[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。 作:えだまミィカン
フラッシュバンを前にして、ドラゴンは岸に打ち上げられた魚のようにその場で身悶えていた。時折咆哮を交えながら、辺りを飛び回る虫でも払うかのように四肢を動かしている。巨体といえども突然の光には対処することはできなかったのだろう。何も無い地面を引っ掻き、辺りに土を飛ばす。
遠くのウィザースケルトンは、長太刀を背中に差した鞘に仕舞うと、ドラゴンに向かって一直線に駆け出した。枯れ枝のように長細い脚が、音も無く軽快なリズムで繰り出される。振りかざされる鉤爪を前にして、躊躇う様子はない。
そして腰を抜かして動けずにいたマタルを後目にドラゴンの目先へ駆け込んだ。が、自身の刀で切りかかろうとせず、その場に佇む。マタルは突然の乱入者に目を白黒させるが、本人はそれを無視し長太刀を脇に構えた。ただし構えたその刀は鞘に仕舞ったままだ。加えて石化したかのように静止している。マタルとドラゴンがウィザースケルトンを挟んだ形で慌てふためいていだけ。遠目に見る俺からは、一人と一頭が乱入者の静止を際立たせているように見える。茶番劇でも繰り広げるつもりか。
――何故攻撃しない?
ドラゴンは混乱状態にあり、不意を突けるチャンスだ。しかしウィザースケルトンは動かない。唯一の機会を利用しないその姿に、俺は疑問を抱く。加えて先程車を破壊された此方が言うのもアレだが、些か図々しさを覚えた。しばらく動かずにいたウィザースケルトンに俺は痺れを切らし、俺は視力の回復を待たずにライフルを構えた。無事な方の目でスコープを覗き、ドラゴンの首元に狙いを定める。奴が動かないなら、こちらが動くだけだ。ドラゴンの急所は首元、ここに射撃すれば多少のダメージは与えられるだろう。
そのとき、ウィザースケルトンが動きを見せた。
混乱したドラゴンが軽率にも首をもたげた瞬間、ウィザースケルトンは長太刀の持ち手を握りしめる。遂に攻撃に移ろうと言うのか、鞘の頭から白い刀身が顔を出す。
――そして笛のような音が鳴った時だ
ドラゴンの蛇腹がパックリと口を開けた。遅れて水風船を突いたかのように血が溢れ出す。何が起きたと思いとっさにウィザースケルトンに視線を移すと、奴の手には先ほどまで鞘に収まっていたはずの長太刀が紅い液体で真っ赤になっていた。間違いない、ドラゴンに斬撃を与えたのだ。
その斬撃は、射撃で集中状態の俺でも見切ることが出来なかった。予想外の動きに俺は思わず目を見開く。だが同時に、ウィザースケルトンが使ったその高速殺法に察しを付けることが出来た。
――抜刀術だ
前の世界で見たことがある。確か‘サムライ‘と呼ばれる戦士が使う剣術だ。刀を鞘に仕舞った構えから、高速で刀身を抜き放つ――らしい技だとか。ドラゴンが首を上げる一瞬の隙を突くとしたら有効な一打だろう。
ただしそういったものに代表される剣術の多くは、他人に知られると危険なため、シークレットにされることが多いとか。それもあって剣術を習得している者は少ない。ただ裏を返せば取得している者は、それなりの戦闘能力を持っているということである。あのウィザースケルトンが習得者に当てはまるなら、戦闘に関しては群を抜いていることが察しられた。
だがウィザースケルトンは白い刀を鞘に仕舞うと、今度は幽霊でも見たかのように一目散に逃げ出した。再び俺は目を疑った。何故追撃を与えないのかと。すると首を斬りつけられたドラゴンが、突如としてパニックから解かれ、背中を見せるウィザースケルトンを凝視し始めた。おまけに鼻息荒く、口元に牙の列をあらわにするほどの興奮状態だ。小屋並みの巨体からか、先ほど与えられた斬撃はかすり傷程度で、致命傷になっているようには見えない。代わりにその斬撃が、フラッシュバンで引き起こさせたはずのパニック状態を解かせていた。むしろ怒りを買った様である。
――事態は悪化しているようだ
羽ばたき始めているドラゴン、そして逃げ出すウィザースケルトン。状況はサルでも理解できた。ドラゴンは目標を戦意喪失したマタルから、背中を見せるそのウィザースケルトンに向けた。熊に背中を見せて逃げると、追い駆け出すのと同じ『動物的本能』だろう。それが起爆剤に、ドラゴンは飛行を始めた。大型船のマストを彷彿させる翼をはためかせると、巨体を地面から浮かせ始めた。
――何がしたいんだ
疑問を感じる俺を他所に、ウィザースケルトンは飛び始めるドラゴンを確認すると、あろうことか木々の無い平原へ進路を変え始めた。草地立つ黒い身体は、正に自ら所在を教えるようなものだった。ドラゴンは牙を見せ、ウィザースケルトンの追跡を始めた。一方のウィザースケルトンはそれを引き金に、走力を上げる。確かに人外だけあって走る速さは随一だ。だが所詮は人間の成れの果てか、フル稼働のレッドストーン自動車を凌駕したドラゴンを振り切ることは出来ないはず。実際に自分が体験している。
俺はその光景を目に焼き付けると、手元のライフルを空に構えた。ウィザースケルトンの作戦が失敗したとみてこちらから再攻撃に転じることにした。ドラゴンは幸いウィザースケルトンに夢中になっており、俺の姿に気づいていない。そして潰れた片目は、視力を回復させていた。多少目の奥に違和感はあるものの奴を不意打ちで倒すことは可能だ。
飛び始めで速度の出ていないドラゴンに、俺は照準を当てた。今までは、鱗のある部位に射撃をし、簡単に弾かれていたが、対照的に腹部は刀の一撃を通していた。言ってしまえば腹は大して固くない。
――なら銃も効くだろう
地上からはがら空きの腹部に俺は銃口を向けると、しっかりと狙いをつけ、トリガーを引いた。サイレンサーなしの轟音が鳴り響く。そして次弾を装填して間を開けず第2射。同様の動作を行って第3射。計三発の弾をお見舞いした。もう一発撃つにはリロードの作業をしなくてはならない。
だが俺はその作業に徹しはせず、飛行中のドラゴンのダメージを確認することにした。スコープの側面の‘しぼり‘をいじり、倍率を調整する。そしてレンズにドラゴンの腹部を移した。尻尾の付け根辺りに、穴が三つ確認できる。首元に走る刀傷を除けば、俺が放った弾によるものだ。
――間違いない、銃は効いている。
巨大ドラゴンに対しては特定部位のみ攻撃が通るようだ。俺は銃の可能性が保証されたのを確信すると、リロードの作業に入った。視線はドラゴンに送りながらも、手は持前の魔法のカバンに突っ込む。そして5発分の弾を手に握ると、ライフルの弾倉に詰め込んだ。取り落すことなく、一発づつ。ライフルの背に空いた補充穴から投入した。
――よし、第二攻撃開始だ。
計5発――弾倉に詰め込める最大の数の弾が入ったライフルを、空を飛ぶドラゴンに構えた。狙撃し易いように、銃後部についたストックを肩に当てる。そして再びドラゴンの姿を、スコープで覗く。
だが今度のドラゴンの姿は、様子がおかしく見えた。俺が先ほど弾をお見舞いしてつくった傷、そしてウィザースケルトンが与えた刀傷からは、勢いを増した状態で血があふれ出ていた。指を包丁切ったとかその程度ではない、水道管を破壊したかのような凄まじい勢いでだ。ドラゴンの身体から血が大量に絞り出されている。
――何があったんだ!
敵であるドラゴンに俺は一言問いかけたくなった。だが向こうはそんな俺を他所に、飛行する高度を低くし始めた。降下する速さに、鷹がウサギを狩るような俊敏さは無い。むしろ羽を失ったトンボのように、力なく‘落ちて‘いっている。
「なあーッ! 貴重なドラゴンの血がーッ!」
離れたところで、腰を抜かしていたはずのマタルが声を上げている。確かドラゴンの血には身体能力増強の力があるとか。いわば薬の材料。それも高価な。
だが俺は地面に散布されたその液体を無視し、ドラゴンが墜落していった草原に駆けた。弾を込めたライフルで狙撃しようとかそんな事態ではない。あのドラゴンが疫病にかかっていたかどうか、今後の収入源にどんな異変が起きたか確認するために、草原に向かうことにした。おそらく金銭目的でか、マタルも草原へ駆け始めた。
「おいマタル! 腕は大丈夫なのか!」
目先で疲れ知らずに走り出すマタルに、俺は一声かけた。奴は抵抗した際に腕を大怪我している。アンデットとはいえ、放置していいかどうか問いただしたいものだ。
「おー! スティーブ君! 君こそ大丈夫なのかー!」
余計なお世話だ。俺は口にする代わり腕を振り上げ、異常がないことを知らせた。このサインが伝わったようで、マタルは首を縦に振った。
対する俺はドラゴンの方に向き直った。雲の浮かぶ青天に赤い巨体は見当たらない。単に木の影に隠れただけか、既に落ちたかのどちらかだろう。俺は血の跡を辿って草原へ急いだ。
――ドラゴンは既に地に落ちていた。
距離を開けたところに、ドラゴンが力なく倒れている。地に落ちてもなお、草地を数歩あるいたようだ。芝生に身体を引きずったような赤い跡がついている。だがそれも2、3歩進んだところで途切れ、その先で骨が抜けたかのように力なく倒れている。共に血の湖を増設されていた。
すると今度は、その巨体の影から黒い長身が現れた。敵前逃亡したはずのウィザースケルトンである。出血多量のドラゴンを前にし、警戒する様子はない。抜き身の長太刀を片手に無防備な首元へ歩み寄った。
そして徐に白い刀身を頭上に振り上げる。骨の背を弓なりに反らせる。
――まさか……
ウィザースケルトンは俺の存在を無視し、甲高く掛け声をあげると、大罪人を処刑するかのように容赦なく長太刀を振り下ろした。ライフル弾を跳ね返したはずの鱗は紙のように刃を通し、その下に隠れた肉と骨を容易く断ち切る。そして刀身が地面に着いたときには、ドラゴンの首根は胴体と分断していた。
、
「なんだその刀!」
死骸に駆け寄る俺は、ドラゴンの首を刎ねた刀を前に思わずその言葉を発した。対するウィザースケルトンは、今初めて俺の存在を察知したかのように、顔をこちらに向けた。
「お前どこの組の者じゃ」
一際ドスを利かせたトーンで、第一声を浴びせてきた。なんだかとんでもない輩と接している気がする。俺はそんな疑念を振りほどき、一言返した。
「ただの個人猟師だ。猟友会には未所属だ」
ドラゴンハンター達は基本、何かしらの集まりを形成し、いざ狩りに出る時はその会員同士で動くとか。大人数で行い効率を上げるのも理由の一つだが、何よりドラゴンの出現ポイントを共有、そして他団体に情報が漏れないようにするためとか。
こうしたドロドロした関係上、あのウィザースケルトンはそう問いただしてきたのだろう。だが本人は、俺の言葉を信じられないと言わんばかりに首をかしげる。
「未だ人間のお前がか? 嘘も大概にするんだな」
ウィザースケルトンは何も言わず長太刀を持ち上げた。そして乾いた血がこびり付いた刀身を俺の鼻先に向けてくる。刀から発しられているのだろうか、炎を近づけられたかのような熱気が顔を襲った。熱をもろに顔へに食らった俺は思わずその場から数歩後ずさった。
「おーいスティーブ君、ドラゴンはどうだったのー?」
その時、呑気にマタルがこの場に滑り込んできた。頼むからこの状況を腐った脳ミソで察してくれないか。
「お前も何者じゃ…ワシの何かを狙っているのか?」
ウィザースケルトンは俺の後方に視線を向け、口をカチカチと鳴らした。何もここまで俺達を疑わなくともいいじゃないか。
「あーいや、彼と手を組んでいるしがないハンターですよ」
マタルは左手で俺の方をポンポンと叩くと、人懐っこい笑顔をウィザースケルトンに向けた。
「なんだ、人間とモンスターで手を組んでいたのか。猟友会の者だったら信用できん」
疑り深いウィザースケルトンは確信したような態度を見せると、俺に向けた刀を地面に降ろした。並びに謎の熱気からも解放された。浮き出た汗が、吹き寄せた風を冷たく感じさせる。謝罪の言葉も欲しいところだが言うだけ野暮なもんだな。
「……そういやこのドラゴンから血が噴き出ていたが」
危うく話は逸れるところだった。
俺は目先に横たわるドラゴンを指さし、ウィザースケルトンに問いかけてみる。もしドラゴンの間に病気が流行っていたら、こちらの商売にも影響が出かねない。マタルも後ろで同調するように頷いた。
「コイツの力だな」
ウィザースケルトンはまた疑ろうとはせず、手に取った刀を持ち上げた。単に『斬ったから血が出た』とでも言うのだろうか。
「‘妖刀‘だ」
「スティーブ君、そんな病気ってあったけ?」
「おそらくだが……病気とは無関係のものだな」
妖刀といえば、エンチャントされたかのように超自然的な力を持つ刀のことだ。といっても刀自身が大量虐殺に使われたり、生前強い未練を残した怨念が取り憑くという過程を経て成るいうやや不気味なもので、実際に持つ力も未だ詳しく解明されていない。種類によっては持ち主自身に降りかかる場合もあるとか。いわば『呪いの品』。できることなら持ちたくない。
「この刀に斬られたら全身から血を吹きだすことになるぞ」
「うわぁ……血が勿体ない」
「せめて命とか大切なものに着目しろ」
あの刀の能力は『斬った対象に大量出血をさせる』類だろう。死体の身体には大して効果は無さそうだが、普通の生きている身体なら致命的な力だ。それを踏まえると、ウィザースケルトンの逃亡は、妖刀の能力でドラゴンが失血するまでの時間稼ぎだったということが察しられる。やはりコイツは只者ではないようだ。モンスターの頭も伊達ではないな。自分があの刀の餌食になっているところを想像すると、寒気が走る。
「とりあえず……ドラゴンが病気だったわけじゃないんだね?」
マタルはドラゴンに目を向け、ウィザースケルトンに問いかけた。
「無論、刀の能力で起こしたものだ」
ウィザースケルトンはドラゴンの首に片足を乗せ、誇らしげに長刀を頭上に掲げる。
「待て待て、じゃあなんでドラゴンの首を刎ねることが出来るんだ? あとその刀なんか熱かったぞ」
俺としてはドラゴンの疫病の疑念はとっくに無くなり、むしろウィザースケルトンの握る妖刀に好奇心を感じ始めた。ミステリアスな一品なうえ性能は武器の域を逸している。これほど不可思議を抱く物はそうそうないだろう。勿論妖刀を持つ気は無いが、そのかわり漆黒のベールに包まれたその能力とやらを把握したいところだ。
「企業秘密だ」
はっきりとした言い方の後、ウィザースケルトンは長太刀を背中の鞘に仕舞った。
――教えろよコラ
だが俺はその不満を訴えることばは引っ込めることにした。ヤクザ染みたこのウィザースケルトンに一々茶々入れたら何されるかわかったもんじゃない。処世術として、俺は‘シークレット‘の言葉を飲み込むことにした。
あの刀は能力じゃなくて単純に切れ味を得物にドラゴンの首を斬ったのだろう。サムライソードは実際それが随一と呼ばれているからな。
「よし、お前さんらにはこのドラゴンを運んでもらうのを手伝ってもらうか」
「なんか言った?」
「おい骨、何様のつもりだ」
初対面早々荷物運びとは……マナーの欠如にも程があるだろう。
形的には俺達が狩っているドラゴンをこのウィザースケルトンは横取りしたのだ。俺も追撃したりしていたが、ドラゴン死傷の大半の要因をつくったのは紛れも無くコイツだ。ドラゴンの死骸の所有権および責任はウィザースケルトンに移ったも同然なので、俺達がわざわざ荷物運びをする義理はない。
「この巨体だ、ワシ一人ではとても処理できん……」
「だから俺達が代わりに運べと?」
「否、このドラゴンの身体を分け合うという条件で‘ワシと‘共に運んでくれねえか?」
「交換条件か、その話乗った」
どうやら互いに翼やら爪を分け合うのを条件に、荷物運びを頼み込んでいるようだ。マタルは片腕を怪我しているということで身じろぎしているが、ドラゴンの身体全部コイツに持っていかれれば俺達の生活は難しくなってくる。
ウィザースケルトンがその境遇を知って‘はい‘か‘YES‘しか答えられない条件を出してきたかどうかは知らないが、俺達はこの条件に何があろうと乗るしかないだろう。
「じゃあ……ワシのヒョロヒョロした身体じゃ爪一本しか運べんのぉ」
「ついでに私は右腕を怪我しているからね……角一本がやっとかな」
徐にアンデットの二人はぼやきだすと、俺の顔を見てきた。まて、どういうことだ? 俺にこの小屋一つ分の化物を丸々一頭運べと言いたいのか?
「この人でなしが!」
「スティーブ君、今更何を言っているんだい? 私は元々人ではないよ?」
「カカカッ……若造、冗談だ。森の奥に荷車を隠してある」
「誰が若造だ」
ウィザースケルトンは無機質に顎を打ち鳴らすと、俺達が最初に周回していた森を指さした。この草原からは少々離れたところにあるが、奴の脚力なら取りに行くのに大して時間はかからないだろう。俺は目先に立つ木々を見咎めると、首を縦に振った。
「じゃあ俺達はドラゴンから鱗を引きはがしているぜ」
俺はマタルの店から持ち出した包丁やらバールをバックから取り出すと、ドラゴンの巨体に近づいた。
「待て待て小僧、そんなチャチな物で‘上級種‘の鱗ははがせねえぞ」
森に駆け出さんとばかりにしていたウィザースケルトンは、矢でも射られたかのようにその場で転倒した。
「……上級種ってなんだ?」
「私も知らないね」
立ち上がるウィザースケルトンは声を上げて驚きを見せると、何か痛々しいものを見るかのように頭を抱えた。
「お前たち、まさかそれを知らずに戦っていたのか?」
知らない物は知らない。騒ぎ立てるウィザースケルトンに俺達は返す言葉は無かった。
「あのなあ……お前たち、ドラゴンにもピンとキリがあってだなぁ……今ここに横たわっているのはドラゴンの中でも群を抜いて凶暴な個体なんだぞ!?」
なるほど、どうりで銃も効かないわけだ。俺とマタルは謎かけを解いたような面持ちで頷いた。
「いわばG級ってことだな」
「スティーブ君、G級ってなんだい?」
「前の世界の一部の地域で使われていた言葉だ。ドラゴンみたいな化物の等級を示すものでな……」
「お前ら早く作業しろ!」
肩を合わせて話し込む俺達に、ウィザースケルトンは居ても立っても居られない様子で歩み寄ってきた。そして腰のポーチから短刀を2本と打ち上げ花火を取り出すと俺達に手渡した。
「この短ドスでドラゴンの肉を切って居ろ、賊にドラゴンを取られそうになったらこの花火か銃声で知らせろ。わかったな?」
――承知した
俺がその言葉を返すと、ウィザースケルトンは焦りを半分募らせながら森に駆けて行った。俺達にドラゴンの番をさせるのに些か不安でも抱いているのだろう。そこまで賊の襲撃を懸念しているのかは知らないが、早く戻ってきてくれるならこちらとしても好都合だ。きっとこのドラゴンは高く売れるに違いない。ならそれを守る役が多ければ強奪を避けることもできるはずだ。
俺は遠くを走るウィザースケルトンをちらりと見た。馬も顔負けの速さで走っているので、あの調子なら数分で戻ってくるだろう。
その時俺は、ウィザースケルトンの走る先で横たわる自動車を目に留めた。俺がこの世界に来て初めて作った物で、初めて失った物だ。どちらもつい最近の話である。ドラゴンの処理が終わったら、部品を拾ってやろう。
俺は包丁とバールを仕舞い、短刀を引き抜くと、ドラゴンの腹に突き立てた。既に血は抜け切っているようで、俺の手は赤く汚れることは無い。解体は容易に進むように感じた。
ただ、このドラゴンを倒したのは俺でもマタルではない、あのウィザースケルトンだ。奴が仕留めたドラゴンで、俺がこうしてナイフを沈めることは無いはずだ。むしろ車を失い、怪我人を出した。この2つが俺の成果だ。これらを踏まえると言えることは一つ。
――今回の狩猟は、失敗に終わった
俺は悲観を抱き、歯を食いしばると、ドラゴンの腹を横に薙ぎ斬った。
以上になります。
ちなみに今回出たウィザースケルトンの刀は抜刀剣MODで知られる『SlashBladeMod』の刀をイメージしています。(登場した刀は全くのオリジナル)
あのMODって便利ですよね~アドオンと組み合わせれば深みも増しますし。
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