[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第十話 車は暴走しました。

「どうもォ!ゴーレムガラスですゥ!注文の品を届けに来ましたァ!」

太陽が空の頂点に差し掛かる中、町の薬屋の裏でゴツイ声が鳴り響いた。

声の主は昨日マタルがガラス瓶を注文した工房のゴーレムである。

「どうもォー!ゴーレムガラスでさァ!」

裏口の前で改めて呼びかけた。しかし辺りには近所から世間話が聞こえるだけ。家主の返事は帰ってこない。

「マタルさん!留守ですかァ!留守なら留守と言ってくださいィ!」

荷物を入れやすい様に大きめに作られた戸口をバンバンと叩き一旦手を止め返事を待つ。だがいつまでたっても沈黙は続く。

「まさかァ…またですかァ!マタルさん!」

注文の品を工房から直送するためにゴーレムは月に一度の頻度でここに立ち寄っている。それもあって大体の滞在時間は把握できており彼自身それに当たるように赴くようにしていた。しかし以前それでも返事がないことがあった。たしか薬の作成に夢中になっていたとかで。

「入りますよォ!マタルさん!」

ゴーレムはドアを強引に押し開けた。横からは開け放ったドアが壁に当たり大きな音を上げたのが察しられた。力加減を間違えて強く開けてしまったようだ。マタルのようなアンデット同様ゴーレムもこの手の力加減には尊い。こうして思いっきりドアを開けてしまうこともままある。この場合は薬の作成中でも音に気付いて家主がやってくるはず。…なのだがそれは一向にない。

「なんだァ…留守かァ…珍しいなァ。」

「まてまてまてぇい!」

外の方から玄関のゴーレムに怒鳴りつける声が聞こえてきた。大柄な体を揺らして振り返ってみると依然は見かけなかった住人、スティーブが目に入った。向こうは警戒心を滲み出さんばかりにとがらせている。

「裏口のドア思いっきり開けて…強盗だなお前!今うちは貧乏なんだぞ!」

ゴーレムに面識が無いスティーブは彼を強盗と勘違いした。

「違いますよォ、注文の品の配達ですよォ」

もちろんゴーレムにはそんな目的も無いので配達員だと弁解する。

「んなこといって油断させる気だろう!人形にしては頭が回るな!」

「ちょっと待ってくださいよォ。裏口の横にガラス瓶を乗せた荷車があるじゃないですかァ」

「だまれぇ!抵抗しないなら床に伏せろ!」

だがスティーブはゴーレムの弁解は一切聞かず臨戦態勢を取ろうともする。敵とみなした待遇は更にヒートアップしていく。だがそのとき

「いやーどうもどうも、家の居候が失礼しました」

奥の方からマタルが呑気な様子で仲介に入ってきた。

「…おいマタル、強盗の前で何をしているんだ」

「いやいや、この方はこの前の工房の職員だよ」

「あ?…まさかー」

「毎度配達に携わっていますゥ」

「んなわけ―」

「外を見れば荷物があるはずだよ」

「………な」

気まずそうにスティーブは戸口の横に目を向ける。たしかにそこには木箱を乗せた荷車があった。木箱には割れ物を示す瓶のマークがおしてありここに住んで間もないスティーブでも中身がガラスの瓶であることが察しられた。

「…あーすまなかった」

「わかってくれればいいんですよォ」

「よかったよかった、これで丸く収まった」

「いや、まだだ」

ゴーレムの疑いは晴れたとしてまだスティーブには気になることがあった。

「お前業者の応対もせずに何をしていた」

「あーいやー、警官隊だと思って」

マタルはゴーレムのことを『警官隊』だとおもって居留守をしようとしたらしい。だが買い物から帰ってきたスティーブと注文の品を届けに来たゴーレムとの衝突を聞いて今に至るとか

「ああ…あいつらか…」

スティーブは『警官隊』の名前を聞いて青ざめた表情をしている。

「あなたたちィ!?何かしたんですかァ!?」

『警官隊』とは一言で説明すると『町の治安を守る組織』のことである。それに関して今のような反応を示したとすれば『敵視している』、つまり犯罪を犯した、または犯そうと考えているのが基本になってくるだろう。

だがゴーレムは付き合いの長いマタルにその例が当てはまるのかどうか疑問に感じた。

「何をしたって言えば…ただ単に『車』のテストをしただけだが」

「その『車』が問題だったんだよね…」

「なんだァ…てっきり何か盗んだのかとォ」

「なんか変な誤解をしているようだな…」

「これから詳しいことを話すよ。木にぶつかった気分で聞いてくれ」

「自分なら木は薙ぎ倒しますがァ…」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

《今日の朝、俺達は荷車を改造して作った自動車の動作テストをしていた。》

《ジドウシャって…今町で噂になっているアレですかァ?気になりますねェ》

《ああ、公道でそれを走らせたんだが…》

《走らしたんだけどねぇ…》

 

「ヒャッハー!動作は良好!速度は最高!」

「うわわわわぁ―そろそろ止まろうよ!この先はカーブだし!」

「な…!カーブ!?先に言え!」

 

《カーブってことは早く止まらないとォ》

《木端微塵になるんだよな》

《そうなっていないということはァ、無事止まったんですよねェ》

《いやー無事には止まらなかった…実はな…》

 

「ブレーキが掛からねえぞ!」

「止まらないのかい!」

「そういうことになるぞ!…このままだと建物に突っ込む!」

「ぎゃああああ!建物の修理費があああああ!」

「命を先に考えろよ。」

 

《ブレーキの動作不良が起きてな》

《いやーあの時は走馬灯が流れた》

《屍がそれを言うな》

《結局そのあとどうしたんですかァ?》

《どうしたと言うとね…》

 

「くそっ!とりあえず飛び降りるぞ!命が大事だ!」

「いいや!お金だね!何としてもコレを止めるんだ!」

「命だ!」

「金だよ!」

「命だぁぁぁ!」

「金だよょょ!」

 

《…口喧嘩になったんですかァ…》

《まあ、な》

《恥ずかしい限りだよ》

《このあとどう収拾がついたんですかァ?》

《あー、それがなぁ…》

 

「バカ野郎!もうカーブは目の前だぞ!」

「なああ!何とかしてくれぇぇ!」

 

      ガシャン!  

 

……

………

「目標の停止を確認!B班は交通整備の方に加勢に出ろ!」

「「「「「「了解!」」」」」」

「え?」

「あ…」

 

《警備隊っていうかゴーレム達が束になって止めてきたんだよな…》

《背中に刻まれていた青い狼のエンブレムは忘れないよ…》

《え…止められてェ「ヤッター」ではないんですかァ?》

《止められた後が問題なんだよ。なんか上官みたいな奴が…》

 

「君たち、怪我はないか?」

「ああ、どこにも」

「元々丈夫な身体なので」

「では『公道での速度違反』および『未許可の車両の使用』の関係で署まで同行を願おう。」

「…どういうことなんだ?マタル?」

「分かりやすく言うとタイーホだよ。逮捕」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「捕まったんですねェ…」

ゴーレムが同情のまなざしでそう答えた

「そういうことだ。この後は署とやらで『免許』やら『許可』やらなんやらくどくど聞かされてな…」

「スティーブくんの件もあって大体のこと見逃されたんだけど…」

「『反則金』とか色々言いつけられてお金をぶんどられた」

「おかげで貧乏になりました」

「ついでに『整備命令』で15日以内に車を指定した水準とやらに直して提出しないとだしな」

どうやらスティーブが作った車が法に触れていたらしく過料と整備命令が言い渡されたらしい。その結果家計が火の車になったとか。

「だからスティーブさんはパーツを買いに出ていたんですねェ…」

そんなわけでスティーブは整備のパーツを買うために外に出ていて、

「また何か難癖つけてお金盗られそうで怖いよー」

マタルはマタルで今回の件を気にして閉じこもっていたらしい。

「警官隊はそんな組織じゃないですよォ」

「一応そうなのか?ヤクザじみていたが」

「それはどう考えてもあなたの偏見ですよォ」

「いーや、あれは税金をもっていくだけの集まりだよ」

「…!やっぱりそうなのか!」

「二人とも落ち着いてくださいィ、今は現状の改善をすることを考えるべきではァ?」

「「それもそうですね」」

話が車から警官隊の善し悪しにそれてきたのでゴーレムはここぞとばかりにストップをかけた。

二人もそれに納得している。

「というわけで注文の品を搬入しますね」

「あ、忘れていたね。長話に付き合わせて悪かったね」

「いえいえ、サボる口実になりましたよォ」

「働く者としてそれはどうなんだよ」

「わー、親方にも同じこと言われますゥ」

 

そうしてほんの数分間、何気ない会話が交わされた。

会話の後は昼の薬屋の裏でまたゴーレムが動き出すのであった。

 

 






規制云々にボロが出ていますが…異世界だと違うと思ってくださいな


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