて徹底的に話し合っておきたい。

 

「我々の戦略目標は変わらない。我らがまず目指すのは、全ての海からの飢えの駆逐(・・・・・)

 

「そのための生産力の確保から輸送隊の運営に関してを、軍事力の拡大に並ぶ我々のプロジェクトとして内外に知らしめていく」

 

 可能ならば、まずは食料生産率を西の海ならば十年後を目安に三倍に。

 偉大なる航路(グランドライン)は状況次第だが、他国への輸出が可能になるレベルまで底上げしたい。

 

「全ての海における大規模食糧生産向上計画、これを私は『ビリオン・ラック』計画と名付ける」

 

 ……本当は偉人にあやかって『ハンドレット・ラック』にしようとしたんだけど、百じゃ計画のイメージとして少なすぎるってテゾーロに駄目だしされての『ビリオン』だ。

 

 ……十億(ビリオン)か。

 やっぱミリオン程度に留めておくべきだったかなぁ。

 いやでも百万(ミリオン)じゃなぁ……。

 

「この計画を始動させ、そして実績を積み重ねていく事で我らは各国の受け皿として大義名分を獲得し、政治面で世界政府を圧倒する」

「……そうすれば、海軍そのものを黒猫に寝返らせることもできる?」

 

 お前はこの三年間で延々それに関して相談してくるな、ヒナ。

 

「不可能ではない。無論、全てとなると難しいだろうが……結果として政府よりも俺達の方が民に血を流さず、そしてより多数の救いになると言う事を証明し続ければコチラに流れる海兵は必ず出る」

 

 すでに内部情報の流出っていう形で出ているからな。

 勢力を拡大して目に見える実績を出せば、あるいは一気に崩れるかもしれん。

 

「さて、というわけでシミュレートだ。リヴァースマウンテンを越えた後にどう動くべきか。どこの島がどういう情勢にあり、そこで求められるのはなにか」

 

 

 そしてその上で、魚人島奪還戦に向けてどう勢力を伸ばすか等々。

 

 

 

 

「文字通り、ここにいる全員で頭を絞り尽くそう」

 

 

 

「一年後に、我らの矜持を世界に示すためにな」




親衛隊まとめ、時間がかかるかもしれぬ……
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