[Minecraft] 俺はスティーブ、クラフターだ。   作:えだまミィカン

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第五話 謎の豚

身体が先切れたのは生まれて始めただった。

そもそも普通そんな体験しないし俺の場合は矢が肉を貫いたり剣が背中を縦断したくらいのものだ。

一番新しい記憶は自分の右手が消し飛んだ光景だった。

それ以降は覚えていないがおそらく脚や頭も消し飛んだだろう。

…ってこれ死んでいるがずだよな。

なんでこうして意識があるんだ。

身体には感覚が戻っていないが。

死にかけた時はこんな状態になったが、ロープで降下していた時周りに人はいない。救出されるはずもないので『死んだ』というのが模範解答だ。

「死んだら意識も感覚も戻らず土に還る。」

というのは聞いたことがあるが意識は一応あり、考えている状態に当てはまらない。しかし生きているというのも説明できない。

一体これはどうゆう状態なんだよ。もしかしてゾンビになっているんじゃ――

 

「ゲッホゲッホうおっえっほっ」

 

いきなり何かを吐き出すような感覚が身体に戻ってきた。喉がイガイガして咳がしばらく止まらなかった。そしてようやく収まったとき周りを見てにハッとする。

どうやら俺は何者かに運ばれたようだ。

真っ赤なリンゴが一つ乗った古いテーブルやなんども踏みつけられた床材などの生活の痕跡がソファーから身体を起こした状態でわかる。

木造の薄暗い室内を見回していると、

 

「おお、やっとおきたんだね。」

 

穏やかな抑揚で横から何かに声をかけられた。

喉を抑えながら声の聞こえた方向へ振り返ってみるとそこにはのボロボロの服にシミだらけの白エプロンを身に着けた人――ではなく顔や身体の肉半分がこそげ落ちた豚の人間、ゾンビピッグマンが立っていた。

 

「っ!」

 

化けものを前にして腰につけた剣を引き抜こうとするが

剣はついていない。

もしかしてと思い反対側につけた弓を構えようとするが

手は空をきる。

どうしようもなく俺はソファーから飛び上がり豚男に向かってファインティングポーズをとった。

だが「まあまあ落ち着いて。」と抑えるように言いこちらを襲う動きを見せない。

それもそうだ。相手は基本襲ってこない中立の生態だ。「すまない。」と言い頭の中でモンスターに対してピリピリし過ぎた自分を叱りつける。このまま殴ったら仲間を呼ばれてタコ殴りにされていただろう。

ため息をつきながら後ろのソファーに座り込む。

「アンタが俺をここに連れてきたのか。」

感傷に浸る自分を頭の片隅に追いやり目の前の相手と対話することにした。

「ああ、そうだよ。家の近くで倒れていたから介抱したんだ。賊に襲われたんだろう?ピリピリするのも仕方ない。」

リンゴの乗ったテーブルの横にある椅子に座り込みそう言った。争う気は無いという気持ちの表しなんだろう。

「そうか、異種族の俺なのにありがたい。……家の近くで倒れていた?賊に襲われた?」

豚の最後の言葉に疑問が走る。

「ん?賊に襲われたんじゃないのか?こんな森奥深くに空っぽのカバン以外装備なしで倒れていたからてっきりそうだと。」

状況が呑み込めず疑問が増した。

―森の奥深く?

―手ぶらで倒れてた?

―賊に襲われた?

―私の家だぁ?

外を見ると夕は既に暮れていて真っ暗だが青い木の葉が確認できた。確かに森だ。だとしたらここは彼の家なんだろう。

嘘はついていないようだが意識を失った時の状況と今の状況が一致しない。

「あ―今とても混乱しているんだが…とりあえず俺の話を聞いてくれ。」

とりあえず俺が村を失い岩盤でバラバラになるまでの経緯を話した。話している間豚は残った顔半分を時折驚いた表情にした。

そして俺がすべて話終わると、

「もしかたら…異世界から来たかもしれないね。」

豚は考え込んだ後サラッとそう言った。

「異世界ってネザーとかジ・エンドか?」

俺は昔赴いた二つの別世界の名を言葉にした。

「いかにも。『ネザー』は向こうでは『インフェルノ』と呼ぶが。『ジ・エンド』は聞いたことがないけどたぶんそちらと違う名前で知っているだろうね。その二つ以外にも異世界はあってそれも専用のゲートから本、空間の歪みに限らず色々なもので行き来できる。君は岩盤の下にある『空間の歪み』にでも引っかかってここにきたんだろう。」

なんだか目の前の豚は顎に手を置きズラズラと仮設を並べていた。

次元が違い過ぎて俺の頭じゃ全部理解できそうにないがとりあえず何かの拍子にここに転送されたということは頭に入った。…いや、なんでバラバラの身体は元に戻ったんだ?ネザーやジ・エンドでの行き来でそんな特典はついてこなかったぞ。持ち物が無くなったのはたぶん意識を失っているうちに賊に盗まれたんだろうが。

謎が謎を呼び更に困惑する。すると

「また何か考えているのかい?知恵が必要ならこれを食べるんだね。」

豚はそういうと横のテーブルにあるリンゴを一つ渡す。

俺はそれを受け取りいつもするように皮をむかず豪快にかぶりついた。シャリッという音と共にさわやかなの香りと甘さが口に広がる。

向こうも同じようにかぶりついている。相手は化けものだがこうして同じ物を食べていると何かと親近感が湧く。食べているリンゴが芯だけになると、

「自己紹介がまだだったね。私はマタル、ドルーク…そっちで言うゾンビピッグマンだ。ポーションをよく作っている。」

そういうとマタルは手を差し出してきた。

「恩人なのにピリピリして悪かった。俺はスティーブ、クラフターだ。種族は人間だ。」

こちらも謝罪も交えて自分の名を口にする。

そしてお互いに手を取り合った。

人間とモンスター、本来敵対する者同士が手を取ったこの瞬間は俺にとってはとても貴重なものであっ―ァアイタタタタ!

「おい!握る力が強い!手が潰れる!」

マタルの思わぬ力に感動の場面がぶち壊された。

「おっと、失礼。アンデットというのは感覚が鈍いもんでな。」

申し訳なさそうに握った手を放した。

「まあ、痛みには慣れている。この程度大したことではない。…そういえば起きてから喉がイガイガするんだが何かしたのか?」

最初に「介抱をした。」と聞いたのでとりあえず聞いてみた。

「そうそう、家の横に生えていた毒キノコを煎じた試作ポーションを飲ませたんだ。効果がある勘が当たって良かったよ。」

と、目をキラキラさせながらそう言った。

「おいコラ人が意識を失っている間に何してくれてんだ。後、勘ってどういうことだ、俺を実験台にでもしたのか。」

とんでもないことをされたことに沸々と怒りが湧き声が低くなる。

「そんなことより君、行くあてはあるのか?外は真っ暗でだし出歩くと賊に襲われるよ?」

えっとマタルと言ったか。「そんなこと」とか言って話を逸らすな。と心で呟きながらも

近くの窓から外を見ると夕暮れはとっくに過ぎ、ガラスに自分の顔が写っている。「命が惜しければグダグダ言うな。」とでも言っているんだろう。

「無い様ならここに住むといい。助手が欲しかったもんでね。あ、今日は疲れているだろうから寝てくれて結構だよ。」

俺の返事を待たずマタルは居候の話を進める。まあ実際命は惜しいしここに住ませてもらうことにしよう。

「ああ、お気遣いありがとう。ついでに以後は変な物飲ませないでいただけるかな。」

そう釘を刺してソファーに潜り込んだ。

 

異世界に飛ばされる。

 

喋るゾンビピッグマンとの遭遇。

 

そしてそんなのと居候。

 

冒険家の時はモンスターのアジトに単独潜入をしたりと現実離れした日常を送ったことをがあるがこれはこれで常識を逸している。

そもそも化けものと同じ屋根の下で暮らすとなると警戒心もでて眠りにつくこともできzzz

 

結局俺は考えているよりずっと疲れが溜まっていたようなのか警戒心も虚しく睡魔に意識を連れて行かれた。

 

そして朝起きた時寝ぼけてマタルにまたファインティングポーズを取ったことは別の話である。

 

―第一の人生は冒険家

 

―第二の人生は村の住人

 

第三の人生は俺の思いも知らぬ異世界の居候から始まるのであった。

 

 

 




おや?なぜ「ネザー」→「インフェルノ」みたいに名称を変えたかと?
いやー人間、モンスターで同じ名前で呼んでいるのは自分としては引っかかるもんで。

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