とある黒猫になった男の後悔日誌   作:rikka

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092:『政府』の意向

「にしても酷い揺れ……随分海が荒れてるわね」

 

 元の世界で言う大寒の日は越えているとはいえ、まだまだ真冬のど真ん中だ。

 俺とヒナはこうして船室で待機しているからまだマシだが、甲板で作業している海兵達はかなりキビしいだろう。

 

 波が激しいのかそこそこ上下する部屋のなかで、俺は完全にお客さん扱いでヒナに茶を注いでもらってくつろいでいる。

 

(……冬場の装備も整えないとなぁ。今そこにある環境に耐える訓練は幹部も考えて兵士に受けさせているだろうけど、環境整えるのが船長……というか総督の俺の仕事でもあるし)

 

 本格的に海賊――というか海を中心の生活をするようになって初めての冬だ。

 乗っているの海賊船じゃなくて海軍艦だけど。

 

 やはり気付くことはあるし、手を加えたいと思う事もある。

 

「まぁ、そんなもんだろうさ。海に慣れた俺達が酔いを起こすほどじゃないし問題ない」

「それはそうだけど……というか、クロ。貴方さっきから何読んでるの?」

「センゴク元帥から頂いた本や資料だな。本は主に農耕書とか環境とか経済、法学者の発表されている手記や論文。資料の方は、主に各加盟国の法律や政策の傾向をまとめたものとかそれに関係する国の統計資料とか……」

「もっと海賊らしいもの読みなさい」

「海賊らしい読み物ってなにさ」

「……宝の地図とか海図とか?」

「俺にとっちゃこれが宝の地図で海図なんだよ」

「そんな海賊どこにいるのよ!」

「ここに。一名」

「もう……」

 

 本当ならば、冬の間に俺が主導してやっておくつもりだった仕事なんだけどなぁ。立法関連は特に。

 

 ……だからお前はいちいち人の肩に手を置いて覗き込むんじゃない。

 

(自分が出発する頃にはすでに、『黒猫』の縄張り入りを非加盟国が望んでいるような動きがあるとベッジが言っていた。テゾーロには近隣国の文化研究・分析を進めておくように命じていたから、その報告を聞いてから春先……最低でも夏前までにはモプチの政治体制を整備したかったが……現状ではまだ『黒猫』の武力による強権が必要か……)

 

 王女殿下にはモプチの状況は何も偽らずに出来るだけ報告しているし、そうさせている。

 だからこそ、国をああしたいこうしたいという『ふわぁ』っとした方向性を殿下が出して、それを俺とテゾーロで形にするという方針でやってきているが、さすがにそろそろ限界だろう。

 のちのちモプチの家臣団を形成するためにも、モプチの土台を作る必要がある。

 

 だけど、海軍や政府――ついでにあれこれ裏で動いている連中の次の一手によっては……。

 

(ロビンとミホークがキャネットをどれだけ開拓したかによっては、一年後には偉大なる航路(グランドライン)入りだしなぁ)

 

 西の海で色々ありすぎたために、俺にとっても失う事が出来ない重要拠点になってしまったのは間違いない。

 これからモプチが陥落することがあればウチの名声にめちゃくちゃ響く。

 

「海賊連合からの略奪分があったとはいえ、どうにか冬を乗り切れるだけの食料の生産、それに生活を支える輸送体制の整備には成功したんだ。今年の内に拡張と、似たような飢饉の際の救荒食の栽培、開発とインフラの補強に成功すれば、我々『黒猫』の当面の問題はとりあえずクリアしたことになる」

 

 これだけの拠点を失うような真似をすれば、名声にダイレクトなダメージを受けるから防衛力の強化も必須だ。

 収支を見て、ギリギリを攻めた所まで資金も人も注ぎ込みたいが……。

 

「クロ」

「ん?」

「だから貴方達、海賊辞めちゃいなさい」

「だから無茶言うなとあれほど……」

 

 貴様それ何度目だ!

 土地を私物化して好き勝手してるのが賊以外の何者だって言うんだ!

 

 これで「自分ら海賊じゃないッスよ?」とか言ったら五老星の頭がプッツンして死んじゃうでしょうが!!

 

 

 …………。

 

 

 ホントにそうなるんだったらアリ寄りのアリだな。

 

 

「ハッキリ言うけど、貴方に懸賞金を懸ける側の立場として、貴方への感情は複雑なのよ。聖地の防衛戦と言い」

「堂々としてろよ。政府の敵であるには違いないんだから」

「……西の海に戻ったら、貴方と戦う事になるのかしら」

「それなぁ……」

 

 クザンはマリンフォードに戻ったらしいし、タキ准将達を始めとするモグワ組の大半も異動になったと定時連絡でダズから聞いた。

 

(海兵達の穴埋めに、政府派閥の人間を送り込み始める頃合いか。センゴクさんはますます動きづらくなるな……)

 

 実際、すぐさま戦闘になる可能性はない。

 ない……と思う。うん……念のために少ないと言っておこうか。

 

 ここで戦った所で海軍はもちろん政府にも利益はない。

 むしろ海軍本部戦力の取りまとめに苦労するだろうし。

 

 それこそ、ド派手に将校を入れ替えるとかしない限り……いやでもそしたら混乱酷くなるだろうしなぁ……。

 

(仮になんらかの理由があったとしても、加盟国の疲弊度や、その防衛に必要な戦力である海軍とのこれからを考えると、そこまで無茶な手は打たない……と思いたいんだけど、加盟国に対してどこまで真面目に考えてるのかちょいと怪しいしなぁ)

 

 第二次輸送船団の段取りまでは手伝ったが、それで一応居住に関しても問題は無くなる。

 だけどその他の部分が……食料含めてどれだけのモノを欲しがるか分からん。

 アレ以上政府の側にいるのは危険と判断したのもそれが大きい。

 

 ゼファー大将達が上手く動いてくれれば、ジェネッタ達も政府から程よく距離を取れる。

 彼女たちの元の上司連中は、こちらから見て確信が持てた弱点をスパさんに伝えているから最低でも動きの牽制……上手くいけば失脚まで持っていけるハズ。

 

 ピンシャー卿も協力を約束してくれたし、部署の新設と彼女達の異動までは問題ないだろう。

 

(奴隷関連の資料の所に、明らかに数字や出自を誤魔化した所があった。海兵ではないだろうけど、表に出せない奴隷がまだまだ相当いるんだろう)

 

 非加盟国どころか加盟国の王族に手を出していたとしても不思議じゃない。ドン引くわ、ホントマジで。

 ……うん。確かにヒナを船に同乗させてさっさと聖地から引き離したのは正しかったかもしれん。

 

(海兵を奴隷にしようとする動きはさすがに抑えられただろうけど、妻にするとかいう形の場合どうなるか……なんとも言えんなぁ)

 

 実際、復興作業中にそういう事言い出す馬鹿がいて……抑えるのに滅茶苦茶苦労した。

 

「ヒナ、お前はどういう命令を受けているんだ?」

「このままあなたを西の海まで守って、その後は可能な限り『黒猫』に張り付いて情報収集に徹しろって言われてるわ」

「聞いててなんだけどそれ言っていいヤツなのか!!!?」

 

 びっくりしたわ! クロびっくり!!

 

 いやそういう感じの命令の可能性高いと思ってたけど、まさかオブラート0枚で直接ブッパするとは思わんかったよ!!

 

「別にいいわ。貴方だってそう読んでいたんでしょう?」

「……まぁ、そりゃそうなんだがお前……」

 

 正直、古参組――いやまぁ、旗揚げから1年も経ってない海賊団なんだが――のダズやペローナ、ロビンと同じくらいの馴染みっぷりである。

 

 元海兵という事もあって、アミスを始めとする親衛隊ともなんだかんだで仲良くなったし、ダズ達幹部とも良好な関係を築いている。

 お前それでいいのか海兵。

 

「……ん?」

「なによ? どうかしたの?」

「いや、なんか指先に違和感が……」

 

 今読もうとしていたのはサンディ島――つまりはアラバスタで現在施行されている法律をまとめた資料だ。

 本というより、束ねて紐で括った冊子のそれだが、最初のページをめくった瞬間に点字のようなひっかかりを感じた。

 

(……針で細かく突っついたのか)

 

 これを用意した人物の顔を思い出す。

 眼鏡をかけて、自分がコミックで知る姿よりもまだ若い知将。

 海軍元帥、センゴク。

 

(穴が開くほどではない。透かしじゃないという事は配置か)

 

 一瞬毒を仕込まれたかと思ったが、どうもそういう気配はない。

 指先にしびれは感じないし、そもそも肌を貫いた感じもしない。

 

 めくってから灯りに透かしてよく見てみると、全て資料の文字の下から突かれている。

 一見滅茶苦茶な凸凹だが……。

 

(透かし……ではなかったか、左上から文字を拾えばセンゴクさんが使ってた手紙の暗号と同じ……いや、一部の表現がおかしい。以前のままの読み方だとフェイク情報に誘導される変則式か。読み取れるパターンは12通り、そのうちで意味がキチンと通るのは……面倒だな、んもぅ……うん、よし、この読み方ならば違和感はなくなる)

 

 センゴクさんが密かにメッセージを送ってきた。

 もうその時点で俺の脳内センサーがビカンビカン光ってアラームを鳴らしている。

 

 ふ、増えに増えた大仕事の数々を、それでも期間内で完璧にやり遂げたのになぜこうなるのか……っ!

 頼むからキチンと俺の人生に褒美というか報酬用意してクレメンス!

 

 えぇと、内容……は……――

 

 

 

 

「きゃぁ!? ちょっとなによ、いきなり腕引っ張って――」

「すまん! まさかそこまでとは思ってなかった!!!」

 

 とっさにヒナを引き寄せて後ろに庇う。

 来る!

 

 

―― 刃銃(はがん)!!

 

 

噛猫(ごうびょう)!!」

 

 

 同時に薄い扉が斬撃によってズタボロに切り刻まれる。

 そのままこちらへと――ヒナごと狙っていた斬撃をこちらも斬撃で叩き落す。

 

 あっぶねぇギリッギリだった!!!

 

 ちくしょう、センゴクさんもうちょっと分かりやすく――したらそっちが危ないから仕方ないよね!

 だぁぁぁ、ちくしょう! これでそっちが得る物なんて大してないでしょーが!!

 

「……いいだろう。世界政府の意思は確認した」

 

 部屋に飛び込んできたのは、俺より少し年上の若い男だ。

 ……モグワの時にも見覚えがない。

 切り札的な奴か? 実際、後ろに控えている連中よりかは練度が高い。

 

(サイファーポール。海兵の気配は……一か所に固まってる。協力してるんじゃなく、捕らえられたか)

 

 となると、筋書きも大体読める。

 まだ暗号文を全部読み解いた訳じゃないけど……面倒な事になったな。

 

 

「開戦だ」

 

 

 

 

「来い」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「クロ達が出航するレッドポートの門は西の海に向かう物ではない。新世界側のものになる」

 

 時を遡る事数日前。

 

 クロ達が出航したのを見届けた後のパンゲア城内部にて、元帥センゴクは重苦しい顔で特別大将であるゼファーに向けて命令(・・)を告げていた。

 

「我らに下された命令は、分断された『黒猫』の本隊を強襲。幹部、並びにニコ・ロビンの身柄を確保することにある」

「馬鹿な!!? それは卑劣極まる騙し討ちではないか!! 海兵達が納得すると思うのか!!?」

 

 ここが聖地――つまり天竜人が住まう地であるにも関わらず、壁を破壊しかねない程の力で拳を叩きつける。

 兵士が小さな地震かと勘違いする程の揺れが収まるのを待って、元帥センゴクは言葉を続ける。

 

「世界政府の謝罪と多大な賠償をもって、我らの対立は解消した。解消せねば示しが付かぬのだ」

「その最大の功労者が彼ではないか!!」

「わかっておる! だが、奴が世界政府との別離を選んだのは紛れもない事実なのだ!!」

「その世界政府を守るために『金獅子』相手に戦ったのは誰だ!! 海兵のために命を懸け続けたのは誰だ!!?」

 

 階級が絶対である海軍において、本来ならば大将が元帥に逆らう事は許されない。

 だが今、特別大将であるゼファーは、それこそ元帥を絞め殺しかねない程の剣幕で詰め寄っている。

 

「……前に言った通りだ、ゼファー。クロは価値を示しすぎた。だから政府は奴を恐れ、今こうして強硬手段に出ている」

「そのような事を繰り返せば、天竜人はいずれまた政府に属している人間すら玩具にする! 帰ってきた海兵達の姿を忘れたか!! 帰ってこられなかった海兵達の犠牲をなかったことにするのか!!?」

「だからこそ、黒猫の一味を全員確保せねばならん! 政府ではなく海軍の手で!」

 

 海軍の手で、という言葉にゼファーの勢いが一瞬止まる。

 その隙を突くように、センゴクは言葉を続ける。

 

「政府も……少なくとも五老星はクロの価値を分かっておる。これ以上クロが影響力(・・・)を広げる前に潰したいのだろうが……だからこそ、今海軍が彼らを掌中に収めねばならん。クロやニコ・ロビン……特に――親衛隊の者達は……」

「――っ」

 

 元々親衛隊は、海兵奴隷として売られる所だった存在。

 つまりは、天竜人が買い求めた人間である。

 

 それが手元を離れ、海賊となった今、再び彼女達を求める事になんの不思議もない。

 

「……黒猫への奇襲攻撃命令は、覆らんのだな?」

「そうだ」

「天竜人が、彼らを求めているのだな?」

「……お前もガープから話を聞いているだろう。裏で『黒猫』に対しての勝手な競りが開かれておる。政府よりも早く動かねばならん」

「……聖地から一度出したのは、天竜人達から一度遠ざけるためか」

「そうだ」

 

 センゴクの説明に、それでも納得が行かないのだろう。

 歯が砕けかねない程に噛みしめ、それでも最後の一線を踏み越える事をゼファーは良しとしなかった。

 

 それは海軍本部特別大将としての立場があるから……ではなく。

 

 

―― 分かりました。

 

 

 つい先ほど別れた、海賊と交わした言葉があるからである。

 

 

―― この先の航海で何が起ころうとも、必ずヒナ伍長を無事に西の海までお守りいたします。

 

 

 海賊との間に交わした、

 

 

―― 代わりと言ってはなんですがお願いしたい事が――。

 

 

 男の約束があった。

 

 

「クロは……彼は、こうなる事を……?」

「……想定の中にはあったのだろう。以前、その場合を聞いた時に言っていた」

 

 ほんの少しだけ落ち着いたことで、ゼファーはようやくセンゴクの様子を冷静に見る事が出来た。

 手が、強く握りしめられている。

 血が滲むほどに。

 

「気にするな、と」

「――――っ」

 

 ふと、彼に付けた若き伍長の姿がゼファーの脳裏をよぎる。

 

「ヒナ伍長を彼に付ける事に、なぜ許可を出した」

「…………」

「彼の人柄上身の安全はある程度保障されていて、かつ彼が包囲網を切り抜ける事があっても海軍とのパイプになりうると踏んでか!?」

「……そうだ」

「センゴク!!」

 

 それを見ても――いや見たからこそ、ゼファーはついに我慢が利かなくなった。

 気が付いた時には、元帥センゴクの胸倉をつかみ上げていた。

 

「なんなのだ……我らは……っ」

 

 上官に対する暴行は海軍に於いて重罪である。

 にも拘らず、元帥センゴクはなにも言わずにゼファーを――多くの海兵達が『先生』と呼んで敬意を示す男の顔を静かに見つめ返している。

 

「我ら海軍は! 一体何のために戦っている!!?」

「……世界の……」

 

 

「世界の秩序のためだ……ゼファー」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 それなりに立派な調度品で整えられた大きな執務室の中で、一人の男が机に向かっている。

 だが、その男はなにか仕事をするわけではなく、ひたすら酒を呷っていた。

 

「ちくしょう、上も無茶苦茶言いやがって……これならクロがいた時の方がマシじゃねぇか……」

 

 普通ならば泥酔しているだろう量の酒瓶が転がっているが、飲み干している男の顔は多少赤くはなっていてもそれだけである。

 

「くそ……。全然酔えねぇ。いい酒のハズなんだがな……」

 

 さらに一瓶、ラッパ飲みにして空になった瓶を乱暴に机の上に放り投げ、部屋の主―― スパンダインは次の瓶を手探りで引き寄せる。

 

 

 

「恨むんじゃねぇぞ、クロ……俺達は世界政府の役人で……」

 

 

 

「お前は海賊なんだ……!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「政府に可能な限り貢献した結果政府に恐れられるって……ホント、俺がやったことってなんだったんだ……」

 

 あぁ、いや、そもそも俺海賊なんだよなぁ。

 海賊ならそれもしゃーなしか。

 

 ま、取るべきもんはおおよそ取ったとも言える。

 政府がこうして動いたのも、俺と俺の勢力を恐れての事。

 俺に――多分ダズ達の方にも――ドデカい抜き打ちテストが飛んできたとはいえ、影響力の拡大という点では悪くないだろう。

 

 なにより、海軍がこうして手を出したということは政府との連携は形だけでも元に戻ったということだ。

 これならば急激に治安がこれ以上悪化するような事態にはならないだろう。

 

 悪くない。

 

 うん、悪くはないんだ。

 

 俺やダズ達がこの試練を乗り切れば……だけど。

 

「ふんっ!」

 

 施錠された部屋を蹴り破ると、縛られて転がされている海兵達がいた。

 

(比較的俺と関係のある兵士ばかり、か。さて、この仕込みはどっちの意向なのやら……)

 

 まぁ、俺を本当に潰したかったのならば海兵も政府寄りの人間を揃えるだろう。

 となると……

 

(センゴクさんの仕込みか。暗号の解読もまだ終わってないし、状況を整理しないと――)

 

「クロ!」

 

 甲板で見張りをしていたヒナが飛び込んでくる。

 

「来たわ、海軍本部船!」

 

 あぁ、やっぱり。

 

「数は?」

「10隻!!」

「気合い入れてきたなぁ……」

「どうするの!?」

「とりあえず、海兵達を解放してやってくれ」

 

 迎撃用意するにも、ここに残された海兵達の意思を確認しなければならない。

 それにしても――。

 

(何度も何度も何度も考えてみたけど……政府、海軍双方にデカい旨味がない。攻撃に踏み切る理も利もない。なのにこうして奇襲に踏み切った。……まず、実際にリスクを負うことになる海軍の意向ではない)

 

 となると政府の意向となるが……五老星がこんな真似に踏み切るか?

 

(色々思うところはあるし、根っこの思想が遠く離れた物で99.9%俺とは相いれないという確信はあるが……少なくとも目的を実行するためのアレコレは俺の思考でも追いつける。実行に移しちゃう所で心底ドン引くけど)

 

 だけど、俺が見てきた五老星はここまで直接的な手を打つ人間じゃない。

 特にウォーキュリー聖は、もっといやらしい手を打つはずだ。

 

(まぁ、これでほぼほぼ確定かな……)

 

 おそらく、間違いないハズだ。

 世界政府には、五老星のさらに上に立つ明確な上位者が……いわば天竜人の王様(・・)がいる。

 

 それが何者か、何が目的なのか……はひとまず置いといて。

 

「問題なのは、この作戦が何から生まれた物なのか」

 

 俺に見えていない利や(ことわり)であるならば、乗り越えた後にそれを知ることが出来れば対策を組める。

 

 だが、もしそれ以外ならば――

 

「思想か……それとも」

 

 それとも――感情か?

 

 そうであるならばかなり不味い。

 しかも、それが文字通りの不変の……永遠の存在であるならば尚更、解決の糸口が見えん。

 

 さぁてどうしたもんだべか。

 

 

「まぁ……とりあえず」

 

 とにかく状況確認だ。

 今いる海の様子や、積まれている物資も把握できなければ作戦の練りようもない。

 まずは――

 

「今のうちにコイツら適当に浮きでも付けて海に叩き落としておくか」

 

 船内のアチコチの壁にめり込んで動けなくなっているCPの面々に目をやる。

 なんかもう、年上から俺と同い年、俺よりも少し幼い奴とかいるけど……なんかごめんね?

 

 動きは確かに中々鋭かったし、多分スパさんの切り札だったんだろうけど……。

 

 さすがにミホークとレイリー相手の同時スパーリングにはほど遠いわ。

 

「恨まないでくれよ? スパさん」

 

 

 

 

 

「なにせ、俺は海賊なんでね」

 

 

 




今年もよろしくお願いします!
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