とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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175:いざ、アラバスタ

「イッショウ達がこの島から北へ向けて出発するとは聞いていたが……ロビンも連れてこの島まで戻って来たのか、キャプテン」

「ああ。イッショウ達の出発を見送るのもそうだが、こちらの王への挨拶もせねばならない。帰り道では各国のな。長く空ける以上、ロビンも一緒さ」

 

 北の海に対しての方針が決定してからの俺達の行動は早かった。

 早く動かないと、その間にも物資が溶けていくしレヴェリー開催時期の作戦に間に合わないというのが理由だ。

 

 今回の航海は、イッショウ達の出発時の状況をこちらでも確認するついでに、その帰路の際にこちらの縄張りとなった各国への表敬訪問がある。

 

 旗を貸して、いざ襲われた時に駐留軍も含めた武力を提供する――だけでは駄目だ。

 

 それぞれの国の特色を把握し各国の過不足を繋ぎ合わせる調整力と、あくまで我々は各国の意思を可能な限り尊重するという姿勢を見せつけていかなければならない。

 

 でなくば、いずれ何かしらのズレが発生した際に容易く俺達は排除されてしまうだろう。

 黒猫は最終的に全ての海を結ぶ組織になる。

 そうなるために、こうもややこしくて面倒で時折後戻りすら必要になるんだ。

 

 政府と決着が付いた後には政治に寄るのか、あるいは物流等の実務に寄るのかはまだ分からないが、その時のために各国との顔繋ぎを軽視するわけにはいかない。

 

 特にダズとペローナに任せていたこの島は、どんどん前進していた俺からすれば常に遠ざかる地点でもあったために、謁見の機会がかなり先延ばしになっていたからなぁ。

 

 ミホークの無茶ぶりに対応できるようになったダズとペローナならば問題ないと見ていて、実際期待に応えてくれているから現場は問題ないようだけど、それでも。

 

「へっへっへ、まさかあっしがこうして一船を率いる事になるとは思いやせんでしたが……」

 

 実績は十分すぎるからヨシ!

 

 海賊しかり私掠艦隊しかり海軍しかり、誰が相手でも撃退してみせたし、見どころのあるやつは捕虜にして説得してこちらの戦力に引き込んだし、なんなら艦隊任せてもいいレベルだわ!

 

「急に色々すまなかった。だが、事は一刻を争う。ここで一人でも多くの海兵を救うことがより多くの民を救う事になり、その結果次第で俺達は世界政府を超える正当性を掲げる事が出来る」

「ついでに海兵がこちらに付いて真っ当な活動をしている事が更に知れ渡れば、更に今の海軍を切り崩せる。良い事尽くめね」

 

 おい海兵(ヒナ)

 いや、なんかお前今は『黒姫』って呼ばれているけどさ。

 ウチでも実質準最高幹部扱いで、ほぼほぼ全ての会議に顔出させているけどさ。

 今回もイッショウの補佐役として、遠征隊を取り仕切る一人だけどさ。

 

「しかしキャプテン、ここまで来てアラバスタ攻めの方はいいのか?」

「あくまで威力偵察だ。船も大型のガレオン船とはいえ一隻。人が集まっている東部よりも、砂漠地帯である西部に上陸する……という予定で、今テゾーロが残した親衛隊と共に用意している」

 

 アラバスタは政府の動きを見据えるための――つまりは外に向けての行動だけど、内を固める行動も並行してこなす必要があるし。

 

「本当は近隣の島の硫黄確保だけでも良かったんだけどな。でも――」

「……そういえばアラバスタでの土地確保は、ミホーク渾身の頼みだったな。特殊環境下での栽培研究に最適だと」

「確かに後々大事になる事ではあるんだがなぁ」

 

 黒猫の戦略の中でも主軸の一本である『ビリオン・ラック』は、主に『開墾』『輸送』『研究』の三つから組み立てている。

 現時点での知識の技術を用いた、より広範囲の開墾、開発。

 それらの効率的な輸送体制の構築。

 そして、より多くの収量や環境への耐性を持たせた品種や器具などの改良、研究。

 

 中でも研究にここ最近のミホークは熱心で、荒れ地を如何に活用するかに関しての実地研究やそのレポート作成に滅茶苦茶ハマっていた。

 

 うん。

 

 時折とんでもなく分厚いレポートの束をウチの連絡用の海鳥が運んで来てくれる。

 マジで重そうだからミホークはちょっと勘弁してあげて。

 いや本当に。

 

 アラバスタの話をした時もまったく農地として使えない土地をどう活かせるか考えるのが楽しくなってきたらしく、もし手を伸ばすのであれば是非にと頼まれたのだ。

 

 頭を下げるミホークの姿に、クロコダイルやシャーロット姉弟がめっちゃくちゃ複雑な顔していたのが凄く印象に残っている。

 

 他の幹部連中?

 もう慣れてるわ。

 

 ここにはいないけど、タキ爺ちゃんとかたまに農作業手伝ってるって報告入ってるもん。

 陸軍に至っては田植えが恒例の儀式になりつつある。

 なにしてくれてんだあの剣豪。

 

「さて、予定よりも早く着いたおかげで謁見まで結構時間がある。ダズ、まずは民衆の村から案内してくれ。ペローナが最大課題に挙げていた衛生面を含めて、この目で確認しておきたい」

「了解した」

 

 さて、民衆にも挨拶しておくか。

 

 選挙期間の時みたいに一人一人に顔見せて握手して回るわけに行かないし、とりあえず代表者に先触れ出してからだな。

 

 さすがに国政が機能してる所で上すっ飛ばして穀物や水を配るわけにはいかんが、日頃の労働を労うくらいは問題なかろう。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「長らく顔を出せずにいた事に改めて謝罪を。遅ればせながら海賊『黒猫』、出頭いたしました」

「そうかしこまらずとも良い。……と、ダズ殿にも言っておるのだが……なるほど、部下が礼を尽くすならば、その頭も然りか。うむ、こうして顔を見られて余は嬉しいぞ、黒猫」

「ハッ。もったいなきお言葉」

 

 海賊『黒猫』。

 一時どこからか補給された糧食と武器を以て世界政府に対抗し続けてきたが、同時に増え続ける海賊により無視できぬ被害が積もり積もっていた時に現れた、海賊らしからぬ海賊。

 

 現れたのはとても海賊と思えぬ少年少女に率いられた風変わりな一団だった。

 だが、少年は王国の誰よりも強く、少女は誰よりも内政を熟知しており、その率いる兵は恐ろしく精強無比だった。

 

 もし彼らに悪意があれば、瞬く間にこの国は制圧されていただろう。

 だが、彼らが多くの兵を率いて為したことはただひたすらに、この国を立て直す一助だった。

 

「副総督のダズより報告は受けておりましたが、民衆はやはり今の村を離れる事を恐れている様子で」

「うむ。そなたら黒猫が河口部と入り江に拠点を築いてくれたおかげで、防備はかなり強化されたのだが……民衆は未だに、海軍に襲われたあの日々を忘れられぬのだ」

「途中の村々はともかく、港町の被害は凄まじかったと聞いております」

「……連れ去られた者も多くいる。奥地の村で農地を割り与えられず、港町へ出稼ぎに出ていた次男や三男が主だ」

 

 今、目の前で(こうべ)を垂れている首領がそうであるように。

 

 あの少年少女もその兵士達も、同じように海軍による被害が出たことを悲しみ、同じ悲劇を繰り返してはならぬと万全の態勢を整え、この国を守る姿勢を示してくれた。

 

「ダズ達がこの島へ到着してすぐに討伐したという海賊達の被害もそれに輪をかけているのでしょう。私もこの目で廃村を確認しましたが……あの大河を船で遡り村を強襲したと」

「……飲用に適した水を汲める上に河の幸が豊富で、渡し船による輸送の要だった。兵士もそれなりに配備していたのだが、海賊らの数はソレを上回っておった」

「今回、こちらへ伺う際に訓練とある程度の場数を踏んで来た兵士を回収し、連れてきております。早速問題の廃村に配備し、復興と警備の任に付けましょう」

「すまぬ、黒猫。感謝する」

 

 本来ならばこちらの兵士でやらねばならぬ事だが、この数年で多くの熟練兵を失ってしまい、そもそもの人口も減ってしまった。

 今はとにかく、食料不足や流行り病で何かと気性が荒くなった民を落ち着かせながらかつての賑わいを取り戻さなければならない。

 

「その上で、王命として村民に農村地の拡散・移住を進める事はできないでしょうか?」

「……ダズ殿やペローナ殿からも、そう進言は受けているが……」

 

 そのために打つべき手を考え、実行に移させるのが王たる自分の仕事なのだが、現状それを万全に行えているとは言えない。

 自分の横に控えている宰相や大臣も、本来海賊に向けるべきではない申し訳なさそうな顔をしている。

 

「海軍からの襲撃時、我らは民にそれぞれの生家と田畑に火を付けさせ、城下に集めさせている」

「……あの異常事態における指揮として、理に適っていると我々は分析しております。それを過ちとするのは酷でしょう」

「その理解に感謝を、黒猫。だが、私は民に財をその手で捨てさせたのだ。王として民に対し、自責の念がある」

 

 本来ならばすでに、生きるにはどうにか足りるだろう穀物を収穫出来ていたはずだった。

 それを、海兵達を迎撃するために燃やし尽くしてしまった。

 種もみすら碌になく、黒猫が来るまでは季節が変わる度に飢え死んだ者の数を数える始末だった。

 

「そして今も、海兵や海賊への恐怖が強い。ようやく己が手で作った領域の外に出る事を強く忌避しておる。その感情は無視できん。……出来んのだ」

 

 本来ならば強権を振るうべきなのだろう。

 かつての村を取り戻せ、かつての活気を取り戻せ。かつての暮らしに戻れ。

 

 だが、それには民の自発的な協力無くして動けない。

 

 私がそう言うと黒猫はしばしの間、表情を変えず沈黙し、

 

「では陛下、地域への移住ではなく一部を人足として雇い、一時動かす事は可能でしょうか?」

「人足? 貴公らが行う開墾へのか?」

「いえ、我々の拠点への簡単な物資輸送……そうですね、薪などの現地で作成できる必需品を少々取引していただきたい。代価は食料を始め、その他の生活の品を用意させましょう」

 

 変わらぬ落ち着いた声で、平然と献策を始めるのだった。

 

「先ほど接してみて感じたのですが、彼らが移住を畏れる理由の一つに、今の自分達を守る力がどれほどの物か把握できていないというのもあるでしょう」

「うむ。……だから兵士と共にか!」

「ハッ。輸送を民に依頼し、その護衛として兵士を。出来れば民衆によく知られる将であれば尚よいかと」

「……ダズ殿と共に海賊を討ち取ったメイムがよかろう。珍しい女将軍だが、その分民にも良く知られている」

「十分な数の兵士で守られれば、輸送を担当する民も安心しましょう。無論、その時には周囲の警戒を十全にするようこちらの将校にも通達をします。出来れば、王国の将とも事前に会合を行いたく」

「うむ! 後ほど手配しよう」

 

 海賊らしからぬ口調と共に、民の心を読んで対策を練る。

 

 惜しい。

 

 惜しいと心から思う。

 

 もし、彼を――彼らを麾下に迎えられれば、この国は安泰だったろうにと思わずにはいられない。

 

「現に我らが村々を回った時、すでに三本爪の旗にある程度彼らは安堵を覚えている様子でした。ならば、実態さえ把握すれば徐々に動く者も出ましょう」

「……そうか。貴殿は今回、兵士を多く連れて来たと申しておったな」

「ハッ。チャム王国にて教育と訓練を施していた新兵二百、ジャガー通商連合国より兵士千二百。計千四百名を連れております」

 

 宰相が小さく身体を揺らすのが分かる。

 今の自分達にとって、途方もない大戦力だ。

 教育が終わったと言う事は、彼らの古参兵程精強無比というわけではないだろうが、それでも大きな力になる。

 

「我らは海賊――いえ、それ以前に余所者です。余りに多くの兵を残せば、陛下やその臣民に影響があると思い、一応いつでも引けるように待機をさせておりますが……」

「いやさ、願ってもない! それだけの兵士がいる事を見れば、民も安心しよう。どうか我が国に置いてもらいたい」

 

 少々逸った事を恥じながら、だが頼み込む。

 兵力の有無がそのまま受け継いできた王国の――その民の安否に関わる。

 

「畏まりました。仰せの通りに手配いたします。新兵が多いため念を押して、最も里から遠い我らの基地にて配備を進めましょう」

 

 海賊を討伐した黒猫という組織が真っ先に国に要請した物が食料や金ではなく、この国の作法の教師だった事は知っていた。

 

 ダズを始めとする幹部勢が、教師役の女官を丁重に迎え入れ、良く学んでいたという報告も半信半疑で聞いていた。

 

 当然のように、首領であるこの青年もそれを学んでいたのだろう。

 恭しく頭を下げるその動きはよどみなく、まるでこの地で生まれ育った貴族のような振る舞いだった。

 

 ますます、惜しい。

 

「しばらくは燃料類の代価として、穀物や乾物で取引をしましょう。すでにこちらの屯田も進んでおり、また漁港やその収穫物の加工場も機能しているため、ある程度は定期的に用意できます」

「確かか?」

「到着時に帳簿と倉庫を確認しております。隣地の縄張りでの生産や輸送体制も踏まえて、問題ないと判断しました」

「……幸い、狭い範囲とはいえ狩猟は今も活発である、毛皮で良ければ更に卸せるが、これも取引は可能だろうか?」

「助かります。厳しい偉大なる航路(グランドライン)の航海では、冷気を遮り熱を留める物は極めて貴重ですし、交易品としても使えます」

「良し。大臣、すぐに許可証を発行し、蔵を開けさせよ。無駄に貯め込むより価値がある」

「ハッ」

 

 これで民は、わが王国兵と共に国を守る黒猫の兵力を目にするだろう。

 彼らは『工兵』という変わった兵士を多く有しているためか、町の復興や新設も恐ろしく早い。

 

 彼らの拠点である二つの港街や、大河中腹で復興されつつある村の姿を見れば、その防衛力を確認できるだろう。

 

 臣民も、ダズとペローナという二将が村の守りから流行り病の対策などで王国兵と共に駆け回っているために、徐々に心を許しつつある。

 

「これからもよろしく頼む。我が将兵も、黒猫を頼りにしておる」

「頼りにしているのはこちらも同じです、陛下。陛下の導きの下育った良き民が、臣たる尊き一族が、心ある将兵らが我らの存在を許容し、力を貸してくれるからこそ我が将兵は万全の状態でこの地で動けるのです」

 

 民だけではなく、臣下もだ。

 副たるダズ・ボーネスもそうだったが、海賊らしからぬ気品と気遣いを見せるクロという男は、窮地を救われた事も相まって多くの心を掴んでいた。

 

 民からの恨みや嫉みを受け止めるのが任である貴族や将兵らが、左右一列に並びながらなんとも面映ゆい笑みを浮かべている姿を見て、王たる自分もらしくない笑みを浮かべているのを自覚する。

 

 謁見の終わりに、またも美しい一礼と共に謁見の間を去っていく。

 その背中に靡く黒猫の横顔が消えるまで、らしくない笑みを抑えるので必死だったのだ。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 イッショウとヒナ率いる精鋭八百と孔雀が乗り込んだガレオン船の出発を見送り、現地での視察と出て来た課題点の把握とそれに対する当面の対策を出して、俺達も出航した。

 

 俺、ダズ、ペローナにロビン、そしてクラッカーにカスタード。

 

 相変わらず頭がおかしい戦力だが、ここからは本格的に海軍本部戦力に加えて聖地にも近づく。

 チンジャオを始めとする七武海もある程度揃いつつある以上、私掠艦隊もそろそろ警戒しなければならない。

 

 これまでのような烏合の雑兵ではなく、強力な海賊に率いられた集団は明確な脅威だ。

 その脅威を削るために、この数年で私掠艦隊は徹底的にすり潰したのだが……海賊が増える一方の今、質は下がったとしても数はまだまだ侮れない。

 

「で、一年くらいかけてどうにか期限ギリギリで計画に戻れたんだけどさ」

 

 永い航海だった。

 やっていた事はジョセラ王国――最初に行ってダズ達を回収した島と変わらない。

 

 各国の内政状況を直接確認して民衆やその代表に挨拶をして貴族と顔を合わせて王様に謁見だ。

 

 時折妻やら妾にと女をあてがおうとする連中を躱したり、防衛のためにアミスらを横に置いたりとアレコレしながら、まぁどうにか元の拠点に戻った。

 

 俺が留守の間はクロコダイル率いる第三に任せていたのだが、どうやらクロコダイルはかなりテゾーロと意気投合したようだ。

 こと金策面に関してかなり似た見方をしていたためか、時折酒を酌み交わしながら状況を解決するために論議を繰り返していたらしい。

 

 ともあれ、必要な物は揃った。

 

 攻防に足る兵力の確保とその教育、訓練。

 

 それを支えるための後方体制とその基盤たる国力。

 

 各国の視察による、兵力を含めた国力の確認――すなわち、万が一の裏切りへの備え。

 

 それを踏まえた上での各国との貿易・相互防衛協定を始めとする繋がりの強化。

 

 それを用いた『喧伝』という名の他国への牽制。

 

 出来るならば各国の海軍を集めて合同演習なり観艦式なりを行って更に周辺国に圧をかけたかったが、どこも復興途中でさすがにその余裕はなかった。

 

「あの……総督」

「おう」

「気候の落ち着きから見て、もうすぐアラバスタ――サンディ島の海域に近づくと見られますが」

「おう」

 

 とはいえ問題はない。

 もはやその信頼性は崩れたとはいえ、俺には幸か不幸か高額賞金首という札が付いている。

 正当性を疑われる世界政府が、敵としているという証がだ。

 それが、ここまで一貫して各国の支えになる活動を続けて来た事で大きな信頼を得た。

 

「なんか、すっごいたくさん船が集まってますね」

「そうだな」

 

 そして近づくレヴェリーの日。

 その日が近づくのに合わせて海軍の動きが聖地を中心とした物になったのを確認し、アラバスタ国王コブラの出航も確かに確認した。

 海軍もかなり気合を入れていたのか、護衛に赤犬が付いていた事を確認した。

 

「旗、掲げられてますね」

「そうだな」

 

 アミスの言葉通り、サンディ島へと向かう船の数々には旗が掲げられている。

 当然だ。

 航海の際には、その船がどこに所属する船か示す必要がある。

 

「ロビン、ペローナ。旗の確認は出来たか?」

「ええ、一応」

「大体四種類だな」

 

 久々に副総督兼旗艦船長として活動しているダズの問いかけに、最古参ながら未だ幼い二人が答える。

 

「『新・王権連合』に『新海同盟』、『青海貴族連盟』に『ジャガリアン諸島連合』……クロ、これって」

「全部近隣の世界政府非加盟国。あるいは離脱した国や海軍の集まりだな」

 

 うん、だよね。

 一応把握していた中でも拡大傾向の強い、要警戒国家として注目していた連中だ。

 

「クロ」

 

 おう、ロビン。

 

「これが見えた船のスケッチになるけど、これ全部軍艦よね?」

 

 一応、俺達はペローナのゴースト偵察で事前に気付けたので一度距離を取っている。

 望遠鏡とゴースト、凧を併用したロビンの目で遠くから確認しているが、恐ろしい数の軍艦が集結している。

 軍艦の数だけならばバスターコールを越えている。

 

「クロ」

 

 声がしたと同時に、俺の横に砂嵐が起こる。

 お帰り、クロコダイル。

 

「どうなってる?」

「嫌な予感の通りだ」

 

 

「――アラバスタが大軍に攻められている。すでに港町ナノハナは陥落。直接は見てねぇがエルマルも恐らく……下手しなくても、首都アルバーナまで届くだろうな」

「………………」

 

 

 

 

 

 なんっっっっっっっでじゃ!!!!?

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「これで最後だ。世界政府加盟国の中で屈指の大国であるアラバスタは丸裸だな」

 

 沈みゆく海軍艦をニヤニヤと眺めながら、『祭り屋』は楽し気に酒を煽っている。

 

「これで海軍は間に合わねぇ。……噂を流した各国は?」

「そっちも動いた。金獅子の旦那が働きかけてくれたおかげで船は十分揃っている。兵力はさすがに連中頼みだが、楽園は被害が出ていない所も多い。十分だろうさ」

「そうか。フッフッフ――。()の縄張りで暴れ出してぇのを堪えた甲斐はあったな」

 

 火つけ(・・・)に関しては絶対の実績がある男の報告に、サングラスをかけた青年は笑いを零す。

 

偉大なる航路(グランドライン)入りを早めたのも、このためだった。この日の為だった」

 

 北の海において影響力を持ちながら、だが陰で動いていたために未だ無名に等しい海賊団の長が、突然宙を蹴り上げる。

 

 それと同時に放たれた斬撃が既に沈み始めている船を両断し、その沈没速度を大幅に縮めた。

 他の海軍の船もサングラスの男の部下らが大暴れし、とうに戦闘はおろか航行能力すら失っている。

 

「ずっとその存在が気に食わなかった。考えれば考える程に」

 

 

「聖地に上がらず、同じ血が流れていながら下界の中で王と崇められながらのうのうと暮らしている」

 

 

「名君だの、素晴らしい血族だのと、恨みの汚濁の波を浴びずに堂々と陽光を浴び続ける……っ」

 

 

「フッフッフ……偉大なる航路(グランドライン)に入ったら、ぐちゃぐちゃにしてやりてぇとずっと思ってたぜ」

 

 

 

「――ネフェルタリ家!」

 

 

 

「忌々しい、かつての同胞の末裔よ!!!」

 

 

 ここに、また一つ。

 後世において幾度も語られる戦い。その序章が幕開いた。




メイムは特にイメージ付けていなかったキャラだったんですが、なんか気が付いたらFGOの秦良玉でイメージしてたのでソレで
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