とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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191:緊急戦後処理会議(なお出席者は皆死にかけている)

 黒猫ですら予想していなかったアラバスタにおける防衛戦が明けて三日。

 

 黒猫海賊団は計画していた硫黄の香りがする島に臨時拠点を設けるのと並行してアラバスタ南部の港街エルマルに臨時本部を設置。

 

 今回はいつもと違い世界政府加盟国が現場という事もあって復旧にこちらの資源を割くのは好ましくなく、国王であるコブラ王の到着と会談を待つ算段になった。しかし、作業のための人員を投入することが即時決定された。

 

 怪物騒ぎによって内陸に遺されていた連合軍の対処に、騒ぎに乗じてアラバスタ民を連れ去ろうとしていた者達の拘束や被害者の保護には兵数がとにかく必要で、今現在それに応えられるのは『黒猫』しかいなかった。

 

 なにせ、瓦礫の撤去という単純な重労働に割ける人員も足りていないのだ。

 

「やれやれ、魚人を連れて来たのは正解だったな」

「まずそもそもなんでオメーがこっちに来てんだよ、ミホーク」

 

 人の力で運べそうにない大きな瓦礫をミニホロによる爆発で砕きながら現場の様子を確認しているペローナの横で、先ほどまで同じことを斬撃で行いながら現場監督をしていた大剣豪が握り飯(ロビン作)を食べて補給をしている。

 

「なに。向こう側でのおおよその仕事を終わらせたので、クリスに後を頼んでしばらくコーティング船をかき集めていたのだ」

「あぁ……、『新世界』じゃ今地味に貴重だろうしな」

 

 偉大なる航路(グランドライン)前半で、その先に向かおうとする者が全て向かう島、シャボンディ諸島。

 それを構成するヤルキマン・マングローブという植物の樹脂を利用した潜水可能な船をコーティング船といい、魚人島に向かうための必須装備である。

 

「……ん? 船を集めたのはいいとして、お前らはどうやって来たんだ?」

 

 だが、今偉大なる航路(グランドライン)は分断されている。

 かつて自由に航行できる唯一の航路だった魚人島は封鎖され、もう一つの航路であるレッドポートは政府が許可した船以外は通行できない。

 政府の下に付いた七武海やら私掠艦隊ならばともかく、海賊が通れる航路ではない。

 

 ペローナは、てっきり西の海に戻ってからリバースマウンテンを越えて来たのかと予想していた。

 

「ああ……」

 

 一応、今の黒猫は前半である『楽園』と『新世界』を行き来する手段は手にしている。

 それが魚人島奪還戦時の計画に組み込まれているのだが、その手段は今『北の海(ノースブルー)』にて海兵の取り込みとそれを支えるだけの橋頭堡作りに出向いている。

 

 ペローナからしても便利だった雑用係(ヒナ)を連れてだ。

 

 最後の報告では、好き勝手やってる私掠艦隊を相手に大暴れして壊滅させたとか。

 

 一応ミホーク単独でも凪の帯(カームベルト)の横断は難しくないだろうが――

 

「魚人達を引き連れて魚人島に乗り込み、突っ切って来た」

「なにやってんだお前ェェェェェェッ!!!?????」

 

 反射的にペローナが放った傘による一撃がミホークを捉えるが、当人は平然とそれを受け止めたまま大笑いしている。

 

「ハッハッハ、青雉も驚いて対応に手間取ってくれたな。おかげで一人も欠けずに楽園側に脱出出来た」

「いや、出来たって……本部戦力とは事実上の休戦状態とは言え無茶するな、お前」

「今だからこそだ。それに、結果としてアラバスタ――世界政府加盟国の救援に間に合ったのだ。悪くはあるまい」

「交戦してねぇだろうな?」

「さすがにクロの戦略を台無しにする真似はせん。魚人戦力も、アーロンが統制したおかげで乱れがなかった」

 

 ミホークのその言葉をペローナは、まぁ事実ではあるだろうと読んだ。

 

 一応ミホークは黒猫幹部ではなくあくまで客将ではあるが、事実上の最高幹部である。

 もし海軍と戦っていれば、とっくの昔にニュースとなって新聞の一面を飾り、それを読んだクロが口から泡を吹いて倒れていただろう。

 

「クロにも報告したが、納得はしていたようだしな」

「それじゃあ、こっちに来た理由は?」

「……さっき言った通り、向こうでの()()を終えたというのが大きいが」

 

 もとよりミホークは、完全に単独で自由に動かせる貴重な駒である。

 ぶっ飛ぶこともあってクロがたまにゲボ吐きながら対応することもあるが、それでも重要なポイントを外すことはない。

 

「本格的な奪還戦の前に、魚人島の現在をこの目で確認しておきたかった」

「……そうか、そういやお前魚人島での戦いにはいなかったな」

 

 田畑を耕すことを始めとする食料増産に関して大真面目なミホークは、同時に戦いに関しても手を抜くことはない。

 その場に配属されるかどうかは別として、次に待ち構えている大戦の地になり得る島を改めて確認しておきたかったのだろう。

 

「で、どうだったんだ?」

「以前俺が通った時とそう違わなかったが……ただ、奇妙な塔が建てられていたな」

「塔?」

「あるいは、塔らしきなにかだな。クロには報告しているが……」

 

 ミホークが、握り飯を食べ終わった手で適当な枝を持ち、枝で地面の砂を掻き分け絵で示す。

 

「極めて大きな、扉の無い出入り口らしきものが付いた塔だ。これに、恐らくこれまで捕まえたのだろう首輪を付けられた魚人達が働かされていた」

「……アーロンはよく我慢出来たな」

 

 迫害の歴史を持つ魚人にとって、再び目の前で隷属させられる同胞を見るのは辛かっただろう。

 そのまま通り抜けるのは、見捨てる事に近かったはずだ。

 

「正直、俺も一瞬魚人奪還のために牽制を兼ねた軽い()()()もやぶさかではないと少し構えたのだが」

「だが?」

「僅かに零れた殺気を読まれたのか周囲ごと凍らされそうになってな」

「大事になってんじゃねぇか!!!!」

 

 だがそれどころじゃない事態になればどうしようもない。

 実際魚人達も、物理的な障壁が迫ってくればそれどころではなかった。

 

「おいドール、マキシン! アーロンらも無事だったのか!?」

 

 今やミホーク係となっている三人は、離れた所でミホーク同様に休憩を取っていた。

 クロがいない間、共に数多の困難を乗り越えて来た三人。

 共に数多の理不尽に頭を悩ませながら解決してきた三人。

 

 彼らは慌てて叫ぶペローナに対して、揃って小さく微笑み――

 

 

「「「(し゛)ぬ゛か゛と゛(お゛も゛)った゛…………っ……!」」」

 

 その表情を崩さぬまま、涙を零していた。

 

 

「あぁ…………まぁ…………だろうな」

 

 

 いつぞやのロビンを彷彿とさせる遠い目をする三人に、さてどう声をかけようかとペローナが頭を悩ませている内――

 

 最高幹部会議への出席要請が飛んで来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 なお、会議の場に辿り着くまでの間、ミホークはひたすらペローナに脛を蹴り続けられていた。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 アラバスタ防衛戦が終わって状況の把握がどうにか終わって、ようやく動きを取る事が出来る。

 なにせ被害が広範囲過ぎて、最低限の方針決めてからは場当たりで動きながら現場で情報収集してもらって報告してもらった情報を精査しながら、連合軍の捕虜らに対応して……

 

(とにかく忙しかったからなぁ)

 

 すでに幹部は勢ぞろいしている。

 ダズと、ペローナ、ロビンにテゾーロはもちろん、親衛隊隊長のアミスにクロコダイル、増援として来てくれたハンコックにミホーク。

 

「想定外の大戦の事後処理に各々が走り回っている中、一人も欠けずに時間通り集まってくれたことに感謝する」

 

 客将のシャーロット姉弟も綺麗に出席している。

 本当に、この組織力の高さは俺が心から誇れるものだ。

 

「そして、まず確認しなくてはならないのだが……」

 

 

 だからこそ、心苦しい。

 

 

「……皆、生きてる?」

 

 

――おぉぉぉおぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ…………

 

 

 こうも皆を使い潰している現状が本当に心苦しい。

 ハンコックはうつらうつらしてるし、クロコダイルはかろうじて渋々と片手を軽く掲げる。

 ロビンとテゾーロも情報処理でほぼほぼ不眠不休でグッタリしているし、シャーロット姉弟も現場の差配任せたカスタードが瀕死の状態だ。

 クラッカーに気遣われている。

 

 ダズは少しは寝ているけど、現場の確認や士気を上げるためにアチコチ歩き回っていてやはり死にそうだ。

 

 ……ミホーク! おめぇが元気爆発してるのは知ってんだよ!!!

 ペローナ、いいぞ! 傘で突いてやれ!!

 

「どうにか……生きておるわ……」

「相手が加盟国で好きに物資を注ぎ込めねぇってだけでここまで苦労するとは……」

 

 偉大なる航路(グランドライン)攻略艦隊の比翼といえる二人は、下手な戦闘よりもはるかにボロボロになった身体を起こして、俺とテゾーロ、ロビンに向かって、

 

「主殿、それにテゾーロにロビン。良い機会じゃから艦隊を代表してここで礼を言う。現場作業にかかり切りの我らに代わり、厄介な政の仕事を片付けてくれた事、心から感謝する」

「お前らが人員を真っ先に掻き集めて配備したおかげで、現場がパンクする最悪の事態はどうにか避けられた」

 

 ハンコックは立ち上がって深く頭を下げて、クロコダイルは椅子に座ったまま今度はフックを軽く上げて見せる。

 うん、ハンコックも座ってていいよ。

 クロコダイルもマジでお疲れ。

 

 そうだよね、ギャルディーノですら被害状況の把握で精一杯な現場だったもんね。

 今も死にそうな目で走り回ってるもんね。

 未決の書類仕事はちょっと待つから。うん。

 

「いえ。今後どういう流れになるにせよ、コブラ王の帰還と共にアラバスタは世界政府との政治的前線になる事は避けられません。その時までに軍を万全に動かせるよう些事を片づけるのが我々の仕事です」

「むしろ、政治面でアレコレ配慮せざるを得なくなって撤退も出来ないし、かといって支援物資も碌に投下出来ない我々首脳部の不手際を謝罪する。すまない。俺が立てて宣言した方針が、厄介な今を作ってしまった」

 

 マジでホント申し訳ない。

 良い機会なのは俺も同じだ。しっかり部下達に頭下げておこう。

 一緒に寝落ちしそうになったり吐きそうになったテゾーロら政治畑の面々にはもう謝っていたけど、現場組にまで手が回ってなかった。

 

 これでウチが占領できるんなら物資を投下する事になんの不都合もないんだけど、加盟国相手にウチの勢力下で作られたり差し出された物資を勝手に投下するのは、各国への反世界政府感情と併せてNGなんだわ……。

 

 かといって、事態を解決するためとはいえティティ様を一度こちら側に迎え入れた挙句にその後の戦闘で已むを得なかったとはいえ危険にさらしたし、『黒猫』の活動理念からしても放り投げる事が出来なかった。

 

 おのれ腐れピンクめ……。

『黒猫』にとってこれ以上ない足止めを食らわしやがったな。

 

 まずは硫黄の島を完全制圧したかったのに……。

 

「とりあえず現状を確認する。実はティティ様達現アラバスタ首脳陣より通達があり、先日コブラ王が聖地を出発。およそ十日前後を目途にコブラ王が帰還するということだ」

「予定じゃ世界会議(レヴェリー)はもうしばらく続いたハズ。……先に抜けたか?」

「クロコダイルの言う通り、先んじての帰国という形らしい。……まぁ、国の一大事だからな」

 

 政府の面子としては、国王を世界会議(レヴェリー)に出席させた状態で海軍に解決させたかったんだろうけど……あの怪物共やピンクがいる以上、下手な戦力では逆に壊滅させられてアラバスタが本当に終わりかねなかったから……うん。

 

(先遣部隊が壊滅してその間にアラバスタ壊滅。ティティ様とビビ様が攫われてからようやく海軍戦力が到着。元から崩れている信頼が更に崩れて、世界政府とその加盟国の間に更にデカい楔を打ち込む形になる……って感じかなぁ。当初の予定は)

 

 多分、本当は怪物を出さずに連合国に罪を擦り付ける形にするつもりだったんじゃねぇかな。

 ティティ様達の身柄をどう使うかが不明瞭だけど……偶然とはいえ介入が間に合って良かった。

 

「到着次第、あるいは海軍とちょっとした小競り合いがあるかもしれないが本格的な戦闘はまずない。そこでコブラ王に公式非公式を問わず会談、アラバスタ西部の占領を認めさせるつもりだ」

「認められぬと言われたら?」

「旗掲げて本隊上陸、そして占領だな。正直、こっちのほうが傘下国への説明も楽まであるし、どう転んでも問題はない」

 

 とりあえず、アラバスタを無料(タダ)で助けた訳ではないというアピールはしておかなくてはならない。

 

 これを強く言っておかないと内外共に面倒くさい事になってしまう。

 

「その際、アラバスタとどう関わるかを話し合う事になるだろう。そこで、今一度現在のアラバスタでの活動における問題点を整理しておきたい」

「整理もクソも……」

 

 椅子に座ったまま、酒や茶ではなく白湯を口にしているクロコダイルが口を開く。

 

「第一にあの化け物共だろうが」

「まぁ、それな」

 

 今一番奴らの対処に当たっているからなぁ、第三艦隊並びに陸軍。

 

「先日の戦いにて、奴らの動きを誘導していた木々の排除・回収を終えて奴らを散らしエルマルを守り通したが……結果として西部の砂漠地帯にやつらが点在するようになってしまった」

「俺も内陸の拠点の候補地探しのついでに、発見した奴は潰しているが……かなりの数が砂漠に住み着いていやがるぞ」

「ああ。幸い、首都アルバーナを始め多くの居住地がある東部はクラッカーが駆除し尽くしてくれたおかげで、時折ペル殿が偵察で見つけた物を狩る程度で済んでいる。……とはいえ、隠れ住まれて繁殖されると厄介だ」

 

 アラバスタを迂闊に放置できなくなった最大の理由がコレである。

 あのカス共の置き土産。

 これのせいでアラバスタは極めて不安定な土地になってしまった。

 

「クロコダイルよ、西部の砂漠地帯はそんなに不味いのか?」

「あぁ。元々アラバスタの砂漠は危険な生物が多い所だったんだが、ソイツらを食い殺して今も生きている奴らが大勢いる。クロが言うように、下手に環境に適応して増えられると面倒なことになる」

 

 ホント。

 砂漠という環境で自滅してくれるんじゃないかと期待していたんだけど、共食い――いや個々の生物種は違うんだけど、とにかく怪物同士で喰らい合おうとしているのも確認している。

 

 無論、人間を見かけたら貴重な餌として真っ直ぐ襲い掛かってくるのである。

 

「西部を占領下に置きたいのはコレがある。奴らを狩るための前線基地が欲しいってのもそうだが、今後敵がまたあれを投下してきた時のための研究素材が一体でも多く必要なんだ」

 

 例の木の研究を進めるつもりだけど、人間への毒性があるためまずは安全を確保できる設備の確保だ。

 

「今現在、先日占領したオブーレモ王国を基点に大規模輸送艦隊の出航要請を出している。彼らが到着次第、復興・救助作業と並行して西部海岸に我らの拠点を築く」

 

 あの王様が逃げ出した国は、今や俺達にとって貴重な輸送拠点となっている。

 各地の拠点や旗を貸した国からのみかじめの金や物資を集積し、必要な海域へ分配する物流拠点。

 

「海岸か」

「まずはアラバスタ民を介さない荷下ろし場を確保する。その港を強化しながらクロコダイルが選定した場所までの補給路を確保し、陸上拠点を設営。巨大生物らの討伐と回収、研究を第一任務とする基地にする」

 

 ついでに砂漠地帯ではやってみたい実験が山ほどあるらしい。ミホークが。

 砂漠地帯での作物やその農法、更には限定環境の再現やら緑化実験などなど。

 

 さっきからクロコダイルが用意した基地計画の地図見てニコニコしてるし、マジでやりたいことが多すぎて楽しいんだろうなコイツ!!!

 この忙しい時に『アラバスタ近海の安定した高い海水温を利用した海老の安定養殖場』なんて企画書作ってくるのはお前くらいだよ!!

 

 でもそれでいい!

 生産力がどれだけ向上するかお前にかかってるからなミホーク!!

 自由裁量権も渡すから好きにやっていいぞ!

 定期的に化け物狩りに参加してくれれば!

 

「総督、その基地はアラバスタとの折衝に使うつもりですか?」

「当面は。とはいえそこは少々軍事的な色が強い。クロコダイル、基地は二つ用意するんだな?」

「そのつもりだ。一つは軍事、一つはアラバスタの人間が来ることを――いや、引き込む事を前提にした町。……最初は歓楽街を予定していたんだが」

 

 あぁ、立ててたなカジノ街計画。

 原作のレインベース以上に堂々と稼ぐための一大歓楽街にして、アラバスタサイドとの玄関口になる拠点。

 

 まだ出航する前、テゾーロとあれこれ計画していたな。

 

「いや、それでいい。クロコダイルの好きにして構わない。多分、その二つ目の拠点こそが俺達『黒猫』と世界政府の外交戦の最前線になる」

「……この期に及んで政府が外交に臨むか? むしろ兵力投入して襲ってきそうだが」

「海軍との間に無視できない摩擦があり、しかもこっちは海軍にいくつも貸しを押し付けている。そしてここが加盟国の土地である以上、制御が難しい私掠艦隊も投入できない」

「サイファーポールを始めとする裏の戦力は?」

「マキシンがこっちに付いたことで、向こうも再編でゴタ付いているし、内部からのリークでは革命軍の方にかかりっきりらしい」

「リーク……精度は?」

「こちらの諜報と合致している。かなり高いだろう」

「……なるほど」

 

 そしてアラバスタ戦を終えてから、内部情報のリークが二割くらい増えたんだよな。

 ありがたいんだが仕事がめっちゃ増える……。

 

「となれば、政府は時間稼ぎを考えるだろう」

「……それで外交か」

「ある意味で、我々にとっての『顔』を象徴する町になるな」

 

 まぁ、クロコダイルとテゾーロがタッグ組むなら問題あるまい。

 互いが互いに『金稼ぎに天賦の才がある』と認め合う二人だ。

 実際滅茶苦茶仲がいいし、テゾーロの二人目の子供の名前を夫婦と揃って考えてたくらいだし。

 

「で、だ」

 

 本当はもっと色々時間をかけて話し合わなきゃいけない事がある。

 

 アラバスタ戦の報告を傘下の国にしてから、各国から観戦武官の同行要請が山のように来ているとか。

 

 アラバスタを襲っていた四か国連合への対応だとか。

 

 現状内部物流が壊滅しているアラバスタへの援助・支援方針だとか。

 

 いい加減地勢的に不便だけど想定以上に重要度増して来たウイスキーピーク基地の機能移転とか!

 

 だけどそれ以上に!

 

「そうなると、当然だがアラバスタを通して世界政府と関わらざるを得ない」

「口喧嘩になるな」

「むしろ、我らに余計な事を言ってきたらこちらから殴り返してやるわ」

 

 おぉう、ウチの艦隊提督たちは血気盛んだな。

 ……あと、カスタード嬢もなんで頷いてるの。

 

「まぁ、余計な言質を与えないことに終始する戦いだから」

 

 そうだ、利益を得るための戦いではない。

 本命である魚人島奪還戦までの間の、余計な介入を防ぐための最小の鞘当てである。

 というか鞘当てにしなければならない。

 多分、向こう側もそう考えているだろう。

 

(完全に想定外とはいえ、ミホークのアクションは思わぬ物差しになったな……)

 

「で、それがなくても、これまで避けて来たアラバスタという加盟国との付き合いが始まるよね?」

「む? それはそうであろう。どちらにせよ放置できぬし、ミホークもここは肝いりの土地であった」

「民衆の『黒猫』への好感情も確認している。実際に守った実績もある以上、窓口としては最適だろう」

 

 うん。

 そうなんだ。

 それはいいんだけどさ。

 

「と、なると。いい加減真面目に考えないといけないことがある」

「それは?」

 

 

 

 

「『Cat』と『ベリー』の通貨交換比率」

 

 …………。

 

 皆、ただでさえ死んでた目を更に死なせるとか器用な事するね。

 ロビン、皆に熱いお茶を淹れてあげ――寝落ちしてる!?

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