とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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170:『助けに来た』

「ダズ、武装した連中が来てるぞ。騎兵50。二時の方向」

「……ゴースト偵察は相変わらず便利だな。距離は?」

「松明の類は持ってねぇが、夜間でももうじき視認できるくらいだ。ほら、蹄の音が微妙に聞こえて来ただろ」

 

 黒猫海賊団の目下の課題は、とにもかくにも『土地』と『人』を手に入れる事である。 

 

 偉大なる航路(グランドライン)前半での最終戦略目標である魚人島奪還戦への備えとして、さらなる兵力の拡大は当然であり、であればその兵力を支えられるだけの生産力が必要となる。

 

 総指揮を執るため仮拠点にてテゾーロと共に各種調整に当たっているクロに代わり、現場での差配を担当するのが副総督であるダズの仕事となった。

 

「にしても、騎兵といえ50ではこの軍勢に対しては少なすぎる。こちらの数を把握できていないのか?」

「出せる兵力がそれで限界だったんだろう。……どこもかしこも追い詰められてんなぁ」

 

 ダズ達がこの島に上陸したのは、夜を待ってから。

 生活のための灯りを発見し、島民のおおよその生活範囲を把握するため。

 

 なにより、昼間に海賊旗を掲げて上陸し、混乱を助長したくなかった。

 船でいきなり近くまで行かないのもそのためである。

 

 その闇に紛れて上陸し、島民がどこで生活しているかを探るための先遣隊。

 だが、歩けど歩けど生活の痕跡は見つからず――

 

「あぁ。屋外だというのにここらは死臭が立ち込めている。しかもあちこちに服を着たままの腐乱死体や骨が転がって……」

 

 ただ命を奪い合った痕跡だけが散乱していた。

 

 兵達のまとめ役の一人として同行していた客将、シャーロット・カスタードが、鼻をひくつかせながら周囲を見回す。

 

「……よほどの激戦がここらで起こったようだな。それも数回」

 

 見通しが良く、部隊が展開しやすい高低差の少ない緩やかな丘陵。

 攻めやすく、守りやすい。ゆえに土地勘の差が大きく影響する戦場を。

 

「侵略者からすれば進みやすく、だが地元の人間からすれば襲いやすい」

「キャプテンならば、大部隊を持ってこられないなら避けるだろう地形だ。……馬車の残骸などがあるが、積み荷などはどうだ? ペローナ」

「そっちは見当たらねぇ。さすがにそれは回収したんだろう。それでいて死体は放置。……マジで余裕がねぇんだな」

 

 蹄の音が一際近づく。

 カスタードが「全体、止まれ!」と一喝すると、すぐさま千を超える兵士が隊列を崩さずその場に停止。

 続く「平陣!」という短い号令に、縦長の行軍陣形から戦闘兵が素早く横に広がり、横長の長方形の防御陣形を展開する。

 

 この三年の間にクロから黒猫での戦いを叩き込まれたカスタードは、黒猫式の戦術を徹底的に叩き込まれていた。

 

 果たして、その陣形展開を見たからか。

 近づいていた騎兵部隊は、その勢いを徐々に落としてダズ達の前に立ち止まる。

 

「止まれ! 貴様たちは何者か!!」

 

 50の騎兵の先頭に立つ、戦斧(ハルバード)を持つ女が叫ぶ。

 

「黒猫海賊団副総督、ダズ・ボーネス。貴官は?」

「……っ、海賊……!」

 

 女は下馬し、その重々しい得物を構える。

 

「貴様らもっ! 奪いに来たのか!! なにもかもを!!」

 

 女は兵士を率いる将らしく革製の立派な防具を身に着けているが、それは酷く汚れている。

 拭ったのだろうが、それでも泥がこびり付き、固まっている。

 

 戦斧(ハルバード)も同様だ。

 明らかに手入れが間に合っていないまま、その切っ先を『鋼刃』へと突き付ける。

 

「……否」

「ならば奴隷狩りか!」

「否」

「だったら……海賊がこの島に何をしに来た!!」

 

 後続の騎兵たちが、いつでも馬を駆けさせようと手綱を握りしめている。

 

「……助けに来た(・・・・・)

 

 だが、その殺気走ったどれもが『鋼刃』の目には哀れに映って仕方なかった。

 

 誰もが痩せこけている。

 

 将である女も、それに続く兵士も、その下で踏ん張っている軍馬さえ。

 

 偉大なる航路(グランドライン)に入ってから。

 否、入る前の西の海で『黒猫』が散々見て来た姿と寸分違わず重なっている。

 

「この島にいる民衆を、助けに来た」

 

 だからこそ、ダズは力を込めて断言する。

 

「っ! ふざけるなぁっ!!」

「ふざけていない」

 

 ダズが自分の半歩後ろに控えるカスタードに目配せを送ると、カスタードが後方の兵にハンドサインを出す。

 それを見た部隊長が即座に兵を動かし、一つの大きな塊だった陣形が真ん中から二つに分かれる。

 

 陣形を割ってこの島の将兵の前に姿を見せたのは、大量の馬車や荷車である。

 

 兵士達の糧食に加えて、もし発見した村落が救助を必要としていた場合に備えた緊急用の補給物資。

 

「海からの偵察時点で、浜辺に戦闘の跡が残っていたからな。最悪すでに海賊や不良海軍に占領されている可能性も踏まえて、取り残された人間のための物資を持ち運んで来ている」

 

 ダズの言葉に将兵は警戒を解かないまま、それでも豊富な物資に思わず目を奪われる。

 

「食料と水、医薬品。他にも役に立ちそうな物は出来るだけ持ってきた」

 

 戦斧を構えたまま、だが返す言葉を失っている女に向けて、ダズは一歩踏み出す。

 

「信じてくれるまで、何度でも言おう」

 

 あまりに敵意のないその一歩に、女は反応せず。

 

「もう大丈夫だ」

 

 だが、どれだけ厳しい環境でも緩む事のなかった護国の戦斧の切っ先が緩み――

 

「助けに来た」

 

 

 

 

 

 

「本当に……奪わない……のか?」

 

 ついに、刃が下を向いた。

 

「ああ」

「誰も殺さず、連れて行かないのだな?」

「然り」

 

 その刃を地面に突き刺し――

 

「こんな時世に……助けて……くれるのか……っ!?」

 

 その場に、泣き崩れてしまった。

 

「……遅くなってすまない」

 

 その姿に、ダズはかける言葉が見当たらず、思わず謝罪を口にしていた。

 ずっと張りつめていた気力が途切れ、騎馬を率いていた勇ましい将は、その場に涙と嗚咽を零しながら膝を突いて、

 

「もう、皆限界なんだ……っ。民は内地に集まりどうにか生きているが、疲労からか病に倒れる者が続出し、一方で海賊も増えるばかりだ」

 

 心が緩んだせいか、将らしい言葉が消えた彼女にダズは歩み寄り、膝を突く。

 

「すでに入り込まれ、村をいくつか占拠されている。追い出すどころか、略奪を妨害して被害を減らすので精一杯なのだ……」

 

 そうして零されるこの島の内情に、ダズを始めとする黒猫の兵士達に緊張が走る。

 

「待て。俺達以外に海賊が来ているのか?」

「ああ。船を使い、大河の中流域から攻め込んで近場の村を占拠している。……我らは奴らの夜襲に備え、巡回していた所だったのだ」

 

 略奪を繰り返す海賊の一団に村が占拠されている。

 その情報はこの島の安定化と協力を求めている黒猫にとって無視出来るものではない。

 

「中流ってことは、アタシたちが目指してる所じゃねぇか!」

「わずかに明かりが見えたために向かっていたが……村人ではなく海賊の灯だったか」

「ちっ、占拠って事は村人が結構な数捕らわれてるんだろ。ついでに近隣からも攫っているハズだ」

 

 今すぐにでも救出作戦を展開せねばならない。

 それが黒猫の将兵の共通認識であり、すぐさまダズの目配せの意味を察したカスタードの指揮によって、部隊が二つに分けられている。

 

「ペローナ。頼んでいいか?」

「任せろ。夜の奇襲も、無傷で救出するのもアタシの十八番だ」

「前線は私が指揮しよう」

「頼む。俺は半数を率いて、近隣の村の防衛に回ろう。……名前は?」

 

 ダズが膝を突いて、心が折れそうになっても戦い続けた騎士に手を差し伸べる。

 

「……メイムだ」

「すまん。敵の位置もそうだが近隣の村の位置を教えてくれ。救援物資を運ぶついでに、もしもに備えて兵を防衛のため配備したい」

「こちらの兵に案内させる。それと……」

「なんだ?」

 

「あの海賊を討つというのならば、どうか我らも参戦させてほしい」

 

 

 ダズは改めて、彼女達の様子を見る。

 兵も馬もやせ衰え、だがその目には、まだかろうじて戦意が残っている。

 あるいは、これから海賊と戦うつもりである黒猫の勢いに中てられ、取り戻したのかもしれないが。

 

「……腹が減っては戦は出来ぬ。だが、戦う前にいきなり胃を膨らませるのも危険だ。薄い粥を作らせるから、空腹を誤魔化す程度に口を付けるといい。馬にも、こちらの飼い葉と水を与えておく」

 

 

「――総員、一度ここに陣を敷いて攻撃態勢を整えろ。我々『黒猫』が民を取り戻すと宣言したのだ」

 

 

「すぐにでも動く。我らの矜持を示せ」

 

 

―― ハッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

『――というわけで島に陣取っていた海賊を排除し、非加盟国を一つ我々の影響下に置いたが……すまん、復興にはかなり時間がかかりそうだ』

「構わん。むしろそれだけボロボロになっても騎兵隊を維持して海賊を退け続けた国と友好的な接触が出来たのは極めて大きい。よくやった、ダズ」

 

 西の海にいた頃に比べて実働部隊――特に部隊長クラスの教育が形になったおかげで、やっと落ち着いて仕事に専念できるようになった今日この頃。

 

 拠点であるウイスキーピークに精査された各種情報を蓄えながら報告書と稟議書の束に向き合い、視察と挨拶回りをして現場の実態を確認して信頼できる幹部とすり合わせて可能な限り理想に近づけるための方針を決める。

 

 これこれ、これだよ。

 これこそ俺が求めた労働環境。

 海賊になってから数年かかったが、ようやく俺の理想とする組織が形になりつつある。

 

『その分、物資も多く使う事になる。……こういう時、ミホークがいればとは思わずにはいられんな』

 

 ホントそれな。

 

 とはいえ、西の海の勢力圏内は立ち直ったとはいえギリギリ。

 傘下の王達にある程度余裕が生まれてきているからこそ、不安要素はまだまだたくさんある。

 

 国が陥落するほどではないだろうが海賊だって出続けている中、貴重な耕作地に被害が出てもすぐさまその被害の軽減や復興への道筋を組み立てられるミホークが今の西の海には絶対に必要だった。

 

 なんか無駄に高度なジャンケンの結果イッショウに決まったが、正直結果として悪くない。

 イッショウもかなり強くて防衛戦力としては破格なんだが、知名度で言えばどうしてもミホークの方が上になる。

 

 特に、西の海では。

 

「ダズ、とりあえずそこを拠点にするつもりで人心掌握と復興に専念してくれ。必要な物があれば細目に報告を。可能な限り最高効率で送り届ける」

『だったらクロ、出来るだけ陸の兵士と衛生用品を送ってくれ! 消毒液に石灰……木炭! 出来るなら陸軍の入浴設備もありったけ!』

 

 通信越しに時折カスタードと話している声が混ざっていたが、ここに来てペローナの叫びが割り込んで来た。

 

「……ペローナさん、ひょっとしてそちらでまた流行り病が?」

 

 こっちも隣で聞いていたテゾーロが、顔をしかめて尋ねる。

 

『いつもと同じだ! 海賊にビビって住み慣れてねぇ内陸に引きこもって、クッソ狭い場所に大勢でごちゃごちゃ生活した結果の排泄や排水やらで土壌や地下水が汚染されちまってる』

「…………赤痢か?」

『多分な! 隔離治療と並行して持参した入浴設備やら石鹸の大放出でどうにか衛生面を上げたいけど数が全然足りねぇんだよ! 動かせる分全部持ってきてくれ! こっちはなまじ防衛力が残ってた分、生き残った連中多くて数がヤベェんだ!!』

『――と、まぁそういうわけだキャプテン。食料などはどうにかなりそうだが、それ以外が圧倒的に足りん』

 

 ……どちらにせよこの調子だと、最低でも半年はこちらも身動きが取れなくなる。

 その間に生存者が多いというその島の環境を安定させられれば、そのまま労働力の確保に期待が出来る。

 

 テゾーロにチラリと目線を送ると、強く頷く。

 

「よし。現場の視察も兼ねて、ロビンとイッショウに補給を運ばせる。衛生関連品を可能な限り積み込ませて、それに念のため追加食糧なんかを送ればいいかな?」

『頼む。それと、こちらの王族には挨拶をしているが、改めてキャプテンに直接会って礼がしたいと』

「……今は孤立していた海兵達の回収と慰問を優先したい」

 

 純粋な兵士であるぶん、万が一があってはならないからな。

 訓練を受けている分健康面に気を使えば復帰は早いし、取り込めば兵力として労働力としても使える。

 言っちゃなんだが今一番便利な駒だ。

 これを確実に押さえる事に専念したい。

 

「必ず顔を出すが今は多忙であり、その間は方面司令官であるお前が俺の名代である……という事を、すぐに顔を出せない事に対する俺からの謝罪と共に伝えておいてくれ」

 

 電伝虫越しというのもアリなんだが、王によってはそれも不敬と見なされかねん。

 補給輸送隊を出す時、一緒に親書を書いて持たせておくか。

 

 それにぶっちゃけ、俺がすぐに顔を出して現地の住民と関係構築しつつあるダズの手柄奪うのもなんか違うだろう。

 まずはダズに現地を固めさせて、その後代表者として部下に協力してくれた礼を言う。

 こっちの方が問題は少ないハズだ。

 

『了解した。こちらからは以上だ』

「ん、ダズもペローナもご苦労だった。……カスタードもな」

『いや、客将としてなすべきことを成しているだけです。むしろ、命を救ってもらった上に良い暮らしをさせてもらっている分、こちらが礼を言うべきか。……常日頃から、感謝しています総督』

「ん。そう言ってくれるとこちらも気が楽だ。ありがとう」

 

 そもそも数年単位で借りてて申し訳ねぇんだけどな!!

 もっともビッグマムは息子達のこっちでの活動を気に入っているのか、そのまま頼むと言っているが本当にいいのか!?

 

 …………。

 

 実際、カスタード達からもそう言われているしいいのかぁ。

 

 ともあれ別動隊との報告会を無事に終わらせ、電伝虫を置いて一息吐く。

 俺の部屋に今他にいるのはテゾーロとロビン、そしてアミスだけだ。

 

「さて……テゾーロ、ロビン。計画の予定日までに上手くいくかな?」

「艦隊を差し向ける事だけならば、恐らく」

「問題は予定期間の間にアラバスタに橋頭保を築いて、かつ駐屯とその維持が出来るかどうか、ね」

「……まぁ、クロコダイルを第三艦隊ごと常駐させれば問題ないとは思うんだが……補給線がなぁ」

 

 かつての黒猫館の中にあったソレとほぼ変わらない会議室。

 その前面に張られているのは判明している限りを書きこんだ『楽園』のおおよその海図であり、その中程に位置するサンディ島こと『アラバスタ』が、真っ赤な丸で囲まれている。

 

「目指すのは二年後。次の世界会議(レヴェリー)の開催時期を狙って上陸させたい」

「……アラバスタが世界会議(レヴェリー)に呼ばれるという前提ですが……」

「呼ばれなかったらそれはそれで構わない。少なくとも、海軍は各国の王の護衛で手一杯だ」

 

 今俺達が目指しているのはアラバスタがあるサンディ島内に、俺達の拠点を築く事だ。

 

「クロ、アラバスタはそんなに重要なの?」

「ん。ちょっとな」

 

 ずっと座りっぱなし、かつダズの臨時報告のメモを取っていたのでバッキバキになっていた肩と腰を伸ばすために軽く伸ばす。

 

 あぁ、アミスもちょうどいいタイミングでのお茶とお菓子ありがと。

 

「作戦の成否に関わらず、ハンコックが帰ってきた辺りで改めて話をするつもりだが……アラバスタ王家ってのは余り知られていない歴史がある」

「歴史?」

「ああ」

 

 西の海にいる間も、仕事に余裕が出来てからあれこれ探検をして歴史の本文(ポーネグリフ)の発見にロビンは成功していた。

 もっぱら官僚もどきみたいな仕事を任せてしまっていたが、キチンと考古学者の仕事もやってくれている。

 

 主にサルベージ品の鑑定や管理。

 橋の国での調査にも色々力を貸してくれたしな。

 

 ついでにクッソ複雑な歴史の本文(ポーネグリフ)の読み方もつきっきりで教えてくれたため、万が一別行動中に発見したとしても大まかな意味くらいは読めるようになった。

 

「アラバスタ王国。あくまで世界政府加盟国の一つであり、そのように振舞っているが世界政府は重要視している国である。それがなぜかというと――」

 

 今現在、クロコダイルが艦隊率いてそこまでの道筋を確保している王国。

 本来のワンピース世界ならば、別に制圧なんかしなくても補給線の確保のみで容易く行けた国。

 

「アラバスタを代々治めているネフェルタリ家が、天竜人の始まりでもある20の家の一つだからだ」

「…………天竜人」

 

 この数年の世界政府の醜態で、天竜人への好感度メーターが下がりに下がりまくってもはや底値を突き破っている。

 そんな中で元より底値以下だったテゾーロ君がものすげぇ複雑な顔をしている。

 

「天竜人と同じというか近い血筋とはいえ、実態は代々名君を輩出している家だ。むしろ聖地から降りていた事を考えると、天竜人にとってネフェルタリ家は裏切り者に近い存在なんじゃないかな?」

 

 で、この情報を外に漏らしていないのはコレが理由だ。

 今の情勢でこんな情報が出まわれば、最悪アラバスタが攻撃されかねない。

 

 今のテゾーロみたいに、凄い先入観が蔓延した結果世界世論が暴走しかねん。

 

「だからこそ現状で世界政府が前回世界会議(レヴェリー)にアラバスタの出頭を要請したこと、その上で今回アラバスタを再び呼ぶのか呼ばないのか。あるいは我々が関与を匂わせた際にどう動くのかを確認したいのさ」

 

 実際、全てにおいて後手後手に回っている政府の尻尾を掴みたい所ではある。

 マジで動きが見えなさ過ぎるし、回収できた海兵達は何も知らされていなかった。

 ほぼほぼ切り捨てられた人員で有益な情報は何も持っていない。

 

 精々が良くも悪くも士気に影響しそうな、胸糞悪い話しか残されていなかった。

 

「まぁ、この情勢下で万が一アラバスタが……酷い所になっていたら、その時はさすがにこちらから介入するから安心してくれ」

「……はい。その言葉を頂ければ、私も安堵できます」

 

 で、その情報を耳にするたびに天竜人に絡む全てに対して憎しみが燃え広がるわけだ。

 テゾーロですらコレだからなぁ。

 

「そしてもし、アラバスタ王国が話の通じる相手ならば情報交換が可能なビジネスパートナーとして、俺達と政府の間に立ってもらいたい」

「……緩衝地帯に? 最悪戦場にならないかしら? 政府はもう乱暴さを隠そうとしていないわ」

 

 ロビンの疑問に、民間への被害を減らす戦術展開を勉強しているアミスが心配そうな顔をする。

 

「その時のために、アラバスタ――予定では西部に作る拠点は仮の拠点。西の海で言えば、スーペリアの基地みたいな感じだな」

「……いつでも捨てられる?」

「あの国を戦場にしてでも政府がこちらと戦おうとしたらな」

 

 まぁ、実際どうなるかわからん。

 クロコダイルはやっぱり、ホームベースに成り得るあの国に拠点を持ちたいようだし……。

 

 こっちはこっちで、あの海域には押さえておきたい場所がある。

 

「まぁ、アラバスタへの干渉はあくまで政治的な理由。スーペリアの基地があの島の住民への武力面でのアピールだったように、実用性は程々で構わん」

「……もしそうならば、あの海域での『実利』はどうするの? クロ」

 

 そしてロビンは、やっぱり俺の事をこの数年で理解したようだ。

 どれだけ向こうからしたら好条件であろう案件を出しても、その中に絶対俺達『黒猫』にとっての確かな利益を紛れ込ませる。

 

 これを忘れると手痛い事になるから絶対に忘れちゃ駄目。

 

「スードック島での海域における旧46番基地のように、少し離れた島に本拠点を築くつもりだ」

「そこに実利があると?」

「ああ。どうもその島は、まだ見つかっていないけど温泉があるらしい」

「? 見つかってないのに温泉?」

「デカい山の中から時折蒸気が漏れて、温泉の匂いがするって言うんだ。つまり――」

 

 

「硫黄臭ってやつさ」

「……クロ。貴方の目当てはそれ?」

「当然!!」

 

 硫黄だぞ?!

 い・お・う!

 

 火薬の材料はもちろん農業にも医療にも活躍の道がある重要戦略物資!

 これを安定して確保できるんならアラバスタ関連でのリスクなんて全然怖くない!

 

 おまけにもはや意味を成さない原作とはいえ、コブラ王やその配下のある程度の人柄は把握している。

 上手く行けばアラバスタ周りは、この四・五年の海賊活動の中でも屈指のボーナスステージになるんじゃなかろうか!

 

「いやぁ、クロコダイルからの報告が楽しみだわ。来年までにはアラバスタを射程に。欲を出せばその時までに開拓の用意を済ませていつでも行動できるようにしたいよねぇ」

 

 砂漠地帯の活用法もミホークと事前に話し合ってアレコレ案はもらってるし、なによりアラバスタ近海の制海権を俺達が確保すれば、一番最初の計画だったジャヤも射程に入る。

 

 そこまでいけば、サウスバードの事が無くてもかなりの経済圏を確立できる。

 前にクロコダイルがテゾーロと考えていたカジノ計画もGOサイン出せるかもしれん!

 

「魚人島奪還戦こそ控えているけど、久々に未来が見えて来たわぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「テゾーロさん、アミスさん」

「はい」

「ええ」

 

 

 

「私すっっっごく嫌な予感がしてきたわ」

「……畏れながら、自分もです」

「私も」

 

 

 聞こえん!

 俺には何も聞こえんなぁ!!!!

 

 おろ? ノック?

 なにかあったの??

 

 ? ハンコックから緊急通信?

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