とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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ツイッターでは報告しましたが、週刊を目指しておきながらズレ込んでしまいまして……楽しみにしてくださる方々にはまことに申し訳ないです。

八月中旬ほどまで、あるいはまたズレ込んでしまうような事があるかもしれませんが、出来るだけ早い投稿を目指して頑張りますので、どうかご了承ください。


078:五つの星の上に輝くのは?

 思わぬことから始まった人身売買騒動、そしてその後に続けて発動された黒猫、ならびに海軍の共同作戦は瞬く間に西の海中に広がっていた。

 海軍船はもちろん、冬の間に大きく数を増やした黒猫の新船団の初陣も兼ねた解放作戦は驚くほど上手くいっていた。

 

 食えなくなって海賊になった結果、黒猫に吸収された者達は短期とはいえ訓練で叩き込まれた規律の下に救助活動と開墾、開拓作業に従事している。

 

 元は農民だったものが多いためか、作業への慣れは初期の海兵組よりも早く、今もカポネ・ベッジの船が運んできた木材を運び出して、港の一画に用意された作業場でそれぞれ加工して運搬している。

 

 薪を運び出す者がいれば建材として加工した木板を紐で括って海軍の用意した馬車に載せ、一方では大量のレンガを藁で包んで復興中の城下町へと行く荷車に載せている。

 

「やれやれ……。ホント、海賊が真面目に働いてるってのも変な光景だよなぁ」

「なにを不景気な顔をしておる、クザン。大将がそのような顔をするものでない」

 

 もはや日常であるモグワ港――かつて、海軍大将と黒猫が共に戦い、海賊連合の先遣隊を蹴散らした戦場であった港の一角に腰をかけてボヤくクザンの元に、いつものスーツにオーバースカートを纏わせた姿の黒猫海賊団の第一艦隊提督、ボア・ハンコックが立っていた。

 

「ハンコックちゃん、戻って来てたの」

「ちゃん付けは止めよ。……うむ、我らに投降した男の情報通りじゃった。工作船も押さえ、近海の隠れ家は一通り押さえてきた」

 

 ハンコックは小さな酒瓶を片手で小さく振り、

 

「ほれ、お主の好きな酒じゃろう」

「あらら、シェリー酒じゃない。それどうしたの?」

「襲撃してきた拠点の中に、大量の酒の貯蔵があってな。その中にあった」

 

 ほれ、と海賊艦隊提督が差し出したそれを大将は受け取る。

 

「お主、前にこれを主殿に勧めておったじゃろう。主殿に似合う酒じゃと言って」

「……ああ。俺の先生がこれを気に入っていたんだ」

 

 開ける前に自分の手を氷に変化させて、冬の空気でそれなりに冷えている瓶を更に冷やしながらクザンは、懐かしそうな目で、

 

「世界で一番かっこいい酒だってな」

「ハッハッ、確かに主殿に似合いそうじゃ」

 

 ハンコックも水の入った瓶を片手に、クザンの横に腰を下ろす。

 

「で?」

「んん?」

「何を不景気な顔をしておったのだ」

「あらら……それ聞いちゃう?」

「協定相手の顔色くらい窺ってもよかろう。わらわも黒猫の幹部ゆえな」

「……ま、それもそうか」

 

 ちょうどよい冷たさになったのか、手を元に戻して瓶口を開けたクザンはチビチビと中身を口にしながら、

 

「クロがエリアA――最重要防衛地域に設定して、結果守り切った地域の加盟国に援助を求めに行ったのは知ってるだろう?」

「知っておる。それで戻ってきたのであろう? ま、余計な話も持ち帰ったようだが」

「悪かったよハンコックちゃん」

「だからその呼び方は止めぬか!」

 

 座ったまま器用に膝でクザンに軽く一撃を入れるが、クザンは特に表情を変えずに酒瓶に口を付けている。

 

「ふんっ。顔色を見るに、援助は引き出せなんだか」

「ああ。……予想していた?」

「主殿がな。財を残せたものが、そうでない者達に対して(おご)り高ぶる可能性は極めて高いと言っておった」

 

 領地である非加盟国内部でも思い当たる節があるのか、ハンコックは水で喉を潤しながら眉にしわを寄せる。

 

「そうなれば穀物を始めとする食料の値を吊り上げようとする者や、逆に不安から貯め込む者らが出て来る可能性を、注意書きの中に書き残しておったのじゃ。物資の管理や再分配の際には注意するようにと」

「アイツ、本当に海賊かよ……」

「団員どころか幹部ですら一度は首を傾げるのじゃ。今更であろう」

 

 色違いといえど似たようなスーツを着ている二人は、並んで腰を落とすと傍からは兄と妹のようにしか見えなかった。

 

「ただ……そういうものならまだ分かるんだよ。それなら多少ベリーがかかろうとも買うつもりで、予算だって申請通したしな」

「あぁ、珍しく机に齧りついておったのはソレだったか」

「おう。でも……駄目だったんだ」

「海軍の要請を断るには相応の訳が必要じゃろう。理由は?」

 

 ハンコックの当たり前の問いかけに、クザンは大きくため息を吐き、

 

「――天竜人だ」

 

 その一言に、眉間にしわを寄せていたハンコックの顔は更に不快気に歪んだ。

 

「また奴らか」

 

 不敬と責め立てられてもおかしくない言葉に、クザンは特に何も言わずに頷き、

 

「毎年この時期には天竜人のとある家……確かロズワード聖だったか? の当主の祝い事があるんだそうだ」

「つまり、祭りのようなモノか」

「ああ。……で、そのために食料をかき集めてるのさ」

「……まさか、西の海からも?」

「幸い、西の海にはそういった要請は出ていない」

「当たり前じゃ。飢餓者がどれだけ出てると思うておるのじゃ……」

 

 第一艦隊はその特徴から攻撃的な編成をしているが、無論民衆救助も行っている。

 当然ハンコックも自分の目で、あるいは報告書による数字で把握していた。

 

「しかし、要請が出ていないならなぜ?」

「毎年の貢物を滞らせたら、天竜人の覚えが悪くなる……そうだ」

「……そんな理由で、飢える周囲を放置するのか? 賊徒が増えて、却って負担がかかるぞ」

「ああ。俺もそう言ったさ」

「それで、国を治める者はなんと?」

「……それは、海軍の仕事であり、我らの関知する所ではない……だと」

「愚物め。賊より始末に負えぬ」

「ハハッ、海賊にそう言われちゃおしまいだな」

 

 九蛇の時代はともかく、黒猫に入ってからは略奪らしい略奪は海賊やマフィアからしか行っていない海賊は、不快そうな顔から、何とも言い難い複雑な表情へと変わる。

 

「事態を把握して物資から兵力まで協力してくれるのが海賊で、この状況でも自国の事のみで食料も労働力も貸さないのが守るべき加盟国。……なんのために戦ってるのか、分からなくなってしまいそうだ」

 

 シェリー酒を更に呷り、ため息を吐いたクザンはぼーっと港の様子を眺めている。

 三本爪の猫を背負ったスーツの集団が、船の中から中身の詰まった樽を数人がかりで次々に運び出している。

 

 そして、日が沈みつつある海からは次々に海軍艦と海賊船が帰港しつつある。

 互いが手旗信号で進路を伝え、確認しながらだ。

 

「のう、クザン」

「ん?」

「あれから、わらわなりに考えてみた」

「…………なにを?」

「たわけ。お主以前わらわに問うたであろう」

 

 幼くも大人びてきた海賊少女は、自慢の髪をかき上げ、

 

「正義とは、と」

「…………あ」

 

 こうして再会する前、クザンが加盟国へと出発する直前にハンコックにふと問い掛けた言葉。

 なんとなく口にしたソレを、言われてようやくクザンは思い出した。

 

「言われて、ずっと考えておった」

「……おう。それで?」

「わからぬ」

「おーい」

 

 ならなんで話を振ったと軽く肩を叩くクザンに、ええい聞かぬか! とハンコックもやり返す。

 

「お主も知っての通り、わらわは九蛇の一員じゃった」

「ああ。偉大なる航路(グランドライン)でも屈指の海賊。商船が腕利きの護衛船を付けていても、旗を見た瞬間に逃げ出すほどに知られた海賊だ」

「うむ。……今にして思えば、便利な言葉だが我らは戦士の部族……主殿の言葉を借りるならば……そう、文化。戦士の文化だった」

 

 ハンコックやその妹たちは、悪魔の実を食べてから以前作った弓は使わなくなった。

 出来の良かったアレは、もっとも弓を上手く扱う親衛隊の一人に与えている。

 

 それでも、これまでの活動で習慣付いてしまったのかブラウスの上、ジャケットの下にいつも通り装備した革の胸当ての肩ひもに手を当て、なぜか彼女は悲しそうな顔をする。

 

「ゆえに、略奪に対しても思う所はなかった。強い者が全てを手にする。功を上げた者に最も略奪の分け前を与える。……当たり前のことだ」

「海賊ならな」

「その通りだ。……いや、すまん。皮肉ではない。それが九蛇の正義だったのだ」

 

 海賊相手の略奪を行いながら、街の復興も指揮する少女は今一度ため息を吐き、

 

「捕らわれた時もそうだが、主殿達に助けられてからずっと、文化の差異という物に驚きっぱなしじゃ」

「……黒猫もやっぱりそうなのか?」

「驚いておるし戸惑いの毎日じゃ。……まぁ、不思議と心地よいのは確かだが」

 

 もし、ハンコックが黒猫の一兵士のままならばこういう考えはなかっただろう。

 兵士を預けられ、領地を任され、民を任される立場になってしまった結果に今がある。

 

「今でこそ、民衆は守らねばならぬと思っておる。組織の武力よりも生産力を重視する主殿の影響もあるが、生産を支える民草は決して替えが利かぬ。使い潰してよいものでは断じてない」

 

 クザンは、眩しい物を見るように隣に座る少女を見る。

 海賊ではある。

 だが、その意思はもはや略奪者のソレからは程遠い物となっていた。

 

「民草が積み重ねて来た物は――いや、民というモノは決して軽いものではない。技術、経験、なにより自分がどこの人間かという想いは極めて重く、ゆえに価値がある。……ただ」

 

 ただし、それでもボア・ハンコックという少女は海賊である。

 

「それでも、弱い者が奪われるのは当然だとも考えてしまう。強くなければ奪われ、奪われないためには強くなるしかない。鍛える余裕も時もない民と言えどもじゃ」

「……強い奴の理論だ」

「うむ。わらわもそう思う。だが真理である事も間違いなかろう。力がなければ何もできぬ。わらわも……だから捕らわれ、売り飛ばされる所だった。……弱かったからじゃ」

 

 反論しようとクザンが口を開くが、結局言葉は出てこない。

 力が全てを言う海軍に身を置いているからこそ、ハンコックの言葉も真実であることは身に染みて分かっている。

 

「強者が全てを手にする九蛇の文化、九蛇の正義は正しいと思っておる。だが、民も含めた我らがそれぞれの力――いや……能力や経験を適切に活かそうとする……武の強弱を個性の一つ程度に見ておる主殿の正義を、そうあるべきだと思っておる自分もいる」

 

 ハンコックはほぼ空になった水瓶を、目の前に弱弱しく咲いていた野花の上で逆さにして軽く振る。

 

「わらわもまた、わらわが『黒猫』という一味の中において通すべき義について、迷いの中におる」

 

 そして完全に空になった瓶を側に置いて、クザンを真っすぐ見据える。

 

「お主と同じくじゃ、クザン」

「…………俺が迷ってるって?」

「先日の一件、我らの元へ相談しようとしていたら道に迷ったと言っておったな? たわけ、あんな所でお主が道に迷うわけなかろう」

 

 クザンは気まずそうに瓶に口をつけて傾けるが、中身を喉に通すでもなく、唇を少し湿らせただけでまた戻してしまう。

 

「おおかた、奴隷という問題に我ら『黒猫』を巻き込んで良いのか。海軍――自分だけで解決すべきなのか二の足を踏んでいた所にわらわが声をかけたというところじゃろう? アミス達のことがあるから……このたわけめ」

「何回たわけって言われるんだよ……」

「下らんことで悩んでいる間は何回だってそう言ってやるわ。だが、それも含めて――」

 

 

「お主の迷いを、わらわは決して笑わぬ」

 

 

 どこか後ろめたいような雰囲気を纏わせているクザン――大将青雉を、ハンコックは幼いながらも鋭い眼で真っすぐ見据える。

 

「わらわは九蛇にせよ黒猫にせよ、海賊の正義しか知らぬ。ゆえにおぬしが悩んでいるのが、海軍の正義からみてどう見られるかはさっぱり分からぬ」

 

 内心、自分達の頭目であるクロならば理解できるかもしれんと思いながら、ハンコックは「ただ――」と言葉を続ける。

 

「お主のそれは、お主の正義を――お主の胸に通すべき矜持を探すものであろう? それは、決して他者が笑ってよいものでも、汚してよいものでもあるまい」

「…………」

 

 クザンはとうとう何も言わなくなり、呑みかけの酒瓶をじっと見つめている。

 時間にして三分ほどだろうか。

 無言のままだった大将がようやく口を開き、

 

「ひょっとして、ずっと励まそうとしてくれてたの?」

「…………たわけ、一々口にするでない」

 

 立ち上がり、スラックスやオーバースカートに付いた砂や小石を軽く払ったハンコックはクザンを見下ろす。

 人によっては不快に思うだろう行為だが、クザンは困ったように小さく笑ったままだ。

 

「主殿が出発してしばらくの間は良かったが、特にここ最近は調子が優れぬようだったからの」

「悪かったね。心配かけて」

「悪いと思うのならば気を引き締めよ」

 

 

 

「主殿の友が、不景気な顔をするでないわ」

「何にも上手くいかなきゃ、ついついそういう顔もしちまうさ」

「不利な状況でも楽しめる上官にこそ兵はついていくぞ。ほれ――」

 

 

―― ホロホロホロホロ! おめぇいいセンスもってんじゃねぇか!

―― フフフフフ! そう言ってもらえるのは光栄だガネ!

―― その調子で家を頼むぜ! 火は使えねぇがこんだけ壁が分厚ければ寒さは十分凌げんだろ!

―― 窓ガラスの方さえそちらでやってもらえれば、この程度いくらでも量産できるのだよ!

―― ホロホロホロ! その調子で頼むぜ!

 

 

「あ奴らのようにじゃ」

「投降したばかりの実質捕虜があれでいいのか?」

「実益があるのならよかろう。実際、助かっておる」

「……ああ、うん、まぁ……そうなんだけどさぁ」

 

―― ホロホロホロホロホロ!!!!!

―― フッハハハハハハハハ!!!!!

 

 

「人生楽しんでるなぁ、あいつら……」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

(おかしい……)

 

 マリージョアに来てからそれなりに経つ。

 海軍と政府の折衝はとりあえず西の海への物資輸送の追加手配と対象者の遺族年金の加増、もはや働く事もままならない生還者への特別年金の用意まではなんとかまとまった。

 

 それはいい。

 それはいいんだ。

 問題はこっちの計画だ。

 

(五老星が想定をはるかに超えて連携している)

 

 俺に用意された部屋――外には監視と護衛を兼ねた海兵とサイファーポールの誰かの気配がする――に設置されたテーブルの上に、メモ代わりの紙切れを小さくちぎって五枚の紙片を用意する。

 

(当初の目的は五老星の内情の把握。可能ならば五老星という仕組みに罅を入れる事だったが……)

 

 五老星はその役割や数からして、ある程度の対立があると考えていた。

 というか、あって当然だ。

 

(最高権力者と言えどそれぞれの役割があり、その中に金を握る者もいる。ならば統治活動の中で対立は必ず生まれる)

 

 聞いたところ、あの日本刀持ってる人が財務担当だという話だ。ならばなおさら……。

 

(実務的なものであろうが人間関係的な物であろうと、こうなればよくある構図は三対二)

 

 五枚の紙片を左に三つ、右に二つに並べてみる。

 

(あるいは、二対二の対立構造に調停役を務める中立の一)

 

 左の紙片三枚の内一枚を上へとずらし、五枚の紙片で五角形を作るかのような形を作る。

 

(三対二なら数で劣る二に、二対二対一ならば中立の一に近づき、五老星のバランス構築に我々『黒猫』の圧力を要する形を遠まわしに……作れたらいいなぁ程度の作戦だったが)

 

 無理はせずに、隙らしきものを発見出来たらいいなぁ程度の物だったが、それらしいモノが見当たらない。

 いや、交渉という意味では動きの予測が出来ない天竜人という枷がある分隙はいくらでもあるんだが、五老星という纏まりそのものには、綻びと呼べるものがほとんど見当たらない。

 

(こっちの目論見を見抜いて隙を見せまいとしている……可能性もあるが……それにしても統率が取れすぎている)

 

「……作戦変更、かな」

 

 天竜人――世界政府の目指す果てが今一見えない。

 世界の統一というのならば、無駄な被差別階級なんか撤廃して非加盟国を属国にすればいい。

 こういっては何だが、非加盟国への人権がないのであれば、全員今日から奴隷な! 的な手段も取れなくはないハズだ。

 現状でこそ難しいが、この800年の間にそういうチャンスが一度もなかったとは思えない。

 

 まぁ、やっかいな海賊の拠点とかは別にしてだが。

 

(そのよく見えない目的は、例えばポーネグリフのような文章か、あるいは口伝のような形で残っているかもしれない……とは考えていたが)

 

 現に原作中のコラソン……本名何だっけか……あのドジっ子スパイだって、子供の頃にDの事を聞かされていたとか言っていた。

 口伝とかではなく、子供への脅し文句のようなものだが、それでも過去が残っていたのだ。

 

(ただ、その場合は解釈の違いやらでやはり対立は生まれる……というより、対立が起きない理由としては弱い。対立しない……あるいは出来ない強い理由があるとしたら……)

 

 より強い実権を持った上位者が目を光らせている……とかになる。

 なる……のか?

 

(まさか、五老星の上に王様がいましたとか言い出さねぇだろうな?)

 

 ヒナやゼファー特別大将、スパンダインがあれこれ教えてくれた中に『(から)玉座(ぎょくざ)』なんてのがあったんだ。

 誓いを立てる象徴が偽りだったとか、世界政府の根幹から間違ってる事になるし一歩間違えたら不味い事になるんじゃが。なるんじゃが。

 

(それに、仮に王様がいたとしても代替わりは必ずある)

 

 王様だって歳を取るし、子供だって生まれるし、その子供を育てなくてはならない。

 次代の王を育てるとか次期政権の要を握るようなものだし、確実に争いの種になる。

 その争いが外に漏れないとは……というか、そんなのがあったら天竜人共勝手に自滅しそうだし、騒ぎが酷いことになりそうだし、やっぱない。

 

 それこそ、王様が不変の不老不死とかでもない限……り……

 

 

 

―― それほど利用価値のある能力なんだ!

 

―― 人格の「移植手術」も然り……もう一つ!

 

―― お前は知っているのか!? "オペオペの実"は才気ある者が使用すれば――

 

 

 

「……………………」

 

 …………ふむ。

 

(よし、戦術的な目標を変えよう)

 

 もう実績のみを確保してさっさと話を付けよう。

 深い事は考えずに目の前の事にだけ集中すればいい。

 

 いのちをだいじに!!!

 

「問題は、世界政府が海軍に対して、金銭や物資のみで誠意を尽くしたと言えるかどうかだなぁ……」

 

 クザンやガープさんといった面々を除いても、海軍は面子――というより情を大事にする傾向がある。

 

(五老星から……いや、せめて実際に海兵を裏で取引していた天竜人の誰かによる謝罪の言葉があれば話は違うんだが……)

 

 謝罪の言葉はお礼の言葉よりも難しいからなぁ。

 ちっ、うっせーなー的な態度が零れた時点でアウトだし、そういう振る舞いを天竜人に期待するのは酷だろう。

 となると、出来そうなのが必然的に五老星しかいない。

 

(ただ、最高権力者の頭を下げさせる程には状況が追い詰められているわけでもないし、なにより場が整っていない)

 

 事態を終わらせるピースが絶妙に噛み合っていない。

 

 だからこそ、センゴクさん程の政治センスがあっても事態がここまで進まなかったわけで……。

 

(少し休むか)

 

 ヒナが持ってきて、毒見まで済ませてくれたポットの中のお茶を適当なカップに注いで、温くなったそれを飲み干しながら窓の外を見る。

 

 真っ暗な水平線に、小さくオレンジの線が見えた。もうじき夜明けか。

 また徹夜してしまった。

 

 ……いや、ミホークとレイリーに真剣で追いかけ回されながらの徹夜なんて散々やったからこの程度大したことないが……。

 

(軽く仮眠を取ったら、一度五老星に会談の要請を出すか。五老星が個人としてどこまで譲歩できるかを探らないと……ん?)

 

 まだまだ真っ暗な空に、なんか違和感がある。

 目を細めて空をじっと見つめてみる。

 

「……………………………………?」

 

 そこには、船があった。

 

 大量の船の残骸が(・・・・・・・・)聖地の空を(・・・・・)埋め尽くしていた(・・・・・・・・)

 

「――は」

 

 そしてまるで俺が口が開いたのを合図にしたかのように、

 

 

―― ジハハハハハハハハッ!!!

 

 

 聖地目掛けて、破壊の雨が降り注ぎ始めた。

 

 




( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

(;゚д゚)




  , .
(;゚ Д゚) …?!
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