目が覚めたら、見覚えのある部屋の中で横になっていた。
てか、ここ本船の医務室じゃん。
「起きたか……」
「キャプテンさん!」
隣から、ダズとロビンの声がした。
というか、声こそしないけどなぜかすぐ横にペローナのゴーストが見える。
アイツは席外してんのかな?
とりあえずそっちを向こうとするが……
「ん? ……ん、お?」
あれ? 身体が全然動かねぇ。首動かそうとするだけですげぇ体が重く感じる。
目はさすがに動くので横目で状況を確認すると、ロビンやダズだけじゃなくアミスやハックも……
「あれだけの速度での攻防を長時間維持し続けたのだ。当分の間は動けまい」
………………。
「ミホーク。お前、乗っていたのか」
クッソビビったわ心臓止まるかと思ったわ! お前なにしとん!?
「お前との約束を一つ守れなかったのでな。借りを返すために同行させてもらっている」
「約束?」
「部下を見逃がすと言ったにも関わらず、軽くとはいえ傷を負わせてしまった」
誰の事だと思ってよく見ると、ロビンが腕に包帯を巻いていた。
(……ロビンが攻撃しようと生やした腕を、止めるために軽く斬ったって所かな……)
「それに、お前には聞きたいことがある」
そう言ってミホークはニヤリと笑う。
……。
お前ロビンの傷は適当な言い訳でそっちの方が本命だなこの野郎!?
見ろ! ロビンだって感づいてお前の事睨んでるじゃん!!
「何についてだ?」
「お前が最後に纏った
おぉう……俺もついに纏えたのか。偶然だけど。
「生憎、あの時は頭を全部動きの制御とお前の捕捉に使っていたから、碌に覚えていないぞ」
「だが、貴様は普段から覇気を纏う訓練をしているハズだ。そうでなくば、その歳で朧気とはいえ纏い始める事はまず不可能だ」
「……そりゃしてるが」
うげぇ、ちょっと恥ずかしい話になるなぁ。
うろ覚えの漫画の知識を一生懸命練習してました的な話になるし。
「全員、ちょっと席外してもらっていいか?」
「副船長として断る」
「
……ダズ、はまぁいいとしよう。
ロビン、ちょっと船長の言葉を一言どころか一文字で切り捨てるのはどうかと思――泣くんじゃない。頼むから涙ぐむの止めてくれ。
なんか俺が悪いことしてるみたいだろう。
他の連中も皆首を横に振ってるし……。
「あの、キャプテン。さすがに立ち上がるどころか指一本動かせそうにないキャプテンをこの人と二人っきりにするのは……」
そういうことする男じゃないんだけど……。
アミスまでそういうなら仕方ないか。
いや、そうだな……なら……。
「ミホーク」
「なんだ」
「借りを返したいというのなら頼みがある。それが喋る条件だ」
わざわざ話を聞きたいというのならば、コチラ側に何かしらの価値を見出したんだろう。
だったら、ちょっとした条件なら飲んでくれるハズ。
「……内容による」
「ウチの戦闘員に剣を教えてやってくれ」
出来れば覇気も。
俺の場合、まだ思うように発動できないしなぁ。
「……貴様を斬った男の剣を、貴様の部下が習いたいと思うか?」
「もうそんな贅沢を言ってる段階じゃないと見たからだ」
この西の海で最低限の仲間揃えてからグランドライン行こうと思ってたら後の最悪の世代やら七武海と戦ったり、海軍の地区本部の戦力と戦った後に世界政府に喧嘩売って、ついには世界最高の剣士――ゾロ的なラスボスなら四皇クラスでもおかしくない――と戦うとかちょっと運命の難易度調整がバグってる。
ゲームだったらとっくに詰んでるレベル、TRPGならGMにガチ詰め寄りしてもおかしくないレベルである。
加えてロビンの事があるし、いつどんな連中が来ても持ちこたえられるレベルの力がいる。
「自分の戦い方は全て聞きかじりからの我流だ。自分で部下を鍛えるにも、肝心の俺自身の経験値が足りていない」
「そこで俺か」
「どうだ?」
鷹の目――まだあの目立つ十字架の剣も帽子もかぶっていないが、確かに後の剣豪の頂点に立つ男は、警戒しているダズやアミス達を一瞥する。
俺も目線を送ると、全員こくりと頷く。
「いいだろう。覇気に関しては他の者が教えているようだし、問題あるまい」
…………。
え、覇気使いが今この船にいるの?
ハック……は知っていてもおかしくないけど、使ってる様子はなかった。
となると、あの時魚人たちの他に捕まっていた誰かか?
「それで、聞きたいことと言うのは?」
いや、まぁいい。
あとでダズ辺りから話を聞けば済む話だ。
そういうと、ミホークは腰に下げていた刀を鞘から少しずつ抜いて刀身を俺に見せる。
反射的にダズとアミスが警戒するが、ミホークは途中でそれを止める。
「……
お前、刃毀れすら剣士の恥とか原作でゾロに言ってなかったっけ。
「お前の最後の一撃で入ったものだ。もし、俺が切っ先を逸らしていなかったら折られていただろう」
…………。
俺が!!?
「結果として、貴様の傷は浅いものになった。本来ならばもう少し深くするハズだったのだが」
てめぇ張り倒すぞ!!?
「それにあの一撃。覇気を纏ったそれに、俺の剣は触れていない。触れていないのに確かにぶつかった。……いや、弾かれそうになった」
なんじゃそりゃ。
覇気使い同士の激突ってドフラミンゴとかカタクリとか見てたけど。ガッツリぶつかりあってたよな。
「……それが関係しているかどうかは分からないが、覇気を習得しようと練習を重ねている時に意識していることはある」
ん……。
思い当たる事というか、それっぽいのは一個しかねぇ。
「覇気を使うお前には今更の話だが、覇気というのは気合だ。特に武装色は」
これから先の事を考えると、最低でもダズには覇気を習得してもらわないと戦況が厳しい事になる。
説明も兼ねて振り返っておいた方がいいだろう。
「気合を自らの身を纏う鎧のイメージにして、自分の身体や武器の攻防力を大幅に引き上げる。能力者がいかに体を変化させようと、実体として捉えられるほどに。ここまでは合っているか?」
「ああ」
よしよし、後で船に乗っているらしい覇気使いの人にも話を聞いてみなきゃアレだけどここまでは合っていたか。
「だから、俺は覇気とは相性が悪い。致命的にだ」
ミホークが目を鋭くさせる。
うん、俺が覇気――武装色の習得について一番不安だったのがここだったからだ。
「己を信じる事がそのまま力になる覇気は、常に己の実力を疑ってしまう俺とはすこぶる相性が悪い。だから武装色を会得するためには、より鮮明なイメージが必要だと考えていた」
「そのイメージとは?」
「そうだな……なんといえばいいのか」
同じ雑誌で連載していたハンター×ハンターでいう攻防のバランス調整……いや、こっちじゃないな。
もっとイメージしていたのは――
「自分の全身に覇気が流れているとして、その時使っていない部分の覇気を全部、必要な所に流し込むイメージだ」
あれだ。歌で世界救う某変形宇宙戦艦アニメのピンポイントバリアパンチだ。
仮に自分の覇気が薄くても、強敵相手に覇気の防御を貫けそうなイメージ。
となると、そういう一点集中型の必殺技が真っ先に思いついたのだ。
基本的に一点集中とかアーマーパージ系の浪漫技は強敵相手でもいい勝負が出来るものだと相場が決まっている。
「では、あの時も?」
「まったく意識していなかったが、おそらくそうしていたとは思う。そういう訓練ばかりしていたからな」
そういうと、ミホークがハッハッハッハッハ! と滅茶苦茶笑い始めた。
どうしたお前、そんな笑う男……修行付ける事決まった時のゾロ相手にそういえばそんな笑い方してたな。
「覇気も、貴様が教えた方が良いのではないか? そもそも、なぜ存在すら部下に教えていなかった」
「戦闘に関しては全員まだ駆け出しだった。能力の扱いも含めてな。それならまずはそちらを優先させるべきだと判断した」
そういうと、ミホークがまた笑いだす。
いやだって、俺自身覇気を習得できてなくて試行錯誤していたのに、そんな中途半端な知識で教えられるわけがない。
ましてやあやふやな訓練だけで戦闘させたら、その前に死んでしまうかもしれない。
それなら、まずは戦闘力よりも生存力を高めるための
少なくとも、この黒猫では。
「ハッハッハ。いいだろう……思った以上に興味深い話を聞かせてもらった。あぁ、条件の方は任せろ。どれだけの者が付いてこられるかわからんが」
「今の俺が持つ剣の全てを叩き込んでやろう」
なお、島に戻ってからなぜか俺も一週間に一回。
気が付いたら三日に一回ミホークと全力で戦う日々が待っていた件について。
どうして、どうしてこうなったんでありんすか……。
たすけて、たすけてくれめんす。
クレメンス「ただい…………トイレ行きたくなってきたからまた出かけてきます」
九蛇っ娘達は次回