[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。 作:えだまミィカン
マタルは鬼から秘術を伝授してもらい
スティーブは技術長の資格を先に取得し
勉強漬けになって7日後
二人はついに試験当日を迎えた。
試験が行われる防衛隊本部ではいつもに増してあわただしい雰囲気に包まれていた。
今回の試験の内容は3つに大きく分けられる。
適性試験、筆記試験、技能試験、だ。
そして最初に行ったのは『適性試験』だ。
赤鬼は『身分証明書云々の書類や経歴さえキチンとしていれば大丈夫だ』と言っていたものの、スティーブの場合はその異世界から来たとうわけで経歴はメチャクチャ。
本人にとっては最初の門をくぐれるかどうかヒヤヒヤした状態だったが…結果なんとかすり抜けることができた。運が良かったと説明するしかないだろう。
しかし次の『筆記試験』は運任せでは進めない。
知識だけが頼りの関門である。
それもあって彼らは一つ目の試験のクリアを喜んではいられなかった。
案の定、現在行われている筆記試験では四苦八苦しているようだ…
殺風景な試験会場で羽ペンが紙の上を滑る音がいくつも聞こえる。
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そしてその小さな喧騒の中にはマタルとスティーブがいた。
現在彼らは筆記試験を受けているのである。
(わ、わからない…薬の醸造とはわけが違う…)
(ふあ~眠い、昨日の技術長の仕事とか面倒すぎるだろ…)
マタルは薬屋でハンターの知識は浅く、一方スティーブは昨晩の仕事が長引いたためか睡眠は満足に取れず脳が働かない。
そんな関係もあってお互いマークシートの上で石像と化していた。
筆記試験は有利とはいえない状況である。
しかしそれにめげず二人はテストに打ち込んでいた。
(レッドドラゴンの生態ね…お宝…じゃなくて無性繁殖…)
(奴の弱点は…前の世界にいた怪鳥なら腹だが…)
実際のところ受けるべきだった公式の講習は放り出し、資料集と教科書と体験本で培った付け焼き刃知識はあまり頼りにならない。
つい先ほど解いた問題も合っているかどうか疑問だ。
だが試験の問題自体はそこまで専門的ではない。確かにいくつか一般人にはわからないものもあるが『ドラゴンの生態』『ドラゴンの弱点』なら生物学などからも知識の応用が利く。薬剤師であるマタルもポーションを作る上で種族云々の薬の効果の違いなどから様々な生き物の生態を知る必要がある。つまりは生物学には精通しているということだ。それもあって先ほどの『知識の応用』で試験に取り組むことができた。
またスティーブも前の世界で狩りの知識を身に着けている。それも身体に馴染むくらいだ。危険を感じればとっさに身をかがめ、敵の癖を瞬時に見極める観察力を持っている。
今回は睡魔の妨害があるものの直感でもってその総合的に優れた知識を生かしていった。
だが抜け落ちた知識を他の知識で埋めるためには一つ問題があった。
彼らは書き進めても次の設問でペンが止まる、問題の答えを記憶と照合させる、頭の中でOKサインが出たらやっと次に進む、
スラスラと解かずこれを繰り返していた。
しかしその方法は、
「試験終了まであと五分になります。解答用紙の氏名、番号をご確認ください」
((ゲッ))
時間を味方にはできない。
ペンを置く者も多数出る中彼らはまだ設問に視線を走らせていた。
これを人は地獄というのだろうか。
終了時間は刻々と迫る。
しかし地獄には仏もいる
スティーブとマタルに好機とも思える瞬間が来た。
(負傷時の応急処置!?これはこちらの分野だ!)
(武器の管理だぁ?んなもん10年は続けているぞ)
丁度得意な問題に差し掛かったのだ
二人は一気に問題を解いていった。
試験場には数分前に増してペンの音で五月蠅くなる。
(この怪我だと…切断だ!)
(砥石は油砥石に…)
時間は残りわずかだ
(うわあああ、時間を止める力が欲しい…)
(もうすぐ終了だな、とりあえずこの問題だけでも…!)
問題はあと3つ
(もう直感だよ!)
(砥石!グラインダー!)
そして1つ
二人はペンと頭を今までにないくらい動かした
マークシートにはジワリとインクが染みこむ
脳では糖分が大量に消費されていく
「試験終了!」
その号令と共に会場の引き締まった空気はほんの少し緩んだ。
二つの席からは何故か息切れが聞こえたのは試験会場で少し有名になった。
………
……
…
受験者の待機室にスティーブらはいた。待機室には他の受験者もいるため喧騒に包まれていた。酒場に似た雰囲気も感じられる。まあ酒場のようだと言っても酔っぱらって床に倒れこむ者はどこにもいないが。
備え付けのベンチに座るなり、壁に寄り掛かるなりそれぞれモラルの範囲内で部屋に滞在していた。
「うわーうまくできたかなー」
マタルは顔を引きつらせてそう答えた。いつもの陽気な感じられない。
おそらく試験の結果が心配なのだろう。一週間仕事の合間には必ず参考書を読んでいたように勉強量は格段に多かったのだが未だに合格できるかどうか確信が持てないのだろう。
「大丈夫だ、いざとなったらこっそり壁外にでて…」
「今度は防衛隊が待ち受けているよ」
「…工房でまた働こう」
スティーブもまた、渋い顔をしてそう答えた。
「それより腹が減ったぞ。試験会場にどれだけ鈍い音が響いたことか」
「やっぱり君だったか。私は大丈夫だ」
「アンデットだと空腹はないのか?」
「まあ、死んだ身体だからね。食事をしないこともないけど基本それは娯楽だね」
「便利な身体だな…俺も一度死んでみるか」
「ん?一応黒魔術の知識もあるんだけど」
「イヤイヤイヤ、さっきのは冗談だ。ゾンビになる気は無い」
「そうかい…残念」
「おい残念ってどういうことだ、お前よからぬこと考えただろ」
「さあ、もし合格していたら食堂で一杯交わそう」
「それを言ったら不合格の確率が上がるだろ!」
「フラグってやつかな」
「コラ!もうやめるんだ!」
スティーブは慌ててマタルの発言を止めた。
マタルはスティーブの反応を面白がり更に話を進めようとした。
だが、そのときだった。
「みなさん、試験の結果がで出ました。」
防衛隊の関係者、今の場合は試験官と呼ぶのか、全身に西洋甲冑を纏ったそれが待機室に現れ、徐にそれを告げた。
周りの雰囲気は一気にに固くなる。
「おい、結果がでるのは早くないか?」コソコソ
「ゴーレムの採点者にかかれば一瞬だよ」コソコソ
「科学の力ってすげー」コソコソ
「どちらかといえば魔法だけど…」コソコソ
部屋の一角で納得する彼らを他所に試験官は話続ける。
「これから筆記試験の合格者の試験番号を告げる」
試験の際は受験者に番号が割り振られるようになっている。理由は書類上などに表記する際氏名と違い一目でわかるから。またはプライバシーを考慮してか。
6番、12番、40番
次々と番号が指名される。
自分の番号を告げられた者は強張った表情を緩めた。
そうして番号が三桁になった頃
「124番」
「おい、俺らの番号って」
「私が127番、君が130番だ」
「そろそろだな」
「126番」
「…125番は落ちたんだな」
「こら、落ちるなんて不吉な言葉使わないでくれ」
マタルは不安な様子でそうつぶやく。大分緊張しているようだ。
そして
「127番」
「ドヤァ」
「口に出すな」
どうやら第一関門は突破したようだ。マタルはまたいつもの陽気なオーラを発しだした。
しかしスティーブの番号はまだ告げられていない。
「128番」
<ユックリ シテイッテネ
「なんか聞こえたぞ」
「他の受験者だろうね」
「129番」
<ドウダ ミタカ! ワタシダッテヤルトキハヤルゼ
「うるせえ外野」
「次は君だよ」
マタルはそう告げる
それくらいわかっている、スティーブは頭の中でそう答えた。
だが緊張で思うように声が出ない。
修羅場はいくつも乗り越えてきた。いくつもの賭けをした。
だがそれでも心臓はこれまでに無いほど震えだす。
戦いと違い、このような慣れない試験は経験してこなかったためだろう。
「131番」
「…え?」
「以上になります、合格者は30分の休憩の後、午後の技術試験の会場に移動してください。場所は―」
スティーブの顔は真っ青になった。
「おい…マタル、間違いではないよな…」
「試験官は間違いをしないよ」
マタルはバッサリそう言った。
これは戦いではない、
斬られていない
射抜かれていない
怪我をしていない
スティーブはそう自分に言い聞かせた
たかがクイズに負けただけ、
そんなはずだ
なのにこの絶望感はなんだろうか
試験官が不合格者への予定を告げるがそれも耳に届かない
ほんの数週間とはいえその間に色々努力をした、だがそれが報われなかったのだ。
ショックがあっても無理はない
スティーブは工房での生活を思い描いた。
ああ、あそこではまたブレイズに色々せがまれるのだろう
そう思いめぐらせた。
「あ、君の受験番号131番だった」
「…謀ったな!」
「坊やだからさ」
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「よーし適度に腹いっぱいだ」
「うむ、景気づけだ」
マタルの告げた受験番号が間違えだったわけで受験番号130番改め131番のスティーブは無事最終試験、『技能試験』に進むことができた。
食堂で昼食をすましたスティーブ達は試験会場に進んでいった。何故か屋外ではなく地下に用意された会場へ
「…なんで会場が地下なんだ?」
「わからない、酒屋のオヤジさんからは聞いていないよ、普通に武器や罠の扱いのはず」
「…ヒントは貰えないのか…」
そう、ヒントは貰えない。おそらく試験内容が赤鬼の時と違うのだろう。
試験官を先頭に受験者は石畳の階段を下りて行った。
松明の明かりで壁にはいくつもの影ができる。
「こちらが試験会場です!
甲冑姿の試験官が声を上げた。」
会場は石壁がむき出しの殺風景な空間であること以外は特に何の変哲もない。
その他は床にラージチェストがいくつか置いてあるだけだ。
「それではみなさん、これより技能試験を行います。まずはこのクロスボウの装填から構えまでの作業を…」
受験者の前で甲冑男は再び試験の事項を読み上げ始めた。おそらく武器の扱いを確かめる試験だろう、ラージチェストからありふれたクロスボウを取り出たところから察しられる。
「…いたって普通だぞ、地下でやる必要はないだろ」コソコソ
「…武器の持ち出しの規制が厳しくなったのかな?」コソコソ
「そうなのか…?」コソコソ
この疑念を持つものはマタルとスティーブだけではないだろう。他の受験者にも同じ様子がうかがえる。
「それではまず最初!クロスボウの装填作業!」
試験官はそれを気にも留めず試験を続ける。最初はクロスボウの扱いを確かめる作業だ。
複数の試験官の前で受験者が一人ずつクロスボウの装填、構えまでの動作をする。装填中、床と水平に構えたり周りの人に矢じりを向けたら減点される。
「次!狙撃だ!」
これは試験管が言った通り狙撃の精度を確かめる内容。
用意された的に矢を打ち込み真ん中にそれが当たる程得点が上がる仕組みだ。
スティーブはゾンビと戦った時のようにそのテストを難なく満点に収めた。
以外なことにマタルにも適性があったようで満点とまではいかなかったものの高成績を収めた。
「そして今度は刃物だ!」
狩猟に使われるのはクロスボウだけではない。剣な槍などの近接武器も使われる。
今回は刃の研ぎ直しなどやや細かい作業を行った。
その後は罠の設置、怪我の処置など地味な試験が続く。
この試験内容だとわざわざ地下で行わなくてもいいのではないか?それを誰もがそう考えた。
だが次の関門で答えが出た。
「それでは最後テストになります!気を引き締めてください!」
最後の号令がかかった。聞きなれた甲冑試験官の声は会場で反響した。
その時だった。石壁の一部が鈍い音を上げて横に動き出した。
「な、なんだ!?」
石壁が動く先ではトンネルが見えた。ある種の隠し通路なのか
防衛隊の基地なのでそれがあってもおかしくないだろう。
しかし問題はトンネルの向こうにあった。
「おい、あれって…」
石壁は動きを止めた。トンネルの先には鉄製の檻、檻の先にはコロシアムを彷彿させる大きな広場があった。
だがそのコロシアムがスティーブも気付いた『あれ』ではない。
コロシアムの中心に佇む一つの紅い影である。
その影はその場にいた誰にも確認できた。
向こうはこちらの姿を見咎めると、口を大きく開けて
〔〔ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!〕〕
耳をつんざく咆哮をあげた。
それに怯むも者も何人か出る。
それもそうだ。トンネルの先にいる『あれ』の姿は誰もが知っているものだ。
外来人のスティーブでも。
その姿を知る者は実際に見たか本でしか見たことがないかのどちらかが当てはまるであろう。
紅い影は再度咆哮を立てた。大分興奮している様子だ。
―恐ろしい、危険だ、逃げたい
誰もが一瞬そう考え、畏怖しただろう。
その相手は
この世界での食物連鎖の頂点に属する生物、
レッドドラゴン
「最終試験は、実際にレッドドラゴンと戦ってもらいます」
試験官は様子を変えず淡々とそう号令した。
…この小説って死体とおっさんしかまだ出ていないような…一応それ以外もいるが
花も入れないとな…
ご意見、ご感想お待ちしております。