[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第十二話 ハンターになるまで

「うーむ、この本は書いていることが初歩的だな…」コソコソ

「私はちんぷんかんぷんだ」コソコソ

『ドラゴン狩り』に必要な特殊ハンター資格を手に入れるための試験の受験手続きを済ませたスティーブ達は、さっそく勉強にと朝から町の図書館に赴いていた。

ただ二人共々同じ内容の本を読んでいるわけではなかった。

スティーブは資格を持っていなくても前の世界で散々モンスターと戦ってきたベテランだ。狩りのノウハウがわかっている今本に求める内容も入門編じゃ済まないようで本を本棚から持ち出しては不満を訴えすぐに仕舞う作業を繰り返している。逆にマタルは元が薬屋であってかスティーブ程狩りに関する知識も浅く一から理解するのに苦労していた。

「なんだぁ?『一ヶ月で君もドラゴンハンターだ』って…一ヶ月でなれる簡単な仕事なら死者なんかでないわ!」ドカーン

「スティーブ君、ここは図書館だ。静かにしようか」コソコソ

「おっと失礼、つい大声を出してしまった」コソコソ

「全く…」コソコソ

そういうと気に入らなかった本を棚にもどし、タイトルが違う本をいくつか持ち出す。本を両手に抱えてテーブルに着くとさっきと同じように本のページをペラペラと捲って行った。

「ふむふむ、こっちの本は当たりだ。ハンターになるまでの過程が表で分かりやすく記してある…」コソコソ

「おお、後でこっちに回してくれ…」コソコソ

目当ての本が見つかったようでスティーブは何度も読み返され折り目のついたページに食いついていた。

「受験手続は済ませたなその後は…講習を受ける…」コソコソ

「参加できたらいいね…」コソコソ

「なになに、講習は防衛隊の壁外調査部が開いている…防衛隊ってなんだ?」コソコソ

「ページの下に書いてあるじゃないか…警官隊の親戚だよ。レッドドラゴンから此処を守っているんだ。」コソコソ

マタルに示された補足を読んでみるとたしかにそんな内容が書いてあった。

前の世界の村でも時々出没する強盗から家を守る役職以外にゾンビから村そのものを守る役職も存在した。まあスティーブの村の場合はゴーレムが配備されていなかったからか規模が小さかったためか彼一人が両方請け負っていてもなんとか安全な状態を保てていた。(ガストに対する防衛機能は備わっていなかったが。)

だが防衛目標が今いる『町』のような大規模な物になってくると警備も防衛も1人で請け負う訳にはいかなくなる。

そんなわけで『警備隊』と『防衛隊』二つの組織でもって役割分担をして安全を確保している訳だ。

「…警官隊の親戚か…いい予感はしないな」コソコソ

「本質は全く違うから安心していいよ」コソコソ

ただスティーブとしてはあまりいい思い出の無い警官隊と関係した組織となるとあまり好意的に感じなかった。

だが本題から逸れたと感じてその考えも思考の隅に追いやりハンターのプロセスの表へ視線を戻した。

だがその先にはあまり考えたくもない文章が一つあった。

「ならいいが…講習の受講料は…10000E(エメラルド)!?」コソコソ

「やっぱり同じ穴のムジナだね!金はごっそり持っていく!」ドカーン

「おい、静かにしろと」コソコソ

「失礼、ついカッとなってしまった…」コソコソ

「…ん?受験者から習うのもいいと…」コソコソ

結局図書館で分かったことはレッドドラゴンの生態とハンターになるまでのプロセス、そしてお金が大量に必要であることだった。

お金の問題大本はボッタクリともいえる講習の受講料である。講習の工程は飛ばしたいところその中に限って試験において重要な事項が含まれているとか…。

しかしそれでもマタルは現在の金銭事情か持前の金欲からか「消費は最低限度にしたい」と意地を張っている。

というわけでスティーブ達はしょうがなく心当たりのある『受験者』…

「なんだ噂のあんた達か」

酒屋の元ハンター、赤鬼を訪ねることにした。

赤鬼はしかめっ面でスティーブ達を歓迎してきた。

「いやーオヤジ、昨日話していた職に転職しようと思ってな」

「ああ、あれか。本当にやろうとしているのか…」

「そんなわけで色々教えてほしいんだが、…受講料高ぇんだよ」

「確かに高いわな。ただオレは酒の仕込みで忙しい、講習はできない」

「「え?」」

スティーブとマタルは思わず間抜けな返事をしてしまった。

それもそう、スティーブ達の行くあてはここくらいしか無かったので講習に関してもつい「赤鬼が請け負ってくれる」と考えていた。ただそれはスティーブ側だけの話であって肝心の赤鬼の返事は変わってくるわけだ。

それを目の当たりにしてスティーブは浅はかな自分を責めると共に講習をしてくれない赤鬼に怒りを覚えた。

だがマタルにはまだ策があるようで表情は変えていなかった。

「そこをなんとかお願いしますよ」

「忙しいものは忙しい、帰ってくれ」

「いやー何でもしますから」

「だから帰れといっている。…じゃないとお前ら二人酒屋のメニューにするぞ」

「…」

マタルが粘り強く交渉をするもなかなかOKを出してくれない。しかも赤鬼に至っては今度は死刑宣告も下してきた。

これでは難しいとスティーブも流石に感づき足を帰りの方へ向かわせた。

しかしマタルは更に交渉を進める。

「…コレ家の秘蔵のワインなんですが…」

「ん?」

そういうと懐から赤いワインボトルを取り出した。そう、マタルの考えていた策というのは物で釣るということである。

「年代物のワインですよ、それもかなりの」

「オレを騙そうとでもしているのか…」

そう言うと赤鬼はボトルをマタルから奪い取り爪でコルクをキュポンと抜き取った。そして開いたボトルの口を巨大な鼻に近づけ匂いを吟味する。

すると納得したといわんばかりに一人うなずき表情を緩めた。

「なかなかの品だな、豚。中に入れ」

そういってまだ開店していない酒場のドアを開けた。

スティーブからはマタルは口元を一瞬だけ吊り上げたように見えた気がする。

なにがともあれ極意を伝授してもらえるようだからラッキーだ。

そう考えマタルと共に酒場に入ることにした。

「おい人間、お前は入れと言っていない」

「へ?」

「お前は粘り強く交渉もせず退こうとしただろう。」

ギクリとスティーブは心の中で擬音をたてた。そしてそこまで赤鬼は見ていたかと今感じて歯を食いしばった。

「まあまあ、私がきっちり頭の中に叩きこんでくるから」

「お、おう」

そう言った後マタルは戸口をくぐっていく。そしてその後ろ姿も間もなく閉ざされた木のドアで見えなくなった。

もちろん店内に入れなくとも壁に耳を当てれば向こうで何をしているかがわかるはず、たださっきの予想外な交渉のように赤鬼が予想に反して外の方に意識を向けているかもしれない。

そんな時イタズラをする子供のように怪しい動きをしていたら鬼の気性の荒さからして何をされるかわかったもんじゃないのでしょうがなく戸口の前で待つことにした。

……

………

一時間ほど待ったか、昼も近づき酒屋の前の通りは人が多くなってきた。だが戸口からは何も出てこない。

それに代わって自分の腹が鈍い音を出し始めた。

「あー腹減った。」

旅をしていた時、特に戦いに出ている時や遭難した時は一日三食になんてありつけたものではなかった。ありつけたとしても干からびたパンなど粗末な物、空腹には慣れている方だった。

だがそんな空腹に拍車をかける物が近くあった。

「フライドポテトはいかがですかあああああああああああああああああああああ!」

炎の精霊ブレイズが視線の先で屋台を開いていた。

熱血的な掛け声のためか昼近くの空腹のためか道を歩く人は次々と足を止めていく。

「うるせえ…暑苦しい…たかがポテトだろ…」

空腹が増すのでスティーブは人ごみから目を背け酒屋の漆喰の壁を見るだけにした。

自分は腹が減っていない

自分は腹が減っていない

自分は腹が減っていない

そう暗示をかけながら屋台への誘惑を我慢する。

だが道行く人がそれを買っていくが揚げたての香を運んでくるがためにそれも効果を成していない。

「そ…そうだ…鼻をつまむんだ…」

火事の際に煙を吸わないよう口元を隠すようにして嗅覚をシャットダウンした。

しかし

「いや~このフライドポテトおいしいね~」「うむ、塩味も申し分ない」

嫌なことに味の感想も述べていく通行人もいる。

「く…そうだ、ここは砂漠だ…フライドポテトなんてない…」

今度は瞼を閉じ頭の中に砂漠を思い浮かべた。昔そこでオアシスを見つけられず限界状態になったことがある。その時は空腹はおろか身体を動かすこともままならない状態だった。

そんな思い出を再体験することでフライドポテトを我慢しようと言うのだ。

しかしブレイズはそんなことお構いなしにポテトを売りさばいていく。

「ポテト揚がりましたぁあああああああああああああああ」テッテッテレレー

スティーブの空想の中の砂漠にはなぜか揚げたてほやほやで湯気の上がったフライドポテトが出現した。イメージから消し去ろうと別のことを考えようとするがポテトはトッピングの塩一粒一粒が目視出来るほどそのビジョンがはっきりしてきた…

「な、なんのこれしき…」

そして腹からはまた一つ鈍い音がした。

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「あー罠の種類多すぎるよ…」

ドアからはげっそりした様子のマタルが出てきた。どうやら赤鬼の講習は終わったようだ。その印か手にはいろいろな事項が書かれたメモ帳が握られていた。

「おーおつかれ」モグモグ

「…スティーブ君…何を食べているんだい…」ピキピキ

戸口の横に座るスティーブの手には最初には無かったフライドポテトが握られていた。

「フライドポテトだ、この前拾ったコインで買ったぞ」

スティーブはしれっとした様子でそう答えた。

「お金は別に…いいんだけど…」

「どうした?向こうで何かあったのか?」

「…こっちが色々勉強している間に…」

「おお、なんか顔色が悪いぞ」

「……………向こうで学んだこと……しっかり教えてあげようか?」ゴゴゴゴゴゴ

「おい…なんか目が光っているぞ…おい、ひきずるんじゃない!うわ!ポテトが!俺の買ったポテトが―」

ムスッとした様子のマタルはスティーブを本人の静止を無視して引きずって行った。第三者から見た様子はイタズラっ子強制連行する親に近いものに見えた。

それを戸口から見ていた赤鬼はこうつぶやいた。

「あの豚に教えたことは…確か狩猟に使う罠と武器の種類と…後はオレがドラゴンに使った骨をも砕く格闘術だな…外で芋を食っていた奴はどうなったことやら」

赤鬼は意味深な笑みを浮かべて開けっ放しの戸口を閉めた。

 




※散らばったポテトはこの後スタッフがおいしくいただきました。

この時期はサツマイモも採れてきて…焼き芋…ふかし芋
…ついでにフライドポテ うっ!頭が!

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