とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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お待たせいたしました。twitterや活動報告でご覧になった人もいると思いましが、体調を崩してこの一週間ダウンしておりました。

まだ完全に吹きというわけではないですが、椅子に座っていても平気なくらいには回復思案したのでちまちま投稿を再開していきます


063:殺戮空間

「本隊の作戦行動中、残る部隊を指揮して多くの海賊を相手のモプチ防衛、討伐。並びに短期間での港湾設備の復旧の功績を以って、ボア・ハンコック……貴女を第一艦隊提督に任ずる」

「その任、謹んで受けよう」

 

 ダズや親衛隊を始めとする『黒猫』の中枢の面々が整列している前で、ハンコックが俺に向かって(ひざまず)いている。

 

(……テゾーロの奴、叙任式とは言ったが、これじゃあまるで中世の騎士の任命式みたいな感じじゃねぇか。いや任せたの俺だけどさ)

 

 (ひざまず)いているハンコックは、いつも通りのスーツを着込んでいるが、いつもと少しだけ違う。

 

 いつものスラックスの上から、長いパレオのようなアシンメトリーのオーバースカートを付けている。むろん、あの三本爪の猫のマークの刺繍が入っている。

 

(正式に幹部になるなら、見た目も変えるべきって進言してきたし、やっぱテゾーロの奴、こういう見せる系の仕事の方が適性(たけ)ぇのかな……)

 

 実際テゾーロはよくやっている。

 ステラさんが手伝っているのもあるが内政方面の仕事を上手く纏めてくれているし、次の穀物の種まきの畑にどこの畑を使うかもう決めて道付けやら道具や貯蔵の準備も始めている。

 

 あとついでに歌も上手いし楽器も使えるから、音楽家の役割も兼ねてくれている。

 

「散々頼りにしてきた上で今更言うのもなんだが、これからも頼むぞ」

「うむ。売ればすぐさま財産になったあの実を三つも頂いたのじゃ。妹共々、主殿の期待に沿うよう努めよう」

 

 今回の叙任式で例の悪魔の実を渡そうと思ったのだが、それだと能力者でないと提督になれないというイメージが付くと指摘されたために、今回は特別に改造したジャケットを目の前でかけるという形になった。

 

 今回は本人の希望でジャケットになったけど、基本的にはコートかマントになるだろうなぁ。

 海軍の白いそれに対して喧嘩売ってるとか思われませんように。

 

 ジャケットを羽織らせると、ハンコックは袖を通して振り返る。

 後ろには、今回ハンコックに任せる事になった船――輸送船も二隻任せる事にしたから現在計五隻となった第一艦隊の船員たちが整列している。

 

 ハンコックが実際に率いてきた上で直接接し、アミスやトーヤの力も借りながら妹達と数日かけて考え抜いて再編した部隊だ。

 

(うん、よし。侮っている兵士はいないな)

 

 薄々肌で感じていたが、想定を超えて『黒猫』の名前が大きくなっている。

 多分だが、東の海でのクリーク海賊団くらいには知名度があるのだろう。海軍からはミホークがいるのもあって偉大なる航路(グランドライン)クラス中堅から上位と見られているっぽいけど。

 

 そのために志願兵も多くいるのだが、徐々に元チンピラやら食うに困ってウチを頼る人間が出てきている。

 

 雑魚というかモブ海賊みたいに分かりやすい賊にするわけにはいかないから、規律はガッツリ叩き込んでいるが……。

 

 今のところは問題ないか。

 場合によっては見せしめに問題起こした奴を一度斬るか蹴らなきゃならんかもしれんと思ってたから、まぁ一安心だ。

 

「サンダーソニア、マリーゴールド」

「ええ、姉様(あねさま)

「はっ」

 

 本来の水着みたいな服よりも、もう完全にスーツを着こなすようになった妹達が前に出る。

 ソニアはそれほど変わってないけど、マリーのほうは普通に美人だよなぁ。

 どうしてああなったんだ原作……。

 鍛えただけにしては肉ついてたし……ストレスか?

 

「ぬしらを第一艦隊提督補佐に任命する」

 

 第一艦隊へ命令は俺が出すが、部下に関してはハンコックに任せている。

 だからまぁ、こうなるのは分かっていたが、ハンコックが補佐に置いたのは妹達だ。

 実際、指揮官としてもこの二人じわじわ成長してるしなぁ。

 ハンコックと違って、内政面の仕事はさすがに出来ないが。

 

 …………。

 

 いや、ハンコックの場合はロビンと共に一生懸命あれこれ勉強や現地の調査や確認を頑張っているからか。

 

「これからも、わらわを助けて欲しい」

 

 ハンコックが二人に渡したのは、片方の肩にかけるタイプのマントだ。

 ……あれ、これやっぱり騎士のそれっぽいな?

 

 確か、渡すモノに関してはテゾーロと王女殿下が相談に乗っていたハズ。

 

(……だからか? どうも殿下は、俺達を海賊と認識しているか怪しい所があるなぁ)

 

 ともあれ、式典は(おごそ)かに予定通り進んだ。

 

 俺や提督であるハンコックとその補佐の妹達に向かって船員たちが敬礼し、それに三人が敬礼で返す。

 ダズやペローナ、親衛隊たちが拍手で――ん!? ミホークもしてる!?

 

 い、いや、まぁいいか。

 アイツもなんだかんだ『黒猫』には馴染んでるし、なんならこのまま……このまま……

 

 

 

 

 あれ? ゾロの最終目標になるミホークがウチにいたら、俺フツーにルフィにぶっ飛ばされる枠になるんじゃね?

 

 あれ? 俺、原作みたくルフィに頭突きでぶっ飛ばされる?

 

 

 い、いや、まぁ先の事は分からないし。

 

「いい式典だったな。まぁ、海賊というにはほど遠いものだが……悪くはない」

 

 式典を無事に終え、ハンコック達と共に裏へ下がるとレイリーが来ていた。

 あんまりここにいる事はバレたくないらしく、俺達は基本レイと呼んでいる。

 

 ……実際、町の人からもレイさんとかレイおじさんとか呼ばれているし馴染んでいるのだが。

 

「あぁ、ハンコックを見た目で軽んじる奴が出るかと思ったがそうでもないし、これでハンコックにも箔が付く」

「ふむ。ハンコック、能力の方はどうかね?」

 

 三人ともすでに悪魔の実を口にしていて、それぞれ原作通りの能力を手にしている。

 

「問題ない。先日はぐれ海賊相手に試してみたが、戦いになる前に全員一目で石になりおったわ」

 

 結果、ハンコックの制圧力が準ペローナ並みになった。マジパネェっすハンコックさん。

 

「解除はできるか?」

「そちらも問題ない。万が一に備えて試しておる」

 

 お、おう。ならいいが……いやヤベーわコレ。範囲以外はマジでペローナとほぼ同じだ。

 ソニア達も戦闘力がアホみたいに跳ね上がって、雑魚海賊の掃討スピードがヤバかったって同行していたトーヤが言ってたし。

 

「よし、しばらくは能力を用いた戦闘を主としよう。ミホーク達が旧キャネット国の制圧と開拓に動いている間、俺は第一艦隊と動く」

「ミホークの代わりにわらわが主殿と共に、モグワで海軍と組んで動くのじゃったな」

「そうだ。訓練も兼ねてはぐれ海賊を狩りまくれ。復興内政や政治の方は俺に任せろ」

「うむ。ついでに、ミホーク達の動きをあまり注目されぬように、能力者になったわらわが看板として目立てば主殿にとっても都合がよかろう?」

 

 こういう考えも出来るようになっているから、やっぱコイツを指揮官にしたのは正解だったわ。

 というか、強さの面はわからないけど海賊というか勢力の長としては原作よりもめっちゃくちゃ優秀なんじゃないか? 今のハンコック。

 

「ああ。表向き、俺達ははぐれ海賊による非加盟国への略奪を抑えるために部隊を分けるんだ。……いや、実際そのとおりでもあるんだが」

「念には念を入れておいた方がよいじゃろう。話を聞く限り青雉とやらは妙な手出しをする男ではなさそうじゃが、それでも海軍の中に政府の手の者が紛れておらぬとも限らぬ」

「ああ、その通りだ。頼むぞ」

 

 ちょいと下世話な話をすれば、こうして部下を率いる事になればこちらに残ってくれる可能性が多少でも上がるかもしれん。

 正直ハンコックとソニア達は残ってほしい。滅茶苦茶頼れるし、ロビンの事を考えると女性の信頼できる幹部は一人でも多く欲しい。

 

「そろそろ君達も動くか。では……ほれ」

「…………ほれ?」

 

 なんですレイリーさんや。この黒い……帯は。

 

「レイ……さん。これなんです?」

「む、わからんかね」

「はい」

「目隠しだ」

「なぜ目隠しを?」

 

 いや、なんとなく覚えはあるけど聞きたくない。今はまだ聞きたくない!

 

「以前俺とレイで話し合って、そろそろお前の訓練を三段階ほど上げるべきだと判断した」

 

 ミホーク! ぬっ、と出てきてとんでもないこと言い出すんじゃない!!

 というかもっと段階を踏め!

 

「せめてステップアップは一段ずつにしないか? 俺はお前達と違って普通の人間なんだが……」

 

 …………。

 

 あの……。

 

 そんな腹を抱えて笑う程の面白い話、私しましたっけ……?

 

「ではいくぞ。時間が惜しい。君は見聞色においては天賦の才がある。なぁに、私とミホークが少々本気で相手をすれば嫌でも伸びるさ」

「本気ってのは訓練に本気って意味ですよね? まさか目隠しした俺を少々本気で斬ろうとしているわけじゃないですよね?」

 

 …………。

 

 爆笑してないで答えろや馬鹿二人!!!

 いや耳栓も用意するかじゃなくて!!

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「あらら、やっと戻ってきたか」

 

 海賊連合の主力を押さえた奇襲作戦へ出発したのが一月少し前。

 それからしばらく、手紙と電伝虫でしかやりとりをしていなかった男を乗せた船が戻ってきた。

 

 数は七隻。

 本船となっている改造商船ともう一隻――『黒猫』と同じく協力者であるカポネ・ベッジの船は相変わらずだが、残る五隻は覚えのない船だ。

 

「戦力を更に増やしたのか、それとも本拠地の守りに付いていた人員と入れ替えか……ま、クロなら両方か」

 

 男――クザンもクロという海賊の手腕は良く理解している。

 あの奇襲戦から一月ちょっとくらいの間でも、打てる手は全て打っていたのだろう。

 

 もはや単純な戦力の数だけでも、黒猫海賊団はそこらの海賊ではまず潰すのが難しい勢力となっている。

 

「おお~、あれが噂の三本爪か。いやぁ、報告書や写真で見た時は海賊らしくない旗だと思ったけど、こうして直接目にすると気圧されるものがあるねぇ」

 

 そのクザンの横には、大きな眼鏡をかけた黄色いスーツに海軍のコートを羽織った男がいる。

 大将・黄猿。

 海軍の再編によって、クザンやサカズキと共に大将に就任したどこか胡散臭い男が、近づいてくる船の帆を見て感心したようにつぶやく。

 

「言うまでもないが、舐めてかかると痛い目を見るよ。追い詰められれば追い詰められるほど頭の回転も武力も跳ね上がるタイプだ」

「わかってるよぉ。元帥からも、無駄に敵対しないようにと念を押されているしねぇ」

「……へぇ……センゴクさんがかい?」

「そりゃあ、ほら。なにせ、海兵に人気のある海賊なんて扱いに困るだろう?」

「……ま、そりゃそうか」

 

 実際、日に日に『黒猫』の名声は上がっている。

 協力的とはいえ海賊は海賊。その本拠地の確認のために、非加盟国民を装って『黒猫』の本拠地であるモプチに、連絡役の海兵と協力して情報を収集させた結果、『抜き足』のクロが略奪者から程遠い統治者であることが静かに広がっている。

 

「おっと、入港したか。出迎えなきゃな」

「わっしも行くかねぇ。元帥からの伝言を預かってるし」

 

 

 

 

―― おおぉぉぉおおぉおぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ……

 

 

 

 

 そうして久々に出会った海賊は、口から瘴気を漏らしていた。

 

 彼の特徴である眼鏡は新しい物になっており、左目には浅いが切り傷が付いている。

 

 

「……く、クロ……?」

 

 一般兵士の前では君付けで呼ぶことの多かったクザンが、ためらいながら彼の名前を呼ぶ。 

 とたんに、どこを見ていたか分からない虚ろな目をして力なくうなだれていたクロの首が、まるで糸で引っ張られたようにグンッ、と勢いよくクザンに顔を向ける。

 

 思わず一歩下がるクザン。

 

 そしてクロの後ろで、頭を痛そうにしているハンコックと親衛隊の面々。

 なお、ベッジは腹を抱えて笑っている。

 

 

 

「その……大丈夫か?」

 

 

 

 

「帰ってきた……」

 

 

 

 

 

 

「俺は……地獄から帰ってきた……っ! 生きて帰れたんだ……っ!!!」

 

「お前さん、本拠地に帰ってたんじゃないの?」

 

 




叙任式などモプチでのエピソードを少し抜かしてしまっていたので、本格的な合流話は次回

改めて、お待たせして大変申し訳ありませんでした。
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