(なるほどなぁ……)
明日の緊急査察に関しての細部を詰めようって話をしたい時に、突然西の海の海軍や『黒猫』の面子も揃って緊急会議を行いたいなんて聞かされた時には「なんじゃそら」と思ったが……。
―― なるほどなぁ。
「口減らしの時期を狙った人身売買の横行か。いや、そういうのが出てくるのは予想していたが……」
『はい……』
急遽会議室となった海軍の控室の壁に貼られた白い布の上には、特殊な電伝虫によってリアルタイムのクザンが映し出されている。
うん、久しぶり。
こんなに早く顔を見る事になるとは思わなかったよ。
クザンはセンゴクさんと話しているが、チラチラこちらに目線を送って来るのは勘弁してくれ。
「まさか、海軍相手に営業をかけてくるとは、大した奴だな……」
『堂々と話を持ってこられてな……』
「当然、多くの海兵の
『……ああ』
やってくれるなぁ、マジで。タイミングが最悪すぎる。
冬の時期に人身売買が増えるのは当然だ。
東の海でも島によってはそういう話があった。
とはいえ、まさか海兵に直接取引の話を持ちかけるとはやってくれる。
『誘拐なんかで無理やり集めた子供達とかいう話ならやりやすいんだが、連中が違法な手段で人を集めた証拠は見つからなかった』
だろうな。
グレーゾーンでの人買いというか人集めは、この時期の風物詩だ。
しかも今は海賊被害での混乱でしっちゃかめっちゃかだと、その量も馬鹿みたいに跳ね上がってる事だろう。
冬を過ごすには不安がある集落を狙ってタダ同然で商品をかき集め、どこかへ売りつけるという話は珍しくない。
「大将青雉、売り込まれた人間は女子供が多いのではないですか?」
『ああ、その通りだ。……分かるのか?』
「まぁ……。食い扶持が不安な所なら、タダ同然でいいから子供や女を連れて行ってくれと頼む所だってあるのです」
『……家族は? これだけの数の子供達だ、親や親戚がいるだろう!?』
「だからこそです。……自分の手で殺すことはできなくても、働きに出ていなくなった。あるいはその先で不幸にあって亡くなったんだと思い込むことは出来ます。自分は直接関わっていないのですから……」
意外だな。そういうものを今回の騒動の中で少しは見てきたと思っていたんだけど……。
『…………っ』
落ち着け、頼むから落ち着いてくれクザン。
なんか画面の隅にチラッと映ったダズを見習って――あ、いや、あれは何かしゃべろうとしているペローナあたりを必死に押さえているのか。
「ですが、なるほど。今こそ待たせていますが海軍が堂々と子供達を売買するわけには行かない。だが、放置すれば子供達は他の所に売り飛ばされるのは間違いなく、それもまた士気に多大な影響を与えかねない、と……」
それで海賊のウチに介入してほしいという所か。
まぁ、後から物資とかの現物援助を対価にって手段もあるにはあるが……だけど、これって――
「クザン、現状を確認したい。その商人達はどういう連中だったのだ?」
重っ苦しい顔のセンゴクさんが口を開く。
まぁ、俺がセンゴクさんの立場でも似たような顔しちゃうだろうなぁ。
ホント頼むからこれ以上厄介事が増えませんようにって。
『えぇ、三人組でした。うち一人は若くて、クロよりちょっと年上くらいの奴です』
「商品として連れてこられたのは?」
『全部で二十八人です。十五,六の女の子が四人に、あとは全部十歳にもなってない子供達……。女の子が十八人に男の子が六人』
うん、想像通りだ。
冬が明け次第働き手になる男手は手放したくないから、それ以外を減らしたいと思っていた村や島からかき集めたんだろう。
だけど、思ったより少ないな。
……いや、船一隻で一度に輸送するならそれが限度だったか?
だとすると、海兵奴隷の件の時と同じく、どこかにかき集めた
「大将青雉、相手はいくらで買えと言ってます?」
『金額に関してはいくらでもと。最低でも一人五千は欲しいが、仕事が出来るわけでもないし二千でもいいとか……』
おっふ。これやっぱり商人じゃないな。
商人ならなんとか適当な理由で少しでも吊り上げるはずだ。
センゴクさんとおつるさんに目配せすると、二人とも小さく頷いた。
(これは……取引というより、おそらく攻撃だな)
まさか海軍相手に情報戦を仕掛けてくるとは。
(人身売買の人間が海軍と接触したのでマイナス一点。多くの海兵が目撃してしまって更にマイナス一点)
おそらく見た目ボロボロの子供を引き連れていたから対応を躊躇ったって所か……。
売人どもを直接見てみないと分からんが、避難民に見せかけていたんだろうなぁ。
(そして売買を匂わせる時間を設けさせられたのでマイナス一点)
海軍からすれば今現在『奴隷』という言葉に敏感になっている。
無視すれば現場の士気が下がり、対応すればそれ以外の海兵が動揺する。
そして俺達が関われば……。
ちくしょう、飛車角同時取り出来る場所に桂馬を打たれたようなもんだ。
「元帥、少々失礼いたします。――ハンコック」
『待っておったぞ、主殿。指示を』
……あれ? なんかやる気満々?
お前メンタルばりばりアウトロー寄りだったから、こういうのを気にするタイプじゃ――あ、自分が売られかけたからか。
「モグワ島周囲の哨戒を密に。不審な船を発見次第無理やりにでも乗り込んで中を確認しろ。島陰なんかに隠れて通信関係の機材を積んでいる奴は石にしても構わ――いや、すぐさま石にして確保しろ」
定石を打たれたのならば、半端な牽制をしても意味がない。
駒を取られる前にその駒を取らなくては。
『構わんが良いのか? それが普通の船なら反感を買うやもしれぬぞ?』
「いいさ。海賊の立場だからこそ出来る事だ」
『なるほどの。承知した、すぐに出航する』
「大将青雉、商人と子供達は今どこへ?」
『一応別室で待機してもらっている。子供達はさらに別室でだ』
「ダズ、商人達を押さえろ。例の扇動者に繋がっている可能性が高い」
というか、むしろ扇動者本人かもしれんな。
もしそうであれば、海軍が子供達を金を払って保護すれば人身売買だとはやし立て、断れば幼い命を見捨てたと罵る。
そして俺達が保護すれば、海賊とつるむ海軍として噂を拡散するつもりだろう。
俺が敵ならそうする。
『海賊の立場を最大限利用するにせよ、今この王城内で押さえれば海軍の面子に傷をつけかねない』
「やり方はお前達現場に任せる。ただ、いつどこで押さえるにせよそいつらから目を離すな。連れてこられた人間も含めて確実に監視下に置け。子供達の中に連中の手の人間が紛れ込んでいないとも限らん。外見につられて油断はするな」
『
よしよし。相変わらずいい反応だ。
さて、海賊のお仕事としてはこれでいいか。
後は俺の仕事じゃない。
「クザン」
『元帥』
「現場の海兵は、精神的な負担が大きくなっている。可能な限り動揺を抑えろ」
『了解』
「人身売買業者とうかつに接触したのは褒められんが、状況からして避けがたかったのも分かる」
『はっ、申し訳ありませんでした』
「うむ。今回の件はお前
『ハッ!』
現場で上手く処理してみせろと申しましたか。
いや別にいいんですが。
ダズ達にとっては、ちょうどいい課題になるだろう。
ついでに共に課題を解決していくのは、クザンとその下に付いている海兵達との関係を深める事になる。
(いざという時は海賊の俺らが悪名被って逃げれば、とりあえずは落ち着くかな)
「さて、とりあえずはこんなところだろう。他に何かあるか?」
ないなら以上だ。
そうセンゴクさんが仕切り、会議はとりあえず終わり――
「クロ、少しいいか?」
……そりゃ、そうなりますよねぇ。
あ、ガープさんはちょっと座っててください。
いえ。いえ、結構ですから。大丈夫ですから。
いえいえ。
いやいやいや。
いやいやいやいやいやいやいやいや。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(監視が急に厳しくなった? これは……)
王城内部の一室にて二人の男が、この一件でいくら稼げるか、売る前にあの娘で楽しめばよかったと下世話な話で盛り上がってる中で、一番若い眼鏡をかけた男が辺りを見回し、状況を確認している。
(これまでの動きと入って来る情報から、妙なしがらみを抱えつつも良い立ち回りをする海賊団だと思っていたが、指揮者が
ちょうどいい隠れ蓑として利用したこの下品な二人とは比べ物にならないと、少年とも青年とも言える年頃の眼鏡をかけた男は頭を回転させる。
(さて、どうしたものカネ。割のいい仕事として西の海まで来たのはいいものの、工作部隊の回収地点だったあの島は海軍に押さえられている)
男は能力者であった。
多種多様な能力の中でも活用できる範囲が極めて多い物のため、今回は特に特殊工作船の動力も兼ねた運用を任されていたのだが、その計画は予期せぬ奇襲によってひっくり返されてしまった。
(
裏の世界は信用の世界だ。
裏切りそうだと思われたらどこに行ってもやっていけなくなる。
(十分に義理は果たした。……潮時だガネ)
であるのならば、うかつに情報を漏らすことは致命的な事態になる。
逃げる事が不可能なのであれば、せめて取引をして致命的なことまで漏らさずに
海軍が相手では生半可な取引は不可能だ。拷問してでも情報を抜こうとするだろう。
だが、あの変わった海賊団なら可能性がある。
(来るときに見た、三本爪の猫の旗を掲げた船。あれが例の海賊の船だろうネ)
三隻での戦列を維持したままでの哨戒という、海賊らしからぬ統率の執れた艦隊行動を当たり前のように行っている海賊。
(おそらく、海軍が子供の奴隷を金銭による取引で手にした……という絵を取る事はすでに不可能。それどころか、情報工作のための大電伝虫の管理船をその内押さえられかねない。一応船は隠しているが……そもそもの計画が破綻している時点で無理があったか)
海兵とは違う、一切足音を立てない兵士が動き始めている。
下品な男たちはその数人を見て、抱きたいだのいくらで売れるかだのという話をし始めている。
無論、眼鏡の男にとってはそんなバカな話に意識を割いている状況ではなかった。
一刻も早く動きを決めねばならない。
(下は分からないが上の方の嗜好は極めて紳士的。兵士の様子をみても、血や暴力を好むタイプではない。十分な利を提供できれば、命を取られる事はないハズだガネ)
「ん? おいギャルディーノ、どうしたんだ?」
そうと決まれば話は早かった。
こちらの見張りについた、あの規律の取れた艦隊と同じマークを胸と背中に付けたスーツを着ている女性兵士の元へとゆっくり歩いていく。
「なんだぁ? そのベッピンさん口説くのかぁ!? 無理無理、おめぇが口説き落とせたら俺は二千ベリー払ってやるよ!!」
「だったら俺は五千だ! もし俺らの売春宿で働いてくれるって所まで口説いたら一万ベリーくれてやるぜ! ギャッハハハハハ!!」
―― キャンドル・ロック。
一応これから商談だというのに酒を入れていた愚者二人の下品な口とその両手足は、眼鏡の男の指先から現れた真っ白で、そして頑強な
「軽い神輿とはいえ、貴女方の耳に下品極まりない言葉を入れてしまった事を心から謝罪する。申し訳ない」
海兵と共に出入口を固めている、黒いスーツの女性兵士に対して眼鏡の男は深く頭を下げる。
海兵の方は何が起こったか分からず呆然としているが、スーツの兵士たちは全員腰の刀に手をかけ、だが狙いが自分達ではないと分かっていたのか刃は抜かず、それでも男の一挙手一投足を見逃すまいとしている。
「その上で、貴女方の海賊団に投降したい」
「上の人間と直接話をさせてもらえないカネ?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「どう思う?」
センゴクさん、おつるさんと一緒に別室行きは別にいいんですけど主語くらいは付けてくれません?
「政府自らが動いたという可能性は低いでしょう」
まぁ、言いたいことは察せるけどさ。
「確かに、つる中将がおっしゃられたことと合わせると政府にとって都合がいい。もっとも穏便に事態を終わらせるには、自分達『黒猫』が行政側に極めて近い事を強く世論にアピールした上で、我々が彼女達を保護すれば済む話です」
おつるさん、そのため息はなんです?
そうなればいいのにって?
断言しますけど、連中が俺達を欲しがってるならなおさら俺達はそうなるべきじゃないんですよ!
万が一俺達が七武海になったら、絶対に政府は調子に乗りますよ!
正確には聖地の連中が!!
「ですが政府側も今現在、海兵にとって『奴隷』という言葉が極めて扱いの難しい物であることは理解しているハズです」
「ハズ……というのが悲しいねぇ」
おつるさん今はそれ言わないでください!
本気でやる気がゴリッゴリ削れるんですよ!
「政府もこれ以上海軍を直接刺激する真似はしないでしょう……が、自分達が犯人ではなく、しかしそこに材料があるのならば利用する可能性は十分にあります」
「では、海軍を狙った今回の奴隷売買騒ぎは偶然だと?」
「…………いえ、それは……」
もし第一艦隊が情報の拡散が目的の船を発見、確保すれば確定なんだが……本丸に辿り着くほどの証拠はないだろうなぁ。
現場の工作員を捕まえて海軍側に引き渡せば何か分かるかもしれんが……ここまで一切捕まえられなかったという事はかなり頭の切れる相手だ。
(売人が実行犯だったら、状況――というか連中側の環境次第では投降するかもなぁ)
計画の主軸だったであろう島を押さえたんだ。
それを取り返す動きはおろか、他の海賊がどこかに集まる様子もないってことは、海賊達は切り捨てられたということ。
それは薄々、実行犯も気付いているハズだ。
それでも工作戦を続けたのは状況を打開するためか、例の金獅子とかいう奴が介入し直す隙を作るためか、あるいは――
(そもそも意外と義理堅いのか、それとも裏のルールを順守するタイプか……まぁ、ともあれ)
「元々の事件と同じく、やはり海軍や政府に対しての攻撃である可能性は極めて高いと思います」
二人とも予想していたのだろう。「まぁ、だろうね」的な顔で頷いている。
「そして敵は、おそらく天竜人と世界政府をよく知っています」
ドフラミンゴかどうか、正直確証はない。
単に思い当たる原作キャラ内での有力な容疑者という程度の話ではある。
ましてや海賊連合事件が始まってからは、俺が漫画で知るドフラミンゴと明らかに差異がある。
――が、
「海兵奴隷の時といい、天竜人の射幸心を的確に煽り、政府の動きをおおまかに把握して海軍との離間を謀る。……見事な手際です」
「そして今回は海軍の信用を失墜させようとしているね?」
「おそらくですが。目的は海軍の信用失墜を以って、加盟国間の諍いを助長させようとしたのでしょう。海軍の発言力が下がれば、海を挟んだ国家間での争いへの介入が更に難しくなります」
元々のモグワのように海賊を利用した物ではなく、本気で隣国に適当な理由を付けて略奪をしようと狙っている動きはすでにある。
海軍の哨戒ルートに入れてもらったりこっちでも牽制したりして正面衝突はなんとか防いでいるが、一部の非加盟国はすでに襲われている。
海軍と協力している現状では、さすがにウチでも手が出せない。
「ところで元帥、
「……残念ながら、進んでいない」
「アンタもクザンから少しは聞いていると思うけど、北の海は今戦争が激化している」
そういえばクザンや本部の海兵達からそんな話聞いたな。
戦争が激しくて海軍も動きづらいとかなんとか。
「では、つまり――」
「そうだ。以前言った通り、ニコ・ロビンの解析はこちらでも裏を取った。最初の海兵奴隷事件で同時に取引されていた武器の数々の大半は北で作られた物であるのは間違いない。……だが」
「戦争が激化している北の海じゃあ、武器の横流しは日常茶飯事なのさ。新品でなくても、戦場跡地を民衆が漁って、拾った武器や鎧を売ってその日の糧にすることもね」
「……やはり決定打にはなりませんか」
くそう、例の島すら空に飛ばせる奴が今後出張ってきたら面倒だから、海軍に多少でも連中の勢力を削いでもらおうと思ったがそうはいかんか。
せめて牽制になればと思ったんだが……。
(政治的な問題でも戦力的な問題でも、さっさとこの一件にケリを付けて海軍主力をフリーにするべきではあるんだよなぁ……)
だけどやりたいことはあるし、黒猫として多少は利益を得たい。
「クロ」
「はい」
「お前は、こうなる事を予想していたのか?」
「……それは何に関してでしょう?」
「西の海の騒動に、さらなる混乱をもたらす者が出る事だ」
「はい」
そりゃまぁ……。
センゴクさんだって予想していたでしょう?
「……なぜ、マリージョアに出頭した。お前が西の海に陣取っていれば、暴れるしか能のない海賊はともかく、加盟国は牽制できたろうに」
「ですが、その場合は政府と海軍の溝は更に広がっていました。政府の万が一の軽挙に備えて、動かせる軍や物資は更に減ったのでは?」
「お前ならば、西の海に居座ったままでの調整も可能だったのではないか?」
あ~~~~……。
うん、それ自体は……。
「可能ではあったと思います」
多分、出来ただろう。
実際、海軍側の協力があったとはいえさっきみたいに、改造した電伝虫を使って会議は出来た。
盗聴の可能性はあるけど、大した問題ではない。
五老星なら盗聴されている事込みで策を練っただろうし、それはこちらも同じだ。
「ですがその場合、政府の動きの把握が極めて難しくなります。より短期間で情勢を立て直すには、やはり私が出向く他なかったでしょう。それに……」
「それに?」
「不謹慎かもしれませんが、我々『黒猫』にとっても都合が良かったのです」
「……それは?」
「私が一度、組織の主軸から抜ける事です」
世界政府を相手にやり合うには、万が一の場合の備えは絶対に必要だったからな。
「副総督を任せたダズ・ボーネスを始め、今の組織の主軸になっている者達には全員、私がこれから必要になると思った技能を全て経験させています」
基本となる操船や戦闘の技術、対能力者戦闘訓練、連帯行動に部隊指揮、兵士の心身の把握とその管理、遭難時の対処法にサバイバル、スカウト技術。戦略に基づく戦術構築。
復興作業を通しての土木の基礎、街の構造に民衆の予想外の動きの体験、他国での活動による文化の差異、救助時のトリアージによる緊急事態時での命の優先順位付けと選別。
「その上で、今回の連合騒動もそうですが……我々は人の弱さと向き合う必要があります。であるならばこそ、組織の根幹を担う現幹部勢には組織としてのモノ以外に、己の中に確固たる己の矜持が必要だと判断しました」
特に親衛隊の面々なんかは入ってきた経緯もあるから、この機に色々と考えておいてもらいたい。
「あくまで私の経験論ですが、解決が極めて難しい本当に困難な場面に遭遇した時、最も力になるのは技術や訓練量以上に、本人の中にある強い動機だと考えています」
「それはつまり、本人達の目標かい?」
「はい。……あるいは守るべき自分のルール……矜持もですが」
あとは俺が死んだり行方不明になった時のための予行演習だな。
今回みたいな海軍も関わるパターンは仕方ないが、一度しっかりダズやハンコックを中心とした指揮系統に兵士を馴染ませておいた方がいい。
こっちの勢力圏が広がれば、艦隊を別けて行動することだってあるだろうし。
特に
「我々が海賊になった理由である天竜人も、ある意味でもっとも人間らしい存在です。善良でまっとうな人間も、一つ掛け違えばああなる可能性は十分にあるし、またそういう物を目にする事もあるでしょう」
「そういった事象を乗り越えていける組織を作るには、今こそ、我々が我々自身の矜持を見つけ出す必要があると考えたのです」
まぁ、なんかあったらミホークあたりは抜けるだけだろうけど、万が一黒猫勢力が丸々『なにかあった未来』バージョンの、いかにもルフィの敵みたいな海賊団になってしまったら目も当てられない。
「……クロ」
「はい」
「アンタ、第二の海軍でも作るつもりかい?」
「そういうわけではないのですが……」
欲しいの第二の海軍じゃなくて、第二の世界政府なんですわ。
先行きが不安過ぎて泣けるぜ。
頼む、俺の身体に合ったちょうどいい胃薬クレメンス。