とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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190:アラバスタ防衛戦ー⑭

 怪物の群れという脅威に対して、為すすべなかったアラバスタ兵は目の前の光景が信じられなかった。

 

「ようやく戦争か! この時を俺は待っていたんだ!!」

 

 恐ろしく巨大な長剣を振り回す海賊が、パンッ、パンッと手を叩くような音がするのと同時に()()()()()

 全く同じ顔に同じ巨躯、そして同じ剣を持った()()が。

 見る見る間に自分達アラバスタの兵の数に並び、そして散々アラバスタを踏みにじった獣たちを蹴散らしていく。

 

「クラッカー! 戦列を乱すなよ! この戦域にコイツラを一匹たりとも残すわけには行かん! 仮にも首都の周囲なのだ!」

「わかっている、カスタード! シャーロット家の、そして総督の威光に影は落とさん!」

 

 黒猫の一団の中で、明らかに空気が違う二人がいる。

 紫色の上下にマントを身に着けた女の将の指示に、巨漢の将は数を増やしながら従う。

 

「元はママの海賊団の人間と言えど、今は黒猫の将! ゆえに!」

 

 サーベルを引き抜いた女海賊が、その何十倍はあるだろう怪物の巨体をいともあっさりと両断する。

 

「分かっている。これ以上の被害は出せん! ゆえの圧殺! ゆえの蹂躙!!」

 

 どんどん数を増やしていく海賊達が、アラバスタの兵らを守る壁のように怪物らの前に立ちふさがり、恐ろしい切れ味の大剣で斬り飛ばしていく。

 

「行くぞカスタード! この砂漠の地に、新世界の海賊の力を見せつけてやる!」

「応っ!!!」

 

 

 

「……これが……」

 

 二人だけではない。

 黒いスーツの上に肩掛けのマントを付けた美男美女の将や、その下に付く一般兵らしき黒スーツの集団が、戦い方すら分からなかった化け物達を吹き飛ばしていく。

 

「これが……『黒猫』……」

 

 

 

 

 

「勝てるはずがねぇ……」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「クロ! アルバーナにシャーロット姉弟の姿を確認したらしいわ! ペルさんからそれらしい報告が来てる!」

「間違いないのか?」

「同じ姿でポンポン増える大柄な剣士なんて他にいる?」

 

 あぁ、そりゃ間違いなくクラッカーだわ。

 アラバスタ兵も驚愕するだろうな。

 こんな所で四皇幹部級の中でもとびっきりのアタオカ戦力を目にするんだから。

 

 マジでビッグマム海賊団の戦力頭おかしいわ。

 これにカタクリまで来たら手に負えん。

 あとあの……あの……なんだっけ、鏡女の名前……。

 

 あれまで現れてクラッカーと組まれたら、対策しない限り一気に各個撃破されかねん。

 

「どう戦っているかまで入ってるか?」

「クラッカーさんが数を増やして、アルバーナ南部方面の怪物を倒して行ってるみたい。カスタードさんも同じく!」

 

 アルバーナ南部。

 怪物どもの数もそうだが、同時に取り残された連合兵もいる場所だ。

 

 さすがに逃げているとは思うが……だからこそ急いで押さえないと混乱が起きかねん。

 そこにミスター分身殺法ことクラッカーの投入とは……。

 

(……多分、カスタードの指示だな)

 

 このタイミングでやっかいな所を掃討して首都防衛を固めてくれるのならば――しかもそれが明らかにアラバスタや加盟国の人間ではない目立つ戦力がアラバスタ民を守るために暴れているのならば、今後アラバスタとの関係がどうなろうとも現場にいる将兵やその民に我々の存在を印象付けられる。

 

 あの日あの二人を拾ってから、クラッカーはミホークらを相手に武を磨き、カスタードはテゾーロやタキに師事して経済や政治を念頭に置いた立ち回りを学習していた。

 

 制圧するにしても仮想敵として緊張を維持するにせよ、大衆感情を掴む機会がぶら下がっているなら今のカスタードは迷わず飛びつくだろう。

 

 頼もしくなった。

 本当に頼もしくなった。

 

 これで完全に俺の部下ならもっとよかったんだが……。

 

 リンリンと交渉して置いてもらうか? 歴史の本文(ポーネグリフ)の基礎知識くらいならば渡しても問題ない。

 

 それに向こうからの感触も悪くない。

 文通の中でも冗談交じりに「嫁にどうかい?」とか聞いて来るし。

 

 ミホークがこっちに来たって事は仕事はこなしたハズだから()()も渡してきたハズだ。

 あとでその感触を確かめてから策を練るか。

 

(カルガモ隊を用いた伝令が機能し始めてから、思った以上に部隊の動きが良くなっている。これなら……)

 

 ハンコックが連れて来た兵力の中に、やたら強い弓兵がいる。

 チラリと見聞色で感じてみたが、覇気使いだ。

 

 弓そのものに意思を感じる。

 多分生物……蛇?

 

 …………。

 

 うっそだろ、おまえら九蛇の精鋭部隊じゃん!

 

(ハンコックめ、マジで九蛇をもう統制下に置きやがった! 女帝になることは疑ってなかったが、その統制にはもうちょい時間がかかると思っていたよ……嬉しい誤算ではあるが……)

 

 砲撃でやっとこさ足止めできるかどうかという化け物達を、覇気を込めた矢による一斉曲射でジリジリと動きを止め――一部は後退させることにさえ成功している。

 

 部隊としては分からんが個々の戦力はかなりの物だろう。

 指揮を取っているのは……やっぱり妹か。よし。

 

「上陸した部隊に伝令を送ってくれ。現状維持、そのまま敵の足止めと排除に徹せよ、と」

「わかりました、カルガモ隊を――」

「いや、普通の伝令でいい。指揮官はこちらのやり方を熟知している。逸る真似はしない。伝令を送るのも、命令を伝えると言うより『本部は貴官の部隊を把握している』というメッセージだ」

 

 将というより兵に向けてのメッセージだな。

 

 歴戦の海賊にして精強な戦士とはいえ、人の行き来がない凪の帯(カームベルト)に籠る九蛇の海賊が、これほど大規模な会戦を経験しているとは思えん。

 安心して戦えるように気を配ってやる必要があるだろう。

 

「ロビン、アラバスタ兵の様子はどうだ?」

「ちょっと待って…………。動きがないわ。戦える兵士はまだ頑張ってるけど、負傷者も多い」

「負傷兵は後退を?」

「………いいえ、駄目ね。身動きできない兵士が多いわ」

 

 ……混戦一歩手前まで追い込まれていたからなぁ。

 防衛線を維持できたのは本当に奇跡だったわ。

 

 いや、それはさすがに失礼か。

 前線で踏ん張る将兵、幹部らと、状況を冷静に分析して攪乱役に徹してくれたクロコダイルのおかげだ。

 

「いつものように回収するのは、ちょっと難しいな……」

「そうね。北側から敵は徐々に崩れ出しているけど」

 

 いつもなら親衛隊やペローナらに一気に前線崩させて大きく安全地帯を広げてから負傷者の回収に入るんだが……。

 

(同等の訓練を受けさせているとはいえ、軍医を無暗に突入させるわけにもいかん、か)

 

「総督、ただいま戻りました!」

「いいタイミングで戻って来てくれた。アミス」

「ハッ」

 

 敵将らしき二名を撃退したアミスが本部に到着した。

 なにかとティティ様の世話役を命じていたせいか、ティティ様がホッと安堵の息を零していた。

 

 思った以上に、主に女性で構成されている親衛隊はティティ様の心を捉えているようだ。

 悪用するわけではないが、今後アラバスタと関係を構築する際には使えるかもしれん。

 

「敵将の撃破、よくやった」

「ハッ。ですが申し訳ありません、取り逃がしました」

「構わん。下手に交戦して貴重な親衛隊が足止めされる方が厄介だった」

 

 強いて言うなら、あの場は同行していた二名に任せてアミスには指揮や戦況確認に動き続けていて欲しかったが……まぁ、能力的に問題ない二名を付けていたと言う事は想定通りの動きなのだろう。

 

 あとで注意は必要だろうが叱責するほどでない。

 そもそも、厄介な戦力二つを無力化したのが本当にデカい。

 

 配置がドフラミンゴの指揮だとすれば、後から来たベトベト野郎は最初から伏兵として伏せられていたとみていい。

 下手な戦力だと危うかった。

 最悪親衛隊に負傷者――相性次第では捕まっていたかもしれねぇ。

 

「奴らが暴れ回っていたら、防衛線に致命的な(ほつ)れが出来ていただろう。よくやった」

「ハッ」

「そして、すまんが大至急傷病者の回収の指揮を執ってもらいたい」

「ハッ、傷病者ですか」

 

 おう、疑問だよね。いつもとは違うもん。

 

「敵生物の混乱が深まればクロコダイルが攪乱の手を緩め反転攻勢に移る。だが、それから前線が上がるまで待っていたら、相当な数の負傷者を放置してしまう」

 

 なにより、砂漠という特殊な環境に振り回されている。

 

 日が暮れてから時間が経てば経つほどに気温が下がっている。

 かなり危険な状況だ。

 

「大勢の余裕が出たからこそ、彼らを放置することは出来ん」

「……その中に、偽装した敵が潜んでいる可能性は?」

 

 …………おぉう。

 確かにその可能性があったか。

 

 回収役として潜伏していたのはあの芸術家オバサンだったようだが……他にもいる可能性はある。

 俺は街中の避難民に紛れている可能性を警戒していたが……そうか、兵士。

 

 この混戦の中での怪我人ならば確認も難しい。

 

 衣装もなまじ正規兵という事で、それを犠牲になった兵から剥ぎ取りでもされて紛れ込まれたら、部外者の俺達には見分けがつかん。

 

「その可能性は確かにあるな……。治療も並行して行うが、民衆からは離した上で可能な限り目を離さないでおこう。万が一の際には俺が鎮圧できる場所を臨時の避難所にする」

「ハッ。それでしたら」

 

 後ろに並ぶアメリアとフリックも納得したようだ。

 

 まぁ、仮に混乱狙いでひと騒動起こした所で鎮圧は容易いし、ここでアラバスタの民衆を守る姿勢を見せる事で尚更俺達の存在をアピールできる。

 

 念のために、どう転んでもアラバスタ民の犠牲を抑える用意はしてあるし問題ない。

 

 あとは――

 

「ハンコック、頼むぞ」

 

 しっちゃかめっちゃかになってしまったとはいえ、元々は連合との会談のためにティティ様をここに迎え入れたのだ。俺が直衛に付く事を条件に入れて、それをアラバスタ政府は飲み込んだ。

 であれば、現時点でのエルマルの最高戦力である俺がティティ様の側を離れるわけにはいかん。

 

 俺が自ら出陣して陰険チンピラドピンク腐れサングラスにドロップキックかましてパロスペシャルからのバックドロップホールドをキメる訳にはいかんのだ。

 

 俺とお前でマグネットパワーをプラスとマイナスでONにする訳にはいかないんだ。

 

 本当に。

 本当に頼むぞハンコック。

 

 ギッタギタにしてやれ。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「どうやら、流れは主殿に傾いたようじゃのう!」

「……っ……女ぁ……」

「ほう。随分と余裕を失くしておる様じゃ。本腰を入れた訳ではないがここまで何もできぬとは思ってなかった。そんなところか」

 

 激闘は未だに続いている。

 覇王色と覇王色。

 かたや復讐のために、かたや忠節のために。

 

「俺が……助けてもらいたいだと……!?」

「不平を叫び、不公平を是とし、それゆえ力を手にして勝者たらんとする」

 

 町諸共に破壊せんとする、衝撃波をともなう蹴りの一撃。

 天夜叉の放つそれを、海賊姫は相殺する。

 かつて魚人島攻防戦において、危うく魚人に被害を出しそうになってから個人の鍛錬に尚更力を入れたハンコックは、周囲へ被害を出さずにそれを掻き消した。

 

「そういう者はどちらかしかおらぬ」

「どちらか!?」

「かつての己だった他者のために戦うか、あるいはかつての己のためだけに戦うかじゃ」

 

 海賊姫の言葉を遮るように、天夜叉は放ったばかりの技をもう片方の足で即座に放とうとする。

 

 が、それを読んでいたハンコックは既に接近しており、技を放つ前にその足そのものを押さえる。

 

 僅かにではあるが、覇気の強度はドフラミンゴの方が上だった。

 だが、その覇気を扱う技量はハンコックが大きく上回っている。

 

「お主の地獄は知らぬ! 分からぬ! ゆえにお主が誰のために戦っているかもわからぬが……っ!」

 

 怒りに任せた天夜叉の拳、蹴り、そして能力の糸。

 覇気が込められたそれを、時に相殺し、時に受けながし、海賊姫は華麗に全てを捌いていく。

 

「主殿へのその執着! これまで直接会った事もないであろうに、妾でも感じる程の尋常ならざる敵意! ゆえに見えてくる物もある!」

 

 覇気の強弱、微細な硬軟の使い分け。

 純粋なぶつかり合いになりやすい覇気の攻防に、独特の柔らかさをもたらしているのが『海賊姫』の技だった。

 

「主殿が救えなかった事への苛立ちがあるのであろう!?」

「それじゃねぇ! 奴はあの時いなかった!!」

「ゆえにこそであろう!! 違うか!?」

「貴様……っ」

 

 覇気の地力ではクロやミホークに圧されているが、黒猫という組織に『覇気』をもたらしたのは他ならぬハンコック達ボア三姉妹だった。

 

 クロやダズ、親衛隊達の訓練の中で、ハンコック本人も覇気を磨き続けていた。

 

「だからこそ……っ、降れとは言わぬ! だが、止まれぬのか!?」

「そんな段階は疾うの昔に通り過ぎているんだよ、海賊姫!!」

 

 だからこそ、海賊姫は内心驚愕していた。

 今相手をしている海賊は、あるいは西海海戦で戦った海軍大将に近い勢いを手にしている。

 

「俺の親父は阿呆だった!!」

 

 かつての海軍将校らは士気がどうしても上がらない。上げられない程に酷い状況だったというのを差し置いても、この海賊の怒りは恐ろしく根深いと。

 

「綺麗事を口にして、何も考えずに実行して、自分諸共家族を地獄に突き落とした!!!」 

「それがお主の根源か!!」

 

 糸という、高速戦闘時の中ではほぼ不可視の攻撃が()ぶ。

 天夜叉本人に『魅了』による完全石化は効かないが、直接攻撃による部分石化は通る。

 宙で身体を(よじ)り全てを紙一重で躱したハンコックは、通り違いに放たれた糸全てを蹴り飛ばして石化し、砕く。

 

「そっくりだろう! 綺麗事抜かして周りを巻き込む! アイツは親父と!!」

「じゃが――!」

「そうだ! だが違う! アイツはクソ親父と違う! 親父なのに親父じゃねぇ!!」

 

 だが、そんなこと天夜叉はとっくに知っていた。

 攻撃の手を緩めず、海賊姫に一撃を与えるためにまたもや糸を、今度は蜘蛛の巣のように形成して撃ち放つ。

 

「だったら――潰すしかねぇんだよ! 母上を殺し、俺に父上を殺させた親父を俺は! 俺がぁぁぁぁぁ!!!!」

「えぇい、訳が分からぬわ! 何を求めて主殿に怒りをぶつけておるのか知らぬが……っ!」

 

 それを見聞色で察知していたハンコックは、すでにその範囲内にいなかった。

 抜き足。

 クロの代名詞、すなわち『黒猫』の代名詞である無音高速歩法術。

 

「己の欲する所くらい把握しておかぬか、たわけぇっ!!!!!!!!」

 

『黒猫』の先槍に――すなわち先陣を切る一番槍であるハンコックは、いつしかクロ同様に足技を使う戦い方が主軸となっていた。

 

 当然といえば当然の話である。

 

 ハンコックがクロの『覇気』の師であったように。

 

芳香脚(パフューム・フェムル)――」

 

 クロこそハンコックに『足技』の全てを叩き込んだ師である。

 

 姿勢、力の込め方、その全ては、

 

重速(アクセラレート)!!!」

 

 クロそのものであった。

 

 天夜叉の身体に、黒く染まった足が突き刺さり――

 

 息を吐く間すら与えず、海の向こうまで吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

――ベキィィッィィィィィィッ!!!!!!

 

「うおわぁっ!!!? なんだなんだぁ!!!?」

 

 夜闇を写し取り、真っ黒になったアラバスタ海域に隠れ潜んでいた巨船が、轟音と共に大きく揺れる。

 

 頑丈な木材で作られた甲板に大穴が空き、アフロの男は酒瓶を放り投げて慌てて船室のドアを蹴破り外に出る。

 

――か………………は………っ

 

「……やれやれ、こっぴどくやられたもんだ。他の連中もアンタ同様酷い目に遭ってるぜ」

 

 甲板に空いた大穴の奥には、血まみれになったこの船の船長がいた。

 言葉を発するたびにその喉からは血が溢れ、手足どころか指一本動かす余裕はない。

 

「ご…ふ……っ。黒猫の戦力を……ぇほっ……身を以て確認した。やはり、今の俺達じゃあどう足掻いても勝てねぇ。奴らが油断するならともかく――」

「んなタマじゃねぇな。潜ませていた観測係からの情報を精査しているが、驚くほどの勢いで怪物連中を蹴散らしている」

 

 アフロの男は船医を呼んだ上で、適当な布を酒で湿らせ血まみれの船長の顔を拭いてやる。

 

「……すまねぇ、俺も誤算だった。あれだけの混乱を起こしたにも関わらず、ここまで戦線維持し続けるとは思わなかったぜ。そして、一番人質の価値が高かったビビは黒猫の最精鋭と共に」

 

 アフロの男――ブエナ・フェスタもやや苦々し気にそう言う。

 

「一応ネフェルタリ・ティティの誘拐・暗殺に仕込んでいた連中は残っているが、どうする?」

「ごほ……っ、下がらせろ。もうクロが前線に出る余地はない。まごまごしてたら回収どころか抜ける事すら困難になる」

 

 慌てて駆け付けて来た船医達が、担架を用意している。

 医師が下手に運ぶのは危険だと判断する程に、今のドフラミンゴはボロボロだった。

 

「負けたな。完全に。分断されていたクロと刃を交えるに至らず、奴に助けられた女によって足蹴にされるとは……」

「……お前さんも含めて鍛え直すか?」

「当然だ。だがそれだけじゃ意味がねぇ。やはり奴らはもう海賊じゃねぇ。……やつらはすでにして、軍隊だ」

 

 ほとんど力が入らない身体で、だがドフラミンゴはゆっくりと拳を握りしめる。

 

「あの男が作った。綺麗事を貫くための……テメェの理想を現実にするために……」

 

「あのクソ女のように、同じ物を見た連中を引き連れて……っ」

 

 そしてボロボロになった甲板に叩きつける。

 

「テメェとは違う。……全然! 違うだろうが!!」

 

「どうしてテメェはアイツじゃなかった! どうしてアイツは――」

 

 

「アイツが………………っ!!!!!!!!」

 

 

 その後、巨船はどこからか現れたコーティング船団と合流し、静かにアラバスタ海域から去っていった。

 

 連合軍による侵攻から始まったアラバスタ防衛戦が、事実上の終結をしたその瞬間である。

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