[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

22 / 33
潜入作戦?まあ待ってください今回は番外編 クリスマス特集ですよ

前回執筆するために、参考がてら戦争の動画見てたもんで…衝撃が強かったです。

気休めにと書きました。(動画とはいえ、戦場見た者としての自覚を問われますが)

とりあえず、どうぞです。


番外編 前編 メリークリスマス

身体に刺すような冷気が吹き付けてきた。全身に震えが走る。脚を動かすのも億劫になる環境だ。

辺りの岩肌を俺は見渡した。

 

「うお…寒い…」

 

人の骨みたいな白の氷が、もともとあったであろう岩に苔の如く張り付いている。縮まる背中の後ろには、ネザーゲートによく似た氷のゲート。俺はこの門を潜ってきた。恨めしそうにそれを眺めると、凍える身体に鞭を撃ち、冬眠から目覚めた熊のようにゆっくりと足を踏み出した。靴底から氷が砕ける感触が伝わる。

「ち…畜生…マタルの野郎…!」

見て分かるように、俺はわけあってこの寒い世界…エターナルフロストに来ていた。溶岩滴るネザーと対照的、極寒地獄の名にふさわしい異世界だ。ん?なんでこんなところに居るかって?

まあ…ことは数時間前にな…

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あ、お金が足りない」

 

薬を醸造しているマタルが、いきなりそうつぶやいた。近くで大鍋をかき回していた俺にも、その言葉ははっきり聞き取ることが出来た。

 

「金か…いったい何があった?」

 

乾燥した薬草を鍋に投入しながら、マタルへ先ほどの言葉について問いただした。

 

「いや…この前色々買ったじゃん?」

「ああ、そうだったな」

 

狩りに必要な防具、高額な武器、最近かった物といえばこれだ。どちらも安値では済まない品物である。価格は、武器防具合わせて一月の稼ぎ丸々持っていくほどのボッタクリ。マタルの家には金は殆ど残っていなかった。

そしてその代償が、今になってきたのである。

 

「実は、家賃をそろそろ払わなきゃいけなくなって…」

「ああ、賃貸だったな。一戸建ての」

 

俺は一応マタルの家に居候になってそこそこ日が経っている。薬屋が賃貸だとかその評判、はたまた経営状況がどうなっているかは余所者ながらも知ることができた。あくまでも最近になってからだが。

 

「その徴収が6日後に迫っているんだよ」

「なんだ6日後か…え?」

「6日間だよ…」

 

マタルは吐き捨てるように日数を告げた。

現在薬屋の手持ちはなんとか集めて1万エメラ。しかし家賃一か月分は8万エメラ。貸主に払えるとしても13%程度。残り87%、7万エメラを集めるには稼ぎに出なければならない。

 

「ドラゴンと戦う自信はあるか?」

「今の私の運転技術でかな?無理だね…」

「だよなぁ…」

 

金稼ぎ一つとしてレッドドラゴン狩りに出ればいいが、まだ連携が成り立つ程練習を重ねていない。よって金を調達するには別の手段を要いる。…のだがそれが見つからない。

 

「…土下座して家主に待って貰うんだな」

「いや、もう一か月分滞納していてね…」

「おいおい…」

 

その情報に俺は、思わず鍋をかき混ぜる手を止めた。そして呆れてため息をついた。

一ヶ月家賃の滞納があるということは、その分徴収する金も上乗せされる。よって集めるべき金は二倍に膨れ上がった。6日間で15万集めることになる。

 

「金を貸して貰えそうな奴はいるのか?」

「…もう借りちゃっているんだ…」

「追加で貸してもらうのは?」

「無理だね」

 

万事休す。話の流れでマタルが金に対して面倒な問題を持っているのは察したが、まさかここまでとは。

店内が薬が煮立つ音だけになった。

 

「というわけだ!これから一っ稼ぎするよ!」

 

マタルは手を叩いて沈黙を破った。それに対し、俺は不愉快そうに俺は眉を顰めた。すると奴はそれを察したかのように奴はチラシを一枚手渡してきたのである。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

チラシには雇用情報が記されていた。「クリスマスのケーキ配達」だとか。コートのポケットからそのチラシを取り出し、雇い先の住所を確認した。

 

「ケーキ屋…ゲートから真っ直ぐ100m…」

 

紙面から顔を上げ、今歩く道と地図を照らせ合わせた。きっと道を間違えていないだろう。そう思いながら身を超す氷柱が下がる道を、1人で歩く。

こんな時道案内はマタルに任せるのだが、奴は

 

「嫌だ!普通にマッチ売ってくる!」

 

とか言い出してこちらの世界には来なかった。どうやら寒さには弱いとか。溶岩浴びても火傷しないくらい丈夫な身体なら寒さの一つ二つどうにでもなんとかなりそうだが、奴は駄々をこねてついてこようとしなかった。

 

「…何がマッチだあのアホが…」

 

道に転がった氷柱を靴で踏みつぶす。ぞんざいな扱いされたことにやるせない気持ちがつのり、溜息がでた。

1人で出かける俺に差し出されたのは、皮のコートだけ。こんな極寒の地に出るにはいくらなんでも装備が甘すぎる気がした。手袋でもなければ四肢が凍傷になってしまいそうである。

その時不意に横から風が吹き付けてきた。俺はそれに対し身悶えるのだけであった…

 

………

……

 

「では、仕事を確認しよう!」

 

他の従業員との集会で、スノーゴーレムは高らかに号令した。俺は寒さで半ばふらふらになりながもらケーキ屋にたどり着くと、今目の前で話すスノーゴーレムが出迎えてくれた。奴が雇い主のようである。

他のバイト店員はとっくに集まったようで、俺が来たと同時に集会が開始された。

 

「今回君たちにしてもらうのはケーキ配達!」

 

俺は再びチラシに目を通すと、仕事内容はしっかり書かれていた。そして横には『体力自慢向け』と付け足されている。一応身体は鍛えているので人並み以上に力はある。今更仕事に口出ししようとはしなかった。

 

「現世に戻ってお客様に商品を届けてもらうよ!車と運転手はこちらで用意してある!君たちには配達のサポートをしてもらう!雪だるまの私には現世はキツイ!屈強な身体の諸君らに期待している!以上!店の倉庫に移動してくれ!」

 

職場は既に立て込んでいるようで、雇い主は手短に話すと、後は付き添いの従業員に場を任せて引っ込んだ。説明になっていない気がするが、単に荷物を運ぶだけだからそれくらいの情報量で問題ないだろう。

俺は周囲を見渡しながら結論付けた。他のバイトは現世で見たような人外たち。彼らに比べて能力の劣る俺は、後ろでサポートに徹するのだろうな。

 

「旦那!旦那じゃありませんか!」

 

倉庫に向かおうと立ち上がった時、ふと後ろから声をかけられた。この世界で「旦那」と呼んでくる顔見知りなんていたものか?いささか不思議に感じながら俺は振り返った。

 

「…どちら様だ?」

 

後ろには毛糸の帽子を被ったスケルトンがいた。アンデットなだけあって俺はその風貌にビクリと身体を震わせる。だが彼が何者かなのか、特徴のない人体骨格なので種族以外察することはできない。

 

「旦那!忘れられちゃ困りますよぉ~、ほらこの前銃を売った…」

「おお、あの鍛冶屋のスケルトンだったか」

 

武器を買いに鍛冶屋へ行ったとき、応対してくれたスケルトンだ。たしかにコイツは俺のことを「旦那」と呼んだりしていた。

ただコイツがなんでこのケーキ屋に居るかがまたそれはそれで謎だ。

 

「実は、店で剣を廃棄にしたんですがね」

「人の考えを覗くな」

「はは~けっこうけっこう。その後相棒にコッピリ絞られましてね。弁償代として外に働きにでているんですよ」

「同業者がいたんだな…」

 

俺もマタルの関係でこうしてケーキ屋に働きに来ている。目の前のスケルトンも当たり外れずとも同業者の命でここにいるのなら、笑うしかない。俺は飛んだ皮肉だと心の中で呟いた。

 

「とんだ皮肉でしょうな、カッカッカ」

「…なんで人の心を覗く」

 

―何者だこのスケルトン

そう感じながら俺は奴から目を離した。自分の内が見越されるのはあまりいい気分ではない。

 

「ただの読心術でありやすよ。あ、あっしは‘白波‘と呼んでくださいな」

「わかったわかった。とっとと倉庫行くぞ」

 

他のバイトが全員倉庫へ移動したのだろうか、部屋には俺達以外誰もいなかった。といっても話声が廊下から聞こえる。まだ移動に間に合うだろう。

 

………

……

 

「…なんだこのシカは」

「トナカイでありやすよ」

 

倉庫にたどり着くと、既に配達の仕事が始まっていた。従業員がケーキが入ったであろう箱を爆弾を運ぶような素振りでゆっくりと『車』へ積んで行った。といってもそれは俺が作ったようなレッドストーン式のタイプではない。ソリを模したデザインの荷車にトナカイが繋がれた、言わば馬車に近いものである。

この世界では動物を動力にしたのが主流だが、馬以外がそれになっているとは考えてもいなかった。

それに驚く点は未だある。

 

「そしてこのコスチュームはなんだ」

「サンタさんの上着でありやすよ」

「この真っ赤な上着がか?」

「そうありやすよ、鉄板ですぜ」

「そうか…流石悪魔、血に塗れた衣服を…」

「旦那、なにか勘違いしてありやせんか」

 

おそらくこの車といいコスチュームといい、サンタクロースと呼ばれるキャラクターを題材にしたものだろう。俺の中のサンタクロースと言えば、神に反乱を起こし、やがては悪魔と化した天使だったが…まあどうでもいいことだ。

配達にはトナカイを操る係りと荷物を直接手渡す係りがペアになって行う。そして俺は何故かこの‘白波‘と名乗るスケルトンとペアを組むことになった。話によれば白波は以前もこのバイトをしていたとか。先輩と新入り、納得の組み合わせである。だが俺にはすんなりと受け入れがたい構成だ。コイツとは数分前に一悶着があったばかりなのに…。

 

「まあまあ、そうお堅いこと考えなさらないで」

「だから人の思考を…」

「さあ、荷物も積まれたことだし乗って下せえ」

「…わかったぜ」

 

荷台にはリボンがひらひらついた箱が並んでいる。俺達は残された席ということで御者席に乗るしかなかった。無論白波のすぐ隣だ。

 

「それい!出発だぁ!」

 

白波は俺の考えがわかっているかわかっていないか、こちらからは考え何一つ察することはできないものの我関せずとトナカイに鞭を振るった。周囲に引き締まった音が響く。それと同時、トナカイが一鳴きしたと思うと重力に逆らい、宙を舞い始めた。

 

「うおぁああ!」

 

今乗るソリも、トナカイに引っ張られて宙に浮き始めた。思わず俺は声を上げた。

―なんだこれは

前居た世界に飛行機はあった。だが宙を舞うソリもトナカイは無かった。今それが存在するとして、俺は驚かずにはいられなかった。

 

「旦那~驚いていますね。こんなの見たことないとか」

「ああ…ビックリだ」

「では…次元のかなたへ!さあ出発!」

 

どんどん遠ざかっていく地面を目に、俺は不快を表す暇もなかった。

その様子に白波は気を良くしたか、ソリのスピードを上げ始めた。顔に冷気が容赦なく吹き付けてきた。座席にシートベルトがなかったら、飛ばされていただろう。

 

「おい!目の前にゲートがあるが…!」

「そりゃあ…突っ込むんだよ!」

 

ソリのスピードはお構いなしに上がった。

耳元で風が通り抜ける音が聞こえる。

そしてソリは、空中に展開されたゲートに姿を消した。

 

異世界の空が再び静寂に包まれた。

 




前編は以上になります。

後編は今日の夜か、明日投稿します。首を洗ってゲフンゲフン首を長くして待ってください。

今回は試験的にセリフと地の文とで間を開けました。今までのチェックしていたら、間なしでは読みにくいと感じたからであります。

とりあえずお声がかかるまでは間は開けるスタイルで進めようかと。

上記以外のご指摘もありましたら、気軽にコメントください。
並びにご感想もお待ちしております。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。