とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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今回ちょと短めです


048:仕掛け

―― 野郎共、街の物は全部奪うぞ! 邪魔する奴は殺せ! ガキは攫って女は犯して連れてけ! 金になる!

 

―― 食い物は全部持っていけ! 運べねぇなら火ぃつけろ! 何も残すな!

 

 

「海賊であるわらわが言うのもなんじゃが……略奪しか能がない輩は見苦しいのう」

「全くもって……。クロ殿と一緒にいると、ついつい海賊というものを勘違いしてしまう」

「主殿は逆に海賊としては高潔すぎる。どこに王女を立てて国を復興させる海賊がおるのじゃ」

「はっはっは。確かにそうだ」

「まぁよい。さて、そろそろ間合いか。弓兵、構えよ」

 

 現在黒猫海賊団の縄張りにして重要拠点の一つであるモプチ王国。

 その防衛を任されているハンコックは親衛隊に加えて比較的新入りに近い船員を率いて、人気の全くない入り江から街を目指す海賊の一団を待ち構えていた。

 

「しかしアレで奇襲しているつもりとは……呆れるしかないのう。主殿ならもっと上手くやるぞ」

「まぁ、まず私語厳禁の命が下されるな」

「まったくじゃ。よしペローナ、頼むぞ」

 

 ハンコックの横でゴーストを使い、島周辺に他の海賊がいないか偵察していたペローナが小さくホロホロと笑い、パチンと指を鳴らす。

 すると、海賊たちが上っている坂道――その真横の崖に用意されていた落石罠の支えをミニホロが弾き飛ばし、海賊たちの頭上に大量の岩が転がり落ちて来る。

 

「うむ、混乱しておるな。ハック」

「分かっておる、魚人組で船を奪うのだな?」

「いつも通り、の」

 

 現在、このモプチともう一つの拠点である無人島には少しずつ隠れ住む魚人が増えつつあった。

 その結果戦闘や、あるいは生産面で協力する魚人たちもまた増えつつあり、静かに『黒猫』の戦力となりつつあった。

 

「ペローナは念のため、そのまま島周囲の警戒を頼む」

「おう、任せろ」

「よし――総員斉射! 放て!!」

 

 落石により少なくない負傷者を出し、混乱している海賊達に今度は矢の雨が降り注ぐ。

 文字通り一糸乱れぬ斉射を確認し、訓練の成果が出たことに密かに満足したハンコックは、用意していた鏑矢(かぶらや)を弓に(つが)え、宙に向けて放つ。

 

 笛と同じ仕組みを組み込んだ変わった形の矢は、ピィィィィィッ! と甲高い声を立てる。

 また弓の攻撃が来るかと、まだ立てる海賊達は音の方――つまりはハンコック達の方向に注意を向けるが、

 

 

―― 姉様から合図があった! ソニア!

―― ええ! 全員声を上げろ! 挟撃して敵を一網打尽にする!

 

 

―― おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

 

 

 その直後に背後から鬨の声が上がり、何もできなくなってしまった。

 気が付けば隠れていたボア三姉妹の二人の妹率いる部隊に囲まれ、碌に反抗も出来ず海賊たちは次々に討ち取られていく。

 

「……奴らも、ここを狙わなければまだマシだったろうに……ハンコック殿、それでは」

「うむ。船の中にまだ兵が残っておるかもしれん。気を付けよ」

「かたじけない」

 

 

 

 

「しかし、主殿が出発してからこれで海賊の襲撃は三度目か。……主殿、思った以上に敵は数が多いぞ」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「キャプテン、残党は城に立て籠もったようだ」

「蜘蛛の子散らすように逃げたり破れかぶれに襲ってきたり立て籠もったり……なんなんだコイツら……ロビン、敵の砲戦能力を調べてくれ」

「うん、わかった」

 

 あれから港町を解放し、逃げ延びていたモグワの国民や助け出した海兵達を保護、治療に避難所の設営、炊き出しなどをやりながらこっちの戦力を使って他の街に残ってた海賊を討伐。

 

 港町二つと島内の街四つ、砦三つを攻め落とし――いや、正確にはミホークによる砦ぶった斬りというドン引きもんの絶技を見て逃げ出した海賊勢力を追い散らす作業だが……。

 

 もうホントこいつら……。

 クザンがいてくれてよかった。おかげで広範囲に散らばる敵を逃がさないで済む。

 

 ペローナを連れてこれれば問題なかったんだけど、アイツが防衛戦に一番向いてるからなぁ。

 あるいは逃走戦。

 問題はないと思うけど、どうしても駄目な場合には王妃様と王女様、それと出来るだけの避難民を連れて本拠点に逃げるように指示してある。

 

 本拠点――例の無人島拠点もまた様子見にいかないとな。

 一応トーヤ達がハックと一緒に定期的に様子見に行ってるけど……。

 

「ミホークはミアキス引き連れて西の大規模集落の様子見と救援、アミスは避難民の護送、クザンさんは避難所がある港町の守り」

「残るは城を陥とすだけだ」 

「……まさかウチに工作戦仕掛けた国の王様達を助けなきゃならんとはな」

 

 まぁ、生きていればだが。

 どうもアイツら、人質どうこうって話をせずに「一緒に略奪しようぜ! ヒャッハー!」的な話しかしないから状況が掴みづらい。

 

「アミス達が護送を終えて戻ったら攻撃だ。ロビンも、ある程度内情確認したら休憩に入ろう」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「……ここも焼かれているか」

「なんというか、手あたり次第って感じがしますねぇ」

 

 大剣豪にして『海兵狩り』の異名を持つ男は、自分が剣を教えた人間の中でもっとも守りが上手い女兵士――刀を主武装とする親衛隊において、小太刀の二刀流を好む珍しい親衛隊員と共にモグワ国内の集落の様子を確認していた。

 

「避難民も街や村の規模にしてはかなり少ない。だが死体もそれほど見つかっていない」

「……連れ去られたんですかね?」

「となると、もうこの島にはおるまい。集めるだけの場所も隠す場所もない」

「ウチと違って戸籍とかも作ってないから、誰がどれだけいなくなったのかがハッキリしないのがまた……」

「あんなことをやるのはクロくらいだ」

「……まぁ、はい」

「それに、役場も教会も――墓場すらも燃えていてはそもそもな……」

 

 おそらく襲われたその日に火を付けられたのだろう、もうすべての火は消え、わずかに燃え残った未だ煙がくすぶる民家や酒場跡、そして何を植えていたかもわからない広大な畑の跡だ。

 

 小太刀二本を腰に差した親衛隊員――ミアキスはしゃがんで、燃えた畑の跡――細かい炭のマットに手を当て、押してみる。

 

「うぅわ……これやっぱり作物全部いっちゃってますね……これから冬が来るのに大丈夫かな」

「それをなんとかするのは海軍や政府の仕事だ。問題があるとすれば生き残った国民が――待て、ミアキス。動くな……いや、数歩下がれ」

「? はい?」

 

 言われるままにしゃがんだまま「よっとっと……」と数歩下がり、そのスペースにミホークが歩み寄り、地面を観察する。

 そこにあったのは、炭化した穀物の残骸。それと、

 

松明(たいまつ)の燃え残りですかね?」

「……投げ入れたのか」

 

 その後ミホークは、それなりの面積がある畑跡を少しうろつき、その無残な光景を観察し、

 

「ミアキス」

「なんです、先生?」

「クロに電伝虫を繋げ」

 

 

 

「これはおそらく、ただの海賊の寄せ集めによる騒ぎではない」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「目的は略奪ではなく、焼き払う事だった?」

『そうとしか思えん』

 

 一通りロビンが凧やらを使って調べられる範囲の城の様子を調べ終わって、うちの船員に交代で休息を取らせていたら電伝虫が鳴り始めた。ミアキスとミホークからだ。

 

『今ミアキスに他の場所も確認させているが、燃え跡からしてここらの畑は全て四隅から火を付けた上で、更にそれぞれの面に必ず松明(たいまつ)を投げ込んでいる。略奪のついでの乱痴気騒ぎにしては、あまりに念入りすぎる』

 

 食事を取っていたロビンとダズも集まっている。

 休憩に入っていた親衛隊もだ。

 

「……まだ収穫期前だ。これから収穫に入って本格的な冬越えの用意に入るハズだった」

『海賊に全てを奪われるのと状況自体は大差がない。だが、奪われたのと喪失したのではその後の希望の有無が違う』

「……加盟国なら援助をするだろうけど」

『これが他の地域でも起こっているならば規模によっては手に負えんやもな』

「世界政府の余力次第では、西の海(ウェストブルー)にて大飢饉が起こりかねない……」

 

 あぁ、なんだろう。

 この感覚、な~~~んとなく覚えがあるぞぉ。

 

 アミス達を助けた後に、同時に取引されていた武器が出元不明の北の海(ノースブルー)産っぽいってロビンに聞かされた時の感覚だ。

 

『これが計画的な物ならば、裏にいる者の狙いは――』

「分かってる。国民が飢えれば、飢え死にする前に余所から奪うしかない。まずは非加盟国あたりが狙われるだろうけど……」

 

 非加盟国でそんな大量の作物育ててる所なんてまずない。

 というか、毎年餓死者が出てる有り様だ。

 

 なんとかまとめ上げて生産体制整えたウチの制圧下にあるモプチやらルーチュでも、余裕があるかと言えば全然である。

 

『作物だけではない。しばらくすれば冬だがすべてが燃やされたのだ、暖を取るための燃料もほぼ失われている』

「……そうか、それもあったか」

『最悪、余力があるうちに加盟国同士で小競り合いが起こりかねん』

 

 そこまでいくかは世界政府の援助の質によるけど、一度そうなってしまえば段々エスカレートして戦争になるだろうな。

 加えて今は革命軍という火種――いや火種じゃねぇな、とっくに燃えてるネタがある。

 

 あ、アカン。

 これ本気でヤバい奴だ。

 

 これから先、森でも収穫できるものが限られる時期だ。

 それで今の時期から春まで……その間に燃えてる部分が多ければ多いほど世界政府だって……。

 

(ちくしょう! 海賊が手を組むのが早すぎるし規模デカすぎると思ったら!)

 

 推定容疑者陰険チンピラドピンク腐れサングラスてめぇこの野郎!

 

 次は加盟国同士の分断に動きやがったな!?

 なんでお前こんなに動き活発なのさ!?

 

(最悪、西の海の封鎖の切っ掛けともいえるウチに――特にロビンに変なヘイトが集まりかねん!)

 

 クザンに確認取ってからだけど、場合によっては早いうちに手を打たんと不味い!

 

 助けて、助けて神様仏様クレメンス大明神様! 

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「まさか、引退していた俺を引っ張り出すとはね……ミスター・ドフラミンゴ……それともドフラミンゴ聖と呼んだ方がいいかい?」

「フッフッフ、さすがの情報収集力だな。好きに呼んでもらって構わない。なにせ、俺の無理に付き合ってくれたんだ」

 

 北の海のとある町の酒場。

 まったく人のいない――バーテンダーすら姿を見せないその酒場にて、二人の男が酒を交わしていた。

 

「なぁに。勝ちたい男がいるっていうシンプルな理由が気に入った。なにせ、俺は勝ちてぇ男に勝ち逃げされちまったからな。……あぁ、分かるぜ」

 

 ボサついたもじゃもじゃ頭にサングラスの、やや年を取った男は酒を美味そうに呷り、もう一人の若い男の空いたグラスに酒を注ぐ。

 

「……奴は、俺達家族を地獄に叩き落したクソ野郎に似ていながら、あのクソ野郎が持っていなかった強さと(したた)かさを持っている。それがどうにも気に食わず、同時にどうしようもなく気に入っちまってな」

「だからこそ潰してみたいか! ハッハッハ! いい! 悪くねぇぜ、そういうの!」

 

 歳のいった男の高笑いに、若い男は機嫌良さそうに酒を注ぎ返す。

 

「だが、俺はあくまで引退した身だ。だから、俺がアンタに俺のノウハウを教え込む」

「それでいい。むしろ、断られる可能性の方が高いと思っていたんだ。それが俺の師になってくれるなんて、何度頭を下げればいいか分からねぇぜ。フッフッフ」

 

 

 

「あらためて頼む。俺に世界最高と言われたアンタの腕を教えてくれ」

 

 

 

世界最低の戦争仕掛け人(世界最高の祭り屋)――ブエナ・フェスタの腕って奴を」

 

 




STAMPEDEのユースケ・サンタマリア出馬

いやホント、調べるまでユースケ・サンタマリアだと分からんかったわ……
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