とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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167:西海諸島連合

「黒猫に取り次いで欲しいと?」

「そうだ、カポネ・《ギャング》・ベッジ。お前にしか頼めねぇことだ」

 

 黒猫の勢力圏は当然のことながら黒猫海賊団の海である。

 その物資の運搬や管理は首領であるクロ直々に教育を施した各地の現地文官によって取り仕切られており、外部勢力が入り込む余地はない。

 

 ある一団を除いては。

 

「三年半前のスードッグ島事変以来、西の海はどの島も地獄だ」

「……加盟国ですら、値上げされた天上金のおかげでカツカツらしいな」

「ああ。しかも天上金の幅が広がったせいで、金が足りなければ色んなモンが持っていかれる」

 

 黒猫海賊団は白ひげ海賊団やビッグマム海賊団と繋がりこそ持っているが、正式に同盟していると公言してはいない。

 

 同盟関係を正式に口にして、かつ揺らぐことなくその関係を維持しているのはただ一つ。

 五大ファミリーに代わる新たな勢力として勢力を伸ばしているベッジ・ファミリーだけである。

 

 ベッジは薄暗い酒場の一席で、スーツ姿の男と向き合っている。

 

「美術品の類ならばマシだが、奴らはとにかく色んなモンを持っていく。飯、酒、兵隊、女、子供……男ですら人足という名の奴隷として回収される」

「家を根こそぎ壊されて、煉瓦一つも残さず回収されたなんて話も聞いているぜ」

「ああ。世界政府も切羽詰まってる」

 

 数々の海賊の台頭による加盟国の喪失はたまに起こる事だったが、この数年はそのレベルを超える勢いで加盟国が消えていった。

 かつては200を優に超えた世界政府加盟国は、今では150以下になっている。

 この減少速度が続くのであれば、十年後には100を切るのではないかと噂になるほどだ。

 どれほど世界政府がその信を失ったかよく分かるという物だ。

 

「だがどういうつもりだ? 黒猫はよほど隣がアホな隙でも見せない限り、勢力をむやみに広げるつもりはねぇぞ」

 

 ベッジは黒猫の定例会の中で聞いている、開示して良いレベルの情報を確認しながら口を開く。

 

「どうしても駄目か? ウチの縄張りに旗を立てるだけでいいんだ」

「奴らの旗を安く見過ぎだ。それに今広げれば均衡が崩れる。もしそれをやれば結果として、今残っている五大ファミリーの勢力圏を荒らすだけの結果になりかねない」

「……Catを。そっちの通貨を流すのもか」

「危ねぇ橋を渡ろうとするな。下手に出回れば架空通貨発行罪で世界政府に目を付けられる。お前らの所は、実態はともかく加盟国圏がほとんどだろう?」

「そっちこそ分かっているだろう。ベリーはもう駄目だ。……少なくとも、西の海ではな」

 

 ベッジと話している男は写真を取り出す。

 ごく普通(・・・・)の市場の写真を。

 

「屋台のなんでもない軽食(ライトミール)一つが一万ベリーだ。それこそ五年前はいい所二百から三百ベリーだった代物が」

「……クロがある程度は食料を各国に流しているハズだ。下がらねぇのか?」

「分かってるだろ。モノの問題じゃない、金の問題だ」

 

 スーツの男は短くなった紙巻き――おそらく、自分で巻いたのだろう不格好な紙煙草を更に深く吸い、フィルターギリギリにまで火を通す。

 

「ベリーだけを持ってる奴なんかもうどこにもいない。チキ、ヴァル、ヴァナール、クー、パルス……。各地域が発行し始めた独自通貨を持ち合わせて売買に使うのが普通だ」

「ならそれを使えばいい」

「ベッジ、信用だ。黒猫が発行して三年間運用を続けているという実績が生む信頼がCatにはある」

 

 とうとう味のしなくなった煙草を灰皿に押し付け、男は前のめりに、

 

「お前らの勢力圏では新鮮な、(しな)びていない作物や干していない生の肉が市場に並んでいる。薬草も、茶も、酒も、煙草も葉巻もだ!! そこで売買できるCatがどこも欲しいんだ。その取引の機会が!!」

 

 男は五大ファミリーでは名うての存在だった。

 いくつもの娼館を経営し、上質な薬物の販売ルートを保持して荒稼ぎし、その金銭を使って繁華街の顔役となっていた伊達男。

 

 その男のスーツは、相当にくたびれ、薄汚れていた。

 

「なぁベッジ頼むよ! 俺とお前の仲じゃねぇか!」

「……仮に通したとして、俺に旨みがねぇ」

「あ、後払いにはなるが必ず用意する! 黒猫勢力圏じゃ、好きに商売できねぇだろ!」

 

 対してベッジの服は、汚れはもちろんほつれ一つない。

 吸っている葉巻は三年前に比べると少々みすぼらしいが、それでもその燻らせる紫煙の香りは気高いままだ。

 

「Catを使って周囲とのルートを復活させれば、その一つをお前にやる! 貧乏な村落から女と作物を卸させていたヤツだ! ……復興には少し時間がかかるかもしれねぇが」

 

 まだまだ長い葉巻を吸い、その火口が紅く光る。

 

「黒猫に対する土産はもう持ってきている。そりゃ質は黒猫領には劣るが、十分な量の食料と煙草だ。今のご時世じゃ食料はもちろん、嗜好品だって大事だ。そりゃ黒猫領でも変わらねぇだろう?!」

 

 ベッジは何も言わずに、ジッと男の話を聞いている。

 

「……確かに、黒猫圏じゃ商売の自由度って意味では以前よりも狭い。それは事実だ」

「なら!」

「あぁ、お前さんの言う事は一理ある」

 

 

―― チャキ……っ

 

 

「――が、それならそれで欲張るべきじゃなかったな」

 

 聞き終わり、そして男の額に拳銃を突きつけていた。

 

「……な……おい、ベッジ!?」

 

 男はとっさに両手を上げ、何か弁明の言葉を吐こうとするが。

 

「ファーザー、やはりありました! 土産という食料や煙草の箱を調べた所、いくつかの中に黒猫領では禁制品の薬物が仕込まれています!」

「すぐに回収して処分の用意を!」

「……念のためにテゾーロに一報入れとけ。検品とその始末を確認させる」

 

 銃を握るその手に力を入れ、指を引き金に掛ける。

 男はいつ火を噴いてもおかしくない銃口に目がくぎ付けになりながら、必死に叫ぶ。

 

「待て、待ってくれベッジ!」

「世界政府の依頼だな? 後ろ盾になる代わりに黒猫領内を荒らせと。増えたとはいえ民の数が大きく限られている今、薬物ならば容易くその生産力に打撃を与えられるし、黒猫への悪評を作る材料にもなる」

 

 その男の姿は、ベッジがかつて目にした伊達男から程遠かった。

 

「それに、そこらの雑草を適当に乾燥させて粉にした物を『黒猫』の――あのペローナの薬といって高値でバラ撒いていたのもお前だろう。調べは付いている。おかげで流行り病に襲われたアファ島の村はほぼ壊滅した」

 

 他人を食い物にして大金を稼ぎ、その金をもって贅の限りを尽くした男が、みじめな末路を遂げようとしていた。

 

「待て、聞いてくれベッジ! 黒猫領は金になるんだ! ちゃんとした金だ! 賞金首に食いモンに女、それに人魚! それさえ手に入ればチンケな村の一つや二つチャラになるほどの――」

「それはクロがクロだからこその価値。黒猫が黒猫であるがゆえの価値だ」

「何を言ってやがる! 金は金だろうが! 売れるモンなら売って金にするのが俺ら――」

「もういい」

 

 それ以上、男の声が響くことはなかった。

 乾いた破裂音と共に、男の額に穴が空いたからだ。

 

「――ちっ、余計な仕事を増やしやがって」

 

「ファーザー、黒猫より返答が」

「人を寄こすと?」

「はい。すぐにトロイさんをこちらに寄越すので、それまでの間に整理を頼むと」

「妥当だな。おい、コイツの手土産をひっくり返して徹底的に調べろ」

 

 

「ったく、もうすぐ奴は偉大なる航路(グランドライン)に発つんだ。だからこそ、この手の小細工が通用するわけねぇだろうが」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 港町シャムロックはここ最近、いつも以上に賑やかであった。

 水夫達は走り回り、彼ら相手に商売する人間や魚人達が開く屋台はいつもの倍は開かれている。

 それらを管理する役人達は監視の目を光らせ、魚人達は人間では持ち運びできない重い荷物を運んでいる。

 

 それらは全て、この三年で西の海でも屈指の大きさの大港湾になったこのシャムロックに停泊している黒猫の保有する船に大量の物品を積み込むための大作業の中の一幕である。

 

「……三年。いえ、四年近く前には、この辺りがこんな賑やかな大都市になるとは思いも寄りませんでした」

「当時、我々が到着した頃はただの荒れ地でしたからね」

 

 その一帯を見下ろせる位置にある小さな館。

 首都でもある王都の外れにある黒猫の監視施設も兼ねた場所に、俺が王女殿下――いや、女王陛下を連れて来ていた。

 当人の希望で、シャムロックを一望できる場所へ案内してほしいとの事だった。

 

「それがこうして、数十隻の軍艦が同時に船を着けられるほどの大きな港町に……」

「魚人や人魚の皆様のおかげです。離れた地での工事が終わってからは多くの方が協力してくれましたので」

 

 本当に助かった。

 特に護岸工事。

 

 おかげで本来下手すれば十年くらいかかりそうな工事が半年ちょっとで終わるとか魚人パないわ。

 ジンベエもその指揮執ってる中で魚人部隊のまとめ役になったし、色々いいことづくめだ。

 

 …………。

 

 そのせいかジンベエ、手配書付いちゃったけど。

 一億の首になっちゃってるけど。

 

 本人は喜んでいたからいいけどさぁ。

 

 ついでにタイガーも一億五千万の首になった。

 

「クロ」

「ハッ」

「征かれるのですね?」

「……ハッ」

 

 明日には第一、第三艦隊が到着する。

 で、その時の積み荷補充の用意も今並行してやっている。

 予定通り進めば……。

 

「事前にお伝えした通り、十日後には」

 

 ようやくだ。

 あの時、本来ならば偽装密輸船の中身を頂いて軍資金さえそろえば即座に偉大なる航路(グランドライン)入りするハズだったのが、アミス達を発見してアレコレあって裏切られて裏切られて……。

 なんやかんやで長かったなぁ。

 肝心の五大ファミリーもなんか勝手に滅びそうになってるし。

 

 少しでも加盟国の手綱を握り直そうとして、幹部勢はともかく鉄砲玉であるチンピラ達がとっ捕まって奴隷落ちしたし……。

 

「……分かってはいても、やはり不安に思ってしまいますね」

 

 まぁ、それは分かる。

 正直またダズを残して行こうかとも思ったんだが、偉大なる航路(グランドライン)での勢力拡大はどうしても頭数が必要だ。

 なにせ島と島を繋ぐことが難しいんだ。

 より多くの団員を偉大なる航路(グランドライン)の航行に慣れさせる必要もあるし、となれば当然それを統率できる人員も多く連れて行かなければならない。

 

 割と真面目に偉大なる航路(グランドライン)での作戦はほぼほぼ総力戦になる。

 先に控えている魚人島奪還戦はもちろん、それまでの制圧・開発もだ。

 

「西の海の守りはトロイを始め有力な将を配備し、盤石にしております。それに政府も今現在、動くに動けない事は確認しておりますので」

 

 この三年の間に、天竜人が奴隷という名目で個人戦力を買い集めているのは確認している。

 最初は自前の略奪部隊を編成するつもりかと警戒していたし、実際そういう使われ方をしたのも確認している。

 しているが――その最大の目的は他の天竜人への牽制である事も確認出来ている。

 

 この三年の間に、聖地ですら――というか聖地だからこそ食料が届かなくなっている。

 贅沢云々抜きに、各海の反政府戦力が全力で抵抗し政府への物資や天上金を輸送する船や、聖地マリージョアに物を運び込むボンドラとかいう設備は徹底的に破壊されている。

 

 西の海側でもそれは確認出来た。

 

 現状確認は出来ないが、恐らく聖地は今数少ない物資を巡って天竜人同士で静かなにらみ合いが始まっている。

 外から物は届かず、内では本来割れてはならない天竜人に火種が出来た。

 

(打って出て攻勢に出るには、西の海は盤面がもう整っている以上リスクが高すぎる。諜報・工作対策も余所に比べて整っているウチを敵に回す可能性は少ない……ハズ……少ないといいなぁ)

 

―― あそこにたくさん食料と奴隷がいるではないかえ! さっさと全部持って来るえ!!

 

 とか言い出してもおかしくないのが天竜人だからなぁ。

 

「幸いこの数年の間の訓練により、私も体が仕上がりました。いざという時は空を駆けてでも、このモプチの危機に駆け付けましょう」

「うふふ。レイリー殿やミホーク殿との斬り合いが見られなくなるのも寂しくなるわね」

 

 いや、ただひたすらに民衆をビビらせるだけだと思うんですが……。

 リガロ王妃は爆笑して俺の公開処刑ショーを肴に酒飲んでたけど。

 

 …………。

 

 いや、考えてみればミホークをツナギの人と呼んでたおばあちゃんは平然としていたなぁ。

 かなり本気で二人と戦った時も『あらまぁ、今日もお空が割れてるねぇ』と言っていたってトーヤが言ってたか。

 

 去年大往生して、ミホークと一緒に葬式に参列したのがついこの間の事の様だ。

 畑仕事の先生だったって、ミホークも珍しくしんみりとしていたな。

 今もたまに墓参って掃除してるし、なんならそれを手伝わされる。

 

「今度は、いつ会えるかしら」

「……いかに我々が手早く偉大なる航路(グランドライン)前半の海に基盤を築けるか。それにかかっているでしょう。……五年前後。と私は踏んでおりますが」

 

 まずはウイスキーピーク。

 ……正確にはまだ存在しないから、『サボテン島』の制圧か。

 現時点であそこは木っ端海賊達が適当に縄張り敷いて睨み合ってる海賊島だと聞いている。

 三年前の聖地情報だからちょっと信憑性はアレだけど、まぁ、デカくてまともな統一勢力が出ている可能性は低いだろう。

 

 あそこを制圧して最初の基盤にすると同時に、ネプチューン王率いる魚人組が先行して各地に散って活動している魚人勢力の説得、結集。

 

 そこからは補給線の安定を第一目標に進軍の目標でもあったジャヤまで進む。

 

 そこをこちらの拠点として奪還作戦の組み立てに入って――

 

 その後、決戦だな。

 

 魚人島を取り返せず、封鎖された海のままになるか。

 あるいは奪還し、まったく新しい海を俺達が開くか。

 

 今後百年を左右しかねない決戦が待っている。

 待つなよ。頼むから帰ってくれ。

 

「クロ」

「ハッ」

「約束、してくださいね?」

 

 色々あって、共に過ごす時間が増えた陛下が手を取って来る。

 まぁ、奴隷として扱われた頃のストレスでおかしくなってた王様達を抑えるためのアレコレ越えて正式に即位してから大変だったもんなぁ。

 

「また、このモプチに戻ってくると。あの聖地から帰ってきたように」

「――ええ。陛下」

 

 そういうと陛下は、そのまま蒼い町から広がる海を見る。

 

 哨戒に出ていたダズの船が遠くから近づいている。

 後ろに何の船も曳いていないと言う事は、今日も平和だったのだろう。

 

「必ず。今一度海に秩序を取り戻し、このモプチを全ての海と繋ぐために戻って参ります」

 

 だからこそ、明日正式に宣言しなければならない。

 ただ生存するため、自衛のためだけに集まったのではない。

 まったく新しい秩序の象徴となるべく、俺達の下に集まった国家群が一歩を踏み出した証として。

 

 海猫(かいびょう)元年。

 黒猫海賊団、モプチにて新たな連合政府の設立を宣言。

 

 西海諸島連合、発足。

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 

 これは後々センゴクさんから聞いた話だが。

 

 ウチが正式に連合国家である事を宣言した時、マリンフォードは完全にお通夜の雰囲気だったらしい。

 

 ごめんて。

 いや俺らはなんにも悪くないけどごめんて。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)

 海賊王、ゴールドロジャーが唯一制した海は、今現在まさしく海賊の海となっていた。

 

「野郎共! 戦闘だぁ!!!」

「こんな乾いた(・・・)国に大した旨みはねぇ! 目についたモンを頂いてさっさとズラかるぞ!!!!」

 

 世界は己の生存を賭けた終わりの見えない戦争の時代へ突入。

 そのため国にいられなくなったか、あるいは所属を隠して()から物資を奪うためか。

 大小様々な海賊団が現れ、ありとあらゆる国家がその被害に遭っていた。

 

「おのれ! また海賊か!!」

「住民の避難を急げ! 三日前に街を壊されたばかりなんだ!!」

「武器を取れ! これ以上我らの国を焼かせるな!!」

 

 世界政府は各国に兵力の提供を呼び掛けていたが、大半の国はこれを無視。

 この乱世の中で急増した海賊への対応にそれを割り当てていたが――それでも広がる被害を完全に止める事は出来ずにいた。

 

 

 

 

「そうか、海賊は撃退できたか」

「ハッ。敵海賊は『拷問官』ヤートゥ。先日手配書が更新されていた、七千万ベリーの賞金首です」

「七千万。……三年前ならば中々の高額首だが……」

「今や、賞金額は当てになりませぬ。ベリーの価値が安定せず、この国の経済も……」

「うむ」

 

 砂漠の国、アラバスタ。

 世界政府加盟国の中でも屈指の大国。

 

 だからこそ、連日おびただしい数の海賊に襲われていた。

 一度海賊を撃退しても、数日後にはまた襲ってくる。

 

 世界政府加盟国だから。

 天竜人の下に未だ付いている国だから。

 政府戦力に金や物資を回す存在だから。

 

「チャカ、済まぬな。お前も兵士達も休ませてやれずに」

「いえ、相手があるがゆえの戦場です。陛下こそ、ようやくティティ様がご懐妊されたというのに」

「ティティも分かっておる。今は国難の時代であると」

 

 首都アルバーナ。

 アラバスタの心臓にして顔と言える都の王宮にて、頼れる将軍の報告を聞き未来を憂いている若き王――は眼下に広がる城下町を見下ろす。

 

「去年の世界会議(レヴェリー)は、出席した国はたったの十五ヶ国だった」

「そこまで世界政府の求心力が?」

「うむ。……加えて、海に出る事そのものが怖いのだろう。海軍すら手が足りておらん」

「……我らの護衛船には、大将赤犬が乗船されていましたが」

「なんとも言いづらいが、政府にとってアラバスタが無視できないというのもあるだろう」

 

 コブラの深いため息を、アラバスタ王国護衛隊の一人であるチャカは可能な限り表情を消して聞き届ける。

 

「新しい象徴が必要なのかもしれんな」

「象徴、ですか」

「あぁ。世界政府はもはや世界(・・)を治める政府ではなくなってしまった」

 

 でなくば、世界政府からの世界会議(レヴェリー)出頭要請を受けた五十ヶ国の内、半数以上が拒否するなどあり得ない事だった。

 

「天竜人という絶対権力者を掲げた歪な連合国家の一つ。それが各国の想いだろう」

「……アラバスタが、まとめ上げる事は……」

「無理だろう。我らもまた、世界政府を構成する一つだ。……だからこそ、イガラムやお前達に無理を強いてしまっている……」

 

 仮にも世界政府加盟国が、こうも連日海賊や謎の武装勢力に襲われ、その対処に海軍が悉く間に合っていないなどあってはならない事だった。

 

 

「ゆえに、必ず現れるだろう……」

 

 

「この時代を舵取り出来る程の才が。その象徴足り得る先駆者が」




もうちょい書きたいキャラはいたけど、次回より六章。
グランドライン編第一幕となります

次回は火曜日の投稿から少し遅れるかもしれません

あと、親衛隊のまとめですが思ったよりも時間がかかるため、チマチマ書き貯めて検索用の一覧同様に活動報告を利用して作成し、そのリンクを各ページ前書きに貼ろうかと考えております
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