とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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004:『悪魔』の実

「キャプテン、海賊らしい連中は全員拘束した」

「ご苦労、船の中の……あぁ、この島での略奪品以外の戦利品も大体回収した」

 

 訓練も兼ねていた戦闘が無くなった今、とりあえずダズと共に島を制圧していた海賊を一通り拘束を終えてお目当ての物を回収した。

 

「それで」

「ん?」

「そろそろ説明してもらいたい」

「……お前の方がすぐにピンと来そうなものだけどな」

 

 なにせとんでもないもの食った人間なんだから。

 

「悪魔の実の能力だ。多分な」

「……こういうものもあるのか」

「そうだ。あの全員無気力――無気力? というか鬱状態なのは、このゴーストに触れると」

 

 ポフッ

 

「生まれ変われるならナマコになりたい………ナマコになって海の底に沈んで静かに暮らしたい」

「なぜわざわざ触った、キャプテン」

 

 ハッ! あ、あぶねぇ、完全にダウンしていた。

 ダズが揺すってくれたのもあってなんとか回復できた。

 いや、実践するのが一番早いと思ったんだけど、これ思った以上に抵抗できねぇぞ。

 

 さすがウソップさえいなければ麦わらの一味を完封できた女だ。ヤバすぎる。

 仲間にしよう(即決)

 

「あ、アンタ、あの呪いに触れてもう大丈夫なのかい?」

「呪い? あぁ、まぁ……外部から刺激をもらえばなんとかなる。……貴方は?」

 

 気を抜けばまたちょっとネガティブになりそうだけど、なんとか耐えられる。

 ……ただ、これ一対一というか他の面子も全滅してるような状況だったら多分駄目だな。

 

 あっさり捕縛されるか殺される未来しか見えない。

 

「私はこの村のまとめ役をやっている者だ。すまない、海賊たちの捕縛をやってくれて……おかげで助かった」

「連中を倒したのは能力者だろう。どこにいるんだ? 手間が省けた礼を言いたい」

 

 作中でのクロの実年齢は分からないが、20代半ばは超えているハズ。そして今の俺が13歳くらいということは、最低でも原作まで10年以上前。ペローナは……アイツあれで何歳くらいだ?

 まぁ、10代だと仮定すると今は子供だろう。

 

 勧誘は厳しいかと思っていたけど……

 

(呪い、か)

 

 違う意味で勧誘が難しいかもしれん。

 

「やめとけアイツには会わない方がいい!」

「あの娘が呪われてから碌なことがないんだ!」

 

 村人たちの非難轟轟の声に、ダズがわずかに眉を上げる。

 ステイ、ステイだダズ。

 

(東に比べて知られているもんだと思ってたけど、それでも能力者への偏見は強いか)

 

 半透明な幽霊。ネガティブ・ゴーストだったか? あれはさっきからネガティブネガティブ呟きながらずっとこっちを見ている。

 

(襲う気はない。にもかかわらず、さっきは海賊だけじゃなくて村民もやられていた……)

 

「質問がある。答えてもらうぞ」

「な、なんだいアンタ」

 

 

 

「海賊達は、お前たちに金品や食料以外に何を要求した?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所だけなんとか聞き出せた。

 島の裏側の、ちょっとした山の中の小屋に奴が――やはりペローナだった――が住んでいる(・・・・・)ということで俺たちはハイキングをこなしていた。

 

 当初予定していた拠点化は駄目だ。

 ここの連中は多分、交渉に合意したとしても後でひっくり返す。

 

「……なるほど、幽霊屋敷だ」

 

 そのオンボロ具合を見て、ダズが思わずといった様子で呟くが……うん……だよね。

 さすが趣味がオカルト系に全振りされてた女だ。こういう家に住めばそういう趣味になる……なるか?

 

 下手にノックしたら崩れそうなドアを、出来るだけ優しくノックする。

 ……返事はない。

 

「その能力で見ていたから知っているな? 先ほどこの島に上陸した者だ」

 

 むぅ、完全に返事がないのはまた困るな。 話続けていいのか?

 

「キャプテン」

 

 ダズが少し焦った声を出す。

 

「気にするな。向こうからしたら警戒するのは当然だろう」

 

 気が付いたらとんでもない量のネガティブゴーストに囲まれている。

 ただ、これは当然ながら覚悟の上だ。

 

 これくらいのリスクを冒す価値がペローナにはある。

 

「まず、礼を言わせてくれ。本来ならば俺たちが狙っていた連中だったんだが、おかげで手間が大幅に省けた」

 

 一番の目的であった実践訓練と名声の獲得はできなくなったけどまぁよし。

 これからもチャンスはあるだろう。

 

「そのうえで提案だ。俺達と共に、海へ出ないか?」

 

 ゴーストが、ゴーストが多いっす。

 エライ勢いで増え続けている。

 ただ凹むだけなら問題ないといえば問題ないが、あのラップだけは怖い。

 

「さっき海賊だけじゃなくて、村の連中までお前が攻撃したのは、聞いてしまったのだろう?」

 

 

 

「村の連中が、君の身柄を要求した海賊に迷わず渡そうとしたのを」

 

 

 

 閉じたままの扉が、ギッとゆっくり開いた。

 

 

―― ……入れよ。

 

 

 小さく、幼い少女の声がした。

 

 


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