[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第十三話 工房でも働いています

スティーブらは個々で目的を持ってハンター試験に臨もうとしていた。

だが試験当日まで勉強漬けになっていたわけではない。

「おーい、新入り!こっちの機械をなんとかしてくれー!」

「おう、わかった」

 

「マタルさん!炉にブレイズロッド入れてくれ!」

「わかりましたー!」

 

ハンターになるために必要なのは資格だけに限らなかった。ドラゴンを狩るための道具も必要なのである。

それは武器や罠、怪我を防ぐための防具だ。だがその道具は高額なために今の薬屋の経営では用意することはできない。

それもあって以前ガラス瓶を注文していた工房『ゴーレムガラス』に雇ってもらっていた。

こちらの事情に明るい工房はスティーブを期待のメカニック、マタルを貴重な火仕事の要員として受け入れてくれた。

「こりゃ知らない機構の装置だな」

「なんとかなりそうかい?」

「うーむ…ちょっと道具を持って来てくれ」

しかし仕事はそう甘くはなかった。機械に関しては詳しい方のスティーブでも今の世界の機械とは初対面だ。前の世界には無かった機構が盛り込まれていたりと知識が生かせない場面もある。

それに

「おーい機械係!荷物の詰め込み手伝ってクレ!手が足りないンダ!」

「あ、はーい」

力仕事もちゃんとある。

「おう来たナ、この箱を荷車に運んでくレ」ズッシリ

「うわっ…相当な量の荷物だな…」

人外だらけの世界のため従業員に求められる体力もワンステップ上がっている。その一つとしてか今運ぶ荷物も軽くて100㎏あったりと明らかに桁外れの重さを持っていた。明らかなハードワークである。

「う、お、重い…」ガタッ…ガタガタ

「新入り、大丈夫か?」スタスタ

「だ、大丈夫だ…問題ない…」ガタ ガタ ガタ ガタ

ゴーレムやゾンビは簡単に運べるものでも人間人間だと限界がある。身体能力の高いスティーブでも苦労する場面が多々あった。

「おーシ、助かっタ!出荷も間に合いそうダ!」

「はいはいどういたしまして」

「お…おう」

だがこうした作業を終えた後、荷車の後ろ姿を眺めるのも悪くない。

そうした達成感にスティーブは浸るのであった。

………

……

「よーし新入り!休憩時間だ!」

「おお、ここにもちゃんと休憩があるのか」

「オレだって元は人間だ。休みだってちゃんととる」

「…元が人間か…」

「何ほざいているんだ、休憩室いくぞ」

ハードワークなこの職場にもちゃんと休憩はあった。

大体昼と三時頃の二つ。

職場で主に働くのはゾンビやスケルトン、彼らの身体は一度死んでからまた生き返った『不死身の肉体』だ。その為いくら働こうと関節は痛くならないし体調を崩すことも無い。ただ『精神』そのものは人間のままで変わっていない。長時間の単調な作業は精神に負担がかかるらしいとか。

その精神的疲労を癒すために今のような休憩時間が用意されている。

「いいよなーゴーレムは。精神疲労だって無いんだろ?」

休憩用の椅子に座ったゾンビが今だ忙しく動くゴーレムに声をかけた。

この職場にはゾンビだけでない。砂を届けた時や瓶の配達に来た彼らのようにゴーレムもこの職場にいる。そしてそれらはほとんど休み無く働いていた。

ゾンビの場合それが気になったからか、心配しているのか、おそらく前者の理由から呼び止めたのだろう。

ゴーレムは動きを止めてこちらを向いた。

「熱が溜まるとアンタで言う『思考』とやらが働きにくくなる。後で休憩をとル」

そう答えると規則的な足取りで持ち場の炉に戻って行った。

「いやーどこの機械も面倒なもんだ…今日でどれだけトラブルが出たか」

ゾンビは足を前に放り出し、気怠そうにつぶやいた。

こちらの機械を修理すればあちらの機械が故障する。そんなモグラたたきをずっと繰り返していたので疲れるのも無理は無い。

「見た感じ、結構使い込んである機械だな。全機構を新しいレッドストーン型に置き換えたらどうだ?」

機械はどれも油が差してあり、錆も落とされていたりと手入れはしっかりしてあった。ただところどことに摩耗した箇所があったりと機械に寿命が訪れているのが見て取れた。

それに見かねたスティーブはゾンビに「部品の取り換え」の提案をした。

「確かに悪くないな…」

考え込むような様子でゾンビは答えた。が、すぐに表情を緩めた。このゾンビは考え事が苦手の大胆な性格だ。きっと頭の中で立てていた機械の修理の構想が崩れたのだろう。

「あーもういいや、休め休め。このままだと俺達の頭がゴーレムになっちまう…ポーション飲むぞポーション」

吹っ切れた様子になると休憩室に設置されたデカい箱『ポーションマシン』に手を伸ばした。これはスティーブがマタルの監修の元で製作した後、世話になるということで工房にプレゼントした機械である。機能は原材料さえ用意すれば後はポーションを作ってくれる程度。

一見単純な機能であるが案外凄いものだ。

実は人の手でポーションを調合するのは簡単ことではない。

どれだけの量だけ素材を混ぜればいいか、どれだけ醸造させればいいか、

その見極めには知識と勘が必要だ。マタルならともかく工房のゾンビ達にとってはできたことではなかった。

だがそんな難しい作業をこのマシンはこなしてくれる。

そういうわけで今では従業員のよりどころになっていた。

そして休憩室にいるこのゾンビもその機械の虜になった者の一人だ。

「新入り、何か欲しいポーションあるか?」

「ああ、『即時回復』のやつを頼む」

「んなマズイ物よく飲めるな…とりあえずポチッとな」

ゾンビは気前よくボタンを押して機械を作動させた。スティーブが依然作ったエンジンと違い、作動させてもガ耳障りな音は出ない作りになっている。作成者の気遣いだ。

「…少しうるさいな」

「我慢してくれ」

ただ仕様上消すことのできない作業音もあった。耳を澄ませば聞こえてくる機械の中で瓶の転がる音もその一つである。、

確かに気になるといえば気になる音だ。だがそれで後どれくらいでポーションが出来るかを覚ることもできる。

スティーブはそんな設計ロスの響きを頼りにしていた。

「そろそろできるはずだ」

スティーブは椅子に座りながらそう伝えた。

「おお、マジか…本当にできたな」

ゾンビの耳に届くと同時に目の前の取り出し口からポーションが二つでてきた。手慣れた様子で瓶を取ると一つをスティーブの方へ放り投げた。

「おう、サンキュー」

そのを舞う瓶は、床に激突することなくスティーブの手に収まった。

「そんなわけで新入り、一つ聞きたい話があるんだが」

負傷のポーション片手に持つゾンビは唐突に話をきり出した。二人だけの休憩室は少しピリピリした空気になる。

「な、なんだ?」

いきなり雰囲気を変えた先輩に対してスティーブは間抜けな返事をした。

「…仕事中気になったが、随分とレッドストーンの機構に詳しいようだな…」

ゾンビは取り調べをする警官のような固い表情をした。

「そ…それがどうしたんだ…?」

その様子にスティーブはますます動揺する。

目の前の腐肉は、脚を組み威圧感を増させた。

そしてゾンビはスティーブに一つ踏み込んだ。

「一体どこでその技術学んだんだ?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

休憩室の空気が冷えるのと対照的に、マタルのいる炉の前は非常に暑かった。床の上には陽炎がゆらめいている。

「マタルさん、そろそろ休憩にしましょう」

「うーん、そうだね」

マタルは作業の手を止めると腕をうんと上に引き伸ばした。

強靭な肉体を持っていても慣れない作業は疲れる。

彼はそう頭に思い浮かべた。

「いやー助っ人にマタルさんがきて作業の効率も上がりましたよ」

「そうかい?燃料運んでいただけだけどねー」

マタルは一緒に働くゴーレムと共に休憩所へ歩き出した。他の作業に当たっている人もぞろぞろと休憩室に向かい出している。

どうやらみんなが一休みしようと考えているようだ。

「図体のデカい自分ですと工房を動き回るのも大変ですし、小柄なゾンビはこの時間帯はあまり勤務していませんから。ハッハッハ」

「おお、元薬売りも労働力になるんだね」

「ええ、もちろん。それにあのマシンも従業員の中では評判ですよ」

「あーあのマシンは大体はスティーブ君が作ったんですけどね…」

マタルは微妙な表情で受け答えた。

『あのマシン』とはマタルがスティーブと一緒に作った『ポーションマシン』である。

しかし一緒に作ったと言っても薬の醸造に関する点だけ関わっただけ。他は彼任せだった。

そしてその『彼任せ』の工程には摩訶不思議な作業があった。

「何故かレッドストーンを使っていたんですよね…」

「薬の材料ではなくて?」

「いや、機構の方に。普通歯車とかですよね…」

そのことを聞くとゴーレムは口をガチャンと開けた。表情の変わることのない鉄仮面からは何故か驚いている雰囲気が感じられる。

「…なんでその技術が…」

ゴーレムは神妙な雰囲気でそうつぶやいた。何か引っかかることでもあるのだろうか?

「いきなりどうしたんですか?」

「レッドストーン工学は大昔の技術のはず…」

マタルの横で絞り出すようにそう答える。

「…もしかして、スティーブ君ってとんでもないこと知っているのかな?」

「ええ、そのようで」

ゴーレムの反応から察していたが、その答えを聞いたマタルに『驚き』の二文字が浮かんだ。そしてスティーブ本人へ何者なのか改めて問いただしたいという衝動が走った。

ゴーレムは歩きながら話を進める。

「レッドストーンの技術は第二防壁建以前は繁栄していました。ですが主に使われるレッドストーンは枯渇資源…町の規模が大きくなるにつれそれの消費は大きくなり問題になりました」

「ああ、耳に挟んだことがあるね」

「薬の素材でもありますからマタルさんも無関係ではありませんしね…」

「そう言われてみればそうだね、忘れちゃいけないね」

「………薬屋営んでいたんですよね」

その言葉には飽きれるような雰囲気があった。

「ゲフンゲフン そのレッドストーンも問題はどうなったんだい?」

自分の思慮の浅さを見せてしまった、とマタルは感じた。以後踏み入られたくないので話をすぐに進路変更させる。

「当時簡単手に入った金属を材料に『歯車』や『エンジン』を使った技術が導入で解消されました」

「今工房で使われている機械はもしかしてその技術の…」

作業場のところどころに設置された鉄の箱へ目を向けた。

「ええ、うちの機械は枯渇問題の解決策として出された…歯車やエンジンのシステムを採用したタイプです」

「それがレッドストーン工学にどんな影響を?」

「歯車・エンジン式のシステムはレッドストーン式と比べてコストも安く構造も単純でした…その二つの差が、世代交代を許さなかったのです」

「…今の技術が優れていたからレッドストーンの技術が衰退していったんだね」

その事実にマタルとしては何かさみしいものを感じた。

ゴーレムも少しばかぢそんなオーラを漂わせている。しかたないとはいえ何かを失っているのは確かだ。

「…今では動物言うところの絶滅危惧種と化しています。この技術を今だ持っているのはこの町のご長寿をかき集めたとしもほんの一握りでしょうな」

「それをスティーブ君は知っている…前いた世界で知ったのかな?」

マタルは初めて対面した後、全く違う世界にいたことを聞いている。この町に来たのはほんの数日前、技術を知ったとしたら前の世界でのほうが可能性が高いだろう。

マタルはそう推理した。

「…それが本当だとしたら…ここの世界に存在しないレッドストーン技術を知っているかもしれませんね」

少し間を開け、ゴーレムはそう言った。

「な、なんだって!?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「学ぶって…普通に試行錯誤するだけだが」

ゾンビの直球過ぎる質問にスティーブはズッコケそうになった。

そもそもレッドストーンの技術なんて学ぶ必要はない。『入力』『伝導』『出力』をしっかりする、自動ドアをつくる場合『感圧版』『レッドストーンワイヤー』『ドア』これらをただ順番につなげればいい話だ。

その後はタネも仕掛けも何も無い。

そんなことを聞かれたばかりにスティーブは目を点にした。

だがゾンビはしつこく問いただす。

「おいおい…企業秘密って奴か?一杯奢るから教えてくれや」

ゾンビはスティーブの肩に手を置き詰めいるように問いただす。機械と接してきたからか単に気になるだけなのかは知る由もないがとにかくレッドストーンについて色々聞いてきた。

しかしスティーブにとってはわざわざ話すまでもない常識。面倒くさいので適当答えを返す戦法にでる。

「いやだからレッドストーン回路なんて常識中の常識だぞ」

「冗談言わないで素直に説明してくれよー」

「子供でも分かる機構だぞ…」

(脳みそが腐っているのか…コイツ)

スティーブは自分の目の前にいるのがかなりの低能だと感じた。ドアの開け閉めの手順と同じくらい単純かつ常識的なものなのにそれを本当に知らないとなるとそうとしか考えれないだろう。

だが次、その低能が発したに言葉に馴染みのないワードが含まれていた。

「何が子供でもわかるだよ、そんな古い技術ご長寿の方しかしらないぞ」

スティーブの思考は一瞬だけ停止した。

『古い技術』…『ご長寿の方しかしらない』…その異様なワードは前の世界で馴染みのないものだ。

もし本当のことだとしたら、その二つのキーワードが示す意味は…

レッドストーン回路がこの世界では限られた人しか知らないということだ。

「…レッドストーン技術は絶対に教えないからな」

希少なレッドストーンの技術を取り入れた機械を売れば一儲けできるかもしれない。

心の底で黒い物が渦巻く

スティーブは頭の中でその計画を立て始めた

だが

その目論見もすぐに崩れ去った。休憩室に第三者が現れると共に。

「おお、スティーブ君といったかね!我が工房での評判を聞いているよ!」

突然ドアの先からブレイズが現れた。

「お、親方!」

一緒に休憩室にいたゾンビはブレイズが現れた瞬間態度を一変させた。

このゾンビの反応から察するに目の前のブレイズはこの工房のボスなのだろう。

『ゴーレムガラス』という名前の工房なのに長がゴーレムではないのに疑問を感じたが今はそう考えていられる状況ではないだろう。

「いやー!君の知識を見越して私から頼みたいことがあってね!スティーブ君!」

「な、なんだ…」

ブレイズは畏まるゾンビを無視して話を続ける。

工房は彼の熱で炉の前のように暑くなる。

「レッドストーン工学をうちの従業員に叩き込んでほしい!」

「…oh」

『君の知識』と聞いて大体の予想はついていた。レッドストーンの技術を寄越せということだろう。

だがスティーブとしては教える訳には行けないものだ。

「あー、俺みたいな新人には流石に仕事が大きすぎる―ガチャリ「スティーブ君!君は一体何者だね!」

なんとか尻込みをしてごまかそうとした。

しかし

タイミングがいいのか悪いのか、休憩室の空気を気にもせずマタルが押し入ってきた。

「なんで君がレッドストーンの技術を!」

「…今度はお前か」

「ついでに私もいますぞ」

おまけとばかりにゴーレムもやってくる。

「さあ!スティーブ君!我が工房の従業員からの要望もある!ぜひ!ぜひだ!」

ブレイズはこの状況を好機と言わんばかりに交渉を押し進める。

こちらに有無を言わせないまま…

スティーブはブレイズにある種の手ごわさを感じた。

「新入り!」「スティーブ君!」「ぜひ!ぜひ!」「教えてくださいな」

そして最終的には休憩室の四人全てでかかってきた。

逃げ場はどこにもない。

「う、うわああああああああああああああああああ!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

こうしてスティーブはハンターになる前に工房で『技術長』の資格を手に入れた。

…というより押し付けられた。

彼自身この状況はどうしようもないと覚り、初歩的な技術だけ工房の人間に教えることにしたとか。

めでたし、めでたし

 




レッドストーン回路…自分はマイクラでは兵器の試作を日夜していますね…
みなさんはレッドストーンは何に使っているでしょうか?

ご意見、ご感想お待ちしております。
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