とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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暫くの間は低速のままになりそうですが、せめて最低でも一週間に一話は上げていこうと思います
これも病気とFallout4と頭文字Dが悪いんだ……


第四章:西海諸島連合
065:静かな『次』の始まり


「おいダズ、戦利品の積み出しは終わったって報告きたぞ。食料やら道具、苗の類を積み込んだらどうだ?」

「少し待て、ペローナ。今ミホークとロビンが最後の確認をしている」

 

 黒猫海賊団の拠点であるモプチでは、略奪の気配がない久々の冬を迎えていた。

 民衆はそのほとんどが大人しく家に籠り、更に薪を用意したり縄を編んだりして静かに過ごしている。

 

 一方、港町の方はこれまでよりも活気に満ちている。

 スーツや作業着を着た黒猫の団員が、物資の運搬や船の整備に忙しく動いてる一方で、モプチの民衆が町の修繕のための物資の陳情や持ち出しに来ていたりする。

 

「次はロビン嬢がキャネットなる島へ、そしてペローナ嬢がモグワに行くとは……しばらくの間ここが寂しくなるな」

「ホロホロホロ。まぁ、ゼロから制圧するミホーク組はともかく私はたまにこっちに戻るからな。半月に一度は帰ってくるさ。その間は頼むぞ」

「ああ。皆も少しずつ、ここには慣れておるからな」

 

 船に乗り込む人間は、基本的に三本爪のマークが入ったスーツか作業着を着ているのだが例外がある。

 ここモプチと第二拠点を行き来する『魚人開拓団』の面々だ。

 

「そういえばダズ殿、メイプルはどうしている?」

 

 クロの客人という形になっている開拓団の面々は、黒猫の拠点である無人島を間借りし、力仕事や戦闘時の補助などの手伝いをしながら、今後をどうするか話し合っていた。

 

 状況が落ち着き次第船を手配し、再び開拓に乗り出すつもりの者もいれば、このまま『黒猫』に協力し、彼の勢力下で第二の魚人島を作ってもらおうとする者もいる。

 

 そして中には、『黒猫』に参加することを決めた者も。

 

「あの女性魚人か。今はアミスとトーヤが面倒を見ている。ミホークも、もう少し基礎が固まれば自分も鍛えると言っていたから……それまでは(・・・・・)元気だろう」

「ハッハッハッハッハ!! まぁ、いい機会だ。あの跳ねっ返り、『黒猫』の親衛隊になると言って聞かなかったらしいからな」

 

 ただ一人、後に第二の魚人島を作ってもらうように交渉するにせよなんにせよ、『魚人開拓団』が『黒猫』と友好な勢力だと証明するために彼の下に魚人がいた方がいいと言って、三本爪のスーツを羽織ることになった魚人がいた。

 

「にしても、クロもよく受け入れたなぁ。魚人のイメージは大丈夫か?」

「海軍と一時とはいえ協力体制を築けているのだ。今のままなら問題ないだろうと皆で話し合ってな」

「あぁ……まぁ、確かに」

「……連絡役の海兵も、収穫祭やハンコックの叙任式を普通に楽しんでいたな。……まぁ、こちらの内情の調査というのもあったんだろうが」

「はっはっは、あの祭りを見れば、海賊と呼ばれようが悪党ではないと分かるだろうさ」

「まぁ、海軍と共同作戦を展開できる海賊という時点で異色中の異色であるのは間違いないな」

 

 数こそ制限はあるが、海兵が堂々と武器を構えずに入れる海賊の拠点などここだけだろう。

 普通に歓迎されるし、必要ならばドックも使えるように協定を結んでいる。

 

 船の上から港の様子を眺めていると、数名海軍の白い制服を着た人間が確認できる。

 黒猫の幹部たちが動き始めたので、手にした情報を上げるためにモグワの拠点に戻ろうとしているのだろう。

 

「皆、お待たせ。物資のチェック終わって今兵士さん達が積み込みを始めたよ」

「すまん。少々遅れたな」

 

 そうしていると、甲板へ少女と剣士が現れた。

 片方は客将の身だが、どちらも黒猫になくてはならない人間だ。

 

「ホロホロホロ、やっと来たか。お前らが遅れるなんて珍しいじゃねーか。特にロビン」

「ごめんなさい、ペローナさん。向こうの状況はある程度調べたけど、向こうでの活動がどれだけ長引くか分からないから、念のために食料と燃料を多めに持っていこうって話だったんだけど……」

「なにせ冬だからな。どれだけ持っていくかをテゾーロと話し合っていたら遅くなった」

 

 直前まで作業をしていたのか、戦闘の時の私服ではなくいつものつなぎの上からコートを羽織ったミホークの後ろにロビンが付いている。

 

「一応、海軍から回してもらえる物資の量が思っていた以上だから、それをこっちに回そうって話になったんだけど、……同時に人もすごく増えたから……」

「あぁ、ミズキ達も結局戻ってくるんだったか」

 

 かつての海兵奴隷事件の中で起こった戦闘。

 海賊ゲッコー・モリアとの戦闘で出会い、救出した海兵七十数名。

 そのほとんどが、結局『黒猫』へと戻るという話は、放棄した無人島で海兵達が回復するまで世話をしていたペローナとロビンにとっては嬉しいニュースではあった。

 

「となると、ハックの出番だな」

「む、その者達は兵士を希望しているのか?」

「ああ。最悪雑用でもいいと言っているが、希望は戦闘職らしい」

「ほう、やる気があるな。鍛え甲斐がある」

 

 今の黒猫の一般戦力の層の厚さは、魚人空手を用いた白兵戦に因る所が大きい。

 操船作業などのために武器が手元になくとも、即座に戦闘に移れるのは大きなアドバンテージになるとクロがハックに頼んで、一般船員の教育を頼んでいるからである。

 

「冬を越えられたら、またクロ殿も大きく動く。その時が楽しみだ」

「レイも同じことを言っていたな」

「そういえば、レイも開拓班に同行するのだったか」

「……おい、ミホーク。お前ら手合わせで島を壊すんじゃねーぞ?」

「ははははは」

「頼むぞ? 本当に頼むからな? ロビン、お前ミホークをしっかり見張れよ!?」

「………………うん」

 

 頭を痛そうにしているペローナやロビンと、年上であるにも関わらず子供のように笑うミホークを、『黒猫』の副総督であるダズは鉄面皮のまま、少しため息を吐いて見やっている。

 

「用意が終わり次第、出航だ。まずは全員でキャプテンとハンコックに続いてモグワに、到着次第海軍から物資を受け取る。その後の活動は計画通りだ」

「留守は我らに任せて欲しい。トーヤ殿たち親衛隊もいるし、テゾーロ殿もあれで中々出来る」

「あぁ、頼むハック。ペローナもロビンも残せないので、これまでと勝手が違うが……」

「なに、ダズ殿たちが戻るまでの間の話。任せられよ」

 

 

「ああ……よろしくな」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「センゴクさん――失礼しました、センゴク元帥から私に言伝?」

「ああ。気付いているし、油断もしていないだろうけど念のためにってさぁ……」

 

 念のためにって……。

 本当になんか、こう……海兵奴隷事件からセンゴクさんには一海賊の俺なんぞにここまで気を使ってもらって……。

 世界政府が一切介入せず、全ての方針をこちらと海軍上層部に任せるって条件飲んでもらえるならなんちゃって七武海みたいな役をやってもいいんだけどなぁ。

 

「それで、元帥殿は?」

「なんでも、『強行する可能性が高まりつつある。注意されたし』ってさぁ。意味、分かるかい?」

「ええ、まぁ……」

 

 あぁ、いよいよ動く気配が濃くなったか世界政府。

 まぁ、おおよそ狙いは――

 

「大将青雉、政府の輸送船の動きは?」

「全部このモグワに停泊、この島で積み荷を降ろして、海軍の船で輸送するって形にしている。お前さんの提案通りにな」

「動きもありませんか?」

「今のところはなにも。政府の役人も、物資のやり取り以外は特に動きを見せていない」

 

 ……とりあえず初手の牽制はクリアしたと見ていいか。

 ここで好き勝手に動かれたら、万が一の対処が遅れる。

 

「クロ」

「はい」

「やっぱり、奴らはバスターコールを狙ってるのか?」

「…………」

 

 

 

 

 …………はいぃ?

 

 

 

 

「いいえ、それはあり得ません」

 

 

 

 

 どうしてそうなるのさ。

 

 

 

 

「確かに世界政府は、海軍に対してバスターコールの命令権を持っています。ですが、実行役である海軍との間に大きな亀裂が入っている現状、大義名分の薄い強行は海軍の離反……まではいかなくとも混乱、分裂を招きかねない。特に、正式に書面を通して休戦協定を結んでいる我々に刃を向けることは難しいでしょう」

 

 ましてや大海賊時代が始まったばかりで、聞いた話じゃもう結構な数の国がやられている。

 その上で、比較的とはいえ安定した収入源になる西の海の加盟国の国力をいたずらに落としかねない真似は()の連中はそこまでやりたくないハズだ。

 

「い、いやちょっと待ってくれクロ。じゃあ、海兵の格好してニコ・ロビンを狙った連中は!? アイツらが政府の人間なのは間違いないぞ!?」

「確かにあれは政府の人間による攻撃でしたが、捕えた連中は全員、政府の名前を出して解放を要求するばかりでしたよね?」

「あぁ……」

「政府は何か言ってきましたか? 今回来た役人は?」

「……いや、特に何も。……黄猿?」

「いんやぁ。わっしも特に妙な動きはないように見えるねぇ」

 

 だろうな。

 

「仮にロビンの暗殺が政府からの命令によるものだったら、そもそも海軍に何らかの根回しをしているハズです」

 

 こう言っちゃなんだが、海軍の好感度を稼いだ分、俺達の足枷になりうるロビンの存在を彼らに疎ませることは決して不可能じゃない。

 ロビンを消すことで俺の七武海入りをチラつかせるとか、十分にあり得る。

 

 それに対抗するために、ロビンの黒猫での立ち位置のアピールに頑張っていたわけだが、定着までまだまだ時間がかかる。

 つまり、政府はそこを突こうと思えばできたハズだ。

 それがないということは……。

 

「にも関わらずほぼ単独による暗殺を決行し、失敗した所で回収されず、政府からも特にアクションがあるわけではない。まぁ、功を焦った下っ端の暴走でしょう」

 

 もっと正確に言うと、こちらがロビンをどう扱っているのか正しく測るためにグレーな範囲で焦らせた(・・・・)捨て石だろうなぁ。

 

 万が一にも上手くいけば儲けものと暴走を黙認したくらいで……まぁ、それ以上でもそれ以下でもないだろう。

 

 失敗した所で実際に命令の類は出していないし、俺達はともかく海軍からの不信なんて今更の話。

 

 せいぜい俺達がロビンを匿う事に対して多少でもプレッシャーを与えられればそれでよし程度の使い捨てメッセンジャーと見るべきだろう。

 

 動きがないのは、捕えた人間を海軍の人間がどう扱うか観察しているのか、何らかの形で後々カードにするつもりなのか……。

 

「なら、あの増援は? 連中、ここじゃなくてそっちの本拠地に向かっていたのは間違いない。あれは政府が手を回したんじゃ……」

「……あぁ」

 

 クザンが気にしてるのはそれかぁ。

 

 政府に余計な刺激を入れたくなかったし、ここはなぁなぁのまま流して、罪悪感というかこちらへの精神的な借りだけあの人たちには持って帰ってもらおうと思ってたんだが……。

 

(俺達は政府の敵ではあるけど、なにがなんでも敵対したいわけでないし……)

 

 不味いな、なんとか海軍と政府の落としどころを探さなきゃいけない。

 

 このままだと、最近動きが活発な革命軍の動きもあって、訳わからんレベルで世界が荒れに荒れてしまう可能性が洒落にならないレベルで俺の胃が破裂しそうだ。

 

 そんな状態で後の41歳がまた余計なちょっかいかけた日には、もう海軍に土下座してレッドポート使わせてもらって北の海に殴り込みだな。

 

 …………。

 

 あれ? これ、意外と悪くない一手だな。

 今の戦力で叩くって手もあったか。

 ……いやでも、使わせてもらうための交渉材料がないしなぁ。

 

(まぁいい。とにかく今はこっちだ。さて、あの時のマンチカン少将の感触からして、多分真相は……)

 

「せっかくですし、一緒にお見舞いにいきます?」

「……本部からの増援組にかい?」

「ええ」

 

 

「とりあえず、誤解を解いておきましょう」

「……誤解?」

「はい」

 

 

 

 ぶっちゃけ、世界政府にとって今一番邪魔なのは誰かって、戦力は揃いつつあるけどやろうと思えば圧倒的物量で潰せるだろう俺達『黒猫』じゃなくて……。

 

 

 

 

 

 海軍の方だよなぁ。

 

 

 

 

 

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