[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。 作:えだまミィカン
俺は実験場に建造した『TNT式岩盤破壊装置』のディスペンサー一つ一つにTNTを詰め込んでいく。カバンからTNTを取り出してはディスペンサーに詰め込む。詰め込んだら次のディスペンサーへ移動。これを繰り返していきすべてのディスペンサーに詰め込むまでには丸二日かかった。夢にもディスペンサーとTNTがでてきて気力はすり減り今はイライラしている。
しかしその努力が報われる時がきた。
目の前の石のスイッチ、安全のためにつくられた黒曜石製のシェルターの中にあるそのスイッチを押せば装置が作動し岩盤をぶち破る。
これで俺の第3の人生が始まる。
そう考えながら俺は拙いつくりの石ボタンを押した。
ボタンから丸石製の足場の上にあるレッドストーンを発光させる動力が送られる。
動力はいくつかのリピーターを通してどんどん流れていき
ところどころにある丁の字の分岐点で別れる
そして計算しつくされたリピーターの遅延によって縦に積み上げられた全てのディスペンサーがほぼ同じ時間に動力を受け取る。
動力を受け取ったディスペンサーはカチッという音とともに着火されたTNTを前面に吐き出す。
天辺が見えないくらい高くまで積み上げられたディスペンサーからTNTが出てくる光景は滝を彷彿させるものだった。
そして大量の吐き出された着火済みのTNTはシェルターからは見えぬ目標の岩盤まで落ちていった。
あのTNTは4秒後に爆発する。それまでの時間はとても長く感じた。
あのTNTがディスペンサーから吐き出されて1秒たった。
俺は黒曜石の部屋に備え付けられた鉄格子から装置の稼働に問題が無いか確認した。
あのTNTが着火されて2秒たった。
俺は衝撃に備えて姿勢を低くした。
あのTNTが落下していってから3秒たった。
石ころが一つ転がり落ちる音がした。
あのときから追いかけてきた目標が達成されるまで後1秒となった。
俺は岩盤が無事破られることを願うばかりだった。
TNT爆発までのカウントが0になった時
地下深くから響いた、
上にある村をも揺るがす衝撃が。
辺りの岩が崩れ落ちていくのが、シェルターの鉄格子から望まなくともわかった。
シェルターは巨人に巨大な金槌で叩かれたように揺れた。
そんな爆発を起こしたのはクリーパーでもガストでもない。
俺だ。
爆発を起こした当の本人でもこの衝撃だと寿命が縮むような気分になった。
(おっそろしいな…)
そうしてヒヤヒヤしながら両耳に手を当て床にうつ伏せになっているうちに爆発がやんでいた。
果たしてTNTが岩盤をやぶることができたか、
俺は確かめるためにシェルターの下から伸びる梯子を降りて行った。
いつもだったら梯子なんて煩わしいもの使わずに水なりスライムブロックなりクッションにして自由落下という名のエレベーターを利用するが、今回の場合は最下層の岩盤付近の空間が爆発によって空洞が崩壊している可能性がある。そうなると気を良くしてダイビングした先がクッションではなく瓦礫の刃が待ち受けていることもあるだろうから、引き返しの利く梯子を選んだのだ。
梯子はそれはそれで長かった。
村が燃えていたときの梯子もそうだったがこうして先がどうなっているかわからない梯子は
長く感じるものだ。装置を無理矢理設営した空洞に足を一つ一つ下の段に踏み下ろす音が鳴り響いた。しばらくその梯子で下に向かう運動を繰り返していると膝がジワジワと痛みだしてきた。
(まあ夜に受けたスケルトンの矢よりはマシなものだが。)
そうして自分を奮い立てていると梯子の終わりが見えてきた。火薬の独特の臭いが鼻にツンとくる。生体不明の爆弾魔から必死で逃げた時の夜戦の臭いを無視して下に降りると、事前に鉄骨で補強された最下層が崩れずそのままの姿を残していた。
「や、やったか?」
以前の採掘場の面影を残したホールの様な空間には爆発による煙がまだ残っていた。
― 冒険していた時にお邪魔した城の主はこの状況で平然と立っていたんだよな…
冒険家の時代に苦戦を強いられた時の光景が、今現在目に映るものと重なって思考の片隅に不安の文字があがる。
「んなこと考えても仕方ないな。うん、そうだ。」
自己暗示で不安を噛み殺し爆発があったところの中心に足を踏み出してみた。
右足を踏み出すと真っ黒の爆発したTNTのカラが足に潰されバラバラになった。
左足を踏み出すと砂利が床と擦れ耳障りな音を出す。
そしてもう一度右足を前に出すと
俺には信じられない光景が視界に入った。
あの岩盤にぽっかりと穴が開いているのだ。
恐る恐る直径は約一メートルの穴に近づいてみる。そうすると真っ暗な空間、あのエンドでも見たような底の見えない謎の空間見えた。
なんとか入ることができそうだ。
まあできれば入るのは御免だが。
いざ得体のしれない光景を目にしてみると躊躇いが出る。
深さを測ろうと近くにある石ころを穴に落としてみるが底に当たる音は一向にこない。たぶん底なしなのかとても深いかのどちらかだろう。
「あ、でも下見に行く程度なら大丈夫か。」
見たところモンスターの気配も無いし折角岩盤に穴を開けたんだからここは行くのが冒険家だろう。
そうして男は「岩盤の下に行く」という方針はずらすことはなく下見の準備にかかるのであった…
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穴の前には全身ダイヤの鎧に身を包み、腰に剣や弓そして古びたカバンを提げた男がいた。
「鎧よし。」
鎧の膝や胴などを叩き、自分の身体を守る上で問題は無いか確かめる。衝撃で鎧はずれたりがたついたりすることは無くいつも通り使えそうだ。
「武器よし。」
何時どんな事態でもすぐ取り出せるように皮のベルトに下げたエンチャント済みダイヤ剣と襲撃以降に新しく用意した弓の位置を確かめた。剣を抜き放ち弓を構える際に違和感を感じることは無さそうだ。
「カバンの中よし。」
松明は必要な数ある。食糧は日持ちするクッキーが余分な数詰めてある。エンチャントはされていないが新品のダイヤのツルハシが入っている。ついでにいざという時のために金のリンゴとダイヤブロックがいくつか用意してある。
「ロープよし。」
岩盤の下に広がる奈落に垂らされた命綱は頑丈な鉄骨にくくりつけてありこれが外れて落下するような間抜けな目には会うことは無いだろう。
「全部よし!」
男は景気づけにポーションをグイッと一杯飲み、深呼吸をして岩盤の下へ少しずつロープで下っていった。
岩盤の下は光も届かずとても寒い空間だった。
しかし各地を冒険して身に着けた屈強な体はその程度の寒さに大した影響は感じなかった。
ついでにいうと景気づけに飲んだポーションは『再生能力』を高める効果があり軽い怪我なら直ぐに治るようになる代物だ。
例え下から何匹ものスケルトンに狙撃されても逃げることは確実にできるはずだ。
「せいぜい寒冷地に届くのがやっとだな。」
そうつぶやきながらボチボチ太いロープを降りていく。
それまでその考えが『慢心』になるとは思ってもいなかった。
「………っ!」
全身に引き裂かれるような感覚が走ったのだ。
周りには闇が広がるだけで攻撃してくる者はどこにもいない。
何が起きているかわからず混乱していく中、鎧も関係なく身体がズタズタになっていく。
ポーションの再生能力強化の効果も追いつかない。
口の中に血の味が広がる中、反射的にボロボロになった手で何とかロープを登ろうとした。
しかしロープを握りなおした途端手首から先が消えた。
そして男は悲鳴をあげる事も何もできず残った肉体と共に意識を虚空へ飛ばしていくのであった…
多忙なため投稿が遅めなりました。申し訳ございません。
仕事中にも妄想ゲフンゲフン構想は組んでいっているので後は文章にするだけ。
なんろかペースを立て直していくようにします。
そしてご感想ご指摘お待ちしております