とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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すみません、今回は短いです


021:勃発

 ゲッコー・モリアとの予期せぬ対決から二週間。

 海兵達の体力が航海に耐えられるくらいには回復したのを見計らって、仮拠点となっていたあの島へ戻っていた。

 

 最初はクザンが海兵達を連れて帰るのかと思っていたけど、考えたら海凍らせて自転車で来てたんだ。大量の人員輸送できる船とかないわな。隠密行動だし。

 

(まぁ、隠密行動が必要なくらい行動が早いのが少し気になるけど……)

 

 クザンは、ゲッコー・モリアとの交戦報告や救出した海兵の照会やらなんやらで忙しくなるため、地区本部へと戻っていった。その後すぐにマリージョアに戻らないといけないそうだ。

 

 

――それじゃ、海兵達の事よろしくねー。

 

 

 おかしいよね?

 

 窮地にあった部下を海賊の所に置いていく海兵っておかしいよね?

 

 まぁ、とりあえず辺りを探し回ってたらファミリーの物らしい船を発見したのでそれに救出した海兵達を乗せて出航、仮拠点で式典への出航まで待つ予定になっている。

 

「訓練中の海難事故で遭難した新兵達が、力を合わせて困難な環境を生き延び、自分達の事故の慰問式典の日に地区本部へとたどり着く――奇跡の海兵達……か」

「ベタだと思うか? ダズ」

「……話そのものは嫌いじゃない」

 

 センゴクさんに、例の海図と一緒に送った手紙の内容は主に二つ。

 一つは暴走しそうな海兵――自分の知識の中だとガープくらいしか――サカズキもキレそうっちゃキレそうだが……まぁ、そういった海兵を抑えてもらう事。

 

 もう一つは今回の件に対するカバーストーリーの作成だ。

 死んだことになっている海兵を戻すためには、どうしても物語が必要だ。

 

 あくまで西の海での話なので、他の所だとまた違う作戦が必要になるんだけど。

 

 どうも他の海でも似たような事があったようで、センゴクさんと……驚いたことにあのおつるさんから感謝の手紙がクザンを通して届けられた。

 

 もう一人、教官のゼファーという人からもなんかものっっっすごい長文のお手紙が別に届いたけど……天竜人への怒りと助かった海兵がいる事の喜びの熱が籠りすぎててめっちゃ怖かった。

 

 誰だよこの人。クザンは自分の教官だったとか言ってたな。

 ……いや、そうか。教官ってことは新兵に対して思う所はあっただろうしこれだけ熱が籠るのも仕方ないのか……。

 

 とりあえず全員に海兵達の様子とか、自分は正しい海兵になってみせると話していた子の事とか織り交ぜた返事を書いてクザンに渡しておいた。

 

 これで多少でも頭が冷えてくれるといいんだが……。

 ここで世界が荒れに荒れたらもうどうなるか分からん。

 

「幸い、自分達はまだ海賊旗もない。こっそり近づく……というとなんだか聞こえが悪いが……まぁ、そうやって海兵達を送り届けて終わりだ」

「……そうだな」

 

 浜辺の方では、海兵達が二組になって模擬刀で訓練を行っている。

 ペローナとロビンはそれを眺めながら焚火の近くに腰を下ろしている。

 

 やかんがその上に吊るされている所を見るに、ペローナがココアを飲みたがったのだろう。

 

「名残惜しいか?」

 

 ダズは、なんだかんだで訓練相手としてあの子達とかなり長い間いたからなぁ。

 

「……彼女たちには、得難い経験をさせてもらった」

「訓練か?」

「それもそうだが……部下を使う戦いというものは新鮮だった」

「はっはっ。歯痒いだろう?」

「……心臓には悪いな」

 

 ダズくらいの力があれば一人で突っ込めば勝てる。

 特にあのゾンビ程度なら。

 

 だけど後ろに守る対象がいて敵が数多くいる場合は、上手く部下を使って状況を捌かなければならない。

 

(本当は、個々人の能力に任せるのが海賊流なんだろうけど……俺の肌には合わないしなぁ)

 

 ダズがそういう能力を伸ばしてくれれば、これから作る海賊団の色もそうなるだろう。

 

「実際、どう思った?」

「……崩されない戦闘員がいるだけでかなり違った。もしこれから先に部下を持ったのなら、そこから鍛えたい」

 

 あぁ、そういや負傷とかして崩れた所はちょっと危なかったっけか。

 自分は完全にモリアが余計な動きをしないように集中していてそっちはあまり見れていなかったが、怪我していた子が周りに申し訳なさそうにしていたな。

 

 あー、あの子だ。二人がかりで攻撃してもらってそれを一生懸命防ぐ訓練してる子。

 

「今鍛えても、将来の難敵を作るだけなんだがなぁ」

「ちょっとやそっと鍛えた所で、俺やキャプテンの相手ではない」

「はっはっは。まぁ、そりゃそうだ」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 そしてさらに半月が経ち、俺達は出航した。

 船は二隻。元々の俺の船にはベッジとの戦いから一緒の海兵達を、もう一隻をモリア戦からの海兵に任せて、地区本部へと出航。

 

 到着したら、実に式典らしく海軍の船が大量に並んでいた。

 

 …………。

 

 ねぇ、なんで全部それがこっちに向いてるの?

 

 式典だったら地区本部に船首向けるのが普通だよね?

 

 

『海賊、『抜き足』のクロ!! その船にお前が乗っているのは分かっている!!』

 

 

 誰だお前。俺の知ってる声じゃない。

 センゴクさんは? クザンは? もうこの際サカズキでも――ごめんやっぱそれなし。

 

 

『そしてお前の罪もだ! お前が大罪人――』

 

 

 海賊にそれいうの野暮じゃねぇ?

 俺、ある意味存在が罪だって言われてるような身なんだし――

 

 

『ニコ・ロビンを(かくま)っているという事は調べが付いている!』

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

 

 

『オハラの悪魔を引き渡せ、『抜き足』のクロ! そうすればこの場だけは見逃してやる!!』

 

 

 

 

『さもなくばその船ごとお前達を沈める!!』

 

 

 

 

『その船に()が! どれだけ(・・・・)乗っていようとだ!!!』

 

 

 

 

 クレメェェェェェェェェェェェェェェェェンスッッ!!!!!!!!!!

 

 




クレメンス「すいませんちょっと自分留守なんですよ」

次の更新は少し遅れるかもしれません

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