とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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(大変申し訳ありません。一話とプロローグを間違えて投稿したので、プロローグ部分を差し込み投稿いたしました)


第一章:旗揚げ
001:西の海へ


 結局、レッドラインを伝って西の海に行くことにした。

 ワンピースの世界の事はもはやうろ覚えだけど、ルフィたちもまだ生まれていないハズだ。

 なにせ俺が賞金首になるちょいと前にゴールド・ロジャーが処刑されている。

 

(しかしなるほど……。マフィアの海とはよく言ったもんだ)

 

 ここがワンピースの世界だと気付いてから、少なくとも荒事は避けられないと色々鍛えてはいた。

 今や代名詞といっていい覇気も当然試してみたがよく分からず、六式は(そる)っぽいものだけがどうにか成功。

 

 …………成功?

 

 とにかく、そういうのもあって足には自信があるからレッドラインを一気に駆け抜けて……まぁ一年かかったけど……いやぁ、東の海は本当に平和な海だったんだな。

 

「いたぞ、『抜き足』だ!」

「3500万の首だ! 逃がすなよ!」

 

 東の海の賞金首よく知ってたなお前ら。

 賞金稼ぎとして熱心というか仕事に真面目なのはいいけど勘弁してください。

 

(というかまた懸賞金上がってる!? なんで!?)

 

 レッドラインを走り抜けた時に賞金首とか山賊何人かぶっ飛ばしたけど、懸賞金上がるような悪さはしてないハズなんだけどなぁ!

 

「お尋ね者とはいえ、命を狙ってくるんなら落とす覚悟もあるな?」

 

 人に覚悟を問う前にまず自分が覚悟を持てと言う話だが。

 予想はしていたが西の海は賞金稼ぎのレベルが高く、東の海のように手加減する余裕がない。

 

(抜き足……!)

 

「ま、また奴の姿が消え――」

「ぐわあああああ!!」

「あぁ、ちくしょう! 新入りがやられた!?」

 

 とりあえず数を減らすためにあからさまに練度が低い奴を思いっきり殴り飛ばす。

 

(コイツらぶっ飛ばして身ぐるみ剥いだら、次の街で補給する時に銃か刃物買おう。もう無手でやれる敵じゃねぇ)

 

 キャプテン・クロと言えば指部分一本一本に刀を付けた手袋、『猫の手』だ。

 クロとして生きる事になった以上、出来る事なら使ってみたい気もするがとにかく武器だ。

 

 クロの身体という事も手伝って足には自信があったので、ゼフやサンジよろしく足技でイケるかもしれないとか考えてたけど無理無理。

 相当な訓練積まないとコレ無理だわ。

 サンジとかゼフから料理の特訓と同時進行だったろうによくやれたもんだわ。

 

「死ね、賞金稼ぎ」

「ぐべらっ!!」

 

 サンジのようにこう……『ドゴォン!』って感じに上手くならない。

 だから出来るだけ、壁とか地面なんかで頭を踏みつぶすか叩きつけて無力化させる。

 これが一番最小の労力で相手を無力化できる。

 

 上手くいけばいい感じに顔が酷いことになって他の連中ビビらせられる。

 

「てめぇ! なんてえげつない真似しやがる!」

「この鬼!」

「悪魔!」

「賞金首!」

「ボビーしっかりしろ! ちょっと鼻ごと顔が潰れて歯が折れて血まみれになってるだけだ!」

「おいお前足退けてやれ、もう気を失ってるだろう!? ……更に踏みにじれって言ったんじゃねぇよ!! 地面が真っ赤になってんだろうが!!」

 

 クソ、失敗。

 東の海ならこれだけでビビる連中ちょいちょいいたんだけどな。

 それか、ビビらせるにはこの足元で痙攣してるヤロウのキャラじゃ足りなかったか。

 

 ちっ、わざわざ人襲ってきやがった分際でコイツ使えねぇ。

 

「おいアイツ舌打ちしたぞ」

「あの平和な東の海(イースト・ブルー)で屈指の賞金首なだけあるぜ」

「あんだけ血まみれのまま甚振ったボビーにツバまで吐きかけやがった」

 

 うるせぇ! この数年で目つきも完全にクロのそれになるくらい荒んでんだよ!

 美人や可愛い子ちゃんが(生命的な意味で)襲ってくるのはまだどうにかモチベーションにプラスになるけどお前みたいなムサい連中に襲われるなんざ楽しい事なんもねぇんだよ!

 

「とりあえずそことそこの若い奴」

「お、おう」

「なんだガキ、ここにきて命乞いか?」

 

 

 

「なんか女殴りそうな顔をしている。貴様らの顔は徹底的に潰すな」

「「テメェに言われたくねぇよ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、賞金稼ぎの癖に身ぐるみ剥いで合わせてたった8万べリー程度のブツしか持ってねぇのか」

 

 シケてやがる。

 やっぱ武器をへし折ったのが駄目だった。

 一番金目になるものだけど、安心して顔やら足やらをこう、ベキッとかボキッとかやるにはさっさと武器を破壊するのが一番楽だし安全なのだ。

 

 質屋の親父がボッタクってるっていうなら顎骨蹴り砕いて有り金と倉庫の金目の物全部奪っていくところだけど、むしろ相場よりもちょっと高めに買い取ってくれたから略奪するわけにもいかない。

 

 …………。

 

 ちっ、命拾いしたな店主。

 

「店主、このあたりに武器を取り扱う店はあるか?」

「なんだ坊や、その年で旅してんのか? この街で武器を扱う店はないよ。包丁やノコギリ程度の物なら、ちょいと離れた所の金物屋に行けば買えるがね」

「あー、そうか」

 

 さすがに包丁やらノコギリで戦うのはなぁ。

 ノコギリはちょっとエグいし、包丁はほら……料理に使うものだしそういう扱いしたら後々未来の海賊王のコックから蹴り殺されかねん。

 

 出会うかどうかは分からんけど。

 そもそも今が原作のどのくらいの時期かもわからん。

 

 ゴールドロジャーが処刑されて2年。

 そして一応はキャプテン・クロである俺の身体が12,3くらいだから……。

 

 少なくとも、まだルフィは生まれていないだろうって事しか分からん。

 

「そもそも武器の販売は5大ファミリー、つまりはマフィアが取り締まっている。どこかの島には取り扱ってる店もあるだろうけど、近寄っちゃだめだぜ? どんな難癖付けられるか分かったもんじゃない」

「マフィア?」

「あぁ……坊や、お前さんどっから来たんだい?」

「東の海から陸路で」

「おいおい……レッドライン駆け抜けてきたってのかい。本当だとしても山賊がわんさかいただろう」

「おかげでいい金になった」

「……その年で賞金稼ぎだったのかい坊や。なるほど、それなら武器を欲しがるわけ――」

「いや、全員足と鎖骨へし折って身ぐるみ剥いだ」

「お前さんのほうが山賊じゃねぇか!」

 

 がびーん、と店主が驚いているが、俺だってこの歳でこんな生活することになるとは思ってなかったわ!

 

 特にワンピースの世界で山賊狩りしてることに。

 クロだと気が付いてから一生懸命勉強した航海術の技術や知識ほとんど使ってねぇぞ……。

 

「しかしそうか、そりゃ強いわけだ。最近は君みたいに、強い子供の話を聞くし……海賊王の話といい、時代の節目かねぇ」

「強い子供?」

 

 作中に登場しなくても強い奴らはたくさんいるだろうし、話の通じる相手ならば仲間にしたい。

 最終的にワンピースの物語がどうなるかは知らないけど、ルフィの行先以外でもアチコチで事件が起こるんだろう。

 

 そうなると、賞金がかかってしまってる自分ではその波は避けられない。

 

 あのクソ共、覚えておけよ。

 チャンスがあったら暗殺してくれるわ。

 

「ああ、因縁付けてきたチンピラ集団を一人で返り討ちにした子供がいるとか……君と同じくらいの年だとか」

 

 自分で言うのもなんだけど、俺と同じくらいって本当に子供じゃないか。

 それに因縁をつけるチンピラ……。

 

 わかってはいたけどこの世界、治安が本当に酷いな。

 いかに麦わらの一味やその周囲のモラルが上澄みなのかよく分かる。

 

「その子供に関して、なにか情報は持っているか?」

「さぁ、ここから西の島のどこかとしか聞いていない」

 

 西か。

 元々ここには仲間探しに来たわけだしちょうどいい。

 

 強い奴がいるといいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が『抜き足』か」

 

 強い奴がいるといいなぁ。

 

「3700万ベリーの懸賞金に加えて、ファミリー傘下の賞金稼ぎを潰した件で500万ベリーの報奨金も出ている」

 

 話し合いの余地がある強い奴がいるといいなぁ。

 

「お前がチンピラ返り討ちにしたっていう噂の子供か」

「……噂は知らないが多分、そうだ」

「名前は?」

「ダズ・ボーネス」

 

 原作に関係なくて話し合いの余地がある強いやつがいるといいなぁ。

 

「俺の懸賞金が微妙に上がっているのは……」

「ファミリー傘下の賞金稼ぎグループ50人を叩き潰したんだ。この西の海では上がって当然だ」

 

 おっふ。

 

「先日の喧嘩の場所で見つけた妙な物を食べてから、色々(・・)と出来るようになってな」

 

 色々とスパスパ出来るようになっちゃったんですね。分かりたくないです。

 

「手合わせ願う」

 

 助けて、助けてクレメンス。

 


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