[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第ニ話 非情な現実

男は燃える住宅街を駆ける。

咳を呼ぶ煙や身を焦がす炎も恐れずに

 

「ゼェゼェ」

 

男は窪みや瓦礫だらけの道を駆ける。

それらを馬の様に飛び越えて

 

「あ、あった!」

 

男は何かを見つけて走る。

まだわずかに残る希望を目指して

 

「よかった…まだ大丈夫だった…」

 

男は住宅地の外れに立つ石造りの鍛冶屋の前で止まる。

 

防壁と同様に頑丈なつくりのこの建物ならシェルターの役割をしただろうと考えたのだ。

 

もっとも火が出たとき住宅街に広がらないよう、それから離れたところにあるので他の村人が逃げ込めたかどうか疑問だが。

 

「おーい!だれかいるかー!」

 

家主くらいは生きているだろうと考え少し焦げたドアを叩く。

すると建物の中からこちらに向かってくる足音が聞こえる。

 

「おお、君は大丈夫だったか。周りは危険だ。入りたまえ。」

 

予想は当たった。黒いエプロンをつけ長年の鍛冶仕事でガッシリした腕の村人がいつもに増して煤だらけの姿で1人出てきた。

「すまないな、おやっさん…」

男は鍛冶屋のドアの向こうへ進む。

家は崩れてはいないが中はそうではかかった、製作中の刃のない剣や鉄などの鉱石、使い古した金槌などがごったがえし奥では石炭の入った袋の山が崩壊する光景が見えた。

「見ての通りうちも散々な状態だ。」

鍛冶師が玄関の近くの木の壁にもたれかかって言う。

「他の村人は…どうなったんだ…?」

男は呼吸をゆっくり整えながら探しても見つからない彼らについて問いただす。

「おそらく…もう生きていないだろう。わしはすぐ下の地下室にいたから無事だったが他のところは家と共に吹き飛ばされただろう…火を消そうと向かった頃には手遅れだった…」

「もうどうしようもない」とため息をつくようにそういった。

 

男は村を救えなかったという事実を突き付けられた…

いや、そうとわかっていてもあえて信じないようにいていたのが正しいかもしれない…

どっちにしろそれは男にとってショックだった。膝の力が抜け、顔が真っ青になっていく。

黒エプロンの鍛冶師はただ肩に手を置くことしかできなかった。

 

だが、それでも現実は非情であった。

  

今度は鍛冶屋と同様に崩れることが無かった防壁、

200m先にあるそれがある方角から衝撃が走りそのあと轟いた爆音がくる。

「まだ攻撃するのか!この村を!」

男はヒステリックに叫ぶ。

そう、姿を見ぬ相手は攻撃を仕掛けるのである。

 

「防壁が…突破されている…叫んでいる場合では無いぞ…!」

 

しかし敵は今度は空からではなく陸からやってくる。

 

クリーパーの爆発で開けられたであろう煤だらけの防壁の穴から

 

「ゾ、ゾンビ達だ…!10…20…相当な数だ!しかも物凄い速さできている!」

 

人海戦術のと言わんばかりの数の屍が、腐敗臭を散らしながらこちらに迫る。

鍛冶屋のガラス窓から見るそれは、まるで大波のようだった。

 

「ふんっ!こんな時に限って襲撃イベントか!上等じゃねえか!」

 

絶望的な光景を望む窓から後ろに視線を移すと、さっきまでヒステリックに叫んでいた男はそこにはおらず作業台でつくったであろうダイヤ製の防具を二人分両手にかかげる男がそこにいた。

 

「これを着て身を守ってくれ。ダイヤなんて山のようにある。」

 

男は素材の希少さから所有者が限られるそのダイヤの鎧を小麦パンを出すかのように渡してきた。男の目は鋭く殺意に満ちそれを外に見えるゾンビに向けている。近づくだけで腰が抜けそうな気迫を見せている。

 

「おやっさんは地下に避難する準備をしてくれ。俺が時間を稼ぐ。」

 

男の言葉はおだやかだったが一方では復讐心が煮えたぎっているような雰囲気があった。

そして鍛冶師が返事をする間もなく彼は天井の穴から弓を片手に屋根へ上って行った。

 

「無能どもがうじゃうじゃいるな…」

 

屋根へ上がると家屋の木材の焦げた臭いがまだ漂っているのがわかった。視線の先にはクレーターだらけの地面を馬並みの速さで駆ける元人間。

背中の方からは煙が少し混じった風が吹く。

 

奴らを打ち抜く矢を放つには悪い風ではなかった。

 

男は使いなれたエンチャントした樫製の弓を引き絞る

 

狙いは一番前を走るゾンビ

 

恨みを込めた白羽の矢が鈍い音とともに放たれる

 

矢は空気を裂いて飛んでいき

 

そして吸い込まれるように

 

狙いをつけたゾンビの喉元に突き刺さった

 

矢を喉元に立てたゾンビはバランスを失い、地面に崩れおちる。しかし後のゾンビ達は動かないそれを構わず踏んでいき進撃を緩めない。

 

「まるで人形だ」と男はまた矢を放ちながら呟いた。手元にある矢は最初にいた採掘場でモンスターに出くわしたときにその場をきりぬけるために持っていったもので狩りの時とは違い大した本数は無い。

ふと「止められるのか…?」と怒りが身から溢れ出さんばかりの中、倒れる仲間を躊躇わず踏む奴らからここを防衛できるか疑問に思った、

 

するとそれに答えるかのように下の鍛冶屋から屍ではなく鉄の身体を持つ人形「ゴーレム」が四体現われた。彼らは今は突破されているあの防壁にも引けを取らない壁をその巨体でつくる。

「配備予定だったゴーレム達だ!こやつらも一緒に戦う!」

「ありがてぇおやっさん!」

思わぬ増援で揺らいだ気持ちが立て直される。

 

ただただ星が流れていく夜空の下、男は矢を放つ。

そして放たれた矢は真っ直ぐ飛んでいく。

射抜かれたゾンビは動かぬ肉塊と化す。

「これが…最後の一本か…!」

それがしばらく繰り返されたのち矢は尽きた。

 

だが4体のゴーレムが矢の代わりにゾンビの波を引き留める。

 

振り下ろされた巨大な鉄の腕が3匹のゾンビを宙に飛ばす。

腕が振り回されたところは空洞になる。

その空洞にゾンビ達が入るが3匹と同様鉄人形の餌食となる。

 

しかし圧倒的な戦力差で鉄人形の巨大な腕をすり抜けた者もでてくる。

 

二つ目の壁は乗り越えた。そんな雰囲気を醸し出す彼らに

「おら!お前らは貪欲に正直者だな!」

矢ではなくダイヤ製の斧がグルグルと回転しながらそのゾンビに突き刺さる。

 

男は尽きた矢の代わりにあらかじめ作ったダイヤの斧を投げつける

 

射程は弓矢に届かないものの破壊力はそれを超えていた。

 

本来木を倒すその道具は屍の頭や胴、手足を伐採していく。

 

「それ!それ!それい!ダイヤ斧を消費品に使うのは新鮮だなぁ!」

 

もはや復讐に駆られる狂戦士と化した男はダイヤを構わず敵に投げつける。

その斧も矢と同様に尽きると、

今こそゾンビに突撃しようと男はダイヤの剣に持ち替えて鍛冶屋の屋根から降りようとする。

 

すると下から呼び止める声がした

 

「避難の準備ができた!ゴーレムにまかせて早く戻るんだ!」

ダイヤの防具を身に着ける村人が屋根の穴から声をかける。

「くう…そうか…」

ゴーレムを突破したゾンビが沢山間近に迫ってくるのが眼下に見えた。

 

流石に不利と感じた男は復讐心を噛みしめながら下に降りる。

下の鍛冶屋は自分が最初に来たときと違い、散乱した雑多な物はいくらか片付けられていた。

「ワシが最初にいた地下室に食糧を運んだ。3日くらいなら籠っていられるだろう。」

 

―おやっさんはそう言うと俺を地下室に突き落とした。―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上になります。
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