とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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173:非公式協定―②

 偉大なる航路(グランドライン)はその特異な海域から交易の頻度は少なく、四つの海に比べて国家という共同体が成り立ちにくい海になっている。

 国家が国家として成り立つには、多くの民が住み、その生活を支えられるだけの広大な土地がなくてはならず、その求められる広さは四つの海以上の物となっている。

 

 そしてそれだけの土地を治め、人を治め、運用する。

 それが出来て初めて国家は国家足りえる。

 

「総督! 第三区画までの民衆の戸籍作成、完了いたしました!」

「よし! 今の時点での識字率は!?」

「幸い貴族や商家の人間が多かったため、六割を超えております。残るは赤子や幼子と、貧民街から雇われ奉公として駆り出されていた子供です!」

「読み書き――出来れば四則演算も出来る者から管理補佐役を数名指名しろ。当面の配給や仕事の差配を手伝わせて様子を見る!」

 

「キャプテン・クロ! 農耕地を確認してきました! ここで働かされているのは全員奴隷です! 捨てられた子供や売買で得た奴隷を中心に農奴として扱われていたそうです!」

「癪だがとりあえず所有者が『黒猫』に変わったと伝えて仕事を続けさせろ! ただし、環境は上げてやれ! 彼らの食事や住居はどうなっている!?」

「雨風を最低限避けるだけの掘っ立て小屋――いえ、ほとんどは屋根だけの小屋とも言えないテントもどきです。食事は分かりませんが、痩せ具合からしてあまり与えられていなかったかと」

「陸軍に大至急野営テントを張らせろ! 食事はいつも通り飢餓対応食から始めて様子をみろ! その後は現地の担当に任せる! 当然日報の提出は必須な!?」

「ハッ!」

 

「クロ! 貴族の一部が自分達の財産の保護を求めて――」

「代表者を決めてソイツにそれぞれの求める物をまとめさせて報告に来させろ!! ……あぁ! 待て! ただし奴隷に関しては労働力管理という観点から全て黒猫預かりにする! これは他の貴族にも伝えろ! 絶対譲れない事だと念押しして来い!」

「わかったわ! ゴネる馬鹿は殴り飛ばしてもいいのよね!?」

「最悪数人くらい死者が出ても許す! 総督命令だ!」

「任せなさい!!」

 

 その偉大なる航路(グランドライン)に存在する国の一つ。

 世界政府加盟国、オブーレモ王国。

 アラバスタを目指して勢力圏を広げていっている中、補給のためにこっそり立ち寄ろうとした国家なのだが――

 

「クロコダイルくぅぅぅんっ!!!!???」

「……………………………………はぁ……なんだ」

「なんでこんなに忙しいんだ!!!?」

 

 もっと他にやるべき事が山ほどあるんだぞ!?

 

 勢力下についた非加盟国の数々はそもそも疲弊しているからその立て直しが必要だし、それには当然人も物も金もいるから色々節約しなきゃならんし、つまりは並行して他の稼ぎ口を作らにゃならんし!

 

 そもそも兵士の教育に加えて各地の有力者との顔合わせにこちらの占領条件のすり合わせ!

 

 一番大事な公衆衛生状況の確認とその底上げに関しても報告書がまだの所あるから尻蹴り上げなきゃならんし、あと各港湾から使えそうな船を売ってもらって改修しなきゃ今のままだと船数足りねぇし!

 

 

「なんでもクソも――」

 

「――黒猫が近づいていると知った瞬間王も貴族もほとんどが夜逃げして上が空っぽになって混乱していたこの国を、お前が管理すると言い出したからだろうが」

 

「クソがぁっ!!!! 王様が国民見捨てて逃げてんじゃねぇぞ!!!」

 

 

 チクショウ、もしも俺達の前に姿見せたら民衆の前に吊るしあげて石を……いや、あれだ、トマト――食料無駄にする余裕なんかねぇ、家畜のフン……衛生面的にアウト! とにかくなんかぶつけさせてやる!!

 

 アラバスタ近海に乗り出すための拠点としては航路の長さや国の面積からしてここは文句ナシなんだが、その分管理に人員割く必要あるでしょうが!!

 

 偉大なる航路(グランドライン)で募集して雇い入れた人員はまだ教育全然終わってねぇんだぞ!

 兵隊も! 役人も!!

 

 …………。

 

 特に役人!!

 

(クソ、やっぱより高度な組織のシステム化が必要だ! 書類資料の書式統一もまだ全然だし!)

 

 怨嗟の声を零している内にまた暫定本部としている王宮離れのドアが音を立てて開く。

 

「総督、王宮内部から回収した資料の精査に入っていますが、かなり管理が杜撰(ずさん)で記録が抜けだらけであり、過去の税収や利益、その内訳といった実態の把握には相当時間がかかりそうだとテゾーロ様から報告が入っています!」

「…………クソボケ共がぁ……」

 

 いややっぱ石でいいかもしれない。

 これ相当帳簿をぼやかして、私腹を肥やしていた典型だわ。

 

 道理で蔵が変な空き方してると思ったんだ。

 アイツら民は置いていったのに財はギリギリまで回収していきやがったな?

 

 おのれファッキング!

 のこのここの国に戻ってみろ、それまでに大義名分揃えて貴様を民衆の手で血祭りにあげてくれるわ!!

 

「よし、方針変更だアミス! 現時点での財産の把握に全振り! 政治基盤が領主に丸投げされている上にその土地がかなりバラバラなんだ! 記録すら曖昧ならば、これを利用するよりは仕切り直した方が早い!」

「では――」

「各地の領主に現状の資料を作成させて提出させろ! 書式は黒猫式! 印刷した白紙書類を書き方例と一緒に送ってやれ! 期限は十日! それに間に合わない、あるいは誤魔化し等があった領主は土地、並び領民の管理怠慢で拘束し、土地と民は黒猫で押さえる!」

「了解。馬を使う必要があるので直ちに陸軍に話を持っていき、共同で動く方向でよろしいですか?」

「問題ない! いけ!」

「ハッ」

 

 よし。良し。ヨシ! これで邪魔な領主連中を篩に掛けられる。

 もしもボロだして横領の証拠を零す奴が出てきたら民衆へのアピールとして公開処刑もありか。

 

 貴族も一部騒ぎ始めているから鎮圧の為の予備兵力を控えさせたうえで、ここらの情報を持っている商家から聴取を取って情報を分析班に回して――幸い現地兵はほとんどが王族に連れていかれたから……っ。

 

 港湾の守りに就いてる親衛隊を二組こっちにも戻し――いや、仮にもここは加盟国だった所、海軍による奪還部隊が来る可能性を考えると港湾の防備……下手に混乱させるよりは海上迎撃するべきか。

 

 よし、今すぐ哨戒を増やして、ついでに上陸しやすい拠点に対策を――

 イヤ、でも物資はともかく人員が……ぐぬぬぬぬ!

 

「おい! これだけ仕事してるのに仕事が全然減らねぇぞ!?? 一体全体どういうわけだ!!?」

「テメェが増やしてるからだよ!!!!」

 

 増やしたくて増やしてるんじゃないやい!!

 

「やらなきゃいけない事が見えてくるんだから仕方ないじゃん!! というかちょうどいい! クロコダイル、ちょっと哨戒の数増やしておいてくれ! その後俺達が上陸しようとしていた南の浜に観測所作成だ! 簡素な物でいいから頼むぞ!」

「すでに工兵は測量なり修繕なり警邏補助なりで全員駆り出してるだろうが!!」

「街に出した方を下げさせる! 幸いここは略奪されたわけじゃねぇ。混乱の被害も大方収束したし、後は王宮のどっかにあるだろう町割り図なんかがあれば――」

 

「総督、緊急報告です! 資料室にあった都市部の地図ですが、担当していた者がサボっていたのかひたすらに前年の地図をただただ写し取って適当に書き足していただけの代物のため、最新のモノでも実態との乖離が酷いです! 新しい区域ほど滅茶苦茶に! 今後を考えると再測量の必要が!」

 

 あ゛あ゛あ゛あぁあぁぁああぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!!!!!!!

 

「クロコダイル! 担当者全員引っ張ってギリギリまで絞ってやれ!!」

「もう俺の手で全員ぶち殺してくるが構わねぇな?」

「…………ステイ! 訳わからん喋らない死体見るよりも訳わからん瀕死の泣き喚く馬鹿の方が受け取る恐怖の情報量は多い!!」

「……チッ、了解」

 

 やっべぇ、そうなると人足が全然足りねぇ。

 最初から足りてないのにこうなるとアレだ。バーンだバーン。もう全部バーン。

 

 単なる作業ならこの国の民から食料配給の追加を餌に雇えるんだが、計測となると教育を受けた人間が欲しい。せめて監督役が。

 

(商人ならば四則演算は出来るし、教育も受けているだろうが……さすがにこれは信頼できる身内を中心にしたい。今引っ張れそうなのは……帰ってきたばかりだけどロビンとイッショウのコンビを使うか? ロビンなら――)

 

「総督、哨戒より緊急報告!」

 

 もおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉおぉぉぉおぉっ!!!!!!!!!

 今度はなんだよおぉぉぉぉぉおぉぉぉっ!!!?

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「さて。もう二、三島を経由すれば、わらわが知る限り最も凪の帯(カームベルト)に近い島へ到着する」

「となれば、そこを拠点にして用意を整えて出撃カネ」

「用意は念入りにな。海楼石はかつて主殿を迎えに行った時以上に詰め込んでいるから大丈夫であろうが、今回はただ凪の帯(カームベルト)を渡れば良いという物でもない。いざという時に備えねば」

「ハチ君――はっちゃんを始めとした魚人の協力を得られたのは大きい」

「うむ、おかげで周囲の安全も確保しやすい。魚人種族を味方に付けられたのは、我ら『黒猫』に取って大きな追い風である」

 

 先の非公式会談を終えて半月。

 ハンコック率いる第一艦隊は、女ヶ島まであと少しという所まで船を進めていた。

 

「主殿も新たに領地を得たと聞く」

「今は分からないが、オブーレモといえば五年前には八百万以上の人口を持っていた加盟大国だガネ」

「……主殿が近寄っただけで逃げだした腰抜けの王だったと聞くが、そのような愚物が頭であったのならば、手足にもその腐敗は進んでおったハズ。再統制には主殿と言えど手を焼くであろうな」

「いやはや、まったく」

 

 ハンコックもまた、ここに来るまでに小国が多いとはいえ既に五つの国を陥落させていた。

 

 協力的であったが故に、後々総督であるクロの手が入る事を承知させた上で旗を掲げて縄張りとした国があれば、歓待を装い特別賞金額が掛けられている黒猫幹部であるハンコックの身を狙った国もある。

 

 当然後者は叩き潰し、親衛隊を暫定代官として管理に当たらせている。

 西の海での経験に加えて、クロ不在の中での各島の統治の根幹を決めてきた経験の積み重ねが、彼女を黒猫最高幹部の一人として誰も文句を言わない実績となっていった。

 

「直に海軍が連れて来た海賊(・・)らも主殿の下に辿り着くじゃろう」

「海賊……まぁ、確かに海賊行為をして捕まった者ダガネ……」

 

 また一つ増えた縄張りの島に、黒猫のある意味で主力と言える工兵たちが即席の港を作るために走り回っている。

 

「もはや賊になるしか生きる道を見つけられなかった者達じゃ。言いたいことは山ほどあるが、海軍であるガープが我らにしか話を持って来られなかったのも分かる話よ」

「加盟国は全体的に食糧難。今回渡された食料と水は、本物の海賊から摘発してまだ報告してなかった物を流したらしいガ……」

「……これまでは軽い罪で済まされていた者も、今では容易く処断されると耳にしておる」

「生きる為に賊に堕ちざるを得ず、そしてそれでも賊だから恩赦があり得ない世界。……随分と窮屈になったものだガネ」

「……真っ当に生きる事が難しい世界とは、民からすれば正しく地獄じゃな」

 

 クロがたまたま手にした国の王のように腐った王も多くいるが、逆にまともな王も確かにいる。

 だが、人格者であるがゆえに決断が遅れ、自国の民を飢えさせている王もまた珍しくなかった。

 

 海賊であるハンコックに跪いて「皆を助けてくれ」と泣きつく王もいた。

 

 戦士である彼女にとって、思う所はある。

 

 弱いと。

 

 非情な決断を下すだけの心も、余所から奪ってでも生き残ろうとする胆力もなかった故に民が苦しんでいる。

 

 だが、同時に哀れでもあった。

 

 こんな時代でなければ。

 

 賊の数が少なく、外敵の脅威が五年前の程度であれば「良き王」として君臨出来ていただろう、と。

 

「まぁ、主殿とテゾーロが揃っているのであれば大抵の事はどうにかなるであろう」

「私としては、その二人に加えてミホーク殿がいてくれればと思わずにはいられないガネ」

「奴は例の()を使って新世界から来る。本格的にこの『楽園』を整備するのは、魚人島奪還戦を乗り越えて以降の話になるじゃろうな」

「……つくづく思うガ、最大戦力にして農耕の専門家という存在がどれだけ心強かったか」

「兵糧を増やせる、ある程度島や町を任せていい最大の守り。……主殿と並んで、海軍や政府が喉から手が出る程欲しい人材やもしれんな」

 

 定時連絡で開墾成果を報告するたびに、新しい田畑の作付け面積や発見した病害とその対策の過程や成否を事細かに話す剣豪(・・)

 

 言葉にすればよく分からない存在である。

 

「まぁ、今回の海軍からの申し出で人足は手に入った。間諜が少々怖いが、そこは主殿やその周りにいる親衛隊に任せた方が良かろう」

「同意見だガネ。後はボガード殿と総督に任せ――」

 

 あっ、と。

 ギャルディーノが口を止める。

 

「どうした?」

「東の海の捕虜(・・)は海軍が送ると言っていたガネ」

「じゃな」

「とはいえ我らは敵同士。ふいの遭遇戦もあり得るし、最低限の護衛は必要だガネ」

「当然じゃろう。一応主殿には濁して報告しておいたが、まぁ海軍もそれなりの――」

 

 ここに来て、ハンコックも口をポカンと開けたまま動きを止める。

 

「……まさか?」

「どう、カネ?」

「……いや。いやいや、奴にとって東の海は故郷でもあるのじゃろう? さすがに長く空けたままには出来まいて」

「私も話の感じからして、ボガード殿が向かうと思っていたのだガ……」

 

 ハンコック、ギャルディーノ二人はしばし顔を合わせ、

 

「ギャルディーノ」

「ハッ」

「我らは海軍との非公式会談を無事に終え、その成果を持って海軍が偶然(・・)今の主殿がいる近海に現れるかもしれないと報告した。そうじゃな?」

「その通りだガネ」

「必要な事は全て伝えておるな?」

「抜けなく伝えた。間違いないガネ」

 

 そして再び無言のまま、少しの間二人は顔を見合わせている。

 

「よし、ならば仕事に戻るぞ。この地もやせ細っている。先を急ぐがこのままには出来んからな」

「まったくもって」

「第一艦隊提督として、次の定例報告までに良い結果を主殿に報告できるように気張らねばならぬ」

「まったくだガネ」

 

 白々しい。

 

 ここにハンコックの妹や親衛隊がいればそう口にしただろうが、幸か不幸か今は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「なるほど、海賊姫が言っていた不審な遭難艦(・・・)ってのはこれか」

「はい、サー・クロコダイル殿。兵士は全員退艦させておりますので、中の検分をお願いいたします」

「クハハハ、至れり尽くせりだな。いいだろう。おい、ミアキス」

「はいは~い。こっちの部隊で中を確認してきますね? あ、一応口にする物もあるので毒見役もお願いしま~す」

 

 報告を受けて黒猫の防衛艦隊が取り囲んだのは、難破船と思わしき巨大なガレオン船三隻だった。

 よくよく見ると、帆や船室部へ繋がるドアなどアチコチに、かつての持ち主の物だったのだろうジョリー・ロジャー(海賊旗)が描かれているが、名を上げようとする者のように凝ったものではなくシンプルな物だ。

 

(……なるほど、海賊になるしかなかった連中の代物か。それにしちゃあデカいが……こういったもんすら流れる程に今の情勢が荒れてる証か)

 

 

―― ぶわっはははははは! 聖地で稽古をつけた時よりも相当腕を上げておるようじゃのう!!

―― ざっけんなテッメなんでよりによって英雄が来てやがるんだおま……っ、コルァァァッ!!

 

 

「それで、人足ってのはあの内の二隻に乗ってるのか?」

「はい。東の海で捕まえた海賊(・・)、計およそ千五百名。こちらの船医も健康状態を確認し、すでに回復しております」

 

 ちょっとした町を埋め尽くすほどの人数をサラッと言われるが、クロコダイルは動じない。

 現状働き手はどこも必要だったし、働かせる前に回復させなければならない人間を多く抱えている今の黒猫にとっては極めてありがたい補給であった。

 

 

―― ほう! 拳も足も鍛えておる。軍艦バッグをそうとうやり込んだか!!

―― やっといてなんだがもうちょい効率的な方法あるだろうが! 新兵はアレ大丈夫なのか!?

 

 

「物資に関しては確認次第だが、いいだろう。で、そっちの娘は――」

「はい。今回、総督にお預けする方です」

 

 クロコダイルが乗る黒猫第三艦隊旗艦。

 その甲板にて、少数なれど精鋭の兵士達に守られる、八歳の少女の姿があった。

 

「孔雀よ。総督には世話をかけるけど、よろしく頼むわ」

「クハハ……ウチの亡霊娘同様、肝は据わっているようだな」

 

 

―― よし、ならばそろそろ本気で行くぞ!

―― ちょと待てぃ! え、いや、そっちの役目はメッセンジャーだよね!? 暗殺じゃないんだよね!? だってクロコダイルはボガードさんと平然と話し合いしてるもん!!?

 

 

「……だが、こう言っちゃなんだが早すぎたんじゃねぇか? 第一からの報告だと、もう少しかかるハズだったが」

「すみません。ガープさんが、クロ総督に会うには時間が足りないと言って急かされまして」

 

 

―― なぁに、海賊と海兵ならば戦っておいても双方損はあるまいて!

―― あるわぁっ! 今現在無駄に俺の体力削られとるわぁ!!!

―― ぶわっはははは! では征くぞ! 『拳骨唐竹割(ギャラクシーディバイド)ぉっ!』

―― 会話をしろって――っ! 『極・噛猫』!!

 

 

「その結果があれか」

 

 そして、他の人間にあまり見られることがないように離れた密会場所として選んだ海域は今現在――人工的な暴風雨が吹き荒れていた。

 

 英雄の放った拳の一撃による余波で海水が巻き上がり、それを防ぐ黒猫の足技の余波によって突風が巻き上がる。

 

 偏に地獄と言ってもおかしくない光景が広がっていた。

 周囲には巻き込まれた海王類が気を失ってプカプカと浮いている。

 恐らくこの後ついでに回収されて、支配地の民衆の腹を満たす礎になるのだろう。

 

「……まぁ、いいか。とりあえず物資の確認が終わるまでこのまま安全地帯で待機だな」

「それでよろしいのですか?」

「クロなら問題ねぇだろう。それとも、アレに割って入るか?」

 

 もはや船が退避している中、拳の風圧を使っての空中戦で『神敵』と渡り合う『英雄』の姿をフックで指し示すクロコダイルに、英雄の補佐であるボガードは「……そうですね」と肯定する。

 

「それで、孔雀っつったか」

「ええ、『砂漠の王』。なにかしら?」

 

 

「テメェ、ただ人質になりに来たわけじゃねぇだろ?」

 

 いかにも、という海賊らしい恰好をする男の問いかけに、幼いながらも気の強い所を見せる金髪の少女は薄く笑い、

 

「当然」

 

 と答える。

 有象無象の海賊ならば気に障るだろう態度だが、クロコダイルはそれが気に入った。

 おそらく、黒猫の人間ならばほぼほぼそうだろうと思いながら、

 

「黒猫を厄介事に巻き込む気か?」

 

 と重ねて問い掛ける。

 

「まさか。私も人から聞いた話でしか知らないけど、海軍が黒猫にかなり恩があるのは理解しているわ。上が貴方達に用意したのは――」

 

 

 

「――ちゃんとした儲け話よ」

 

 

 

 

 

―― ぶわははは! やっと捕まえたぞクソジジィ! このまま海面に――

―― 甘いわぁ! 『海底落下(ブルーホール)』!!!

―― ぬ゛わ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………

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