とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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180:アラバスタ防衛戦ー④

「我らは侵略に来たのではない。奪われた我らの国民が、流れたその財がこの地にあると確信し、その奪還のために兵を興したのだ」

「でしたら、その証を持って陛下に。延いては世界政府に申し出るのが筋ではありませんか」

「その世界政府とその加盟国に、どれだけ信頼という言葉があるというのか!!」

「その信頼を損ねた理不尽な暴を、今まさに繰り返している者がそれを言うのですか!」

 

 えー、緊急会合(プロレス)が開始されてからすでに休憩を挟みつつも8時間が過ぎようとしております。

 ティティ様ってうろ覚えの知識とはいえ病弱イメージがある人だったんだけど、意外とタフだな。

 俺の介入がなくても全然やっていけそうなレベルで連合軍の貴族――言い方は悪いが尾田先生の三下っぽい造形のボンクラ共を相手に張り合っている。

 

(とはいえ、長く対面させておくとツメゲリ部隊の面々がなんとかしろって感じで睨んでくるから……さて、そろそろ割り込むか)

 

 アラバスタはティティ様の護衛として兵力をガッツリ同行させてきたのだが、対して肝心の文官が最小限となっている。

 アルバーナに移動して一通り見て回ったダズやペローナらの話だと、アルバーナは今や避難民で溢れかえる町となっているため、その管理で忙しいのだろう。

 ついでに主力級の方々が世界会議(レヴェリー)に同行しているのもある。

 

 いや、だったら兵力そんな割いちゃ駄目じゃね? とは思うのだがそれはそれ、これはこれなのだろう。

 

 実際、ここでティティ様の身になにかあったらアラバスタ民に八つ裂きにされるわ。

 親衛隊を封鎖船とアルバーナ配置組以外の現場から全員引き戻して護衛に付けるのも当然の話だ。

 特に女性がほとんどの親衛隊はティティ様の護衛役としてうってつけだ。

 おかげでアラバスタ兵士からの当たりがちょっと強いけど、そこは我慢してくれマジで。

 

 ティティ様の食事を俺が作るのも問題だって言うんだもんなぁ。

 おっしゃるとおりではあるんだけど、ちゃんと毒見してるんだから勘弁してくれ。

 そちらが『黒猫』(俺達)を信じ切れないように、こっちもそちらの中に事態を引っ掻き回そうとする政府の手の者が紛れていないと確信できないんだ。

 

「我ら『黒猫』から見ても、挙兵に至った経緯もそうですが……連合軍の蛮行には眉を顰めざるを得ない。あくまでも連合側の人民とその財の回収、補填を主とする戦だというのならば……連合軍はあまりにも無駄に被害を広げすぎている」

 

 ここエルマルでの犠牲をなかったことにしないだろうな? という意味も含めてナノハナでもっとも被害の多かった港湾部――もっと延焼している部分を急遽会談場所に仕上げている。

 

「……おっしゃることはもっともです。ですが、兵達の――ひいては民の世界政府とその加盟国への怒りは極めて根強く、完璧に制御するのは大変難しく……」

 

 豪華さなど欠片もないが、こちらの被害を見せつけるにはちょうど良かった。

 

 読み合いをする気ゼロの貴族はともかくとして、比較的まともな将はある程度アラバスタと黒猫の主張を最初から察知し、どうにか穏便に済ませようと頑張ってはいるのだが……。

 

「アラバスタの発展は政府の搾取の下に成り立っている! それを奪い返すのは正当な権利であり、この程度の犠牲など長きに渡る我らの苦しみに比べてどれほどの物だというのか!!」

 

 肝心のその貴族が……なんか、その…………お疲れ様です。

 うん、アラバスタ兵の怒気を真っ向からぶつけられて顔面蒼白だけど、その……苦労しているなぁって部分は理解するよ。いやマジで。

 略奪を黙認したっぽい部分は詰めさせてもらうけど、そっちの立場やそうせざるを得なかった経緯はなんとなく分かる。

 

 分かるが、そこらへんの弁明やらを無視して要求だけ口にする奴がいると……こう、魚人島を思い出すなぁ。

 

(どうするかな……。謀略仕掛けて二つに割るか? ただ、この馬鹿共の下に付いているって事は、純粋な国力では負けているのだろう。比率は6:4……いや、7:3ととりあえず仮定。戦力だけで見るならば少々危ういが、指揮官クラスの質を見るに……)

 

 味方を増やすのは悪くないが、今すぐには無理だろう。

 貴族による連盟側の勢力を思いっきり転ばせて彼らにアドバンテージを持たせてからの方がいいだろう。

 

「それほどに力強く断言されるという事は、明確に貴国の財がこのアラバスタに流れていたという証拠があるのですね?」

 

 となれば、コイツらの失点を引き出しながら時間を稼いで、タイミングを計って立場の弱い側が交渉を一歩進めてポイントを加算できるように誘導するべきだな。

 

「しょ、証拠……?」

「連れ去られた人間の、顔や名前、特徴などを確認できる名簿などは? あるいは奪われた金銭や文化財の詳細を含むリストなど。アラバスタの罪を問うならば、その罪の証をこちらで確認するのは当然でしょう」

「そういう話ではない!」

「ではどういう? もしや、世界政府が加盟国に、非加盟国より奪った財を分配しているとでも?」

「そうだ! だから我らは――」

「世界政府に富をしかと加盟国に分配するという配慮があるのならば、海兵奴隷事件から続く一連の不祥事は起こっておりません」

 

 どこまで本気で言っているのか分からんが、少なくとも被害の補填は建前。

 本命はあくまで略奪の成果で間違いない。

 金、穀物、資材、文化財、労働力、女。

 ならば、本来戦争に必要な下準備なんて碌にしていないだろう。

 ただ兵力をかき集めて襲わせただけだ。

 

「それとも、アラバスタが滅びるまで全てを奪うと? アラバスタの民は断じて罪人ではない。にも関わらず悪という略奪を免罪する称号を押し付けるという蛮行が、もしや通るとお考えなのでしょうか?」

「ぐ……む……ぅっ」

 

 つまり、アラバスタの事すら大雑把にしか知らないのだろう。

 つまり、正しく戦場を把握する事が出来ない。

 少なくともコイツらには。

 

 俺達が現れた事で、当然黒猫の看板を利用する事を考えたのだろうが、その達成に至る材料を集めたり作る事が出来ない。

 少し脅してやるとこうして途端にトーンダウンする。

 

(アラバスタに拘った上で兵を興したのならば、勝利しなければ兵を引けない。一番の狙いはティティ様やビビ様の身柄を確保しての身代金か、あるいは政府からの譲歩を引き出すことだったか? さすがに浅はかすぎる気がするが……)

 

 いや、だからこそ存外当たりかもしれん。

 絶対なんて言葉は絶対にないんだ。

 想定をはるかに超える策略も存在すれば、想像をはるかに超える下策も存在する。

 

 …………。

 

 うん、身を以て知らされているからなぁ。

 

(さて、初日なんだ。敵地で過ごすストレスに耐えられるとも思えんし、日没までには帰りたいハズ。このままもうちょい引き延ばして今日は終いかな)

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「助力に感謝いたします、キャプテン・クロ。おかげで彼らも、侵攻の手を止めたようで」

「とはいえ、その分カトレアが軍事拠点として形になりつつあります。……あくまで時間稼ぎが目的である以上、手は出せませんが情報収集を密にしておくべきかと」

「ええ。すでにペルが偵察に」

 

 そうして日没に入る前に、連中は『今日はこれくらいにしてやる』と悪役度120%の捨て台詞を吐いて船へと戻っていきやがった。

 アイツらマジか。

 

 ともあれ、初日の目標は達成した。

 連合の侵攻の足を止め、なにもさせないという事をだ。

 おかげでアルバーナへの避難がかなり進んだとダズから報告が入っている。

 

 カトレアは軍事拠点として守りを固めつつあるが、その兵力はかなり減った。

 およそ五分の一ほどだが、ナノハナに向かって撤退しているという情報が入っている。

 

 今日の様子を見るに、恐らく明日の朝にはさらに兵隊がこちらに戻されるだろう。

 状況を理解していそうな軍人っぽい人達ならば、もし決戦が起こるとしたらナノハナーエルマル間の海戦になると判断するハズだ。

 

 実際正しい。

 あくまで短期決戦を図れば、という前提ならば。

 

(とはいえ、こちらもすでに『連合国家』と呼べる程の勢力圏をこの楽園に築いている。たとえ小競り合いといえど、俺達とぶつかる事をどう考えるのか)

 

 西の海の国家群をカウントせずとも現時点で9ヶ国に黒猫の旗を立てて、各国を繋ぎ合わせている。

 まだ復興や防衛の真っ最中だが、それでもやろうと思えばそれなりの戦力をかき集められる。

 

 少なくともあの軍人達はそれを理解していて、それをあの貴族連中に伝えるだろう。

 

「恐らくですが、ナノハナの兵士を増やせばこの場での、カトレアから兵を引かなければアルバーナの強襲という札を使って脅しをかけてくるでしょう」

「脅し、ですか?」

「はい。主導権を握る者達は実際に戦の火ぶたを再び切る覚悟はないですが、この戦を終わらせ撤退する決断も出来ないだろうと私は見ております」

「そのような者が、なぜ脅しを?」

「引けば負け――いえ、汚点だと捉える者達です。直接言葉を交わして、そう確信いたしました」

「……なんと愚かな」

 

 まったくもって。

 これで敵の頭があの貴族共だけならばいっそ掻き乱す事が出来たんだがな。

 

「ですが、現場を知る者はそれを不快に思うはず。脅して利を引き出させようとするのではなく、譲歩することで黒猫の足を止めるべきだと」

「譲歩とは?」

「おそらく、捕えたアラバスタの民をこちらに引き渡し管理させる事で、私の兵の余力を奪う。そのような事を提案して、強硬案を抑えようとするだろうというのが我らの見解です」

 

 アラバスタの文官たちも頷いている。

 やらかしそうな頭と、それに悩まされている補佐役という風に目に映ったのだろう。

 

「そこでティティ様。御身に達ての願いが」

「聞きましょう」

「現在アラバスタを攻撃している連合の内『新海同盟』、並びに『ジャガリアン諸島連合』に本日の会談に応じてくれた事への感謝を示す親書を送って頂きたく」

「……お礼の親書……ですか?」

 

 その意味が分からず、ティティ様がお付きの文官に目線をやる。

 一方で文官――初老のナイスミドルはなるほどと頷き、

 

「敵連合を二つに割るつもりですか」

「ハッ。兵力にこそ差はありますが、思った以上にその二国の代表は軍人としては真っ当な方です。だからこそ、連合軍内部の軋轢も察しが付きます」

「……そして残る二国は、王権や貴族を第一とする主義が極めて強い国」

「おそらく、自分達に親書が来なかった事に怒りと不信を覚えるでしょうね」

 

 ぜひとも怒り狂っていただきたい。

 仮に開戦となっても、海戦になれば陸戦よりも周囲の影響を考えなくて済む。

 だが、黒猫の戦力をまだ恐れているのならば――

 

「そして彼らはまず、親書が届いた二国への猜疑心を持つでしょう。あるいはアラバスタと繋がっているのではないかと」

「彼らをこちらに付けますか?」

「……状況からして、さすがにそれは難しいかと。ですが先んじて撤退、あるいは後退させるまでは十分狙えるでしょう」

「つまり、優秀な指揮官を最前線から排除できる」

「上手くいけば。仮に不発だとしても、その動きの牽制になり得ます」

 

 いかがでしょうか? という目線を一番豪華な椅子に座っているティティ様に向けると、ティティ様は溜息を吐く。

 

「……貴殿の噂は夫より耳にしておりましたが……本当に海賊である事が惜しいですわ。貴殿がこのアラバスタの地に生まれていればと思わずにはいられません」

「……もったいなきお言葉、恐れ入ります」

 

 とりあえず策に納得はしてくれたようだ。

 お付きの侍女に羊皮紙とペンを用意するように頼み、文官の面々もその内容を考える為に適当な紙を引っ張り出している。

 

 よし、後は――

 

「クロ!!!!!」

 

 ……夜襲に備えての見回りに関してを決めるだけだったんだけど……。

 

「どうした、ロビン」

「敵影らしき影多数!」

 

 その言葉に、その場にいた全員が椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がる。

 馬鹿共め! そこまで我慢が利かなかったのか!

 すぐに迎撃を命令しようと開きかけた口が、続くロビンの言葉によって塞がれる。

 

「西の海岸から、凄い数の怪物が上陸してるわ!! 数えるのが無理なくらいに!!」

 

 …………西?

 

 東のナノハナからじゃなくて???

 というか兵士じゃなくて――

 

「怪物????」

 

 我ながら間の抜けた言葉だと思うが――

 そうとしか言えない軽い響きを口から吐き出すので精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

――オ゛オ゛オオオオオオォォォォォォォッ!!!!!!!

 

「使い潰すつもりで構わん。全ての大砲を撃ち続けろ。手を緩めるな」

 

 陽が沈みだし、オレンジと紺色が入り混じった砂漠の大地が、異形の者達に埋め尽くされている。

 

 ワニやトカゲに酷似した物から様々な鳥、哺乳類、果ては昆虫まで。

 それらは多種多様で――だが共通して巨大で、そして凶暴で、皆一直線にエルマルを目指して殺到していた。

 

 念のためにと陸側の守りを固める指揮を取っていた鉤爪の大海賊は、迎撃を指示すると同時にその暴虐の津波を冷めた目で眺めていた。

 

「……事前にアラバスタの風土は調べているが、こんなデカい奴らはそう存在しねぇ。となると、余所から運び込まれた可能性が高いって事になるが……」

 

 大海賊が口にしている、火口を切ったばかりの真新しい葉巻から立ち上がる紫煙とその香りが、一斉に放たれた大砲の砲火が起こす戦火の風によって掻き消される。

 

 数が少ないとはいえ、陸での戦いに備えて装備を整えて来た第三艦隊の精鋭達による大砲の一斉射は、海賊だろうが軍隊だろうが大抵の者はその歩みを怯ませる精度まで鍛えられている。

 

 だが、止まらない。

 

 奇声。怒声。咆哮。

 

 そのどれとも取れる雄たけびを上げながら。

 

 

―― ウ゛オ゛オ゛オ゛オオオオォォォォォォォォォォッ!!!!!!

 

 

 怪物の軍勢は進軍を始めた。

 

 

「クハハハ」

 

 

「面白くなってきたな」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「ドフィドフィドフィ! 例の試供品(・・・)は皆上陸した! ぜーーーんぶエルマル目掛けて真っ直ぐだ!! ベッヘヘヘヘヘ!!!」

 

 想定よりもかなり早く対応している証拠である砲火の音が遠くから響く中、海に浮かぶ巨大な船の甲板で多くの者が笑っていた。

 

「奴の事だ、アラバスタと連合の戦いをなるだけ双方の被害を抑えながら解決しようとする。となれば、どの方向性での解決にせよ事態を一度硬直させる必要がある」

 

 ただただ陽気に――あるいは呑気に――海の向こうに見える砂漠の地での乱痴気騒ぎを笑う者がほとんどの中、二人の男はその真逆の、凄絶さを感じさせる笑顔を浮かべている。

 

「その舞台にアルバーナは駄目だ。首都という分かりやすい象徴に敵を引き付ければ、決戦とまでは行かなくともそれなりに大きな戦いは免れない。使えないカス国家だとしても、反世界政府の一角を無駄に消耗させるわけには行かない……少なくとも最初はそう考えるハズだ」

 

その一人、アフロ髪の男は広げたアラバスタの地図の上にチェスの駒を載せてニヤ付いている。

当人らは知る由もないが、その構図は作戦を考えている時の『黒猫』と全く同じだった。

 

「連合軍との決戦を招かず、しかしその足を的確に止められる場所。クロが上陸し制圧するのは、その時点でエルマルしかなかった。交渉の拠点にするのもな。……フッフッフ。連合の奴らも、いい仕事をするじゃないか」

「ああ、まるで俺達(・・)みたいに働き者だ」

「ふっ! フフ……フッフッフ! 言うじゃないか祭り屋、今のは良かったぜ」

 

 サングラスをかけた男が、駒を一つ手に取りエルマルへと置く。

 黒いキングの駒を、コトリと。

 

「そして近隣の加盟国に散々噂を流したおかげで、奴が近寄っただけで近くの王が国を捨て、そこを黒猫が占領した」

「あぁ、加盟国を攻め落としたな(・・・・・・・)

「そして今、再び加盟国の首都に三本爪の旗が立った」

「へっへへへへ! 政府からすりゃ都合が悪すぎるし、だからこそ同時に使い甲斐のある事実(・・)だなぁドフィッ!!」

 

 男――ドフラミンゴは顔だけ笑い、だが内心では貪欲に勝利を、あるいは結果を求めてこの戦場を構成する要素とその動きの最大、最小を必死に計算していた。

 

「大河という天然の防壁は、そのまま逃げ道を塞ぐ壁に」

 

「そして首都に旗を立てた以上、黒猫が絶対に守らなければならない拠点になった」

「ついでにアラバスタの人間が黒猫に対して未だに警戒を解いていないのであれば、恐らく娘のビビはアルバーナの王宮に残されているだろうさ」

「違いない。そして王族を守るという誇り(プライドが)高い兵士達が当然周りを固めている」

「黒猫からすれば邪魔な枷が多い」

 

 フッフッフ、と笑いながらドフラミンゴは黒白交ざったポーンの駒を雑多につかみ取ると、それを適当にアラバスタの地にばら撒く。

 

「そして金獅子の旦那から渡された試供品の兵隊(・・)

偉大なる航路(グランドライン)のどこかの島に住んでた生物を改造して強化し、それをジェルマのクローン技術の試運転として大量に造ったらしい」

「使い潰していいとは言っていたが記録を依頼されている。抜かりはないだろうな?」

「当然だ。録画用の映像電伝虫もしっかり揃えている」

「……一応俺の目でも確認しておくか。アレの戦力としての有用性の確認はもちろん、現時点での黒猫の兵隊の戦い――特に情報の少ない第三艦隊の戦闘記録は重要になって来る」

「俺達の分析にも、政府への手土産にもな」

「そういうことだ」

「へっへへへへへ!」

「ふ……フッフッフ……っ」

 

 徐々に暗くなる中、巨大な怪物の群れの中に大砲が着弾する。

 ドフラミンゴの目に入ったのは、巨大なカマキリだ。

 ただ巨大なだけではなく、恐らく金獅子の手の者が改造したのかその鎌は明らかに人工的な、鋭い鋼の刃に取り換えられている。

 

 カマキリは大砲の直撃を受けて黒煙と炎の中に姿が消え――すぐさまそれを切り裂き進軍を再開する。

 更なる怒りを持って。

 更なる殺意を掲げて。

 

「作戦開始だ」

 

 頭の言葉に、甲板に並ぶ者達が力強く頷く。

 

「黒猫とは交戦していいが、無理はするな。交戦した時点で主目標はすでに達成されていると考えろ」

 

「その上で狙うのは――二人」

 

 

「王妃ネフェルタリ・ティティ、並びに王女ビビ」

 

 

「この二名を海賊の魔手から救い出し、保護(・・)する。可能ならばな」

 

 

「さぁ――暴れるぞ」




次回、本戦開始
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