[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第三十話 着々と定まる狩猟体勢

結局ウィザースケルトンが言っていたことは分からず、一夜は過ぎて行った。バーベキューの後始末はマタルら関係者が行ったようで、俺の出る幕はなく、暫く古びたソファーの上に寝転がっていた。

 

――だが小僧、せいぜい気ぃ付けることだな

 

 ウィザースケルトンが店から出ていく時、急に足を止めて発した言葉が頭の中で反響した。エリートハンターの胡散臭いその一言はどうにも忘れられるものではなかった。何を気を付けろを言うのだ。上級種ドラゴンか資金の無駄使いか、それとも魔術の運用についてなのか、考え出したらきりがない。

 単に深く捉えすぎではないかという意見も一理ある。ドラゴン狩り自体危険なことだ。ドラゴンか資金の問題のどれか限定して警告したのではなく、もう俺が考察するようなこと全てについて示していたのかもしれない。

 だがメディアにも死者数が大きく報じられるそのハンター職の危険性など、当に分かりきったことである。資格取得の試験の時から耳にタコが出来る程聞かされていたことだ。それが今更何だと言う。偏屈なウィザースケルトンがそんな初歩的なことを、わざわざ足を止めて警告するのも何かと矛盾している。

 ともすれば何を奴はほざいていたのだろうか。

 もしかして世間一般に広まっていることや、俺が真っ先に考察したこととは全くの認識外のことについて言っていたかもしれない。

 例えば上級種の出現が奮発する虎穴があったり、複数のドラゴンが連携して襲い掛かってくる場所の存在についての危険性とか。そんな初心者には恐ろしいゾーンがあったとしても、プロのハンター達はおそらく『一攫千金を狙える場所だ』と危険性より討伐成功による利益を優先して、第三者に公表していない可能性がある。もし知らずにそんな場所にズカズカ入り込んだら餌になること待ったなしだ。

 現に俺達が個体数の少ないという上級種に遭遇した現場にも、何故かあのウィザースケルトンが居合わせていた。普通どんなにハンターが集まって居ようと生態上出現するドラゴンは一体だけになるのだから、利益を優先して狩猟をする場合、既に先客のいる狩場からは数㎞離れた場所に移動するのが模範解答だろう。自らの狩猟法を隠蔽するハンターならなおさらだ。この暗黙のルールに当てはめると、あの時ハンター達は周囲には居なかった、または居たとしても戦闘に介入できる距離には存在しなかったはずである。

 だが不自然にウィザースケルトンは俺達の狩猟に乱入した。あの時は上級種に追い詰められ、俺達もピンチであったから通りがかりのハンターが助太刀してくれるなんてこともあるだろう。

 しかし実際にやってきたウィザースケルトンは業界で狩猟法が黒いベールに包まれていることで有名で、性格もプライベートで接していたから分かる通り‘手段は選ばない‘ひねくれ者だ。それがわざわざ他のハンターと同じ場所で狩りをするのもおかしな話である。暗黙のルールが煩わしかったにしても、奴の脚力と体力なら俺達のいない別の場所へ大して時間もかからず移動できるし、そこで狩りをした方が、自ら技を晒さずに済むのでなお合理的なはず。

 しかしそれでも、俺達のいる現場かその近辺に居たのだ。そうと成れば何故いたかの理由は一つだけ挙げられる。特に奴なら大いにあてはまることだろう――

 

――あの現場が上級種の出現ポイントだったのだ。

 

 普通のドラゴンではなく、個体数の少ない上級種をウィザースケルトンが標的にしていたなら合致が付く。上級種は地域で生息している数が少ないのだから当然探し回る手間も普通の個体以上に手間がかかる。鉱山でダイヤモンドを探し出そうとするのと同じようなものだ。原石一つ探すために迷宮を作る程の石を掘り出す必要があるだろう。

 こうした理由から、欲深なウィザースケルトンは市場で高価な素材となる上級種目当てになおあの場に居座っていたに違いない。

 そして、ともすれば俺達の狩猟の一部始終を傍観していた可能性もある。あの場に張り込んでいたのなら、乱入なんて俺達が自動車を吹き飛ばされてピンチになる前にもできたはずだ。ドラゴンは出現してなおずっと俺達に目を向けていたのだから、こっそり近づいてフラッシュバンを投げることも出来たはずだ。エリートハンターならなおさらだ。

 だがそれでいて何故かヒーローのごとく人が危ない目に遭った時にのうのう登場しやがって。確かにその方が後から『救援に来ていただいてありがとうございます』とか言われて、形として獲物を横取りしたのも黙認されてなおいいだろう。それ以外のタイミングでやってきたら他人の狩っているドラゴン、それも希少な個体を横取りしたバカ野郎だ。

 ああ! だからバーベキューの後に「せいぜい気を付けろ」とか言っていたのか! やっと合点が付いた! 嫌味で俺達に下手な狩猟をするなと言っているんだなクソッたれ!

 んでもって大部分分けてもらったドラゴンの素材はお悔みかってこの野郎!

 

………

……

 

「いや~新しい腕は便利だねぇ」

 

 ウィザースケルトンのことはとっとと忘れ、俺は気ままに鎧の製作を進めていた。だがそれを遮るようにマタルの独り言厨房から届いてくる。

 

「……お前何やっているんだ?」

 

 上級種ドラゴンの鱗を使用した鎧が完成する間近、俺は工具を動かす手を止めて尋ねた。

 自分の工房と化した居間から厨房の出口を見やると、湯気の上がる大窯の前で、あたかもトレーニングをするようにマタルが右腕を振り回していた。ただその腕は、白紙の上に溢したインクの様に真っ黒な色合いをしている。

 

「ハンドメイドした腕を移植してね~」

「ああ、お前腕を怪我していたな」

 

 確か狩りの時、上級種相手に拳で立ち向かって見事右腕を故障させていたはず。あの時は‘斬りの黒‘の乱入もあって現場が混乱していたから俺はほぼ認識していなかったし、その後怪我をしていたと本人は言っていたものの、アンデットは頑丈な身体だから大した問題ではないだろうと絶賛放置していた。

 が、マタル自身は不便に感じたようだから、今のように腕を換装したところに至るのだろう。その腕はマネキンのように平坦で特徴に乏しいが、トカゲの尻尾のごとく無拘束に動いてるがため、アンデットの顔以上に不気味さが感じられた。

 

「腕なんてどうやって付け替えたか気になるが」

 

 そもそもロボットじゃあるまいし、腕なんてとっかえひっかえ出来る訳無いはず。俺は再び真っ赤な鎧に向き直りながら、そんな素朴な疑問をマタルに投げかけた。

 

「そりゃ‘黒魔術‘を使ったんだよ」

「……クロマジュツってあの黒魔術か?」、

「いかにも、黒魔術だね」

「お前魔法を使えるのかよ……」

「申し訳程度のものだけどね」

 

 予想外の回答に俺は思わず鎧のネジを取り落した。魔法と言えば生首の技を見て以来、俺が研究している分野ではないか。それも黒魔術ときた。アレは名前から察する通り悪魔悪霊云々が関わる禍々しい術だ。生血で何か不道徳なことをしたり、夜な夜な他者を呪うといった忌まわしい詳細がありと、法的に厳しい部分が目立つ。

 言わば危険薬物を調合してそれを服用しようという位とんでもないことだ。

 

「あーいやいや、悪用しようと思っていないからね!」

 

 怪訝な視線を送る俺に対し、マタルは撤回するように手を横に振った。

 

「そもそもこの町なんて住民大体が君たちで言う‘ソロモン72柱の悪魔‘みたいなもんでしょう? 一応黒魔術も医療の現場に役立てられているし、そんな汚物みたいな認識することないって」

 

 そう言われてみればそうだった。スケルトンにゾンビ、ヴァンパイアに狼男、どれも空想上の醜い化物でイメージカラーは心理学で不快を表す‘黒‘がいいところだ。

 あてつけにしろどうにしろ黒魔術なんてマタルが言うとおりこの世界だと地上の大気くらい身近な存在である。いざこの場でそれが実行されていたにしろ、大して気にすることでもないか。

 

「まあ……そういうことにするか」

 

 第一前の世界なんて『化学物質』とか『銃』とか言った物理的に厄介な物で溢れていた。そんな場所で生きていた俺が今更黒魔術で騒ぐのも馬鹿馬鹿しい。俺はどっちもこっちも危険物はさまよっている。自分の置かれている環境に変化が無いことを察すると、いくらか肩の力が抜けていくような感じがした。

 と言ってもマタルがいざ反乱を起こしたら対処の使用が無いので後で銀製品でも買いに行くことにしよう。

 

………

……

 

「いらっしゃいやせ~……って旦那じゃありませんか」

 

 太陽が燦燦と照る青天の下、俺は正体不明のキノコが自生するドアを引き、埃っぽい店内に足を踏み入れた。武器の棚が乱立する林の奥地で、スケルトン『白波』が猟銃を丁寧に磨いている。

 前回来たのと同様に、客が誰一人としていない寂れた武器屋であった。

 

「寂れた武器屋ってどこのことですかい」

「知らん」

「相変わらずの無愛想な態度で……今回はどのような御用で?」

「数点物を買いに来た」

「はいはい~どのような物で?」

「狩猟具と……銀製品だな」

「はぁ~銀製品とは~アンデットの大敵ですな。それでそれで、狩猟具とはいったいどれをご所望で?」

 

 本当ならこんな陰気な武器屋に来ていないで大手の店を利用するわけだが、新たな狩猟具の購入も相まって今日はここに訪問することにした。バーベキューパーティーで売っていたナイフは勿論、ハンターの間でこの武器屋の商品は高品質で有名らしい。信頼性に至ってはこの店を覗くのが合理的であるはずだ。

 横の棚に並ぶのは相変わらずの剣と槍と刀、だが俺が購入しようと思っている狩猟具はそれではなかった。おそらく倉庫の方に引っ込ませているのであろう。俺は事前に調べた商品の名前を白波に伝えた。

 

「ほほ~随分と風変わりなセレクトで」

「お前の店しかこんなもの取り扱っていないだろ」

「御尤もです~」

「なら早く商品を出せ」

「そんな強盗みたいにならなくていいですから、出します出します」

 

 白波は不気味に顎を打ち鳴らしながら、前回パワードレールライフルを頼んだときと同様にカウンターの向こうに引っ込んでった。ただし奥からまた破砕音が響いてくることは無かった。そんな危険な商品を頼んだ覚えはないからだ。

 白波はいくらも経たないうちに、手に収まる程度の小箱を抱えて戻ってきた。

 

「こちらでよろしいですかい?」

 

 白波は木製の箱を俺の目の前で開けて見せた。そこには確かに俺が頼んだ‘商品‘が入っていた。調べた物と瓜二つ、申し分ない。

 俺は魔法カバンから財布を取り出すと、エメラルド硬貨を三枚カウンターに積む。ナイフと新しい狩猟具の値段を丁度足した数だ。

 

「はいはい後銀のナイフを2ダースですね」

「袋は要らん」

「かしこまりました~」

 

 白波がコインを引っ込めると重なるように、俺は木箱を手に取って大容量の鞄に押し込んだ。同様にカウンターの下からちょうど以前買った果物ナイフと同じくらいの長さのナイフもケースに収まって出されたので、いそいそとまた袋に収容した。

 

「他に何か買う物はありますかい?」

「無いな」

 

 コイツと同じ空間にいるとそのうち蕁麻疹が出る気がする。俺が口早に告げると、半分逃げるように店の出口に足を進めた。この後雑貨屋にも寄る予定があるのだ。長くいる訳にもいかない。

 

「ああ、そうだ旦那!」

 

 だがその時、奴が俺を引き留めるかのように声をかけてきた。何を言う気か知らんが、どうせ他愛ない世間話だろうから無視して出ていくことにしよう。俺は足を止めず、錆びたドアノブに手をかける。

 

「魔法を狩りに使うんでしたっけ?」

 

 開こうとしたドアを俺は半開きの状態で止めた。

 何で白波はこの話を知っているのだろうか。俺はこの世界に来て以来自分の生活を話題に出した覚えはない。ましてやハンターの商売に関わる狩猟戦法については特に。俺のプライベートは基本的にはシークレットのはずだ。そのため何故それを奴が言っているかは俺には理解できず、自ら足をとめておきながらも返答に困惑した。

 

「黒崎から聞きましたよ~魔法書を作成していたとか」

 

 ああそうか、あのウィザースケルトンから聞いたのか。

 ‘クロザキ‘という聞き慣れない名称に一瞬戸惑ったが、‘魔法書‘のワードが出たところで検討が付いた。あの野郎、自分で狩りのことは口に出さないとか言っておきながら他人の情報は堂々漏えいさせやがって。ドアの前で俺はあからさまに舌打ちをした。

 

「図星じゃないですか~このこのっ」

「黙れ」

 

 今度こそこの武器屋から出よう。高品質の商品以外は益々不愉快に見えてきた。俺は叩くように半開きのドアを開け放った。薄暗い店内に居たばかりに外の日差しが眩しい。

 しかしそれも、拒絶感にさいなまれ、時より突き抜ける風程どうにも感じなかった。

 

「あー!あー! 待ってくだせぇ待ってくだせぇ! コレあげますから許してくだせぇ!」

 

 今更謝罪をしても遅い。だがそう思った瞬間、後ろから何かが飛んできた。弁解の言葉と人に物を投げつける動作に矛盾を感じながらも、反射的に振り返り飛んできた物を手につかむ。この野郎一体お前は何様なんだ。俺は真っ先に店の奥にいる白波を睨みつけた。

 

「次狩りに行く前に、絶対に目を通すように!」

 

 憤然とする俺を気にしない様子で奴は、飛んできた物を指さした。そういえば何が飛んできたのかは確かめていなかった。怒りを沸々とわかせながらも手に収まる物に視線を流す。てっきり石つぶてか矢でも飛んできたのだと思っていた。が、手に握られていたのは一冊の本だった。

 

「……そうか」

 

 本を投げるのにまず一言問い詰めたいが、それ以前に何故奴が俺にコレを渡したのかに疑問を抱いた。しかし、奴と会話を交わすのは今回の魔法の件みたいに情報漏えいをさせられそうなので言及はしないことにしよう。

 タダで物が貰えたからそれで良しとしよう。

 俺は奴がこれ以上何も言わないのを確認すると、軋むドアをバタリと閉めた。

 とりあえず今は読書以外の別のことを進めなければ。

 

………

……

 

「よーし、鎧の大部分完成したぞ」

「お~カッコいいね」

 

 帰り道に雑貨屋で仕入れた素材を組み込んだところで、ようやくレッドドラゴンの鱗を張り付ける作業が終了した。そして薬屋に木製スタンドで飾られた鎧は、ドラゴンの真っ赤な鱗を張り付けられた故に、場違いと思わしいほどの存在感を放っていた。

 丁度差し込んできた夕日が、ルビー色の鎧を一段と輝かせている。ドラゴンの鱗はネックレスやイヤリングといったアクセサリーに使用されることが多いため、それを多く積み込まれた鎧はこうも宝石の如く光を発しているのだろう。作業が達成された高揚感と共に、今更ながらドラゴンの素材を贅沢な使い方をしたなと市場で売却しなかったことを後悔した。とはいえダイヤモンドで武具を作ることだってしたから、今更どうということでもなかった。

 するとあろうことか、工芸品ともいえるその鎧にマタルが手を伸ばす。

 

「汚い手で触るんじゃねェ」

「ヒィッ!」

 

 俺は慌ててその漆黒の腕に、買ってきた銀のナイフを突き付けた。

 

「それって銀のナイフじゃん!? アンデットに何を向けているんだい!」

「うるせぇ汚らわしい、言っとくがこの鎧はまだ‘未完成‘だ。気安く触られちゃ困る」

「え!? まだ完成してないの!?」

 

 ナイフの当たった腕から電撃が走ったように火花が散ったが、マタルは目の前の鎧が未完成であることの方に驚きを見せた。

 確かに鱗でコーティングした鎧は誰がどう見ても完成したと解釈するし、理論上この状態でドラゴンの攻撃を凌ぐことも可能だ。

 しかし、狩猟に運用するよならばこの状態ではまだ問題がある。俺は腰につけたバッグから、雑貨屋から仕入れた物を一つ取り出した。

 

「……スティーブ君、今手に持っている物は何だい?」

「何ってペンキだ。ホームセンターゾンビから買ってきたごく普通のお手頃価格な品物だ」

「いや、それは分かるけど……家のペンキ塗り替えはまだ先の話だって」

「お前は何を勘違いしている。このペンキはこのボロ屋じゃなくて俺の鎧に使うんだ」

「え!? ちょっと何する気? そのペンキ明らかに沼地のような緑をしているけど」

「そりゃお前が察していると通りこの鎧を迷彩色に染め上げるんだ」

「うわー! このまま売れば大儲けなのに!」

「やめろ」

 

 俺は舞台衣装のように派手な全身鎧に対し、深緑のペンキの詰まった缶とハケを構える。

 ゲームの勇者を彷彿させる鎧は男のロマンを刺激してくれるが、血で血を洗うドラゴン狩りではこんな鎧を付けて居ては目立って仕方がない。

 

「考えてみろ、ランタンのようにピカピカ光っているのがドラゴンの生息域をほっつき歩いていたらどうなる」

「そりゃあドラゴン直々にやってきてくれると思うから、探索する手間は省けるかと」

「アホか、気付かれたらどうやって撃退する気だ」

「そりゃあ私が赤鬼さんから教わった秘術で」

「お前は何時から‘斬りの黒‘になった。ちょっと思い出せ、前の狩りの時ドラゴンはどうやって現れた」

「そりゃあ空から急降下してきたね」

 

 流石のマタルも4日前のことは忘れていないようだ。俺は赤い鎧の目の前で、認識の食い違いが無いことを確認するとさらに言葉を続けた。

 

「いわばあれは‘奇襲‘だ。俺達の死角を狙って攻撃をするというな」

「死角といっても、大体私たちは寸前で気付いて回避してたじゃん」

「まあ、対処は出来るにしても俺が言いたいことはそれではない」

「え? 違うの?」

「ドラゴンの戦法が急降下攻撃だとして、お前は超接近攻撃。肉体と肉体がぶつかり合う戦法をお前は有利に進められるのか?」

「……まあ、赤鬼さんとかゴーレム系の方々がよくするらしいけど」

「アイツらならできなくもないが、お前だと難しい」

「な、なんで!? 武器を用意せずに戦えるんだからそれなりに経済的でしょ!」

「馬鹿野郎、漫画じゃあるまいし殴りかかったら吹っ飛ばされるに決まっているだろ」

 

 確かに人外ならばドラゴンが地上に降りて突進を仕掛けてきたらかろうじて対応できるかもしれない。しかし空から勢いをつけて降りて来たなら絶対に止められないだろう。

 何せドラゴンの体重は普通の個体でも5tは越え、それが空から翼の揚力や重力で加速をして突っ込んでくる。そのエネルギーをを人間一人サイズの者が抑えようなんて正気の沙汰ではない。何せ世界最大の戦艦の徹甲弾でも主さは1.5t程度。対するドラゴンは約3倍の重さで突撃を仕掛けてくるであろう。ついでにある程度の位置補正も伴って。

 

「高性能ミサイルだと思ってもいい存在だ」

「コウセイノウミサエル? 私たちに分かる言語で話してくれないかな」

「あーはいはい」

 

 この文明の世界に在住しているマタルに‘ミサイル‘なんて言ってもわからなかったか。だがどちらにしろ回避以外に避けることが出来ない攻撃だということを理解していただかねば。

 

「とりあえず……だ、エメラルド硬貨が大体32258枚が落っこちてくると考えておけ」

「な……なんてドラゴンは恐ろしいんだ」

「それで理解できたお前にも畏怖を感じるが」

 

 コイツにはとりあえず金の数字を挙げておけば大体解釈できるであろう。というより一番わかりやすい例えになるだろう。マタル限定であるだろうが。

 

「まあ、それがわかったら俺達は今後狩りではコソコソ動いてあらゆる下衆な手段でいいからドラゴンを仕留めるんだ」

「ええ~! なんか嫌だよ!」

「何をほざいている、空を飛んでいるドラゴンだって十分卑劣だろ」

「そうだけどさ……」

 

 ミサイルに標準を付けられてはこちらは不利だ。車を弾き飛ばした上級種を見ればそれは一目瞭然である。というわけで鎧も泥色といった目立ちにくい色にして、先陣のハンターの方々みたく接近戦を演じようとはせず、遠距離から長銃で確実に仕留めようというのが次の狩りでの魂胆である。

 

「そういうわけで、鎧は私色に染め上げるからな」

「あー! そんなー!」

「黙れ! 俺達はコスプレ大会に行くわけじゃないのだぞ!」

 

 マタルと口論を交わした俺は、芸術品とも並ぶドラゴンの鱗製の鎧をこうしてドブに放り込んだと錯覚するくらい汚い色に染め上げたのであった。マタルにはわからんだろうが、現代の軍隊だってこんな色の戦闘服で戦地を駆け抜けている。周囲の物……主に草木に紛れ込むための『擬態』が理由の一つだ。この『擬態』は人間に限らずカメレオンや虫といった生物も生き抜くために行っている。

 このように『擬態』は生死を問う世界では用いられる常識だ。その効果は色を変えるだけで大きく変化する。良くも悪くも。一々ファッションに期待しようなどと戦を甘く見ないでほしい。

 

 こうしてマタルの使用する赤いヒーロースーツもグリーンに変化したのであった。およそ30分後の話である。




おまけ キャラ紹介

酒呑童子
・性別  男 ・種族 鬼
・年齢 1000年位はある ・身長 250㎝
・好物 酒。日本酒が特に好きだが今は「びぃる」とやらに夢中だ。
・特技 喧嘩。と言いたいがデカい古傷が二つ程あるんで休戦中。趣味の酒造りの方が勝っているかもしれん
〔一言〕
 難しい名なもんだから大体周りは『赤鬼』とよんでいるな。自分と同じ名前の居酒屋を開た結果紛らわしくなったのも原因かもしれん。黄昏の森の‘ひどら‘と酒を交わそうと思っているが奴はなかなか了承してくれん。
 こう見えても昔は色んな場所を巡ったものだ。同族が天狗と河童達を統治していたあの山はなかなか楽しい場所であった。
 が……大枝坂と言えば……畜生あの卑怯者共が!

以上になります。

ああ……今回はプロットではワンシーンで解説しようと思っていた回なんですよね……それを無理やり一話分にしたから執筆に苦労した……ガクリ

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