[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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あけましておめでとうございます

今年も当小説を、よろしくお願いします。

いや~執筆中、プロットしくじって核爆発起こしていましたよ。危うくチート合戦奮発するところだった…ゲフンゲフンこちらの話です。



第二十三話 単独行動

「何!?隊長が消息を絶ったのか!?」

 

テーブルとボードだけのテント中、メンバーのジンが声を上げた。

 

「おう、俺が脱出する前に姿を消されていた」

 

最後に脱出した―と思われるリチャードが、ジンの怒号を被った。分隊長のレイチェルが姿を消したということで、コマンド部隊の中では混乱が生まれていたのである。

 

「…室内全て見回したのか?」

「いや、モンスターが迫っていたからな…室内を見回すなんて悠長なことできなかった」

「真実だな?」

「ああ、もちろん」

 

 脱出する前は異種モンスターの出現で半場ば隊は乱状態に陥っていた。明確な情報なんて皆無に等しい。しかし、ジンはなおも問い詰めた。

 

「瞬間移動…」

「どうした?撤退のことか?」

「隊長…瞬間移動されていなかったか?」

「ああ、退却の時―」

「いや、戦闘中に」

 

ジンは数分前の戦闘を思いめぐらせていた。あの時不可思議な現象が起きている。

 

「あの筋肉ゾンビが出現した時に」

 

 部隊が一室に待機している最中、異常に筋肉質なゾンビが出現した。そして隊長の不意をついて背後から攻撃、それによって隊長は戦闘不能になったことが察しられた。

 しかし隊長は別地点から現れ、その後も作戦行動を続行。

現実にゾンビの攻撃を切り抜けていたのだろう。だが拳が鼻先に迫る中、単純に身体を仰け反らせて回避に転じるには、時間が足りない。攻撃の射程外まで逃れるのに、予備動作で大きく時間をロスしてしまう。もしプロ野球選手に剛速球を投げつけられたとして、いくらそれを予測できていたとしても『避ける』が可能かどうかは話が変わってくるだろう。

 あのときゾンビと対峙した分隊長は、正にプロ野球選手に標準を付けられたのと同じ状況だった。そしてそれをどうやって切り抜けられたか? それは予備動作をほとんど要さない、瞬間移動以外に考え付かなかった。装置を用意すればボタン一つ置くだけで離脱が可能だ。

だが、リチャードはそれを否定した。根拠に欠ける――と。

 

「隊長はドーピングで馬鹿力出す」

 

 非現実的、非人道的であるが、過去にあった作戦でレイチェルはドーピングを行使、身体能力を増加させている。身体を仰け反らすのに予備動作を要するとしても、それが一瞬で済んでしまえば、理論上回避は可能だ。

 

「確かに…クアンタムスーツもあればロボット以上の力を出すだろう」

「だとしたら瞬間移動なんてすることなかったのでは?」

 

 実際異種ゾンビの奇襲に会った後、彼女の身体はスーツ越しに発光しているように見えた。ドーピングしていた証拠である。だとしたらジエンド戦同様に人並み以上の力が出ていたとしても、不思議ではない。

 

「そうかもしれないな…だが俺が言いたいのはそれではない」

 

 ジンは横に手を振ると、遠いものを見るように話を続けた。

 

「撤退間近で、あなたの死角に入っていた可能性がある」

 

 ジンはリチャードを見据え、無表情に言い放った。

 

「だ、だとしたら…まさか今も施設内に一人!」

 

 あの暴君隊長だ、そんなこともやりかねない。リチャードは思わず声を上げた。他のメンバーの視線が彼に降り注いだ。

 

「みなさん!レイチェル隊長の位置がわかりましたよ!」

 

 静まったテント内に、副隊長のエーレンが騒がしくやってきた。代表として彼女は捜索任務の参謀に当たっている。それを知る隊員はレイチェルの情報が入ったと察し、報告に耳を傾けた。

 

「隊長の装備の所在反応が、100キロ離れた山岳地帯から出ていました!」

 

 テントが風で、大きく揺らいだ。

………

……

 

「ヘックション!」

 

 血痕が残る地下廊下で小さな声が響いた。取り巻きの黒い影がファインティングポーズを取

 

「おっと、少し冷えただけだ」

 

 声の主は片手を挙げ、エンダーマンの構えを解かせた。薄暗い照明に、短く切った黒髪がチラリと照らされる。

 彼女は部隊の混乱など我知らずと居残っていた。雪山でなく、ゲリラの施設内に。

 ただその身体にクアンタムスーツを着けていない。強奪したゲリラの戦闘服を、サイズが大きめながらも羽織っている。唯一残したのは自前の斧のみ。

 

「人間が考えることだ、スーツに発信器埋め込んでこちらを監視しているはず」

 

 GPSがクアンタムスーツに埋め込まれていることは彼女には計算済みだった。そのうえでスーツを脱ぎ捨て、エンダーマンのテレポート能力で遠方に飛ばしてもらった。その場所は山岳地帯。

 あたかも支給されたテレポーターの誤作動で、雪山に滞在しているように見せかける布石である。

 

「ゲリラ支部付近に送っておいたから、暫くはこちらの動きを覚られることは無いだろう」

 

 ニヤリと彼女は笑うと、ミュータントエンダーマンを護衛に廊下を歩いた。基本的には兵士が孤立した際、救出作戦が組まれチームが現場へ向かうことになっている。しかし安易なところにスーツを送りれば簡単に連合へスーツだけ放置したのがバレてしまう。そうなってしまえば、軍法会議に引きずり出される。

曹長の立場を揺るがすのは、避けたい事態だ。勝手な行動はとりながらも、事無く終えたい。

 そこで危険区域に装備を放置、救助に手こずらせて発見までの時間稼ぎにするつもりだ。現在の雪山の天候は、3日連続で猛吹雪だ。ゲリラはおろか、連合軍も近づけられない。テレポートができなければ。

といっても、この施設の殲滅作戦は続いているだろう。ゲリラの自爆の懸念も残る。

 

 いくらクアンタムスーツが隠し通せていたとしても、

ここに居られるのは、長くて一時間程度だ。

 

「一時間で、この施設を調べ上げねば」

 

 このモンスター研究施設に残ったのは、単なる撤退の否定ではない。プライド云々ではない。軍でもない。

 

「我の野望の為にも…!」

 

 今までの指揮官じみた振る舞いはあくまでも演技。これが私―否、我の姿である。

 

 

 彼女は護衛のエンダーマンと目を合わせた。今は彼らが我の部下だ。

 

「さあ、我の息子、娘、この蟻の巣を掻き回すのじゃ!」

 

 彼女は高らかに叫ぶと、施設内に異変が起きた。

 

〔警報、警報、生産プラント異常アリ。生産プラントニテ異常アリ〕

 

 辺りに電子音声の放送が轟いた。警報ブザーも、けたたましく鳴り響く。

 

 施設の奥深くにあるモンスター生産プラントが、その始まりであった。薄暗い空間にガラス瓶に似た培養層が並ぶ。一つ一つには人工発生させたモンスター。ブレイズ、ゾンビ、ガスト、過去にゲリラが運用した生物兵器達。しかし、未だ使われていない種族があった。一つだけ。

 それに限った種族の培養層が、非運用を指示すかのように次々と壊れ始めた。熱せられたようにガラスが散る。中に詰まった培養液が、溜まる所なく床に広がった。だがそれを止める研究者は既に姿を消していた。

歯止めが掛かることなく、培養層が次々と割れていく。

 

 その崩壊をきっかけに中の生物が活動を始めた。培養液に塗れた身体が、赤子のようによたよたと立ち上がる。

 

 長細い体、に不安をあおる黒い肌、行燈の如く光る紫の目

 

 異世界からの訪問者

―エンダーマンであった。

 

 研究所で何千何万と生産された怪物が、1人の女性によって一斉に行動を始めた。

生産プラントから煙の様に姿を消すと、数秒経つ間に施設内に分散し始めた。

コマンド部隊が制圧した第一フロア、異種ゾンビの穴場となっていた第二フロア、そしてネザーゲートが展開されているだろう最下層フロアに音も無くエンダーマンが現れた。かろうじて残っていた研究員やゲリラは彼らに包囲され、抵抗虚しく拘束された。コマンド部隊の一部屋制圧の半分の時間で、フロア全てがエンダーマンに壊滅に導かれた。

 

「爆弾を探せ、持ち出すだけで結構」

 

 阿鼻叫喚のさなか彼女は休憩室の椅子に座り込み、貯蔵されたコーヒーを吟味した。コンクリートむき出しの埃っぽい空間で、それを啜る音が響く。

施設を徘徊する彼らの目をリンクして、彼女は制圧されていく様を見ていた。地上から駆け付けたゲリラが、全身血だらけで倒れるまでもしっかり鑑賞した。

施設は地上を除いて、全てがエンダーマンの波に呑まれていく。配置されたゾンビやロボットは怪物を前に倒れ、施設は大部分の機能を失った。

 残す懸念となれば敵方の自爆の選択肢。彼女はエンダーマンを総動員して、仕掛けられた爆弾を探した。

 

「やはりコーヒーとやらは美味である。香りもよろしい」

 

 鮮血に塗れた廊下を視覚しながら、黒いコーヒーの苦みを舌に広がらせた。

自分は司令塔ということで、後はエンダーマン達が動いてくれる。自分は怠惰に寛ぐだけだった。目の前のテーブルに足を乗せる。

しかし、休憩室は安全地帯ではない。エンダーマンとは別の、黒い影が忍び寄っていた。

 

「なんか臭いな」

 

 彼女はコーヒを簡易テーブルに置いて周りを見回すと、臭いの原因を目に留めた。出入口の所からミュータントゾンビが顔を突き出していた。腐敗臭を散らし、狭いドアを破って襲い掛かろうとしている。

 

「乙女の茶の時を汚すでない」

 

 女性はその巨体を見咎めると、ゾンビの目を刺すように睨んだ。見るとパッチリ開いたその目はアメジスト色に輝いていた。施設で行動するエンダーマンと、同じ色だった。

 

「消えろ」

 

 ゾンビが出口で右往左往していると、その横にミュータントエンダーマンが現れた。黒い怪物はゾンビの首を掴むと、何も喋ることなくその場から消えた。もちろんゾンビと共に。

 

「さあ、また茶会の時間じゃ…」

 

 エンダーマンを前に異種ゾンビが倒れる情景を焼き付けながら、コーヒーを一口含んだ。異種ゾンビからは大ぶりな槌が落ちる。生前の持ち物だったか、細い腕が槌を持ち上げると視野にそれが大きく映った。リンク先のエンダーマンが、槌に興味を示しているのが察しられた。

 女性はそっと目を閉じ微笑むと、エンダーマンからのリンクを断った。種族特有のネガ反転した視界が、色彩豊かな情景へと移り変わる。手元に握られたブリキのカップはそのままだ。

 

 しかし、情景とは別に何か違和感を感じた。

コーヒーは不味くない。異種ゾンビは現れていない。

本能的に別の存在を感じ取った。とっさに腰の拳銃を引き抜き、後ろを振り向く。

 

「やあやあ御嬢さん、小生の家で何をしているのだ?」

 

 銃を向けた目先で男が立っていた。不気味に目を光らせ、にやにやと哂っている。男の手にはエンダーマンの身体に存在する、緑色の水晶玉。人間でいう臓物だ。

 

「女子しか参加者は求めておらぬ、男は帰れ」

 

 女性は抑揚をつけずに言葉を返すと、存在を確認するまでも無く銃弾を放った。相手は味方を潰した男、躊躇う心は無い。

弾は男の肩を掠め、男の身体を揺るがせた。だがなおも彼は立ち続け、口角を上げている。

 

「おやおや…何者かは尋ねず弾を放つとは…」

 

 弾が掠った肩をさすりながら、男は呟いた。その時女性は心の中で何かに気付いた。

 

「…スティーブ…何をしているのだ」

 

 彼女の目に映るのは以前エンドで対面した男、スティーブだった。身長、声、仕草、全てが類似、いや記憶と一致していた。

 

―何故過去に行動を共にした人間がここにいるのだ?

 

 顔には出さないが、心の底で混乱の波が襲う。

 

「おや、人違いされているようだな…」

 

 青緑のシャツに青いズボン、ズボラなファッションセンスもそのまんま。だがライトの様に光る眼は一致していない。

 男は否定するかのように、手を横に振った。女性はその動作に反応し銃弾を放つ。弾は男の二の腕を撃ち抜いた。しかし、男の体勢に変化は無い。

 

「貴様、何者だ」

 

―銃が効かない

 彼女は更に困惑した。おそらくアンデットの類か、ドーピングを行っているのか。

額に眉を寄せた彼女は指を鳴らす。すると図ったかのように男の周りにエンダーマンが現れた。それも腕が複数生えた異種個体である。

 

「おやおや、茶会の面々かね」

 

 男は取り囲む怪物を興味深そうに観察した。

 

「私の子供達だ」

 

 彼女はぶっきらぼうに返す。

 

「研究所で遺伝子操作の実験台にされていた‘物‘に見えるが」

「黙れ、お前は誰だと聞いている」

 

 男は終始笑い続け、自分の素性を一向に明かそうとしなかった。

痺れを切らした彼女は腕をわずかに揺らすと、部屋の天井から床まで、空間を構成するコンクリートにひびが入った。男を包囲するエンダーマンがしゃがれた鳴き声を上げ細腕を広げている。

 

「正体を明かさない様なら、全方位からコンクリートが降ってくる」

 

 女性は低い声で男に告げた。それを指し示すかのように壁の亀裂は大きくなる。石が擦れる音と共に粉塵が舞った。少しでも亀裂に触れれば、空間は崩壊するだろう。

 

「流石コマンド部隊の部隊長…いやジ・エンド島の者だな」

「変態が、とっとと正体を明かせ」

「おお、怖い怖い」

 

 男はひび割れた室内を見回すと腕を頭の上に回した。無抵抗の仕草である。

何か反抗はしないと女性は身構えたが、男はその様子を無視して口を開いた。

 

「小生はここで働いている者でね、君たちにあいさつをしようと来たのだ」

 

 言葉に反応したエンダーマンが、男の顔を2発殴った。床に歯が殴った数だけ抜け落ちた。

 

「小生を殴ったのはあなたが初めて―」

「ふざけるな」

 

 男の顔に平手が飛んだ。奴の頭は大きく揺らぐ。

 

「はいはい、見ての通りゲリラの出身。自爆をしに参りました」

 

 四方でエンダーマンが睨みを散らすのを他所に、男はしれっと言った。

 

「爆弾はこちらで取り除いた。自爆はできぬ。拷問を恐れるなら、無駄な抵抗は止せ」

 

 声を低くして、彼女は男に脅しをかけた。味方のエンダーマンの視界を覗くと、施設外の野原に爆弾を放り出していた。リンク先の思考を見る限り、施設の爆弾は全て取り出された様子だ。

 こちらに自爆の脅しは利かない。

 

「そのようで、小生が解き放った生物兵器もそちらの配下ですし―」

 

 再び男の顔に拳骨が飛んだ。彼女は瞳を鋭く細める。

 

「質問以外に答えるな」

 

 無機質な声で、彼女は続けた。同様にエンダーマンも男の鼻先で口を開き、ライオンの様に咆哮した。

男はニヤリと哂ったが、先ほどの様に皮肉を散らすことは無かった。

 

「他の研究員はどこに行った?」

 

 ネザーへ逃亡した者がいるはず。逃げたということは、ゲリラ側に利用価値がある。つまりは重要人物だ。

 

「…教えない」

 

 彼女が指示を出すまでなく、エンダーマンが男を掴みあげた。奴の頭にギリギリと力がかかった。流石にそれは耐えられなかったか、叫び声を上げ始めた。

 

「早く答えないと、死ぬぞ?」

 

 男を吊り上げたエンダーマンが、残る三本の腕で奴の右脚を掴んだ。そしてゆっくりと、雑巾のようにそれをねじり始めた。周囲に関節が外れるような音が立つ。

 

「…別の基地、ネザーを経由して本部に飛んだんだ…」

 

 足が握りつぶされたところで、男は叫んだ。彼女はその様子を見て、静かにコーヒーを啜る。

 

「本当か?」

 

 エンダーマンが腕に力を入れ、その言葉に重みをかける。

 

「ああ…ほ、本当だ…」

 

 男は先ほどまでの威厳を無くし、わめくように言い放った。

 

「本部の場所は?」

「この施設から、350㎞先の区域!…北西の」

「構造は?」

「…3つの…城壁に囲まれている…」

「装備は?」

「生物兵器が多数…後旧式の大砲…」

「よし、それでいい」

 

 彼女はニッコリ笑うと、エンダーマンに拘束を解かせた。男が力なく床に落ちる。拷問は相手の身体も気付からなければならない。衰弱死されれば、情報も引き出せなくなるからだ。

 

「今日は休め、後日色々話してもらおう」

 

 彼女は男に歩み寄ると、甘い口調でそう問いかけた。飴と鞭、拷問を鞭とするなら飴として休息を与える必要もある。

 

「…恩に…る」

 

 男は力なく言った。「恩に着る」とでも言いたいのだろう。その後、気を失って動きを止めた。彼女は男を運べと、取り巻きに告げる。

施設の研究室にでも置けば、作戦終了後に連合軍が捕まえて、また情報を絞り出されるだろう。その他重要なことは、人間に絞り出してもらおうと彼女は考えた。

 

「さあ、研究室に運んでくれ」

 

 だが、エンダーマンは男を運ぼうとしなかった。

 

「どうした?何があった」

 

 エンダーマンは、彼女に向かって首を振った。そして手首を握る動作をする。

 

「まさか…!」

 

 彼女は何を言わんとしているか察し、とっさに男の掴みあげた。その手は熱は無く、脈は止まっていた。

 

―死んでいる…

 

 そしてしてやられた。

 彼女は男の腕を放り出し、床にへなへなと座り込んだ。おそらく拷問を止めた一瞬の隙を突き、自ら命を絶ったのだろう。考えられることは情報を受け渡さない目論見。

それを察して、1人舌打ちした。

 

「生産プラントを漁るぞ、コイツは捨てろ」

 

 彼女は男の亡骸を蹴り飛ばし、ひび割れた休憩室かれ出ようとした。死体から得られる情報は無い。後は連合軍に任せ、次に重要な生産プラントに進むことにした。モンスターの生産技術なんて、曹長ごときに告げられることは無いだろう。それを把握するには、自ら足を運ぶ他なかった。

 

 しかし、またもエンダーマンが奇怪な行動に出た。

 

「何だ?今度は」

 

 何やら腕を激しく動かし、閉めた手を開く動作をした。彼の様子に落ち着きがない。

 

「え?自爆?」

 

 彼の思考とリンクしてみると、確かにそれを示していた。頭の中に爆発のイメージが送られてくる。

 

「そんな馬鹿なことが―」

 

 すると、突如としてTNTが周囲に現れた。まるでワープしたかのように。導火線には、ご丁寧に火がつけられている。

 

「お前が言いたかったことは…それか!」

 

 エンダーマンは、顔を縦に振った。きっと先ほどの男が仕組んだ罠だ。物的証拠は見つからないが、自爆はあの不自然な死に直後に始まっている。だとしたら、状況的にそう考えても何らおかしくも無い。やはり男の胡散臭い態度には裏があった。おそらくこちらとのコンタクトが目的か。単なる証拠隠滅が目的なら、とっくに自爆が行われているだろう。

 

「早く言えこのアホ!」

 

何 を推測したところで、導火線は火花を散らし続けている。解除しようにも数が多すぎて対処ができない。小便小僧が100人居ても状況の打破は難しい。

研究所爆破、生物兵器データの消失の運命は変えられなかった。

 

彼女が卑屈に叫んだ瞬間、モンスター研究所は火に包まれた。

 

………

……

 

「こちら救出チームA、目標は見つかったか?」

 

澄み切った青空をバックに、大型ヘリのチヌークは飛んでいた。眼下には白銀の渓谷。研究施設の爆発から数日後、GPS反応が出た雪山は天候を回復し、現在は太陽が照りつけていた。

連合軍はそれを好機にレンジャー部隊を派遣、クアンタムスーツがゲリラに渡らないよう先手を打つためだ。

 

『こちら救出チームB、目標は…見つかりません』

 

救出チームは二つだ。ゲリラの遭遇を危惧し、チヌーク一機に部隊一つの編成でフライトを行っている。どちらも反応が出ているところを重点的に探し回っているが、場所は障害物が多いためになかなか見つからなかった。

 

「了解、ゲリラの出現にも注意しろ」

 

ヘリコプター中に、ノイズ混じりの通信が響いた。しかしレーダーには、ゲリラは1人も映っていなかった。同乗する部隊も、半分暇そうな雰囲気を出している。ちなみにもう半分はいつ現われるかわからぬ敵への恐怖。

精神衛生的にはよろしくない状況である。

 

『こちら救出チームB、燃料は半分を切りそうだ。探索は後15分で打ち切る』

 

エンジン音が鳴り響く機内で、無機質に通信が流れた。部隊の中で、あきらめに近い空気が流れる。この雪山は数日前までは地獄の吹雪にさらされていた。そんな環境下にろくな装備もなく放り出されたら、その者の生存は怪しくなってくる。また生きていたとしても、雪崩にさらされれば一溜りも無い。

要救助者の生存は絶望的だった。

 

だが、そのとき不意にチームBから通信が入ってきた。それを告げる電子音のアラームが、搭乗者のヘッドホンに鳴り響いた。

まだ終了まで10分も切っていない。その状況下入ってくる通信は、何かしらのアクシデントが発生したということ。

 

良い意味でも、悪い意味でも

 

良い意味であるスーツおよび要救助者の発見は来る可能性は少ない。だとしたら消去法で、悪い意味のゲリラの襲来が残るだけだ。あるいはマシントラブルか。

 

チヌークに搭乗する全ての人間に、緊張が走った。

耳元でノイズ混じりの報告が入る。

 

『こちらチームB、発光弾を確認。地上にて―』

 

―アフロヘアの要救助者を発見。繰り返す、アフロヘアの要救助者を発見…火傷を負っている模様。

 

これより、救助を開始する。

 

通達者の笑い声と共に、通信は切れた。それを聞いた搭乗員は二つの意味で顔をほころばせたのであった。

 




ちなみに、次回からスティーブ達の話に戻ります。

軽はずみに前の世界に視点変えたら、3話引きずってしまった…(>_<)

以前からスティーブ達を狩猟に出そう出そうと騒いでいるのに何させているのやら…

ご指摘、ご感想お待ちしております。
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