[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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今回は、前回に引き続き前の世界の話です。

ちなみにスティーブは、マタルに車の運転技術を叩き込んでいます。


第二十二話 第三の力

隊員の一人がドアの向こうにスタングレネードを投げた。半開きにしたドアをとっさに閉めると、間をあけずに爆音が轟いてきた。特殊閃光弾が作動したのだ。

 

「突入!」

 

分隊長のレイチェルが叫んだ。あらかじめ打ち合わせした通り、前衛班が煙の舞う工場内へ突撃した。すぐさま他の班もそれに続く。中からサプレッサーで抑制された銃声が響いた。ゲリラが何か唱えるも、隊員はそれを無視して射殺した。

 

「クリア!」

 

辺りにはゲリラが血だらけで転がっていた。隊員に負傷者はいない。わずか数秒で入口前の小部屋が制圧されたのだ。

 

「地下に行くぞ!さっきと同じようにやれ!」

 

レイチェルが間髪入れずメンバーに指示を飛ばした。部屋の奥にドアがある。情報によれば地下工場の侵入口はあのドアの先らしい。モンスター生産を止めるにはそこを進む必要がある。

 

「アイ・サー!」

 

先ほどと同じように、敵陣に手榴弾を投げようと、隊員2人がドア横にへばりついた。一方がドアを開け、もう一方が爆弾を投げ込む方式だ。

彼らがカウントダウンを始めた。

 

「3…」

 

ドア係がノブに手をかけた。

 

「2…」

 

もう一方が、スタングレネードのピンに手をかける。

 

「1…」

 

死体を傍らに待機する隊員が、突撃銃を握る手に力を込めた。

グレネード投入と同時、レイチェル達は突撃するのだ。

 

「ファイア!」

ドア役が静かに唱えると、その言葉と共にノブが引かれた。片方の隊員がスタングレネードを投げ込む。

だがしかし、爆発とは別の轟音が立った。ドアの向こうから別の弾が掃射されているる。開きかけのドアは、あっという間に穴だらけになった。

 

「隊長!ターレットです!」

 

手榴弾を投げ損ねた隊員が、此方を向いて叫んだ。ドアの先に続く地下階段では、最下段のところに重火器が佇んでいた。その銃がモーターとセンサーでもって1人でに、射撃を行ってきるのである。

対するドア係が発砲するも、戦車用の装甲で弾は難なく凌がれてしまった。

 

「訓練で戦っただろ!アレを使え!アレを!」

 

レイチェルは怒号を飛ばす。それに反応したドア横の二人はすぐさま横に散開した。

入れ替わりに後衛班の一人が重火器を持って動き出す。

 

「E-11‘サラマンダー‘…掃射準備よし!」

 

ひときわ大柄な男が、手に戦闘機に搭載されるはずの銃を抱えドアに接近した。機械的なデザインの風貌打って変わり、その銃は紫のオーラを漂わせている。

エンチャントを施された、高性能銃だ。

 

「発射!」

 

ドスを利かせた声で、内臓モーターを作動させた。

ガトリングとも呼ばれる大砲は6つに束ねた砲塔を回すと、数秒経った後銃口から火を噴いた。施設内に、滝を流れ込んだような轟音を振りまかれる。

クアンタムスーツで強化された射手も、勢いでわずかながら後退した。

その最中、毎分1000発以上降り注ぐ弾の豪雨は、通路の壁も巻き込みターレットを呑み込んだ。

徹甲弾に対し迎え撃つのは戦車用の堅固な装甲。

しかし、人間の技術とエンチャントの力を前にしてベニヤ板同然であった。

目標に反応して向こうも動き出すが、わずか数発射撃を行って弾丸の波にさらわれる。

徹甲弾は鋼鉄を抉り、内側に隠れる駆動系を木端微塵に玉砕した。たちまちターレットは、周囲に部品を撒き散らせ活動を停止する。

 

「目標の沈黙を確認」

 

大男が、トリガーから手を引くと、通路を見据えながら静かに告げた。その先にはドア同様蜂の巣になった機械兵器が取り残されていた。

ライフル程度では太刀打ちできないのがターレット。しかし人間をバラバラにする、言わば‘非人道兵器‘ならターレットは簡単に攻略できる。

 

「では!フォーメーションAにて攻め込む!」

 

ターレットが破壊されるとレイチェルは、新たにフォーメーションを組み地下階段に突入した。ライフルを構え、脅威の消えた階段を下る。全10名の少数精鋭が、ゲリラの本元へ侵入した。

階段を下りると、歓迎のごとく銃弾を浴びせられた。廊下の先で、ゲリラがバリケードを展開してる。だがその抵抗も虚しく、グレネードを打ち込まれて無効化された。

更に奥へ進むと、レイチェル達は作戦通り破壊工作に転じた。監視カメラも破壊し、各通路にゲリラが築いたバリケードもクアンタムスーツの力で簡単に突破した。地上の方から、搖動がうまく機能してか未だに増援がきていない。そうして作戦は首尾よく回り、電撃作戦は成功していった。

 

「隊長、一つ意見してもいいですか?」

 

フロア一つを制圧したところで、副長のエーレンが近づいてきた。

 

「許可する」

 

彼女は私の同期でありながら、冷静さは群を抜いていた。そのため、何か引っかかった際こうして作戦中でも意見することがあった。

こちらも戦いへの高揚感を押さえ、耳を傾ける。

 

「モンスター…一匹もでてきていませんが」

「それがどうした、まだ1フロアだろう」

 

確かに、モンスター施設ではあるもののこのフロアに居たのはゲリラとターレットに代表されるロボット兵器。モンスターが出ないのは不自然だ。

しかしそれと同時にモンスターを研究する、または作成する機器も見つからなかった。逆に多かったと言えば武器や食料。

だとしたらこのフロアは、武器庫として使われており、肝心のモンスターのプラントは此処より地下にあると考えるのが妥当だ。序盤のステージ云々で気にすることではない。

 

「地上では既にガストやブレイズが参戦しています。また情報ではゾンビで村を襲撃した事例もあります。結論から言えばゲリラ側は既にモンスターの兵器化は成功しているはずです」

「なのにそれを出してこない。‘銃‘があるのに‘ナイフ‘を使う。それが不思議だってことか?」

「左様でございます。それを踏まえて、ゲリラが何か画策しているのではないかと」

「ほお、どんな画策をしているのだ?」

「私の推測では…」

 

エーレン副長の推測はこうだった。

我々コマンド部隊を人間総動員で留め、その隙にモンスターの研究データを隠滅しようということだ。モンスターがこれ以上参戦しないのは、鹵獲され作成技術の流出を避けるためだと。

モンスターの力を頼りにガストやブレイズを出したが、歯が立たなかった。これ以上の消耗戦は抑えようとゾンビ等控えは引っ込め、その形跡を揉み消そうとしていると。いわば勝利は捨てたということか。

 

「それだけではありません。ガストやブレイズら異世界のモンスターが出ていたことから、おそらくネザーゲートをこの施設に展開しているかと。事前調査でわからなかったのはこの施設の最下層に作られているためでしょう」

「ではつまり…奥の方でスタコラサッサとネザーへ逃げていると!?」

「そうです。地上とここのゲリラはおそらく時間稼ぎです!」

 

そうとなれば、またモンスターの研究結果を基に生産施設を造られかねない。ネザーの整備はその環境下から整備は進んでいない。そこに逃げられれば、正規軍とて足取りはわからなくなってしまうのだ。

 

「なら!逃げられる前にとっ捕まえるぞ!尻尾を切ったトカゲを追うんだ!」

「ダメです!ゲリラのすることです!施設内に爆弾を仕掛け、いざ追いつかれた時は自爆とともにデータを有耶無耶にするでしょう…いやそれだけじゃない!追いつかれずともネザーに避難した瞬間にこの施設を爆破するでしょう!残った仲間も含めて!」

 

 副隊長の言葉に、他の隊員もギョッとした。施設の爆破―爆破されるということはここが崩れ落ち、この場に居る全員が危ないということだ。

 天下のクアンタムスーツでも瓦礫の波を凌げる保証は無い。加えて、最初から正規軍は、ゲリラの手玉にされていたということにもなる。

 

「作戦中止を、進言します!」

 

 最後にエーレンはそう言い放った。いや、それは話を切りだした時から最初に言おうとしていたことか。特殊部隊とて、この情報は無視できない。

 

「ふふふふ…ハハハハハハハハハ!」

 

レイチェルは狂ったように笑い出した。

 

「指を…指をくわえてみて居ろと!?」

 

隊員を前にして彼女は一人、怒鳴り声をあげ、壁を強く蹴りつけた。

 

「隊長!時間がありません!どうか御判断を!」

 

冷静沈着のエーレンも、虎の子の銃を抱えた部隊一の巨漢も、全員の隊員が頷いた。

部隊員には自分を含めた全員に、帰還用のテレポーターが手渡されている。最新技術の粋を集めた、兵士の生存確率を上げるための措置であった。

自分がいくら駄々をこねたところで、最終的な判断は隊員個人となる。

作戦続行を続ければ、速攻隊員は退却を始めるだろう。

 

しかしレイチェルはきっぱりとした口調で、言おうとした。

 

「作戦続行を―」

 

命ずると。

 

だが、口を動かそうとした瞬間、施設内に破砕音が轟いた。

ゲリラの自爆が始まったのか、近くからもその音が響く。部屋が大きく揺れた。

 

「隊長!」

 

隊員は先ほどと同様にその場に留まっていた。誰もテレポーターに手をかけていない。

レイチェルを覗いた全員が、代わりとして銃を構えている。

 

「隊長!モンスターです!後ろ!」

 

先ほどの破砕音は、爆発ではなかった。エーレンの予想を外れ、モンスターが床を破って上ってきたのである。それを証拠に、レイチェルの後ろで大柄なゾンビが這い上がっていた。

それも普通の個体ではない、上半身の筋肉が異常に発達した異常種だ。目をテールランプの様に、赤く発光させている。

その目を大きく見開いたと思うと、柱程もある腕をレイチェルの頭上に振り上げた。

 

「危ない!」

 

隊員の一人が声を上げた。しかし、レイチェルがゾンビの前に居るので発砲できない。レイチェルが反応して振り向いた瞬間、その姿が土煙に消えた。

 

「隊長ー!」

 

床材に混じって、血が飛んできた。手前にいた隊員の足元に、ベッタリと付着する。それを目の当たりにして辺りの隊員もギョッとした。

 

「隊長が…隊長が!」

 

副長の横で、隊員が銃を持つ手を震わせている。落ち着けとエーレンは問いかけるが、動揺して返事がない。

 

「貴様ら!何ぼさっとしている!」

 

トリガーを引かんがどうかと立ち止まる隊員たちは、再び身体を震わせた。振り返ると、潰されたはずのレイチェルがそこに佇んでいた。手には真っ赤に染まった斧とゾンビの首を抱えている。

 

「早くしろ!敵が来るぞ!」

 

土煙が晴れると、先ほどと同じような個体が床の穴からよじ登ってきた。見ると口に血だらけのゲリラを咥えていた。被害者の顔には、わずかながら生気が見える。

 

「た…助けて!助けてく―」

 

力を振り絞ってゲリラがわめいた。

だが、言い終わる前にツルリと口に飲み込まれた。こちらを見ながら、クチャクチャと人間を咀嚼している。

 

「発砲を許可する!ためらいなく殺せ!」

「ああああああ!」

 

レイチェルの指示に続き、ガトリングを持った大男が叫ぶと、ゾンビに向かって一斉射撃が始まった。他の隊員もそれに続き、一帯に弾幕が張られる。部屋が火花で、カメラのフラッシュの如く断続的に照らされた。目に映る景色がスローモーションのようにのろまに流れる。

 

「この…化物がああああ!」

 

対物兵器もゾンビに撃ちこまれ、あっという間にミンチになった。部屋中に血の臭いが広がり、わずかに残った足だけが、床の穴に落ちて行く。

 

「撃ち方やめ!」

 

銃声に負けぬ音で、レイチェルが叫んだ。クアンタムスーツの隙間から、赤い光が漏れている。

 

「想定外の事態だ!現在の装備では火力が足りない!」

 

全員射撃を止めると、部屋が時を移さず静寂に包まれた。床の下からゾンビの低音コーラスが、不協和音の如くこちらに響いてくる。

 

「総員…」

 

銃をなおも構える隊員は、レイチェルの指示を息をのんで待った。

 

「…直ちに撤退しろ!」

 

少し間を開けて、レイチェルはインカムから指示を出す。ゲリラ側の自爆の危険性、そしてデータにはないモンスター。この状況では撤退は止む負えない。

 

「アイ・サー!」

 

隊員達は叩かれた様に返事をすると、ザックから訓練通りの手さばきで小箱を取り出した。中心にはエンダーパールが埋め込まれ、その下に二つのボタン。れっきとしたテレポーターである。これで簡単に現場からエスケープできるのだ。隊員が準備を進める中、ガトリング持ちの大男とレイチェルだけが、見張りとして穴の横に待機した。

 

「エーレン伍長!帰還します!」

「了解!」

 

先発として副長のエーレンが帰還した。号令と共にその場から消える。辺りに紫のオーラが漂っている。今頃作戦本拠地に移動したことだろう。

 

「トーマス兵長!帰還します!」

 

他の仲間もそれに続いた。恋人と結婚予定のジン、酒をかわすと約束したチャン、組手格闘の得意なケンが副長に続いて消えて行った。一部の隊員には異種ゾンビの肉片を持たせ、正規軍の研究機関に届け出るようにさせた。

 

そして最後に残ったのは、ガトリング持ちのリチャードとレイチェルだけだった。

 

「隊長、お先に」

 

冗談交じりに、大男は脱出を譲ってきた。誰かが見張りに立っていなければ、モンスターが隙をついて上がってくる可能性だある。二人いっぺんは危険なのだ。

 

「何を言っている、隊長の私は最後までいる義務がある」

 

ライフルを穴の先に構え、淡々とレイチェルは言い返した。だがリチャードは、鼻で笑って先を譲ってきた。

 

「レディーファーストですよ」

 

ガトリングをけたたましく撃ち鳴らし、登ってくるゾンビを叩き落とした。

 

「俺に構わず、先に言ってください」

 

そろそろこの空間は持たないだろう。

そう心でぼやきながら、リチャードは横をちらりと見た。男らしさでも見せようと、レイチェルの前で見えを張ろうとした。

だが、その先にレイチェルはいなかった。きっと言葉に甘えてワープしたのだろう。そう結論付け、ザックに手を手を突っ込んだ。固い物を引っ張ると仲間が使っていたのと同じような、手に収まる大きさの箱が出てきた。

 

「では…リチャード伍長、帰還します」

 

部屋の一角でひとりでに彼は呟くと、箱に並んだ二つのボタンを同時に押し、その場から姿を消した。

 

………

……

 

「やっと逃げたか、若造が」

 

リチャードが消えたと同時、部屋の隅からレイチェルが現れた。身体はなお、ドーピングで赤く発光している。

 

「出てきて良いぞ、同志よ」

 

壁にもたれ掛りながら指をパチンと鳴らすと、部屋に四体のエンダーマンが現れた。普通の個体と違い腕が4本生え、全体的にサイズが大きくなっている。異変種だ。

 

「我を保護し、我を導け」

 

その言葉に返事したエンダーマン達は、レイチェルを守るように取り囲んだ。レイチェルはニヤリと笑うと、彼らを率いて、床の穴へ飛び込んで行った。

 




以上になります。

さてさて最後のアレはなんなのか…

ご指摘、ご感想お待ちしております。
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