汚れちまった求道者系リコリス   作:豪州侍

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第3話 i have a habit of slacking off

 

「あ〜、チーズバーガー美味しい……」

 

 銃取引事件の事後処理が収まった頃のこと。

 私は一人、ハンバーガー屋で管を巻いていた。

 無論、リコリスとしての哨戒任務中ではある。でも、ぶっちゃけやる気が出ない。

 

(頑張ってなったセカンドからは降ろされて、たきなは別の支部に飛ばされてさぁ、これでやる気出せって無理でしょ)

 

 スマホをいじりながら、外を眺める。

 のんびりハンバーガーを貪る私と対照的に忙しなくサードリコリスたちが哨戒していた。

 

(最近、きな臭いからね……。リコリスの大量動員もわかるんだけどさ。これ、私がサボってるのもバレやすくなるからやめて欲しいんだよね)

 

 スマホの時計を見て一時間が経っていることに気づく、流石にこれ以上は休憩だとしらを切ることはできない。

 

『駒、そっちの状況はどう?』

 

『微妙。怪しい挙動を取ってる奴はいないね。そっちは?』

 

『わたしのとこも特に。岩間も特に問題はないかな?』

 

『じゃあ、一時間後に風見も含めてリコリコに集合するように伝えといて。確かその頃には私たち全員のシフトが終わってるだろうから』

 

 香織に伝えるだけ伝えて私はハンバーガー店を出る。一応、私たち四人でネットワークを築いているから別に全員で歩き回らなくてもモニタリングって形で仕事はできるんだな、これが。まぁちゃんとローテは組んでおかないと揉めるからそこは気を配らないといけないけど。

 ふっ、これがデキる女ってやつですよ。実際のところはめんどくさがりってだけなんだけどね。

 

 *

 

 喫茶リコリコ。

 表向きは和風テイストの喫茶店だけど、裏ではDAの支部……というか外注として任務に参加しているフロント店舗である。

 

「あっ、駒ちゃんだ〜! もういつものみんなは来てるよッ!」

 

 カランコロンと鈴を鳴らしながら入店すれと千束先輩が出迎えてくれた。

 薄く黄色がかった白髪に溌剌とした表情。うん、めちゃくちゃ可愛い。たきなが綺麗の化身なら、千束先輩は可愛いのモンスターだと思う。

 これで十年前には、旧電波塔で単騎でテロリストを制圧した天才幼女リコリスなんだってさ。信じられます? 一般人のお客さん? 

 

「私はいつものでいいや。とりあえずみんなのところ行くねー」

 

 千束先輩にそうとだけ伝えて私は香織たちのところに向かう。

 店内の隅のテーブル席。

 そこにはすでに三人の少女が座って待ち構えている。うん、確実にあそこだわ。あいつら無駄に容姿のレベル高いからすぐに分かって助かる。

 

「待ってたよ、駒。もうどこで油を売ってたの?」

 

「そうだ。かれこれ小官は一時間は待ったぞ」

 

「まあ、あたしはその間にラテの飲み比べして楽しかったから良かったけどね〜」

 

 ちょこんと座ってティーカップを啜るのが、香織。

 片手で最中をつかんでバリバリ食ってるのが、岩間。

 テーブルの上に飲みかけのラテを四杯並べてるのが、風見。

 私も含めてだけど、多分容姿と戦闘力だけならそこら辺のアイドルなんて相手にならない。

 

「ようやく主役が来たから始めるか。千束、いつものとは別に頼まれていたアレも頼む」

 

「りょーかい」

 

 店主のミカさんに言われて、千束先輩が持ってきたのはブレンドコーヒーとモンブラン。これは私がいつも頼む分だ。モンブランの上品な甘さと切れるようなコーヒーの酸味が最高に合うんだよ、これが。

 そして、ついでミカさんが持ってきたのはデカいワンホールのチョコケーキ。めちゃくちゃ美味そうでやばい。

 

「え、ミカさん。このケーキ私頼んでない。美味しそうだからいいけどさ」

 

「一応、君は今日が誕生日だろう? 彼女たちは覚えていてそのための準備をしていたのさ」

 

 言われて気づく。そう言えば、私って今日が誕生日だったわ。最近ドタバタしてて忘れてた。というか、リコリスの誕生日って正確に言えばDAへの登録日だからちょっと趣旨が違う気をするけども。

 

「誕生日おめでとうって素直に言わせてくれないのが、駒っちらしいよね〜。今日は誕生日パーティー兼セカンド降格の慰め会だよ、駒っち」

 

「わざわざセカンド降格って言わないでくれるかな?」

 

「だって事実でしょ?」

 

 内心、荒ぶっていたが風見の心無い一言で鎮圧される。

 ふええ、私をあんまりいぢめないでよぅ……。

 

「まあまあまあ、お嬢さん方。まずは、駒ちゃんの16歳の誕生日を祝いまして、乾杯といこうじゃありませんか! はい、カンパーイッ!」

 

 じゃれ合う私たちを横に千束先輩がぱぱんと手をたたき、芝居がかった表情で音頭を取る。

 それからは、楽しい時間が続いた。

 正直、リコリスをやっていると、辛いことばかりだ。

 けれども泥の中に蓮が咲くように、少しぐらいは楽しいことだってある。

 その楽しみを繋ぎ合わせて、私たちは生きている。

 

 *

 

 翌日またも私はDA本部に呼び出されて楠木司令と面会していた。なんか最近頻度が多い気がする。そろそろ定期券でも買っとこうかなってぐらいの頻度だ。

 

「それで、降格させた私を呼び出してどうするつもりなんですか司令? 再昇格の話なら喜んで聴きますが?」

 

「悪いな、あいにくその予定はない。そもそも昇格したいのなら、もう少し素行を改めろ。実力は認めるが、どうにもこちら側が躊躇してしまう」

 

 案外高評価で驚く。サードになったはいいけど、昇進までは長かったからてっきり窓際族みたいな扱いだと思ってた。

 

「まぁそうだな。今回の任務が果たせたら、お前のセカンド再昇格を考えてやらんでもない。まずこれに目を通せ」

 

 そう言って、楠木司令はデスクの引き出しからレジュメを出してくる。

 内容をざっくり掻い摘むととある政界の大物に銃の密輸入と密売の疑惑がかかっているらしい。警察の方でも捜査は進められているが、上層部との間に繋がりがあるらしく捗々しくない。

 だから、リコリスを使って潜入し、その証拠をつかんできてほしいとのことだった。

 

「うーん、これサードの仕事じゃないですね。フキ先輩とかファースト空いてないんですか?」

 

「千束やフキを使うことも考慮するべき任務なのは理解している。だが、いかんせん潜入の手段が限られていてな。なんでも、奴の近辺は既に身元が確かな者で囲われているから警備や事務所の職員に新規で入り込むのは不可能らしい。だが、一つだけ穴がある」

 

「穴、と言いますと?」

 

「買春だ」

 

 一瞬、脳みそが固まる。

 え、これってもしかして私がハニトラするの? あのテレビで見る油ぎった文科大臣を? いやーキツイでしょ。

 

「理解が早くて助かる。買春は奴の泣き所の一つ。だから、近辺の人間にも詳細は伝えていない。リコリスが入り込むには充分な隙があるということだ」

 

「んー、そこは分かるんですけど。なんで私を?」

 

 リコリスが適役なのはわかった。けれど、それなら千束先輩で足りる。セカンドでも役不足なのに、どうして私にこの話が回ってくるのか。

 

「奴の好みの問題だ。なんでも背が低く、胸が大きくて、長めのボブカットの髪型が似合う少女が好みらしい」

 

「うわ、割と細かいですね……。そんな娘、リコリスにいます? それでいてある程度の実力の保証がある娘なんて……」

 

「そこにいるではないか。ちょうど背が小さく胸も大きく、そして赤毛のロングボブが似合う、素行を抜きにすればセカンドとして運用していたであろう可愛らしいリコリスがな」

 

 楠木司令がいい顔をしてこっちを指差してくる。いや、普通に褒められて嬉しいけど! 嬉しいけど! これ、確実にしぬやつじゃん! 

 

「……拒否権はないのは、分かっているな」

 

「はい」

 

 内心、涙目になりながら頷く。

 もうやだあ、こんなブラック……いや、ブラッド企業やだあ……。

 

「バックアップは十全にしてやる。だから、為すべきを為し、力を尽くせ。話は以上だ」

 

 言いたいことだけ言われて面会は打ち切られた。

 バックアップしてくれるとは言ってたけれど、相手が大物すぎてなんともいえない。それに、私の貞操がリアルにやばいのは笑えない。

 

「あーもう、帰ったら丸々一月休みを要求してやる。しばらく私は働かないからなぁ!」

 

 腹立ちまぎれにリノリウムの床を蹴る。

 それが、私にできた唯一の抵抗だった。

 





六角香織……黒髪サイドポニーテール。背は普通で胸はちっちゃい。
岩間栞子……前髪パッツン黒髪ロング。背は180オーバーで身長共々いろんなところが大きい。
風見葉月……ウェーブがかかった緑色のロング。背は普通で胸は大きい。
日高駒……赤毛のロングボブ。背はようやく150を超えるぐらい。胸は大きい。

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